「'65: Squad-Level Combat in the Jungle of Vietnum」(Flying Pig Games)を対戦しました。ベトナム戦争における分隊レベルの戦闘を扱った戦術級ゲームです。
前記事への追加
ゲームスケールについて
ゲームスケールは明確には記載されていません。ボックス裏に書いてあったりするのですが未確認です。歩兵ユニットの射程距離などから推察すると、1ヘックス=50メートル程度と戦術級で標準的なスケールではないかと思われます。
時間スケールも不明ですが、まぁこれも他の戦術級と同等とすると1ターン=数分といったところでしょうか。インパルス制で1ターンに実施できるインパルスの数は不定ですが、個々のユニットは1ターンに1回のみ活動できることからすると妥当なところではないでしょうか。
アメリカ軍とベトコンまたは北ベトナム軍の特徴について
ユニットに表示された数字だけを見るとアメリカ兵と、ベトコン・北ベトナム兵はあまり差がないように見えます。
通常の小銃装備の分隊の火力では前者が2で、後者は1ではあるのですが。
ジャングルにいる場合、ベトコン・北ベトナム軍はアメリカ軍ユニットに比べ、大きい地形効果を得ることができます。
こうした数値は攻撃判定の際に引くことができるカードの枚数に跳ねてきますので、たった1の違いでも影響は少なくありません。
数値以外での要素としては、ユニットに表示された「能力」が様々異なります。例えばアメリカの小銃分隊はグレネードランチャーを装備しているとされており、カードによってかなり頻繁に火力を増強させることができます。前回記事では迫撃砲は登場しないと書きましたが、グレネードランチャー装備として近接火力の差がでていました。もう一方のベトコン・北ベトナム兵の場合は白兵戦の際に用いる「強襲」という能力を持っています。
予備フェイズについて
前回記事ではそのターンアクションを行わなかったユニットが移動できるとさらりと紹介しましたが、けっこうクセがあるルールだと感じています。
敵ユニットから3ヘックス以内にいるユニットは対象外だったり、移動する場合も敵ユニットから3ヘックス以内にはいったところでストップしなければならないという制約はあるものの、この予備フェイズでの移動にはカードは不要であるため、移動できるユニットはすべて一斉に移動できることになるし、また移動途中に臨機射撃を受けません。
インパルスアクション中での活動をわざと控えめしておいて、この予備フェイズでいっせいに移動させるという手もありえます。
臨機射撃を受けないため、相手のLOS内の開豁地を悠々と移動させることができます。徒歩ユニットはまだ移動力が小さいため良いのですが、車輌は移動力があるため、予備フェイズの間に全く別の場所に移動して配置を変えることができることになります。正面に見えていた敵車輌が予備フェイズに移動して、いきなり側面に位置することになるとか、けっこう局面が変わりますよね。
プレイ
シナリオ2: By the Belt Buckle
お試しとしてシナリオ2をプレイ。
ベトコン(青色ユニット)は、マップ奥側の端からユニットを突破させるか、ゲーム終了時に一定数のユニットをアメリカ軍(緑色ユニット)がいるマップに存在させれば勝利。
ベトコンは最初、手札として得た「支援砲撃」を皮切りにアメリカ軍の右翼に圧力をかけ一部はアメリカ兵がいるヘックスにまで突入する。後続が続かなかったため撃退され、アメリカ軍の回復も早く戦線は崩せなかった(このあたりは最初だったので、お試しで攻撃をした部分もあったが)。
その後、アメリカ軍はシナリオ特別ルールで認められた「支援砲撃」を連続的に用いベトコンの気勢を削ごうとしたが、これはベトコンが得意の地形であるジャングルに籠もってやりすごしたため、空振りとなった。その後、両者は開豁地ヘックスを挟んだまま射撃の応酬を繰り広げた。
終盤近く予備フェイズにベトコンは全軍を持ってスタックを崩し、1ユニット毎に”ばらばらとなって”前進を始めた。アメリカ軍はこの”飽和突撃”に対応できず射撃戦の後、ベトコンユニットがアメリカ軍が守るマップに一定数生き残ったことにより、得点差によりベトコンの勝利となった。
