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「The Lamps are Going Out : World War Ⅰ」(Compass Games)を対戦する(1/3)

欧州を中心とした第一次世界大戦を扱う戦略級ゲーム「The Lamps are Going Out」(Compass Games)を対戦しました。*1
4人プレイまでできるのですが、今回は2人プレイです。
希望ベースで、当方はイギリス・フランス・ロシア・アメリカ、Yさんがドイツ・オーストリア・トルコを担当しました。

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ゲームの内容

プレイヤー

1~4人プレイ。4人プレイの場合は下記の4勢力ですが、2人プレイの場合は1&4 VS 2&3となります。*2*3
各ターンにおけるプレイの順番も以下の順番で毎ターン固定です。2人プレイの場合も、4勢力は個別にプレイされます(ドイツとオーストリア他を受け持つプレイヤーも、次の4つのプレイヤーターンにきちんと分離してプレイされます)。

  1. ドイツ
  2. 三国協商(イギリス・フランス・イタリア・ベルギー)
  3. 東側連合(ロシア・セルビア・東欧中小国)+アメリ
  4. 中部連合(オーストリア・トルコ・他中小国)

エリアマップ方式

1ターン=3ヶ月

陸上ユニットは抽象的な規模ですが、軍団以上軍未満といったところでしょうか*4
他に艦隊、Uボート、航空機、戦車、重砲、塹壕などがマーカーやユニットとして登場しています。

マップは欧州全区域を中心にイラクやシリアといった近東、また独英の派遣軍が戦闘を行った東アフリカ(左下の枠内)が含まれています。また左上にはアメリカ合衆国のボックスや、Uボート出撃のボックスなどが配置されています。

Tim Allen Map

 

ゲームシーケンス

4つの勢力はそれぞれのプレイヤーターン内に次の手続きを行います。

  1. イベント(カード)
  2. 移動
  3. 戦闘
  4. 生産
  5. 技術(カード)

 

戦闘

陸上ユニット

移動フェイズで陸上ユニットは、1ターンにユニット2個のみ移動可能です。移動可能なユニット数が少なく見えますが、戦線になるエリアに配置された後は、基本は戦闘後前進で移動していくという考えのようです。
この移動フェイズでの移動にあたっては、移動距離の制約はありません(経路が繋がっている必要はあります)ので、戦略移動ということなのでしょう。

西側連合国(三国協商アメリカ)は海上移動が可能です。イギリス軍は唯一強襲上陸を実施できる能力をもっているため、ガリポリ上陸が再現できます。

戦闘はエリアから隣接するエリアに対する攻撃として表されます。
陸上ユニットには戦闘力などの数値情報はなくいずれの国の軍隊も戦闘においては同等です。国毎の実力差は、補給能力(=回復力)、また最大動員できるユニット数によって差がつけられています。

戦闘は非常に簡単で、攻撃側は攻撃を行うユニット1個を選び、攻撃側・防御側双方は1D6を振ります。大きい目が出た方が勝利です。同値の場合は攻撃側は勝利。攻撃を行った側は必ず「消耗状態」になり裏返します。
攻撃側は同じエリアにまだ攻撃を行っていないユニットがいれば攻撃を続行することができます。
防御側のユニットが全て「消耗状態」になった状態でさらに損害が出ると防御側はエリアから撤退する必要があります。

いくつか第一次世界大戦らしいユニット/マーカーが登場します。

塹壕は、設置すると防御側ユニットと同じように扱われ、最初に損害を受けるユニットになります。攻撃が終了すると消耗状態になった「塹壕」はそのまま正常状態に復帰(!)します。
例えば2つのエリアから攻撃を受けているエリアに塹壕があった場合、最初のエリアからの攻撃で消耗状態になったとしても、最初のエリアからの攻撃が終了すると、その時点で正常状態に復帰するのです。2つ目のエリアからの攻撃に際しては、「塹壕」は正常状態で攻撃を受けることになります。
塹壕」ユニットの驚異的な回復力は実際のプレイの中で、両軍とも攻撃側となった際に、防御側に「塹壕」が配置されていた際に、散々苦汁をなめさせられることになります。

「重砲」は技術カードにより配置されるようになります。通常戦闘時の1D6のダイスを、2D6とすることができ、2個のダイスの目のうち大きいほうの目をその戦闘に適用することができるということで、非常に強力なユニットです。
技術カードにより「対砲兵射撃」が可能になると防御側としても使うことができるようになります。
「戦車」三国協商側だけにこれも技術カードにより登場させることができるようになります。「戦車」が攻撃に参加すると塹壕を1個無効にできます。

同じく技術カードにより、ドイツ軍にだけ登場する「突撃歩兵」の場合は、ダイスの振り直しが2回(!)もできるようになります。

いずれも「塹壕」をベースに築かれた堅牢な陣地を突破させるための強力な武器となるでしょう。

 

