Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

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「THEIR FINEST HOUR」(GDW)を対戦する(3)空戦シナリオ(続き)【訂正】

「THEIR FINEST HOUR」は1940年のドイツとイギリスの間で戦われたバトル・オブ・ブリテンと、その後のドイツによるイギリス本土への侵攻計画を扱っています。
前記事にて開始した空戦シナリオの続きです。

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プレイ(承前)

第2~第3ターン

航空戦で優勢をとっても、一律に判定を強いる対空砲火により一定の損害が発生することがはっきりすると、ますます一定以上の損害を与えるには爆撃目標の集中が必要と感じました。

さらには各ターンの最初にある増援フェイズにおいて、イギリス軍は受け取った装備ポイントを用いることにより、レーダーサイトなどが受けた損害を修復できるのです。かろうじて与えた損害もうかうかしていると修復されてしまうという・・。
さらにはレーダー網を無効化するには5ヶ所のレーダーサイトのうち4ヶ所を破壊しなければならない・・という。これって結構無理ゲーではないか?

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欧州大陸側のマップ上で裏返しになっているドイツ軍ユニットは、前ターンに損害を受けて回復中の部隊です。

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Mさんが考案自作したシートと大量のマーカー。これで大量のダイス振りとその結果も整理されてスムーズにゲームの進行ができた。オリジナルゲームではこのあたりの手当ては全くなされていない。
写真に写っている状況としてはイギリス南部のあるレーダーサイトへのドイツ空軍の爆撃に対して、イギリス軍の迎撃が行われているところ。イギリス軍側の迎撃機の数がドイツ軍の護衛機の数を上回っていた事から、護衛機をふりきったイギリス戦闘機隊が爆撃機本隊に襲いかかり(シートの右下の欄)、爆撃機隊にも相当の損害(赤いマーカーが撃墜、オレンジは損害を受けて強制帰還)が発生しているところ。ただ爆撃機隊の反撃で、イギリス側もブレニム夜間戦闘機型やディファイアントといった弱い戦闘機が逆に返り討ちにあっている。昼間爆撃にも関わらずブレニムやディファイアントといった夜間戦闘機が出撃しているのは、ドイツが夜間爆撃を行っていなかったため、全力出撃したということだろう。

 

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ボールトンポール・ディファイアント
不格好な事で知られる戦闘機。単発2人乗りだが固定射撃兵装の代わりに7.7ミリ機銃4丁の動力旋回銃塔を後部座席の後ろに背負っている。来襲した敵爆撃機に対して横や下から撃ち込もうというコンセプト。
実際は爆撃機が単体で来襲する訳ではなく、戦闘機も随伴して来襲するため手も足も出なくなった。フランス戦でその欠点が露呈し、バトル・オブ・ブリテンの時期には夜間戦闘機として使われることが多かった。単発、2人乗り、7.7ミリ機銃☓4
ゲーム内では戦闘力こそハリケーンと同等だが、防御力が弱いため相手が爆撃機でも容易に撃墜されてしまうことがある。

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ブリストルブレニムMk.1F
もともと旅客機として開発されたが高速性を買われて爆撃機となり、さらには夜間戦闘機にも改造された。本機はその夜間戦闘機版。双発、3人乗り、7.7ミリ機銃☓5
ゲームには爆撃機型はじめサブタイプ複数種類が登場する。

 

第3ターンについても大きく進展はなく、レーダーサイトは2ヶ所まで破壊できたものの、レーダー網の無効化までは進みませんでした。イギリス軍は執拗に本土側のドイツ軍拠点に対して爆撃を繰り返しますが、夜間戦闘機はごくわずかしか保有していないドイツ軍に有効な反撃手段がありません。

得点計算としては、得点差はほぼなく引き分けという結果になりました。

 

感想

エウロパシリーズ自体は陸戦主体にルールが組み上げられていることからすると、今回の空戦シナリオはサイドメニューだけでゲームをしたようなものでしょう。

まずはほめよう

良い方から言うと、サイドメニューとはいえ、それなりにゲームにはなっていたということ。今回は固定施設に対する爆撃任務を主に使うことになりましたが、爆撃目標は地上支援や交通妨害といった通常の作戦級ゲームに登場するようなものから、艦船への攻撃、都市に対する攻撃などなど目標の性質にあわせたルールが用意されていますし、空輸や空挺降下といった爆撃以外の任務についてもルールが用意されています。

爆撃任務の処理についても、パトロールのチェック、迎撃機の配置(対護衛機か対爆撃機か)、空中戦、対空砲火、さらには爆撃の成否に至るまで段階を踏んで1ユニットずつ処理(ダイスを振る!)を行うようになっており、双方のプレイヤー間での若干の駆け引きや、それぞれの段階における結果判定のダイス振りも盛り上がります。

ただこれを陸戦主体のゲーム(未プレイですが、例えば「フランス崩壊(The Fall of France)」や「FIRE in the East」)の中で毎ターンの航空フェイズの中で実施していくのはこれはこれで大変だろうな、という印象。

