Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「THE SHORES OF TRIPOLI」(FORT CIRCLE GAMES)を対戦する

ゲーム会で時間が空いたので「THE SHORES OF TRIPOLI」(FORT CIRCLE GAMES)を対戦した。19世紀初頭、私掠船により地中海を荒らし回っていた北アフリカ諸国(リビアチュニジア、モロッコ等)に対して、業を煮やしたアメリカ海軍/海兵隊が艦隊を動員し、無法の輩に膺懲を加えるという作品。

ウォーゲームではなくボードゲーム由来の作品だが、短時間にプレイできる良ゲームであった。

 

 

 

歴史的背景

アメリカ独立戦争末期から間もない、まだ若い国家であったアメリカ合衆国の商業船はバルバリア海岸(ベルベル人の海岸、今のモロッコアルジェリアチュニジアリビアを指す)の海賊の格好の餌食になっていた。1801年、就任したばかりのジェファーソン大統領は、この脅威に終止符を打つべく、地中海に「監視艦隊」を派遣した。ジブラルタルに到着した戦隊は、トリポリの海賊がすでに宣戦布告していることを知った。

 

ゲームの紹介

プレイヤーは私掠船を操る海賊側と、取り締まるために派遣されたアメリカ艦隊を担当する。1ターン=1年で、1801~1806の全6ターン、さらに各ターンは春夏秋冬の4つのフェイズからなるのでアクションを行う機会は1ターンあたり4回ということになる。

アクションは全てカードで起動されるカードドリブンシステムを採用している。カードに記載されたイベントを起こすことでユニットの操作を行うことになる。

海賊は根拠地となっている港から出港し、海賊行為を行う。ダイスにより成功すれば財宝を獲得する。一定の財宝を獲得すると海賊側の勝利となる。
アメリカ艦隊が港を封鎖すると、海賊は封鎖艦隊との海戦を行なわなければ外洋に出ることがかなわなくなる。
ただし封鎖にも損害が出ることがある。旅順港を封鎖した東郷艦隊が2隻の戦艦を失ったのと同様、イベントカードにより艦を失ったり損傷を受けたりする。

戦闘は戦闘力の分のダイスを振ることで決める、いわゆる「6出ろ」システムだ(戦闘力の数分のダイスを振り、「6」が出た個数分の損害を与える。実際はもう少しひねったルールになっている)。

船には3本マストの「戦列艦フリゲートと、「砲艦」がある。アメリカ艦隊の主力は堂々とした「戦列艦」で補助的に「砲艦」が参加する。海賊側は逆にフリゲート級は貴重でほとんどは「砲艦」クラスとなる。
海戦で損傷を受けた「戦列艦」はいったん戦域を離れ、修理のため次のターン(翌年)まで帰ってこない。損害が嵩むと撃沈されてしまう。「戦列艦」の補充は1年に1隻ときまっているが(イベントカードで登場する場合もある)、砲艦は自由に建造できる。

 

ハードマップは抽象化されているが、北アフリカ海岸を表す。オレンジや赤色の円は海賊が根拠地とする港、その周囲に薄い水色の円は海域を封鎖閉塞するために艦隊が出動した際のエリアだ。アメリカ海軍の根拠地は青色の円で、左がマルタ島、右がジブラルタル港を表す。

手前にある黄色と青色の積み木ユニットは軍艦を表す(帆船だ)。

 

帆船ユニットのアップ。青色がアメリカ海軍、黄色は支援として封鎖に参加したスウェーデン海軍を表す(スウェーデン艦はイベントで登場し、また別のイベントで帰還してしまう場合もある)。3本マストの船は「フリゲート/戦列艦」。1本マストの小型の船は、封鎖作戦には参加できないが戦闘には参加することができる砲艦(スプーナー級)。生産や修復に時間が必要となるフリゲート/戦列艦と異なり、補充が容易であるため、損害吸収鑑として使うことになる。

 

美しいデザインのイベントカード。各カードに記載された絵画も美しい。

 

アメリカ海軍の勝利条件は2種類あり、いずれかを達成することでなされる。海賊の本拠地であるトリポリを占拠するか、アルジェ・タンジュ・チュニスと海賊の根拠地となっている各港を平定した上で、本拠地トリポリから海賊のフリゲート/戦列艦をなくすこと(海賊側は戦列艦を2隻擁する)。前者の場合は、トリポリだけを相手にすればよいが、トリポリには守備隊がおり、艦隊が抱える海兵隊だけでは戦力的に不足することからエジプトから軍勢を呼び寄せる必要がある。このエジプトからの陸上部隊もアクションカードで移動させる必要がある。後者の場合は、陸上部隊の登場は不要なものの北アフリカの海賊の拠点各港から海賊船を無くしてしまう必要がある(ようだ)。
どちらの勝利条件を選ぶかもまたカードによるため、自由は効かない。いずれの勝利条件の場合も、一定ターン以降でなければ有効ではないため、ゲーム開始後、即ゲーム終了とはならない仕掛けになっている。

 

初期配置の状態(たぶん)。
ジブラルタに到着したアメリカ艦隊を待っていたのは海賊の2隻の砲艦(赤色ユニット)。海賊の本拠地であるトリポリには海賊の砲艦が集結しているのがわかる。
マップ右上になるターントラック上におかれた「戦列艦」は毎年新規投入される増援ではあるが、損害もそこそこ出るので決してアメリカ軍有利という訳ではない。
写真では見切れているが、左手のほうにはエジプトがあり、現地の陸上部隊を移動させトリポリに攻め寄せることはできる(ただし実際に陸上部隊が移動可能となるのはゲームが進行してからになる)。

 

 

感想戦

アメリカ軍を担当。

アクションはカードによるためが限定される。何をやればよいのかわからなくなるという場面は少なくないように思う。

トリポリ以外の港の私掠船を追い払い、トリポリ港自体は艦隊により封鎖をした。
途中、私掠船側のイベントにより船を失ったり、来援したスウェーデン艦隊が帰還したりする。トリポリ以外に私掠船が湧いてそれらを討伐するといったことが続く。

勝利条件は保有しているカードによって選ぶことができるが、各港から私掠船を追い払う必要がある(ただし陸上戦闘は不要)勝利条件ではなく、本拠地のトリポリ自体を占拠する条件を選ぶ。
最終ターン、全艦隊と全海兵隊、さらにエジプトからの現地軍部隊をトリポリに突入させた。

マップやルールが適度に抽象化され、行動もカードのアクションで縛られるため選択肢がある程度限定される。決して悪いわけではなくその分、ゲームの難易度やバランスが調整され、初めてでもスムーズにプレイできた印象。

なんでもアメリカ艦隊側には必勝法があったらしいのだが、ルール追加により封じられた模様だ。ともあれ、美しいコンポーネントと、短時間に遊ぶことができる良好なプレイアビリティはよかった。

(了)