Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「THE BATTLE OF ARMAGEDDON」(COMPASS GAMES)を対戦する(3/3)下馬評を覆す快作(怪作!?)

地は燃え、河や海は干上がり、空はイナゴの大群が飛び交い、水が汚染される世界。次々と発生する災厄に人は対抗するすべもないのだが、それでも愚かしいまでに戦闘は続き、核兵器は互いの国土を焼き、都市を破壊し、人口を激減させていく。

本作は、プレイ前の懸念や下馬評を覆す快作だった(怪作!?)。

 

 

 

 

 

ゲームバランスを論ずることができるほどやりこんだ訳ではないが、登場する勢力も性格付けがなされている。

 

イスラエル

実質、唯一の勝利条件と言える「世界の終末時点でエルサレムを占拠していること」の達成難易度ということであれば、エルサレムに近いイスラエル、アラブが最も有利だろう。イスラエルはゲームの開幕時点でのエルサレムの占拠勢力であるため、早々に「第7の鉢」のカードがドローされることによる開幕即サドンデス勝利の可能性を持っている。ゲーム開始時にエルサレムに隣接したヘックスを有しているアラブはその次だ。
この2勢力は補充能力が最も小さいため、ユニット同士の殴り合いになると力負けしてしまう。現有戦力という意味でイスラエルは質が良い分、アラブより有利だが、都市(=人口カード)が3枚しかなく、国土全土が他勢力に易々と蹂躙され戦場になることもあわせゲームから脱落してしまう懸念があるという点では、「第7の鉢」がなかなかドローされずにゲームが中長期戦になった場合、イスラエルは最弱かもしれない。

 

アラブ

アラブはバグダッドの扱いが悩むところだ。バグダッドを失うことにより失う補充能力と、中国軍とのバグダッド争奪(ただし中国軍の人海戦術の前には、いずれ陥落するのは必至)にどれほどリソースを傾けるべきかのバランスが考慮点だ。

もう1点はこれはなるようにしかならないところはあるが、地中海側にある港湾をアメリカや欧州連合に開放するのかどうか。両勢力が海上輸送をするには港湾ヘックスである必要があるのだが、地中海側の港湾ヘックスは数が限られている。有利な条件で同盟を締結して開放するか、または両勢力の力攻めを受けるに任せるか。

 

アメリカ、欧州連合

エルサレムへ戦力を投射できる手段として、アメリカ、欧州連合、ロシアの3勢力は空挺降下を行うことができる。中でも空挺降下とあわせてイスラエルの海岸に直接主力を送り込むことができ、また航空戦力による支援が可能なアメリカ、欧州連合がやや有利か。この2勢力はタイミングを見計らい、決断さえできればエルサレムとその周辺にそれなりの戦力を集中できる。ただしこの2勢力も補充能力は優れている訳ではないし、また自勢力だけで、他勢力すべてに対抗できるほどの戦力を持っている訳ではない。いったんエルサレムを占拠した後にいかに維持するのかは悩みどころかもしれない(これはどの勢力も同じだが)。アメリカと欧州連合は戦力は同規模である一方、「反キリスト主義」という役割を持つ欧州連合には同勢力しか使えない特殊カードが複数あるという点は特筆するべき点だろう。リプレイの中で、中国の人海戦術の適用を無効化したのもこうしたカードの効果だった。
蛇足だがアメリカは欧州連合が持つ「反キリスト主義」のような性格付けはなく、どちらかというと中立的なスタンスの勢力として扱われているように感じた。

 

ロシア

ロシアはユニット数が多いが、空挺部隊とへリボーン移動(いずれも歩兵ユニットが対象)以外ではパレスチナにダイレクトに戦力を送り込むことができる術が弱い。主力はマップ北端から登場させ、移動させていく必要がある。この点、中国に似ている。ロシアのほうが機械化が進んでいる分、移動能力は高い。戦力規模は他の複数勢力を同時に相手にしても十分に対抗できる。今回のプレイではマップ東にも部隊を展開し中国軍と銃火を交えていたが、むしろ中国軍がパレスチナに登場する前に電撃的に力押しの攻撃を行うというのも手かも。

 

中国

中国はやたらを数はいるがエルサレム争奪に参加できるようになるタイミングは、マップ東端から移動してくるため、最も遅い。ただ中国軍の最前線がエルサレムに到着する頃には今回のプレイでもあったように大乱戦になる。中国軍の到着はこの最終戦争の”終わりのはじまり”になるだろう。

中国軍の戦略は他勢力ほど迷うところは少ない。東の端からマップ上にあらわれて、ひたすら突進していく。人海戦術の犠牲は厭う必要は当面ないだろう。バンバン除去されて、無尽蔵とも言える補充能力によりドンドン、最前線のスタックに復活させるのだ。

 

核兵器

現用兵器を用いた戦力や補充能力には強弱の性格が与えられているのだが、核兵器を扱うカードについては6勢力とも、手札の保有枚数などは全く同等だ。この点はイスラエル、アラブには心強い。

中国の驚異的な補充能力を壊すためには、今回発生したような中国に対する戦略核による攻撃の集中しかないことを考慮すると、中国以外の勢力における戦略核の攻撃目標は中国一択かもしれない。中国からするとこうした対中国連合を外交などによりいかに回避するのかという点も課題だろう。

場札の中に世界滅亡を引き起こす「第7の鉢」カードは必ずある。場札の半分より後半分に混ぜるといったドロータイミングをコントロールするようなルールはないため、開幕一巡目にいきなりドローされる可能性もあることは書いた通りだ。
逆に残った場札が「第7の鉢」が出現する可能性がある残り時間を表すと言って良い。
エルサレム争奪にいつ参加するのか?この判断はなかなか難しい。「第7の鉢」のドローされるタイミングが完全にランダムであることを考えると、運任せと言ってしまえばそれまでだ。

 

イベントカード

黙示録の災厄を引き起こすイベントカードの内容を考慮すると、航空ユニットを全滅する「いなご」の災厄は回避手段はないが、海上(AT SEA)のユニットを全滅させる災厄を避けるため、アメリカ、欧州連合海上で高見の見物を決め込むのではなく、部隊は早々と上陸させたほうがよいかもしれない。
砂漠ヘックスについては、移動不可になるカードと、全滅させるカードがあるため、砂漠ヘックスにはなるべくはいらないほうがよい点は、主に中国が関係する内容だ。

 

(終わり)