MMP社のOperational Combat Series(以降、OCS)「KOREA -Forgotten War-」を再戦しました。シナリオ3「On the Naktong(洛東江にて)」。1950年8月1ヶ月間の、戦争全期間を通して韓国軍・国連軍が最も追い詰められていた時期を描いたシナリオです。
プレイ
初期配置
両軍とも初期配置はヒストリカルな位置に指定されています。
北朝鮮軍は3つの攻撃軸が考えられます。
対する韓国軍・国連軍は、大邱付近を境に北側を韓国軍、南側を国連軍が担っています。
茶系のユニットが北朝鮮軍、薄緑色が韓国軍、濃い目の緑色が国連軍である。
シナリオタイトルの洛東江は釜山を海への河口として、馬山と昌寧の間を通り北へ走り大邱のあたりで2つの河川が合流。東に端を発する流れと安東近くの流れ(こちらが本流)になる。今回のゲームの中でも韓国軍・国連軍は大邱や昌寧周辺において洛東江に沿い防衛線を張り、北朝鮮軍の攻撃を防ぎ続けた。
8月5日~8月11日(1~2ターン)
天候が悪く航空部隊は出撃できません。
北朝鮮軍は全線に渡り前進し、攻撃を実施します。
東部戦線は、山間部が海岸近くまで迫った地形になっています。ここでは2個師団が攻撃を実施しますが双方に損害が出ます。戦線の整理のため韓国軍は少し後退します。
南部戦線は昌寧前面において洛東江越しの渡河攻撃と、馬山のある丘陵地帯でそれぞれ1個師団が攻撃を行いますが、国連軍のリアクション砲撃により主力の歩兵部隊が混乱状態に陥り、攻撃は頓挫します。
北朝鮮軍の主力は中央線戦にあり6個師団が軍砲兵の支援の元、攻撃を開始。韓国軍は損害を避け後退、その後、戦線の整理のため後退します。
OCSは後退の戦闘結果を得た後、敵ZOC内への後退も許容している(ただし「混乱」状態にはなる)ため、多くの作戦級ウォーゲームのようにZOCにより包囲し、戦闘結果として「後退」の結果を得て、後退不可=ユニット除去という"テク"は使えません。
北朝鮮側からの写真のため南北が逆になっている。手前が北。
中央線線、大邱前面で入り乱れる北朝鮮軍と韓国軍。北朝鮮軍からすると、アメリカ軍を中心とした国連軍より韓国軍のほうがずっと与し易い。自然に攻撃の主軸は韓国軍が主力となっている中央戦線に移っていった。
8月12日~18日(3~4ターン)
天候は引き続き悪く航空部隊の出撃はありません。
馬山から昌寧の戦線は相手が国連軍中心のため、北朝鮮軍からすると格上の部隊となりなかなか攻勢の端緒がつかめません。砲兵部隊の事前砲撃が成功したとしても、続く歩兵部隊の攻撃前に国連軍のリアクション砲撃を食らって攻撃中止になれば、事前砲撃による敵前線の一時的な混乱は回復してしまうことになります。中途半端な攻勢は補給物資を無駄にするだけなのです。
中央線線は混戦の末、大邱の北側を流れる洛東江の北岸まで北朝鮮軍が迫ります。
4ターンから5ターンにかけての状況。大邱の周囲を流れる洛東江の対岸に北朝鮮軍が迫り、米海兵隊の一連隊(濃い緑色のユニット)が増援に駆けつけている図。アメリカ海兵隊は1個連隊で北朝鮮軍の二線級歩兵師団1個と同等程度の戦闘力と、圧倒的な練度・士気の部隊のため手を出しかねる・・(ダイス修正が厳しい)。
この後、北朝鮮軍は大邱前面の1ヘックスで渡河に成功し大邱市街ヘックスを河川修正無しに攻撃する権利を得るが・・
8月19日~25日(5~6ターン)
天候判定はまたもや悪く航空部隊の出撃が見送られます
航空部隊は1/2の確率で出撃可能となるのだが、6ターンに渡り天候はすぐれなかった・・。
国連軍の不運を喜ぶ間もなく、ダイスの目の不運は北朝鮮軍を襲います。