充実の航空機ユニット

登場する航空機ユニットは、主要な機種だけではなくマイナーな機種、さらには細かなサブタイプも異なるユニットになっており、軍用機ファンとしては眺めるだけでも楽しめます。
例えば、ユンカースJu87シュトゥーカは、主力であったB型の他、ノルウェー侵攻用に開発された航続距離延伸型のR型。主力爆撃機ハインケルHe111についてもメジャーなH型の他、P型(P型とは何ぞ!)といったマイナーなタイプまで独立したユニットになっています。シュトゥーカ登場以前の主力急降下爆撃機、どちらかというとスペイン内乱時のほうの印象が強い複葉のHs123も少数ながら登場。主力戦闘機メッサーシュミットBf109はバトル・オブ・ブリテン時の主力のE型の他、名発動機DB601搭載前の機体であるD型も別にユニット化されています。
夜間戦闘機も充実しており、ドイツ軍ではメッサーシュミットBf110D型*1、同じく急降下爆撃もできる爆撃機ユンカースJu88の夜間戦闘機タイプのC型、イギリス軍側はブリストルブレニムMk.1の夜間戦闘機型、さらにMk.1にエンジン換装、武装強化を施した同Mk.4が登場。後部座席に4丁の機銃を収めた銃塔を搭載した駄作機体として有名なボールトンポールデファイアント夜間戦闘機として登場しています。
イギリス軍の爆撃機攻撃機は略称だけではこれなんだっけ的なものも混じっていて写真と名前が一致しないくらいの種類が登場しています。ウェリントン、ホイットレー、ブレニム、ボーフォートあたりはよくても、フェアリーバトル、ハンプトンハンプデンとくるともうよくわかりません。またそれぞれにサブタイプが異なるユニットが用意されていたりします。A-22という機体があり正体不明だったのですが、アメリカ陸軍が採用しなかった機体を輸入したものではないか・・と。この機体についてはマーチン・メリーランドという名称も含め、詳細不明。

さて・・

今回ドイツ軍の攻撃は毎回3ヶ所程度に戦力を集中した上で実施されました。航空優先をとらなければ迎撃機を撃退できず、爆撃機の安全が確保されないためです。
このような極度の戦力集中状態がバトル・オブ・ブリテン的かと言われるとそうではないのではないかというのは前記事にも書いた通りです。

現在のゲームシステムでは目標をばらすように働く動機が弱いです。
なによりも迎撃を行う側が、爆撃を行う側がどこにどれだけの戦闘機や爆撃機を送り込んだのかを確認した上で、迎撃機を出撃できることを考えると、攻撃側はひとつひとつの攻撃隊の護衛機をそれなりに厚くしておく必要があるでしょう。となると攻撃目標は絞り・・と考えてしまいます。
対空砲火で全体の半分以上の爆撃機が追い返されること、目標に与えた損害が次のターンに修復される可能性があることを考えると、一定以上攻撃を集中して、有効打を集中することにより一度に修復不可能な状態まで破壊せざるを得ないことも、戦力集中の動機になっています。

もっと目標をばらして、多くの攻撃目標を同時に攻撃するようなスタイルに変えればどうなるかという気もしますが、イギリス南部のように、飛行場と、また配置された航空部隊の数の密度が高い場所では(+ドイツ軍機の航続距離が短く攻撃範囲が限定される)、どうやっても同じ問題にあたる可能性が高いように感じます。

一度くらいプレイしただけで語るな、と言われそうですが・・

しょせん1ターン=2週間という時間軸は陸戦を描くためのもので、実際の出撃~攻撃というサイクルが数時間~せいぜい半日といったサイクルで行われる航空戦を描くにはおおざっぱすぎるということでしょう。
その割には、本ゲームは雰囲気を感じることができるくらいにはがんばっていると言ってもよいかもしれません。

「レーダーサイト破壊できないんじゃない?」問題は、もともとレーダーサイト&レーダー網は壊れにくいデザインになっていて、ドイツ軍としてはもっと異なる目標、例えば飛行場や都市を攻撃するべきだ、というデザイナーの主張なのかもしれません。そうなると、イギリス軍も対空ユニットの配置を分散せざるをえず、「対空砲火強すぎるんじゃない?問題」も低減されるかも・・。

実はバトル・オブ・ブリテンは、エポック社バトル・オブ・ブリテン」のトラウマがあり、あまりゲームの題材としてはあまり良いイメージはありませんでした。ただ今回、本ゲームをやって、今度はバトル・オブ・ブリテンそのものをデザインした作品に取り組んでもよいかな、という気になりました。

また本ゲームについては、ユニットを眺めるだけでもおもしろいことに気づきましたので、他のエウロパシリーズ作品もそういう視点で見てみてもよいかな、という気になっています。

 

次回は海戦シナリオを紹介します。

 

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*1:ユニットはD型とありますが、当時のBf110の夜戦タイプをD型とするのが適当かどうかは少々不明です