マーケット・ガーデン作戦をエリアインパルスシステムで描いた「Monty’s Gamble」(MMP)を対戦しました(4月25日坂戸会)。
当方はドイツ軍を担当しました。
ゲームの基本情報
基本システムはエリアインパルスシステムです。
活性化から移動・戦闘に至る手順や、戦闘解決方法、オーバーラン、また”アドバンテージ”のルールなど同システムを踏襲したものになっています。
本ゲームならではの要素としては、空挺降下に関するルールや、史実において争奪の目標となった橋梁の奪取・破壊・修復といったルールがあります。
各ユニットは移動すると”SPENT”状態という行動済かつステップロス状態になります。ただし毎ターン、大量の補給ポイントが到着するため、補給線さえ確保できていれば、次ターンには完全戦力に戻ることは難しくありません。ドイツ軍も事情は同様です。
マップはイギリス第XXX軍団(第30軍団)の進撃範囲として東西に長い形状をしています。
マップは地形が細かいに描かれていて美しいです。
ただ道路を表す黒いラインとエリアの境界を表す白いラインとが紛らわしいです。水路・運河を表す水色のラインもあわせ、エリアの境界の混同や見落とし事故が発生しそうでした。
ユニットは大隊~連隊単位。
砲兵もユニットとして登場。さらに軍団砲兵と師団砲兵とで性能やルールが異なっており、使い分けはゲームに影響を与えそうです(今回のゲームの中では十分使いこなせていなかった模様)。
連合軍の事情
通常の進行では本ゲームは全4ターン(1ターン=1日)となります(延長もあり)。限られたターン数の中で、主力となる第30軍団は、マップ西端から進入して、東端近くにあるアルンヘム周辺のエリアまでたどりつく必要があります。
各ユニットが移動できるのは1ターンあたり1回+各ターンの最後の「再編成フェイズ」における自軍支配エリア内1エリア移動に限定されます。
第30軍団の道筋を遮る運河や河川の橋梁付近に空挺部隊が降下している訳ですが、彼らと協同して、橋梁を確保し、駆けつけるドイツ軍の増援を追い払ったり、制圧したりする必要があります。
ここでエリアインパルス方式を採用した面白さがでてくる訳で、ひとつのターンに何回活性化を行うことができるかは不確定であること*1、1ユニットはターンを通して1回しか移動できないこと、また1回のインパルスではひとつのエリアしか活性化できないといった制約の中で、効率よく活動を続けていく必要があるのです。
例えば第30軍団の全部隊を1つのイニングの中で活性化してしまうと、戦力は圧倒的になりますのでエリアの占拠は非常に楽でしょうが、そのターンは第30軍団はそれ以上前進できなくなります。よって同軍団の強力な戦車大隊・連隊は複数のグループに分けて、ひとつが前進して新エリアに進入しそのエリアを掃討、さらに次のインパルスに次のグループがさらに遠くの新エリアに進入して・・といった波状的に活動を行う必要があるでしょう。
空挺師団配下のユニットは各師団の作戦範囲外のエリアには進出できないという制限があるため、目標となる橋梁一帯を制圧した後は周辺エリアへの展開や道なりに進撃するといったことはできません。陸上の進撃はもっぱらイギリス第30軍団の役割となります。*2
連合軍の降下兵のユニットは戦闘力も防御力もあるため、地形効果が高い市街エリアなどに籠もられるとドイツ軍にとっては、叩き出すのにかなりやっかいな存在になるでしょう。一方で移動力は徒歩ユニット相当であるため、敵ユニットがいる離れたエリアへ攻撃を行うには敵エリアに隣接したエリアに移動して、その次ターンに攻撃ができるということで手間がかかります。
空挺部隊は占拠が必要なエリアにいち早く進出し、第30軍団の到着までひたすら耐えるということになるかと思います。
砲兵ユニットの使い方もポイントになるのではないかと考えます。砲兵ユニット、特に軍団砲兵については離れたエリアの敵を攻撃することができるため、集中運用することで砲兵力だけで相手を制圧するといったことも不可能では内容に思います。
ドイツ軍の増援はターン毎にバラバラと、また異なる位置から登場します(マップ参照:”独援軍”と記入したゾーンがおおよそのドイツ軍の増援登場位置となる。
このため、連合軍は主力が前進した後も、横合いからいきなりドイツ軍の攻撃・邪魔をされる可能性があるため考慮が必要となります。
勝利条件は第4ターンまでにVPエリアのポイント累計が10ポイントになるか、マップ東端から突破した場合、連合軍の勝利。
エリアのVPポイントは、だいたいアルンヘム周辺まで占拠すると10ポイントになるので、連合軍としてはなんとしても突進してアルンヘムまで占拠する必要があるということになります。