海上ユニット

海上ユニットには艦隊とUボートがあります。
艦隊をもっているのはドイツ軍とイギリス軍だけですが、イギリス軍艦隊が海上封鎖の位置にある時はドイツ軍はイギリス艦隊を排除しなければ外洋に出ることはできません。

艦隊同士の戦闘も簡単です。
艦隊ユニット数分のダイスを振り、「1」であれば1ステップ、「2」であれば2ステップの損害を相手に与えることができるというものです。
ゲーム中に登場する艦隊は、ドイツ艦隊(大洋艦隊)が2ユニット、イギリス艦隊が3ユニット*5、後に参戦後アメリカ艦隊が1ユニット追加されます。
艦隊ユニットが置かれるのは、ドイツ艦隊であればキールあたりに描かれたボックス、イギリス艦隊はスカパ・フローあたりに描かれたボックスか、またが外洋とし北海付近のボックスのどこかにしかいけません。

ドイツ艦隊はキールを出撃すると、封鎖を行っているイギリス艦隊と艦隊戦を行うことになります。基本的には戦闘解決ルールから艦隊ユニット数が多いほうが有利な訳ですが、ルールから考えると、ドイツ艦隊にだけ有利な目が出た場合、”事故”が起きる可能性は十分にあります。
ただし現実と異なり艦隊はすぐに生産(再建)できるためその優位性は一時的なものに限定されそうです。

Uボートハーグ条約下の通常の攻撃状態と、無制限攻撃状態とがあります。当然のことながら無制限攻撃状態ではよりイギリス軍の補給状態に影響を与えることができる一方、アメリカの参戦を早めることにもつながります。

Uボートによる通商破壊作戦と対抗する対潜攻撃は特別な結果判定表を用いて解決されます。通常の攻撃か無制限攻撃状態かの違い、また対潜兵器の発展によりそれぞれ成功率は異なり、通商破壊戦が成功するとその分、イギリスの生産ポイントが減ります。

 

生産

各国は生産ポイントを持っています。生産ポイントはマップ上に配置された工場地帯に記述されたポイントに裏打ちされています。
生産ルールも単純なもので、1ポイントを使うとステップロスを修復できる。2ポイント使うと除去されたユニット、または新規動員したユニットを登場させることができます。簡単です。

例えば同じ欧州を舞台にした「第三帝国」(AH)では、ドイツの生産力は150ポイントとかそういう桁数の数字でしたが、本ゲームの生産ポイントは、ドイツ12ポイント、イギリス7ポイント、フランス4ポイントと大きな数字ではありません。
よってゲーム中、これらの少ないポイントを自国軍の強化や回復に使う、または同盟国への援助として使うなど考えて使っていく必要があります。なお本ゲームにおける生産ポイントは次ターンへの持ち越しはできませんので、毎ターン全ポイントを使い切る必要があります。

同盟国に対しては生産ポイントの援助が可能です。
特にドイツはトルコ、またはたまにオーストリアに対して、イギリスはロシアに対して、などこれらの国の勢力を維持していくためには頻繁にポイントの援助を行っていく必要があります。
仮に4人プレイの場合、これらの勢力のプレイヤーは絶えず、ドイツプレイヤーやイギリスプレイヤーに絶えず生産ポイントの融通をお願いしていかなければならないでしょう。

 

カード

イベントカード

毎ターン、ドローするカードとしてイベントカードと技術カードがあります。技術カードをドローできるのは、1.ドイツ、2.三国協商のみになります。

イベントカード、技術カードともそれぞれの勢力専用の内容になっています。

ドローしたカードは即発効します。ドロ-したカードを手札として保持して使い所を考えるといったカードプレイは生じません。

イベントカードは実際の発生年毎に分かれており、年が変わる毎に新しいイベントカードが山札に追加されていきます。カード枚数は多くの枚数がある訳ではなく、1年で引ききってしまう程度枚数+数枚程度ですので、ほとんど全てのカードがゲーム中発生するということになります。発生する順番のみが変化する要素になるといったところでしょうか。

大戦期間中に参戦した各国も基本はイベントカードにより参戦します。
アメリカだけは参戦ポイントというパラメーターが用意されており、イベントカードによりこのパラメーターが上下、あるポイントに達すると参戦となります。

 

技術カード

技術カードはその名前の通りWWⅠ中に起こった様々な技術革新がカード化されています。飛行機、毒ガス、重砲、対砲兵射撃、対潜兵器(Qボート)、戦車、突撃歩兵などなどです。
特に飛行機の扱いは面白く、技術レベルによって3段階にレベルアップしていきます。最初は「航空偵察」ということで双方の偵察を行う(地上戦で若干有利になる)程度だったものが「同軸機銃の開発」「戦闘機隊の編成」と発展していき、毎ターン双方で航空優勢をダイスにより判定するようになっています。もちろん航空優勢を得た側は、地上戦での優位を得ることができるのです。

