千葉会で「The Korean War」(COMPASS GAMES)を対戦しました。
第3ターン
補給ルールが適用開始される
第1~2ターンの間、北朝鮮軍は重要なルールの適用を免除されています。補給ルールです。この期間、両軍とも、特に攻勢作戦中の北朝鮮軍は補給を気にせず前進・攻撃を継続することができたのです。
第3ターンからは補給ルールが適用され始めます。これがゲームの様相を変えてしまうのでした。
本ゲームにおける補給ルールは若干ややこしいです。
各ユニットは補給状態によってその戦闘力(攻撃力&防御力)をユニット額面の4分の1倍から2倍の間で変化させます。
本ゲームには補給の根源になる「補給源」の他、中間的な補給供給点になる「集積所(Depots)」が登場します。各部隊ユニットは、「補給源」ー「集積所」ー「部隊ユニット」という補給線を設定できなければならないのです。
「集積所」と補給ポイント判定
「集積所」は集積所値と呼ばれる1~3の数値を持っています。この数値が大きいほど規模が大きく、また効率が良くなります。
両軍は各ターン、集積所値を3受領します。この集積所値を用いて集積所を配置します。集積所値1の集積所を3ヶ所配置することもできますし、集積所値3のものを1ヶ所設置ということもできます。言い換えれば、最大でも3ヶ所しか「集積所」は設置できないのです。
次に配置された各集積所はそのターン、どれだけ補給(=補給ポイント)を受け取るのかをダイスで判定します。集積所に配分された集積所値がその集積所が受け取ることができる補給ポイントの最大値になりますので、規模が大きい(=集積所値が大きい)「集積所」ほどより多くの補給ポイントを受け取ることができ、また受け取ることができる確率も高くなります。集積所値3の集積所と、集積所値1の集積所とでは同じ確率で補給ポイントを受け取ることができる訳ではなく、集積所値が大きい集積所のほうが補給ポイントを受け取ることができる確率が高くなるのです。
ダイスの目次第では十分な補給ポイントを受け取れなかったり、場合によれば全く補給ポイントが配分されることがなくなったりします。特に集積所値が1の場合はかなりの確率でそのターンに受け取ることができる補給ポイントが0になります。
補給ポイントによって部隊ユニットの戦闘力が変わる
各部隊ユニットは「集積所」から補給線を設定することになるのですが、その「集積所」に届いた補給ポイントのうち、そのターンに消費することした量によって、額面戦闘力が変わってきます。
全く補給ポイントを使わない、または補給ポイントが到着していない場合は額面の1/2、逆に最大値となる3ポイントを使った場合は攻撃値・防御値は額面の2倍となります。
そのターンに使用せずに余った補給ポイントは2ポイントに限り次ターン以降に繰り越すことができます。実際、補給ポイントを繰り越すほど余剰を持つことは難しいかもしれませんが、大攻勢作戦の前に補給ポイントをわざと繰り越して一挙に使うという手法を取ることができます。
北朝鮮の補給事情は非常に苦しい
「集積所」に到着する補給ポイントを決めるダイスにあたって、北朝鮮軍の場合はその「集積所」が配置された地方によって判定表の数値が変わってきます。端的に言うと半島の南部に行けばいくほど北朝鮮軍は補給ポイントを受け取りにくくなります。それ以外にも都市の占拠状況などにより修正が加わります。
さらに北朝鮮軍を苦しめるのは強力な国連軍の空軍力です。さながらヤーボに震え、日中移動がままならなくなったノルマンディー作戦直後の北フランスにおけるドイツ軍と同様に、北朝鮮軍は国連軍の強力な空軍力によって受け取ることができる補給ポイントの判定のダイスの目にマイナスの修正を受けるのです。これによりますます北朝鮮軍が受け取ることができる補給ポイントは減少(場合によればゼロになる)させられます。
さて、こうしてややこしい補給ルールを長々と説明したのは、このターンいきなり、補給が北朝鮮軍の足かせとなっていったためです。
北朝鮮軍のジレンマ
「集積所」をどう配置するか?