ドイツ軍の事情
ドイツ軍は初期配置では河川や運河の橋梁があるエリアに高射砲部隊がいる他は少数の守備隊しかない状態で始まります。そこへ第1ターンからかなりの数のユニットが増援として登場するのはうれしいものがありますね。
連合軍の作戦開始時にアルンヘム周辺に再編中のドイツSS2個師団がいて・・というのは有名なエピソードですが、実態は両方ともカンペグルッペ規模ということで個々のユニットは比較的強力なものがある一方で数は多くはありません。また最強ユニットもイギリス戦車大隊・連隊と比べると弱く、決して強い訳ではないのです。
増援としてバラバラと部隊があちこちから登場しますが、個々のユニットは強くありません。戦闘力も防御力も1というユニット(大隊規模)が多く登場するのです。まさに寄せ集めです。
ただエリアインパルスシステムの戦闘解決システムでは、守備にあたるすべてのユニットのうち「先導ユニット」に指定されたユニット以外の“2番目以降”のユニットはユニットに表記された防御力ではなく、その防御力は一律「1」として計算されるので、防御力が1の部隊もそれなりに役にたちます。
SS師団のユニットは強力ですがイギリス第30軍団の戦車連隊ユニットに比べると個別の能力で見劣りするし、数も少ないです。となると、ドイツ軍が主導的に攻勢作戦を取ることはなく、基本守備が主体ということになるのでしょう。
占拠することでポイントとなるポイントエリアや、チョークポイントとなる橋梁があるエリア(その多くは地形効果が高い市街地エリアになっていることが多い)に籠もって時間稼ぎをするというのが基本作戦になるのではないでしょうか。またいきなりそのようなポイントとなるエリアにイギリス軍第30軍団の強力なキラースタック(最大10ユニットがスタックできる)が飛び込んでこないように、妨害をすることになるのでしょう。
ただしオーバーランルールの存在と、ドイツ軍がひとつのインパルスの間に3ユニット以上除去されるとペナルティが発生するというルールがあるため、弱いユニットを道々にばらまくという作戦は得策ではない仕掛けになっています。
イギリス第30軍団はマップ左上から登場して、アルンヘムがあるマップ右下のほうまで進出していく必要があります。途中の道筋はいくつもの河川や運河が横切っていますので、それ毎に橋梁を確保する必要があるのです。
また途中途中で、道筋の左右からドイツ軍の援軍が登場しますので(独援軍と書いたエリア)、これらを排除していく必要があります。
プレイ
インスト含んだ練習プレイだったこと、記録も十分ではないので簡単に・・
第1ターン(9月17日)
通常ターンに先立ってD-Day(攻撃開始日)の処理が行われます。
連合軍の空爆、3個空挺師団の降下と活性化、第30軍団による突破戦闘開始です。
空爆によりマップ上に点在するドイツ軍の高射砲陣地(移動不可能なユニット)が攻撃を受けます。高射砲陣地が有効な場合、隣接エリアまでそのエアカバーが有効になり、連合軍の降下兵降下や空中補給時に悪影響を与えるのです。
空爆によりマップ上の全高射砲ユニットのうちおおよそ8割が損害を受けるか沈黙させられました。その後の降下にあたって連合軍はダイスの目もあって3個師団がそっくり無傷で降下したのです(ドイツ軍の対空攻撃チェックがことごとく外れました)。
空挺師団の各ユニットの降下エリアは決まっており、さきほどの高射砲ユニットにより損害を受けるかどうかの判定がはいります。損害を受けなかった空挺ユニットはD-Dayインパルスの0122..間、全ユニットが活性化できますので、そのまま周辺エリアの確保やドイツ軍拠点への攻撃などを行います。
この降下した全エリアで活性化可能という点は非常に有利です。その後の通常ターンのインパルスでは1エリアずつしか活性化できないことからすると、このメリットは最大限活かすべきでしょう。
降下や第30軍団の活性化が一巡すると通常のターンの手順が始まり、ようやくドイツ軍が行動できるようになりますが、最初のインパルスでは移動はできず、橋の爆破だけが実施できる状態です。ただ爆破ができる橋の条件が厳しく、結局のところ1ヶ所だけでダイスチェックを行い、第101空挺師団の活動範囲内の街道沿いの橋梁の爆破に成功します。
その後もこのターンの間は移動も1移動力に制限されています。
今回のプレイでは、連合軍のユニット群が軒並み、D-Day特別インパルスの間に移動を終わらせていたことから、あまり活発に移動しなかったことから、ドイツ軍は先にナイメーヘンやアルンヘム市街に先遣隊を進駐させます。