最後に”飽和突撃”があるのを予想すると、アメリカ軍は拠点防御を行うのではなく、ゲームの早いうちから積極的にベトコンユニットの排除に務めるべきであったという反省。
シナリオ4:Clear(掃討)
アメリカ軍による掃討作戦を扱った作品。
アメリカ軍は、ジャングルがあるマップ内にいる北ベトナム軍を中央のマップからすべて排除するか、一定個数(9個)以上の同ユニットを除去すれば勝利。
車輌としてアメリカ軍にM48パットン 1両、M113 4両、北ベトナム軍にPT76 3両が登場。
全7ターン。
シナリオ4初期状態。
北ベトナム軍が広く展開しているのに対し、アメリカ軍は兵員輸送装甲車M113の乗ったままの兵も多く、部隊は集結して配置。
北ベトナムは両翼に対装甲攻撃力能力があるRPG班、要所に機関銃分隊を配置。
(後にRPGは、目標車輌に対して1ヘックス以内、最低でも2ヘックスまで近づかないと命中が難しいとわかる。ASLにおけるパンツァーファウストと同等といったところ)。
北ベトナム軍はアメリカ軍の歩兵に射撃を集中し、着実に1個ずつ減らしていく。アメリカ軍は兵員輸送車の機銃も加え北ベトナム軍の拠点を攻撃するが、ジャングルにこもった彼らはしぶとく(地形修正効果2は大きい)耐える。
第3ターン、北ベトナム軍の増援としてPT76 3両が登場した。
PT76は砲塔装備の兵員輸送装甲車だが、M113に比べると世代が新しいため、武装が強力(76ミリ砲装備!)で、機銃装備しかないM113クラスの装甲車が相手なら凌駕できるだけの対戦車戦闘力を持つ。榴散弾を装備しているため対歩兵戦闘にもよいという優秀車輌。ただ90ミリ砲を装備し、主力戦車として装甲もあるM48相手には手も足もでないだろう。
アメリカ軍は火力にものを言わせて積極的に北ベトナム兵の除去を試みるが、すでに遅く勝利条件を満たすことはは叶わなかった。
なお最終盤、車輌同士の戦闘で、M113が1両、PT76が1両失われた。
北ベトナム軍は最終盤、危うくなると背後のジャングルに逃げ込むという手があるため、バランス的には北ベトナム軍有利に見える。
感想
シンプルなルールで予想以上に楽しめました。
ゲームシステムについて
マップ上から高度の要素をなくした事で、視界判定(LOS判定)がかなり簡単になっているように感じます。士気チェックや指揮官が必要となる要素もありません。
潰走ルール*1がないため損害を受け動揺状態となったユニットは頻繁に敵の面前に取り残されます。相手方に近すぎるため、予備フェイズでの移動は不可能となるし、またインパルスアクションで移動しようとすると敵がすかさず迎撃します。
ユニット上に記載された「能力(特殊能力)」のシンボルマークがわかりづらく、使いこなすのはこのゲームのポイントになりそうです。
また予備フェイズが曲者なのは前述の通りです。
シナリオの舞台となる戦場は広くないため、ASLのように主攻・助攻といった複数の攻撃ラインをもった戦闘といった複雑な展開にはなりません。
1ユニットずつ移動させ、相手の臨機射撃カードを消費させ、切れたところで本格的に前進させるといった他の戦術級ゲームと同様のアプローチができそうです。
インパルスアクションの際には最大4枚のカードしか手元にないため、射撃をしたい時に「FIRE」カードがない、移動したい時に「MOVE」カードがないという状況が頻繁に起きます。このあたりカードドリブンゲームらしい面白さといえるでしょう。
プレイ時間は慣れれば1~2時間で収めることができるのではないでしょうか。
次回はより大規模なシナリオ、またはヘリコプターが登場するシナリオなどに挑戦してみたいです。
おまけ
同じベトナム戦争を扱った戦術級ゲーム。
ユニット規模は同じか、または「FRONT TOWARD ENEMY」のほうが小さいくらいだが、AARを読むと本ゲームとはかなり雰囲気が異なる印象だ。どちらかというと「FRONT TOWARD ENEMY」のほうがベトナム戦争っぽい印象がする。
(了)
*1:士気崩壊を起こした部隊が敵から離れるように強制的に退却させられるルール。例えばASLでは射撃を受け損害を被ったユニットは潰走フェイズで敵から離れた遮蔽物のあるヘックスに強制的に移動する