北朝鮮は選択を迫られます。
第2ターン、北朝鮮軍の西翼(黄海側)は、半島の平野部を南下し続け、さえぎるものも少ないため半島南端に達しようとしていました。一方の東翼では日本海側の街盈徳において、アメリカ軍精鋭2個連隊を包囲殲滅せんとばかりに攻勢をかけました。
また内陸の拠点大邸を目指して山間部へ続く街道沿いに北朝鮮軍の主力が展開していったのです。
つまり北朝鮮軍は南側と東側に大きく翼を広げ圧力をかけつつ、大田から大邸に続く街道沿いに主力精兵を展開していたのでした。
「集積所」を中央の主力近くに配置した場合、両翼の部隊までその補給ポイントは届きません。「集積所」から一定距離内にいない場合、補給ポイントの投入状況による効用を受けることができないのです。
やむなく北朝鮮軍は「集積所」を中央部に2、また次に攻勢をかける南部に1を振り分けます。この措置により東翼に対しては補給ポイントの供与は不可能となり、東翼にいる部隊で中央の「集積所」まで距離が届かない部隊ユニットはその戦闘力を額面1/2に低下點せざるを得なくなったのです。
国連軍による空爆
北朝鮮軍の補給を苦しめるのは長大な補給線の長さからくる補給能力の低下の他、国連軍の空爆による補給の妨害になります。
第2ターン以降、国連軍空軍戦力は増強され続けます。
補給妨害&交通妨害を行う空軍ユニットを配置する空域マップ。半島南部のエリアにB-29の線画が描かれた航空ユニットのスタックがあるが、これが道路妨害と共に補給妨害を行う国連軍航空ユニットになる。
B-29の右側のスタックが置かれた慶尚北道に至っては4個ユニットが積み上がったことにより、北朝鮮軍は道路移動を行うことができなくなるという交通妨害効果が適用された。山岳地で道路移動ができなくなるのは致命的で北朝鮮軍はほとんど機動ができなくなった。
馬山攻撃
北朝鮮軍は物資集積書を2ヶ所に分けて設置した。ひとつは主攻ラインとなる大田から金泉を通って大邸にいたる街道。もうひとつの小型の集積所は馬山攻略のため半島南に設置しました。
結果から言うと集積所を2ヶ所に分けるのは完全に失敗で、それぞれの前線の部隊をカバー範囲内に収めることができる一方で、集積所の規模が小さくなると補給ポイントを受け取ることができる確率が下がり、受け取ったとしても集積所の集積値が上限になるということから、全体から見ると受け取ることができる補給ポイントが下がるということなったのです。
さらには国連軍空軍による補給妨害からさらにダイスの目が悪くなるという・・。
それでも北朝鮮軍は南端に達した2個師団を馬山に突入させた。
ちょうど1個歩兵連隊しかない脆弱な状況に陥っていたのです。次のインパルスまで待つと必ず釜山から増援が到着し、突破は絶望的になるでしょう。今が攻撃の最大で最後のチャンスだったのです。
装甲ユニットによる攻撃の後、通常戦力でのオッズは3対1。国連軍は強力な地上支援を繰り出し、攻撃の成功確率はおおよそ1/2といったところでしょう。
北朝鮮軍による最後の攻撃は一か八かの状況でしたが、ここを突破できれば一挙に釜山に迫ることができたはずでした。
結果は失敗。ここに馬山攻撃は頓挫します。
その後、時間切れにより第3ターン終了時にゲーム終了。
国連軍は洛東江沿いに陣地を構築し、補給もままならない北朝鮮軍には突破するだけの戦力が集められそうにないと判断したのです。
ただこの国連軍の防衛線は本来は仁川上陸作戦に投入された部隊も含めて構築されているため、勝利ポイントとしては国連軍が保持している都市のポイント数+マップ上に投入していない部隊数とから計算すると北朝鮮軍優勢というところでした。
感想戦
最初、本ゲームのターンが1ターン=1ヶ月というスケールであることを知って、戦線が目まぐるしく流動的に変化する朝鮮戦争を描くことができるのか?と思ったものでしたが、今回プレイして見事に、朝鮮戦争の様相を描いていて感心しました。
国連軍が意図的に洛東江沿いに防衛線を引くことを意識していることもあってか、戦いはちょうど史実での戦争の推移に沿う様に進んだのです。この再現性の高さは見事でした。
また1ユニットずつ交互に活性化していく中で、北朝鮮軍の緒戦における急速な進撃を再現できていたし、なによりもどのユニットから活性化して、与えられた活性化ポイントをどのように組み合わせていくのか、という点がトリッキーなのですが、意図したような結果が出現した際の快感は格別でした。これだけでもこのゲームをプレイした価値があったというものです。
補給ルールは適用に勝手がわからず、北朝鮮軍は律儀に全軍が補給線の通常範囲内に収まるように展開しようとしたために、逆に非効率となった点は反省です。
補給網構築における北朝鮮軍にとっての正解は、もともと補給能力が低いため、むやみに集積所を分割することなく集中させることでしょう。
ユニット数も多くなく手頃な規模感です。確かにヘックスサイズが大きくなった関係で全部広げるとフルマップ4枚と場所はとりますがプレイはしやすいです。
良ゲームです。
(終わり)