第1ターンは結局、7インパルス目で終了します。
第1ターン、降下直後のアイントホーフェン付近。降下しているのはアメリカ軍第101空挺師団(Screaming Eagles)。まだ左上のゾーンに第30軍団が控えている。
第1ターン、降下直後のナイメーヘン(アメリカ軍第82空挺師団(All America))と、アルンヘム(イギリス軍第1空挺師団)付近。付近に点在している黒いユニットがSS部隊だがいずれも小規模だったり戦力が弱い。
第1ターン終了時点。アルンヘム周辺。
ドイツ軍は増援で駆けつけたSS部隊からなる先遣隊をイギリス軍に先んじて、アルンヘム市街に進入させた。イギリス軍の空挺大隊(4-5-4)やグライダー大隊(4-6-4)は数もある上、防御力も高く、先に市街地エリアに入られると叩き出すのが大変難しくなるため、取るもとりあえずという部隊編成だ。なおドイツ軍は国防軍とSSとは連携が悪く、同じ戦闘に両方の部隊が参加すると逆にマイナス修正がつくくらいなので、運用上同一エリアには配置しないほうがよい。
第1ターン終了時、ナイメーヘン周辺。
市街東岸にいた第9SS装甲師団装甲大隊は、アメリカ軍の進出に先んじて市街地西岸に進出。周囲はアメリカ軍ユニットばかりなので危険ではあるが、先に占拠することを優先した。
第2ターン(9月18日)
1944年9月28日にアメリカ軍によって撮られたナイメーヘンの鉄橋。マーケット・ガーデン作戦の直後といったタイミングですね。手前に写っている市街地が廃墟状態なのが印象的です。
もうひとつのSS師団、第10SS装甲師団が到着しナイメーヘンからアルンヘムあたりの防御を固めたドイツ軍。それぞれの市街地外縁部で各空挺師団との戦闘が発生しているが、連合軍は、増援の降下予定エリアの確保を優先し、また第30軍団の到着を待っているのか本格的な攻勢には出てきていない印象。
写真がわかりづらいが、第30軍団の先鋒の戦車大隊が第101空挺師団の占拠地を超えて前進している。この付近のドイツ軍は弱小すぎて何もできずに蹴散らされていった。マップ端にはる”ゾーン”に増援として登場できるドイツ軍ユニットがいくつか見えるが、第30軍団が強力すぎてマップに登場できないでいる。
第3ターン(9月19日)
来た!第30軍団の本隊が大挙して侵攻中です(マップ中央部から右手に進撃中)。
アルンヘム・ナイメーヘン周辺ではドイツ軍がさらに増強されています。
アルンヘム東側外縁エリアでドイツ軍はイギリス軍降下兵ユニットの排除のため攻撃を行います。砲兵ユニットの使い方を工夫すればもう少し損害を与えられたのですが・・。
降下兵は薄く展開しているものの、ほとんど無傷です。ただ分散しすぎているせいで、1エリアずつ活性化してもそれほどの兵力にならない・・。
第4ターン(9月20日)
最終ターンということで第30軍団が急ぎナイメーヘンの外縁部に到着し、波状的にドイツ軍エリアに対して攻撃を行うが、ドイツ軍も複数回に分けて部隊を投入することで防いだ。結局、ナイメーヘン市街に隣接した外縁部エリアのドイツ国防軍を排除するにとどまり、ナイメーヘンへの直接攻撃にも一歩届かなかった。ドイツ軍はハイスタックのようだが、実態は最弱歩兵大隊(1-1-3)。
最終決戦場になるはずだったアルンヘム周辺。イギリス第30軍団がここにたどり着くには、
(1) ナイメーヘン市街を攻撃する(ここでドイツ軍は橋梁の爆破を試みる)
(2) ナイメーヘンの東岸を渡河攻撃する
(3) アルンヘムの西岸を攻撃する、とまだかなりの手数が必要
感想戦
冒頭に書いたとおり連合軍地上部隊主力がアルンヘムに到着するにはかなり効率的に効果的に進撃していく必要があるように思います。空挺部隊も占拠エリアの確保を優先して、それぞれの降下地点でかなり分散して配置されていたのですが、エリア毎に活性化をするというゲームシステム上、それほど分散させずに攻撃を行うスタックを設けてもよかったのかもしれません。
今回連合軍が活発ではなかったためドイツ軍は要所の市街地を先に押さえることができましたが、空挺部隊が果敢に争奪を挑んでくると結構ドイツは苦しいように感じました。
今回、砲兵、オーバーラン、「浸透」(ドイツ軍だけが可能な特殊な移動)、複数種類用意された渡河方法、アドバンテージの利用、一定数以上の損害を与えた場合のボーナス、航空支援などルールの中に仕込まれた様々な仕掛けをうまく使えていなかったように思うので、ルールへの習熟をもって再戦してみたい。
(了)
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