Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム

「THEIR FINEST HOUR」(GDW)を対戦する(4)(完)海戦シナリオ

「THEIR FINEST HOUR」は1940年のドイツとイギリスの間で戦われたバトル・オブ・ブリテンと、その後のドイツによるイギリス本土への侵攻計画を扱っています。

前記事で扱った空戦シナリオとあわせて「タクテクス」No.17に掲載されていた海戦シナリオを対戦しました。

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海上ルール

エウロパシリーズ共通のスケールとして、大型艦は1隻=1ユニット、駆逐艦水雷艇などの小型艦は1~4隻で1ユニットになっています。水上艦艇だけではなく潜水艦や機雷といったルールもあるのですが、今回は水上艦艇のみが登場します。

艦艇ユニットは通常のヘックスマップではなく、港と、海域ディスプレイという簡易マップを用います。海域マップはイギリス・アイルランド周辺・北海・ノルウェイあたりまでを含んだ海域を13のエリアで仕切ったもので、艦艇ユニットはこのエリアを移動します。ただ1ターン=2週間というタイムスケールのため、艦隊の索敵/発見といった手続きがルール化されている訳ではなく艦艇の位置を示すだけのものです。

同一海域に両軍の艦隊が存在した場合、海戦が、また艦隊が位置する海域に航空ユニットが存在した場合は、空対艦の戦闘が発生します。

艦艇同士の戦闘は単縦陣をとった両軍の艦列が互い撃ち合う処理になります。イメージとしてはエポック/国際通信社の「日露戦争」の上級ルールにあった個別艦ユニットを用いた戦闘ルールを複雑にしたような仕様になっています。

艦艇ユニット

艦艇のスペックはユニット表面・裏面の他、別に用意されている記録シートと3箇所に分散して記載されています。

  • 防御値   ユニット表面左上
  • 艦艇タイプ   ユニット表面右上
  • 対空力-雷撃力  ユニット表面左下
  • 速度  ユニット表面右下
  • 砲撃力(長-中-短) ユニット裏面
  • 耐久力  記録シート

 

アドミラル・グラフ・シュペー

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艦艇タイプ:CS(装甲艦:和訳はポケット戦艦になっている)

砲撃力  4-2-0

耐久力 3

ドイッチュラント級装甲艦(ポケット戦艦)3番艦。1939年9月より南大西洋やインド洋で通商破壊作戦に従事。1939年12月ラプラタ沖海戦にて損傷を受け、中立国であったウルグアイの港に逃げ込むがイギリス艦隊に包囲され、港外にて自沈。12,100トン、28.5ノット、28.3cm3連装砲2基、15cm単装砲8基 他。規模・実態としては重巡洋艦クラスであり、後に(本艦喪失後)同クラスは重巡洋艦にクラス変更されている。同型艦はドイッチュラント(後にリュッツォウに改名)、アドミラル・シェーア。
本ゲームの対象期間以前に喪失している艦ではあるが、「ドイツ海軍の損害が軽微だった場合」という選択ルール(if設定)により登場するため、ユニット化されている。
なお本シナリオでも同様の考えにより登場。

 

空対艦戦闘

水上戦闘に先立って航空ユニットによる爆撃を解決します。

  • 艦隊の護衛機による空戦の解決
  • 艦艇の対空砲火の解決
  • 爆撃機による艦艇に対する爆撃(雷撃含む)

対空砲火の解決の際は目標となっている艦艇の対空砲火にもう1隻(例えば防空艦)の対空砲火を合算することができます。
爆撃を行う航空ユニットは爆撃を3回行うことができます。

海上戦闘

砲雷戦時の距離は遠距離・中距離・短距離・雷撃距離の4種類があります。
海戦は必ず遠距離から始まり、 次のラウンドにどちらかのプレイヤーが距離を詰めることを宣言すると砲戦距離が移行します。短距離になると雷撃が可能となり、さらに雷撃を宣言すると雷撃を行う艦艇は雷撃距離まで接近することになります。

