Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「Sleepwalkers: Imperial Rivalries and the Great War」を対戦する

20世紀初頭の欧州を舞台に世界大戦に至る大国間の確執と瀬戸際外交をテーマにした表題作品を対戦しました(出版社はDr. Richter Konfliktsimulationenというドイツの企業のようです)。
登場するのは、イギリス・フランス・ドイツ・ハンガリー=オーストリア・ロシアの5大国。ドイツとハンガリ=オーストリア(以後、オーストリア)は兼任できるようなので、プレイヤーは4人でもよさそうですが、やはり各国の思惑が異なることを考慮すれば可能であれば5人集めたいところです。

 

コンポーネント自体は簡素で、登場する各国が記載された欧州マップと、マーカー類だけという構成になっています。

 

全9ターン(イベントによってサドンデスあり)、ゲーム終了時に威信(Prestige)ポイントが最も高い国が勝者となります。

各ターンのはじめにイベントチット*1が引かれ、内容によってそのターンの第一プレイヤーが決められます。各プレイヤーは自分の手番に、いずれかのアクションを実施しなければなりません。

  • 「関税の強化」
  • 「同盟の提案」
  • 「軍備の増強」
  • 「領土または影響範囲の拡大」
  • パス

「パス」と「関税の強化」を除く各アクションは、いずれかの国に影響を与える、つまり挑発することになります。挑発を受けた国の反応如何で、アクションを実施した国と挑発を受けた国の「威信」が上下することになります。
各国が起こしたアクションの種類によって、影響を与える(=挑発を受ける)国は当時の世界情勢に則ったものになっています。
例えば、イギリスによる「軍備の増強」はドイツに影響を与え、フランスが行った場合はイギリスまたはドイツが挑発されることになります。
「領土の拡張」についてロシアのそれはオーストリアまたはイギリスが挑発されることになります。「同盟」についても相手先は当事の国際情勢に則った組み合わせになるのですが、可能性としてはロシアとドイツの同盟、オーストリアとフランスの同盟も起こり得ます(史実通り、フランスとドイツ、またロシアとオーストリア間は険悪ですので、それらの国家間に同盟関係は有りえません)。

影響を受けた(=挑発を受けた)側は対抗するのか、やり過ごすのかを決める必要があり、その内容によって両当事国の「威信」が上下することになります。

アクションを1回実施すると同じアクションは3ターンの間は実施できなくなるため、「パス」や温厚なアクションでお茶を濁すことはできず、いずれ強硬なアクションを実施しなければならない仕組みになっています。

 

影響を受けた(=挑発を受けた)側が対抗する場合、影響を受けた側から最後通牒が発せられます。「最後通牒」が発せられた場合、「危機モード」として戦争にエスカレーションするかの判定に入っていきます。
「危機モード」からは戦争に至るまさにチキンレース状態になるのですが、どの段階で勝負から降りるのか、またレイズしていくのか・・、判断タイミングと相手の反応によってこれもまた「威信」が上下します。

最後通牒」が発せられた段階で影響を与えた(=挑発を受けた)国が譲歩する、つまり引き下がるとその国の「威信」が下がります。相手を挑発したものの、相手国がマジで対抗しはじめたので、あわてて引っ込めるというカッコ悪いパターンです。威信が下がって当然です。
次の段階として、当事国両国は自国の同盟国に参加を呼びかけます。この際に、同盟国
が応じなければ、その同盟国は肝心なときには頼りにならない「不誠実な同盟国」として「威信」を下げることになります*2

「動員」をかけるのか、調停に身を委ねるのかの判断もポイントです。動員を行うと戦争が発生した場合に戦争に勝利しやすくなるのですが、戦争勃発チェックの結果、戦争が回避された場合は「調停」が成立し、「動員」を行っていた国は「威信」を下げ、動員を行わなかった国の「威信」は上がります。

戦争の勃発はダイスによって判定しますが、同盟国含め当事国となった国が多くなればなるほど可能性が高くなる点は、当事の情勢をうまく表しているようです。
戦争が勃発するとダイス判定による勝敗チェックの結果、戦争に勝った国は「威信」があがり、逆は下がります。

ドイツだけには戦争が発生した際の修正値が大きくなるシェリーフェンプラン」という選択肢が与えられており、これが発動された場合は、ドイツ‐フランス間は戦争勃発チェックをとばして必ず戦争が勃発し、イギリスもベルギーを見捨てるか(この場合はイギリスは威信が‐1される)、対ドイツ戦争に巻き込まれるかの判断が生じます。

 

感想戦

当初その簡素なコンポーネントもあってうまく機能するのかが危惧されたのですが、プレイしてみるとかなり巧妙に組み立てられていることがわかりました。誰を挑発して誰と同盟するのか、「危機モード」になった際のエスカレーションしていく戦争の危機など丁々発止のやり取りが行われます。

ライトなゲーム故に若干ルールの粗はあるのですが、対戦の合間に少しプレイするには良い作品かもしれません。

(終わり)

 

 

第一次世界大戦全体を扱った戦略級ゲームです。
戦史を知っているがために、それを回避するような動きになったのですが、そうしたプレイを防止するようなルールがあったのかもしれません(陰謀ルールともいう)。

 

第一次世界大戦の東部戦線というとタンネンベルクの戦いをはじめとして、ドイツ対ロシアの対立関係が有名ですが、むしろ、真に仲が悪かったのはロシアとオーストリアであり、東部戦線南方では両国により決め手に欠いたまま戦闘が続きました。ルールの適用をミスっており、再戦を行いたいところです。


十分な準備射撃の後の全線で行われる歩兵突撃、対する防御側の支援砲撃・・と段階
的にすすむ第一次世界大戦の陸戦を扱った作品です。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:イベントチットによるイベントにはドレフュス事件ボーア戦争、ベルリン・バグダット鉄道・日英同盟日露戦争・黒手組(サラエヴォ事件に関与したテロ組織)といった当事の事件が取り込まれており、内容によっては関係国の「威信」に影響を与えます。プレイ後半からはサドンデスのチットも追加されます

*2:「同盟の提案」を受けた場合も安易に受けることが得策ではない場合があるということです