北朝鮮軍の砲兵部隊による大邱に対する事前砲撃、大邱前面の洛東江を渡河した橋頭堡からの精鋭歩兵師団による攻撃が続けざまに、「1」の目の3連発によりことごとく失敗したのです。この時点で大邱市街には1個機甲大隊しかなく、普通の目がでていさえすれば、北朝鮮軍が大邱市街に入城するチャンスは十分ありました。
8月26日~31日(7~8ターン)
天候判定はようやくにして航空部隊の出撃可能となり、7ターン目にしてはじめて国連軍の攻撃機が出動することになります。
その爆撃目標は、再度の突入を狙い大邱前面に集中した、増援で到着したばかりの北朝鮮虎の子の2個歩兵師団がスタックする高スタック地点。北朝鮮軍の精鋭2個師団はステップロスとともに混乱状態に陥ります。もうひとつの攻撃の主軸であったヘックスにはアメリカ軍砲兵を中心とする国連軍の砲兵部隊の砲撃が集中され、ここでも北朝鮮軍の複数個の歩兵師団が混乱状態になり、ここに北朝鮮軍はここに完全に衝力を失ったのです。
砲兵隊による砲撃、また航空機による地上支援の際、目標ヘックスに一定数ステップ数の部隊がスタックしている場合、大部隊が存在していることにより損害が出やすい方にダイス修正がされる。逆にスタックしている部隊の規模が小さい場合は、損害が出にくくなる。
制空権がない地域で、下手にスタックを重ねすぎるとすぐに狙い撃ちされてしまうという典型的な事例。
この時点で北朝鮮軍は大邱前面に兵力を集中しており勝利条件としての防衛線の突破はもとより馬山の占領も難しかったことから大邱1ヶ所の占拠可否に関係なく敗北濃厚だったの訳ですが、最後に一矢を報いる望みもこれにより失われたのです。
攻め手を失った北朝鮮軍は最終ターンを待たずに投了しました。
大邱市街ヘックスの手前で「DG:混乱」マーカーを載せられているが国連軍の航空攻撃と砲撃により混乱状態に陥った北朝鮮軍の2大梯団。その後方でDGマーカーを載せられているのはその前のターンで最悪のダイスの目により混乱を食らい後退した梯団・・。北朝鮮からすると大邱ひとつを取ったところで勝利条件には遠かった訳ですが・・
感想
今回でOCSは2回目となりました。
前回よりはルールに対する見通しがよくなりましたが、プレイ途中には、予備部隊の指定や、砲兵隊砲撃の実施漏れなどいろいろ見落としが続発します。しっかりした注意力とその場しのぎではない部隊運用が試されるというところでしょう。
今回は戦場となった地域が広くなかった点、また北朝鮮軍については毎ターンの補給量がふんだんにあったことから、補給物資(SP)の取り回しはあまり悩むところはありませんでした。
ルールの理解が目処がたったところで次は作戦面でしょうか。
Yさんからはこのシナリオは平押しだと突破できないと指摘。
確かに内線側の韓国軍・国連軍は次々と増援が到着し、完全自動車化がなされている国連軍はこの程度の戦域であれば”内線の利”により戦線の穴を塞ぐことができるくらい。
ただし補給量の点や部隊数の点で主導権は"まだ”北朝鮮軍が握っていた時期だけに韓国軍・国連軍を翻弄するような動きが必要だったのだろうと思います。
兵力の大胆な集中、師団を連隊単位に分離した”分遣連隊”を活用した浸透作戦などの指摘・提案がありました。
(終わり)
休戦交渉が続く中の東海岸近くの山間部で対峙する韓国軍と北朝鮮軍との間の戦いを描いた作品でした。舞台となったエロック高地の綴りをひっくり返すと「KOREA」となるという話で、モデルとなった戦いはありそうですが架空の戦いということのようです。
回想シーンで開戦直後の議政府の戦闘や、長沙洞撤収作戦(包囲された部隊や避難民がLSTを用いて海上撤退した。映画内では場所は浦項となっていた)が描かれていました。ツッコミどころはたくさんあったのも事実ですが、一方で同じ言葉を使う同じ民族同士の戦いというのが実感できます。
「高地戦」という日本語タイトルはどうなの?という印象はありますが、韓国名の直訳は「高地にて」、英語名は「The Front Line」です。