砲戦時の砲撃力はその時点の砲戦距離をカバーできる砲撃力を用います(砲戦距離が中距離のラウンドでは、上記のシュペーの場合、砲撃力4と2との2回砲撃を行うことができる)。

砲戦の解決は、砲撃力から防御力をマイナスした数値によってダイスを振ることになります。このため砲撃力が弱い艦艇が防御力が高い艦艇(戦艦等)に有効射を行うことは難しくなります。小型の艦艇が防御力が高い艦に勝つ手段としては雷撃くらいになってしまうのです。

各艦艇は耐久力をもっており、戦艦は4程度、重巡洋艦3、軽巡2、駆逐艦水雷艇1などとなっています。命中が発生する毎に耐久力を減らし、1/2の耐久力を失ったところで「大破」状態となり、砲撃力・雷撃力・対空砲火などの戦力が1/2になります。

 

海戦シナリオ

海戦シナリオのシチュエーションは、ドイツ軍のイギリス本土上陸作戦当日の海戦を描くとされていますが、ドイツ軍の戦闘序列は「ドイツ空軍が史実の3倍、海軍が史実の2倍の戦力」の規模になっているということで、完全に架空レベルです。

ドイツ空軍の爆撃機隊の規模は、シナリオ1(空戦シナリオ)のスタート時とほぼ同一であり、バトル・オブ・ブリテンのスタート時の戦力がそのまま維持されていたという規模です。対してイギリス空軍はこのシナリオでは一切登場しません。

海軍についてはノルウェー作戦(駆逐艦を多く失った)やそれ以前の海戦で失われた艦艇が登場しています(せっかく登場させるのであれば、ビスマルクも登場させてもよかったのではないの?と思わないではないですが)。

 

プレイ

輸送艦隊を護衛したドイツ艦隊が外洋に出撃、そこをイギリス艦隊が迎撃に向かい遭遇戦が発生します。艦隊戦に先立ち、イギリス艦隊がドイツ空軍による空襲を受けるところから開始します。

ドイツ空軍による空襲

ドイツ艦隊の構成ではイギリス艦隊の戦艦にうまく抗しえません。よってドイツ空軍の攻撃は戦艦とそれに準ずる大型艦を最優先目標に実施されました。 
全52ユニット(2000機!)に及ぶ攻撃により、海戦に先立ちイギリス艦隊は戦艦4隻のうち、ネルソン、レゾリューション、バーナムの3隻を失い、無傷なのはロドネイだけになります。巡洋戦艦3隻のうちフットが大破します。

冷静にみると52ユニットの攻撃で損害はそれだけ?という印象です。ちなみにマレー沖海戦で攻撃に参加した陸攻隊の機数は90機弱ですので、ユニット数に換算すると2ユニットというところですね。

プレイのときには対艦艇戦闘において爆撃を3回行うという記述を見落としていました。この際のプレイでの結果は爆撃1回の結果ですので、後2回攻撃を行っていた場合は大型艦は全滅近く、また耐久力に劣る巡洋艦隊もかなりの損害がでたものと思われます。

遭遇

重巡洋艦以下のクラスの艦艇は両軍とも遠距離砲力を持たないため、遠距離での砲戦には戦艦相当クラス以上の艦艇しか参加できません。

空襲で大きく数を減らしたイギリス艦隊は、戦艦ロドネイ、巡洋戦艦フット(大破中)、レナウン、レパルスの4隻。対するドイツ艦隊は、巡洋戦艦グナイゼナウシャルンホルスト旧式戦艦シュレジエン、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン、装甲艦(ポケット戦艦)リュッツォウ、アドミラル・グラフ・シュペーの6隻。

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Mさん自作のシートとマーカー(大破マーカー、数字マーカー等)。手前側がドイツ軍艦艇。左手から大型艦が並ぶ。同じユニットが何度も戦闘(ダイス振り)を行う海戦の場合、空戦よりもマーカー類の必要性が増します。

 

