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歴史、ミリタリー、ウォーゲーム、ボードゲーム

「FLASHPOINT SOUTH CHINA SEA」(GMT)を対戦する

ウクライナ戦争の陰に隠れてここのところ目立たないのですが、中国によって現在進行中の南シナ海への海洋進出、その周辺諸国への影響力を巡る米中の確執を扱った「FLASHPOINT SOUTH CHINA SEA」(GMT)を対戦しました。

カードドリブンのわかりやすい構成で1時間程度と手軽にプレイでき、ユーロゲーム系プレイヤーにも受け入れやすいと思われる、好ゲームにしあがっていました。

 

 

 

 

南シナ海を描いたマップには、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイインドネシアの5カ国が配置されています。各国については、青と赤で描かれたアメリカと中国それぞれについて経済的影響力と外交的影響力の2つのパタメーターが描かれています。
国とは別に係争地として北から「スカボロー礁(Scarborough shoal)」「西沙諸島(Paracel Islands)」「南沙諸島(Splatly Islands)」の競合エリアが海上に配置されています。これらの海上の係争地に対しては、中国は「埋め立て(CP)」、対するアメリカは「航海の自由作戦(FONOP:Freedom of Navigation OPeration)」がパラメータとして表示されています。

 

マップ上部には、両国の緊張レベルが穏当な状態から危機的状況まで4段階で表示されています。「危機的状況」からさらにエスカレーションした状態(戦争状態)はありません。戦争状態を扱うことはこのゲームの主題ではないということでしょう。緊張度が「高」から「危機的状況」になるとさらにエスカレーションするような強硬な施策を取れないということになります。

 

航行の自由作戦

 

全3ターン。

各ターンの最初にプレイヤーには6枚のカードが配布されます。

 


各カードを使うことにより、アクションポイントを使うか、イベントを発動させる等のアクションを起こすことができます。

アクションポイントは基本、キューブの操作を行います。各国または競合エリアに配置するか、アメリカ・中国の中にある「政治工作(Political Warfare)」のポイント追加していきます。

イベントは発動条件があることが多いのですが、実際発生している様々な事件・現象になぞらえた様々なものが用意され、中には緊張レベルが悪化するイベントも少なくありません。

「中国漁船をインドネシア領海で爆破」
海上自衛隊が、合衆国軍艦を護衛する」
「中国、ユーラシア交易のため「一帯一路」構想を策定」
「中国の小切手外交」
・・・

故安倍首相もイベントカード(関係国首脳が登場するカードがあり、そこにはプーチン大統領や、台湾の蔡英文総統、北朝鮮金正恩などのカードもあります。)として登場し、両国の緊張状態を好きな位置に移動させることができます(緊張を高めることもできるし、融和させることも可能)。

 

中国による「埋め立て」、アメリカによる「航海の自由作戦」は緊張度を悪化させます。また一部の強硬なイベントについても緊張度の悪化が伴います。緊張度が「高」「危機的状況」で発動できないイベントがあるため、中国としては緊張度を抑えるように動きつつ、着実に後に残る「埋め立て」を進めていく必要があります。*1緊張度のコントロールに使われるのが前出の各国首脳カードということなのでしょう。アメリカは逆に首脳カードも含め緊張度を高めにコントロールしたほうが中国の動きを抑えることにつながるように感じました。安倍首相が発言することにより、中国の海洋進出の動きに対する牽制になっていた、といった状況なのでしょう。

 

終盤、中国は海上の競合エリアの埋め立てを進めます。一度実施すると翌ターンまで効果が残る「埋め立て」に対して、アメリカは一過性に終わってしまう「航行の自由作戦」は消極扱いとしてすすめた。一方で各国に対して、イベント等を通して影響力の強化を図り、着実に勝利ポイントを稼ぎます。
写真の直後、中国はベトナムに対して「政治工作(Political Warfare)」を発動し、ベトナムに対するアメリカの影響をすべて排除することに成功しますが、ポイントは及びませんでした。

 

感想戦

実際のモノはハードマップと美麗なカードで決して見劣りする訳ではないのですが、簡素に見えてしまうコンポーネントに写真写りの点で損をしている印象はあります。

プレイ時間は1時間程度。ルールもシンプルなのでインスト付きですぐに習得できます。

確かにカードプレイやキューブを使ったポイントの争奪はゲームっぽいテクニカルな側面はありますが、イベントの生々しさもあって、決して題材とプレイ内容が遊離したフレーバー、雰囲気だけ借りてきました、という類のゲームにはなっていない印象を受けました。

なによりも「今そこにある危機」をテーマにしたゲームとして十二分に楽しめます。

(了)

 

 

 

 

 

 

 

*1:「埋め立て」の実施結果は次のターンまで残るのに対し、「航海の自由作戦」はターンが終了するとクリアされます。一方で「埋め立て」は緊張度レベルが高くなるにつれてコストがあがるという仕掛けになっていますので、中国としては緊張度を抑えた状態で「埋め立て」をしたほうが効率が良いのです。また両勢力とも各国に及ぼした「経済的影響」についてもターンが終了すると1レベル自動的に落ちます。「緊張度」についてターンが終了した時点で自動的に1レベル落ちます。