1980年代に起こり得た第三次世界大戦、欧州で激突した可能性があったアメリカ軍・ソビエト軍の戦いを戦術級クラスとして描いた、「ASSAULT」シリーズ。そのシリーズ第2弾にあたる「BOOTS & SADDLES -Air Cavalry in the 80's-」を対戦することになった。
ゲームの紹介
「ASSAULT」は当時、ホビージャパンが日本語版をライセンス販売していた作品シリーズだ。資料によるとシリーズ作品は全5作。うち日本語版が発売されたのは第2作にあたる本作までだった。
- ASSAULT アメリカ軍・ソビエト連邦軍
- BOOTS & SADDLES ヘリコプターの登場
- REINFORCEMENTS ポイントシステムの導入? 未導入ユニットの追加
- BUNDESWEHR ドイツ軍、工兵ユニットの登場
- CHIEFTAIN イギリス軍・オランダ軍
その後、GDW社自体がなくなってしまったためシリーズは打ち止めになったが、非商業レベルの有志によって1990年版、21世紀版(ASSAULT2000)、朝鮮戦争(第二次朝鮮戦争?)、中東戦争版、第二次世界大戦版などが作成されている模様だ。
http://www.myassaultpage.com/home.html
1ヘックス=250メートル、1ユニット=1個小隊(半個小隊規模のものもあり)と往年の、「Panzer Blitzs」「Panzer Leader」(以降、PB/PL)と同スケール、また1ターン=5分になる。
シリーズ1作目は純粋に地上ユニット、戦車・装甲車・兵員輸送車・歩兵・司令部などがユニット化されていた。本作はこれに攻撃ヘリ・汎用ヘリ、偵察ヘリ等の空中機動ユニットが登場する。空中機動ユニットの登場に伴い、地上部隊として対空装備の各種ユニットも追加された。
第二次世界大戦までとは異なり地上戦を描くにあたって、ヘリコプターの存在は抜きにして語れないということだろう。
シリーズ基本ルールは1作目を扱った記事にて紹介しているので参照してほしい。
ヘリコプターのルール
ヘリコプターは基本、空を飛ぶAFVという扱いになる。
シーケンスの変更
プレイのシーケンスが変わる。もともと地上ユニットは両軍とも各ターン毎に2回移動する機会があったのだが、これに空中機動(今回のヘリコプターの他、続編で追加された航空支援ユニット)が移動できるフェイズが1回ずつリアクション移動として追加された。
敵方の地上ユニットの移動に対応したリアクションを行うということのようだ。これによりヘリコプターは、1ターンに都合3回移動することができ、その移動力は前掲の「AH-64アパッチ」が22、「Mi-24」が21。シナリオ1「強行偵察」の舞台となるマップは次の通りでマップ半分の左側がアメリカ軍、右側にソ連軍が配置される。この左右のマップ幅は約60ヘックスになるため、1ターン分、合計3回の移動タイミングでフルに移動すると通過できてしまうことになる。
AH-64の速度は毎時300キロなので1分あたり5キロ。1ターンあれば25キロ(=100ヘックス)は飛ぶことになるので、60ヘックス(=15キロ)など1ターンで優に過ぎてしまうということだろう。
ヘリコプターの追加によりいくつかルールが追加されている。
過去のタクテクスの記事をあさっていると本作ヘリコプタールールの良い記事があったので、抜粋したい(タクテクス 1985年7月 No.22 P.4 進め!空中騎兵)。
移動
移動には「行軍隊形」と「戦闘隊形」がある。
「行軍隊形」では、1ヘックス=1移動力で移動可能(方向転換時は別)。
「戦闘隊形」では、1ヘックス=操縦性能値の数値分を消費。操縦性能値とは、ヘリコプターユニットの移動力(ユニット内の3番目の数字)の右肩に小さく書いてある数値だ。前出のAH-64アパッチの操縦性能値は「2」だが、Mi-24ハインドは「4」。
「行軍隊形」時は、アパッチもハインドもほぼ同じ移動力を持っているのだが、「戦闘隊形」になったとたんにハインドの移動力はアパッチの半分になることになる。概してソビエトの機体は操縦性能値が低い。
「行軍隊形」と「戦闘隊形」ではそれぞれ制約や実施可能な事が異なる。また「戦闘隊形」はさらにいくつかのステータスに分類されている。まとめたものが次の内容だ。