砲数に勝る(1艦=1回は攻撃できるのでダイスを振る数が増える)ドイツ艦隊が着実に命中弾を与え、フット撃沈、ロドネー、レパルス大破、対するドイツ艦隊も命中弾を受けているものの重大な損害はシュレスヴィヒ・ホルシュタインの大破にとどまっています。

乱戦

戦闘に参加する艦艇数が少ない不利を避けるためイギリス艦隊は間を詰め、両軍とも戦艦隊を追ってきた巡洋艦の戦隊が戦闘に参加。砲戦距離は1万~2万メートルの中距離に移行します。

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大型艦を失ったイギリス艦隊は急速に形勢を悪化させます。巡洋艦クラスの砲では戦艦クラスの艦艇へ損害を与えるのは難しいため、イギリス艦隊の反撃はドイツ艦隊の巡洋艦艦隊に集中しています。

 

イギリス艦隊は最後の切り札である雷撃を行うためさらに距離を詰めます。艦隊の後方に控えていた駆逐戦隊の駆逐艦39隻が一斉に雷撃戦ポジションに移動します。対するドイツ艦隊も水雷艇隊全36隻が雷撃準備に入ります。

雷撃を宣言して実際に発射する前に砲撃フェイズがはいるため雷撃を行う艦艇は砲撃を浴び、次々と落伍します。それでも残った艦艇が魚雷を放ち、今度は大型艦艇側に損害が続出します。

日本海軍の艦艇と異なり、ドイツ艦・イギリス艦とも予備魚雷を搭載していないようで(未確認)、クラスによらず雷撃1回だけとされています。

1923型水雷艇メーヴェ級)

f:id:yuishika:20210102131809p:plain ヴェルサイユ条約下で建造されたドイツ海軍の水雷艇(建造時は駆逐艦とされたが、後に艦種変更された)。基準排水量924トン、10.5cm単装砲☓3、3連装500mm魚雷☓2、他。同型艦12隻。開戦間際に事故で1隻喪失、大戦中に全隻が戦没した。

 

雷撃の終了後もドイツ艦隊の巡洋戦艦等の大型艦を崩せなかったイギリス艦隊は撤退を宣言します。

撤退の宣言後、2ラウンド戦闘は続きます。

この撤退戦でドイツ艦隊は残していた駆逐艦24隻の雷撃を行い、イギリス艦隊の残っていた巡洋艦も壊滅します。イギリス艦隊は残る雷撃能力を要する艦艇による雷撃で反撃しますが、体勢を覆すまでには至りません。

イギリス艦隊を壊滅させたドイツ艦隊は輸送艦隊を上陸地点に導きます。

 

感想

ドイツ軍の趨勢は最初の爆撃によりイギリス艦隊の戦艦・巡洋戦艦をどれだけ減少させることができるかにかかっています。艦隊戦にはいるとクラスが下の艦艇が大型艦を撃沈させることは難しくなります。
今回はイギリス艦隊が大型艦を失った不利な状況を覆すことはできませんでした。Mさんによればダイスの目次第でどちらにでも転ぶということでした。
ただ対艦爆撃にあたって「爆撃は3回」と言うルールを用いると空軍優勢の状況を覆すのはかなり難しいように思います。

艦隊戦のルールは基本、ダイスゲームで、振る回数は多いですがこれはこれで盛り上がります。特に距離を詰めていき、雷撃戦になるとまさに乱戦状態になります。どこで事故が起こるかわからない状態です。
Mさん自作マーカーが大活躍で、煩雑な各艦のステータスをわかりやすく状況を整理しながらプレイを継続できたことは大きかったです。

 

さてこの海戦シナリオ、考案したタクテクスの記事の著者も文中でドイツ軍が史実の数倍の戦力を有しているとする設定は「ヒストリカルシミュレーションゲームに許されるifの枠を踏み外している。」とくどいくらいに書いています。

逆に考えると、ドイツ軍がそれだけの戦力をもたないとイギリス本土上陸という状況にはなりえなかったという証明になっているように感じました。

 

 

 

 

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