 

AAR

初期配置

初期配置位置は決まっています。各軍とも所定のユニットを配置します。この時点で各国の生産ポイントも決まっています。

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1914年秋開戦時の状況(初期配置)

 

1914年秋

ドイツ(グレーのユニット)

第1ターンの特別ルールによりシェリーフェンプランが発動します。ドイツ軍は強制的にベルギーエリアに攻撃を行う必要があるのですが、ダイス振り直しが「2回」もできるというものです。
ドイツ軍は、振り直しすることもなくベルギーエリアにいた三国協商軍ユニットを退け、占領します。これによりベルギーは早々と降伏し、ベルギー軍は1ユニットを残し除去されます。
ドイツは東部戦線でも進撃を開始します。
ロシア領のブレスト・リトフスク地域に侵入。ロシア軍を撤退させます。

支配下にある敵国エリアに陸上ユニットが存在しない場合も、侵入した場合、「守備隊」と戦闘を行う必要はあります。当然、弱いです。このため陸上ユニットが配置されていない敵国エリアは”無人の野を征く”ように進撃できるわけではありません。

ドイツ大洋艦隊はキールを出港し、スカパ・フロー泊地を根拠地に封鎖を続けるイギリス艦隊に挑みます。結果、ドイツ艦隊の一方的な損害により撤退しました。

ドイツ軍は急速に西部戦線塹壕を展開します。

塹壕」マーカーは各国で使用できる数に限りがあります。国力が弱い国は概して塹壕を設置できませんし、設置可能数が限定されます。
ドイツは他国に比べ塹壕堀りが上手だったということで、塹壕設置時に必要な生産ポイントが他国の半分となっています。

三国協商(イギリス・フランス他)(オレンジ色のユニット)

この時期、イタリアはまだ参戦していません。
第1ターンの特別ルールにより、「作戦計画第17号」が発動します。ドイツ側のシェリーフェンプランと異なり、こちらは全くの強制罰ゲーム状態
フランス軍はドイツ軍のライン河エリアを強制的に攻撃を行い、その際、マイナスのダイス修正を行うというものです。

開戦前にフランス軍総参謀長が、独仏の開戦時の作戦計画をたてていたのは良いものの、ドイツがベルギーの中立を侵すはずがない、という誤った前提と、ドイツ軍の兵力を過小評価していたことにより、全くのハズレとなったというものです。*6

さらにイベントカードにより19世紀の名残が残る華美な軍服(赤ズボン)より損害が多かったということでさらに追加的にマイナス修正まで得てしまいます。

 

                                                                       

Wikipediaより 第一次世界大戦初期のフランス軍兵の軍服。その後、中期にかけて水色の軍服に変わっていく。

 

補給ポイントにより、イギリス・フランスは大動員を行います。またドイツ軍と戦線を接している西部戦線のエリアには「塹壕」の設置が進みます。

 

ロシア・アメリカ・他連合軍側中小国(緑色のユニット)

アメリカは未参戦。ルーマニアブルガリアギリシャは中立状態です。
ロシアは動員をかけますが、国境線が長いだけに部隊密度は高くありません。

中小国では、セルビアが同盟国として登場しています。

 

中欧連合(青色のユニット)

トルコは未参戦
オーストリアもドイツに続き、ロシアに侵入。

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おそらく次の1914年冬ターンドイツ軍プレイヤーフェイズの途中の状況
前ターン(1914年秋ターン)にドイツ軍はベルギーを占領。ロシアに侵入した。フランス-ベルギー国境からドイツ-フランス国境沿いに塹壕が用意されはじめている(ゲーム中、西部戦線はこのまま膠着状態になった)。イギリス本土で動員が始まっている他、各国が動員を行っている。


 

(つづく)

 

yuishika.hatenablog.com

 

 

 

 

*1:プレイしたのは第二版とのことで、初版よりカード等の追加やイベント、技術カードに若干の調整がはいっている模様です。

*2:開戦時から参戦している国と途中イベントカード等によって参戦してくる国があります。参戦前の状態ではプレイはできません。

*3:ロシアとアメリカを同一プレイヤーが操作するというところは若干違和感があるのですが、史実としてはロシアの脱落と交代するようにアメリカの参戦があったのでキャラ交代ということでしょう。

*4:近東やアフリカに配備された陸上部隊はもっと小さな規模と想定されます

*5:登場するのはグランドフリートのみで地中海艦隊などは登場しません。

*6:フランスは第二次世界大戦のはじめにも同じ間違いをしてしまうところがなんだかなぁという印象。