行軍隊形 |
行軍隊形移動 |
1ヘックス=1移動力 臨機射撃:✗ 臨機射撃を受けにくい ※1 |
戦闘隊形 |
戦闘隊形移動 |
1ヘックス=操縦性能値の数値分 臨機射撃:◯ |
遮蔽物下 |
臨機射撃:◯ 静止状態とみなされる ※2 視認・射撃されにくい |
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視認目的急上昇 |
盲目射撃によるレーザー誘導ミサイルのみ射撃可能 |
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射撃目的急上昇 |
静止状態とみなされる ※2 |
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自軍第1移動フェイズに移動したヘリコプター部隊は、その直後の敵軍空中機動リアクション・フェイズにMsl弾を用いた臨機射撃は不可 ※1 臨機射撃に必要となる視認後の移動距離が地上部隊の2倍となる ※2 静止状態とみなされたヘリコプターは、直接射撃を実施できる全ての火器の射撃対象となる |
着陸や離陸、下車と搭載、急上昇(視認目的と戦闘目的)、対空ミサイル、レーダー、レーダー誘導ミサイル、赤外線誘導ミサイル・・といったヘリコプターの機動、また対空戦闘に関するルールが追加された。
ユニット
ユニットとしては、アメリカ軍にヘリコプター、OH-58 、AH-1コブラ、AH-64アパッチ、UH-60 ブラックホーク。陸上ユニットとしてM-60A3*1、M-988 サージェントヨーク*2。
ソ連軍には、Mi-2、Mi-8、Mi-24ハインド、Mi-26、T-72、ZSU30、SA-9など。
シナリオ
「戦場の霧」を体現した「ASSAULT」のシナリオ
前作「ASSAULT」のシナリオ設定は特異で、それぞれ「威力偵察」「遭遇戦」「反撃」と名付けられたシナリオではまず設定や両軍の勝利条件が定められている。両軍戦力はそれぞれのシナリオ毎に6パターン用意され、チットを引いて決めるが、シナリオの最後までその内容は相手に知らされない。
大軍なのか、寡兵なのか、どのような編成か、尖兵である偵察部隊編成なのか、戦車大隊の主力なのか?実際戦ってみなければ相手の軍容がわからないことになる。
多くのウォーゲームが「戦場の霧」を謳っている割には、敵の戦力や配置、増援などまでゲームスタート時にわかってしまっているものは少なくない。敵情が不明で、偵察や接敵によって情報を得るしかないという状況は、実際プレイしてみるとこれほど興奮するシチュエーションはない。
本作は「ASSAULT」のシナリオの拡張版という構成
本作のシナリオも「ASSAULT」のシナリオを踏襲している。
「ASSAULT」では両軍の編成を選定するチットが6種類であったのに対し、今回これに6種類が追加され合計12種類になっている。つまり自軍の編成が12パターンに敵軍の編成が12パターンとなったということだ。
追加された7~12のチットによる戦力には地上兵力にヘリコプター兵力がくみあわされれた編成になっているようだが、ASSAULT側の1~6のチットで選ばれる戦力は、「ASSAULT」の編成が踏襲されるため基本的に地上ユニットだけの編成だ。つまり組み合わせによっては、いずれかの軍のみが航空戦力(=ヘリコプター)を持っていることになる可能性があることになる。
さすがに1~6のチットによる戦力には、本作から追加されたような対空ユニットがないため、1~6チット分については対空部隊が追加された。
プレイ前からワクワクしてしまうような状況だ。
「ASSAULT」では地上兵力のみに注意を振り向けていればよかったところを、突如、登場する攻撃ヘリや、汎用ヘリによって輸送されるヘリボーンなどもありえる。対空兵力をどのように展開するのか、複雑化・立体化したシチュエーションがどのような展開を見せるのか・・
ご参考
ベトナム戦争を扱った戦術級ゲームにもヘリコプターは登場していることがある。例えば、「FRONT TOWARD ENEMY」(MMP)がそうだ。
詳しく分析したかったが、時間がないため省略。
(つづく)