Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「THEIR FINEST HOUR」(GDW)を対戦する(1)ーチャーチルの演説と本ブログのタイトル由来についてー

第2次世界大戦中のイギリスの首相ウィンストン・チャーチルは演説上手で、数々の名言で知られています。有名な演説のひとつとして、ダンケルクの撤退(1940年5月下旬)直後の1940年6月4日下院で行われたものがあります*1

・・we shall fight on the beaches, we shall fight on the landing grounds, we shall fight in the fields and in the streets, we shall fight in the hills; we shall never surrender・・

・・我々は海岸で戦う、我々は水際で戦う、我々は平原と市街で戦う、我々は丘で戦う。我々は決して降伏しない。・・

少々派手な演出が加えられていますが、肉声です。

www.youtube.com

大陸への派遣軍がドイツ軍によって叩き出され、残る同盟国であったフランスは抵抗する術を失いつつあり、頼みのアメリカも参戦していない無援状態になったイギリスです。*2
同じ演説の中でこうも言っています。

・・this Island or a large part of it were subjugated and starving, then our Empire beyond the seas, armed and guarded by the British Fleet, would carry on the struggle, until, in God's good time, the New World, with all its power and might, steps forth to the rescue and the liberation of the old.

たとえこの島やその大部分が征服され、飢えに苦しむとも、神の御加護のある時に、新世界がその全力をもって旧世界の救助と解放に向かうまで、海の向こうで英国艦隊が武装し保護する、我らが帝国は闘いを続けるだろう。

最悪のケースとしてイギリス本土を占拠されることすら覚悟していたことをうかがわせる内容です。

 

さて、チャーチルの演説を持ち出した目的はこちらではなく、1940年6月18日に行った演説の話です。

the Battle of France is over... the Battle of Britain is about to begin.
Upon this battle depends the survival of Christian civilisation. 
Upon it depends our own British life, and the long continuity of our institutions and our Empire. ・・
Hitler knows that he will have to break us in this island or lose the war.
If we can stand up to him, all Europe may be freed and the life of the world may move forward into broad, sunlit uplands.
But if we fail, then the whole world, including the United States, including all that we have known and cared for, will sink into the abyss of a new dark age made more sinister, and perhaps more protracted, by the lights of perverted science.
Let us therefore brace ourselves to our duties, and so bear ourselves, that if the British Empire and its Commonwealth[e] last for a thousand years, men will still say, "This was their finest hour."

フランスの戦いは終わった...イギリスの戦いが始まろうとしている。 ・・
この戦いの上にキリスト教文明の存続がかかっている。この戦いの上に、我々のイギリスの生活、そして我々の制度と帝国の長期的な継続性がかかっている。
ヒトラーはこの島の我々を破壊しなければならないことを知っている、さもなくば戦争に負けることを。
もし我々がヒトラーに立ち向かうことができれば、全ヨーロッパは解放され、世界の生活は太陽の光に照らされた高みへと前進することになるだろう。
しかし、もし我々が失敗すれば、米国を含む全世界が、我々が知り、大切にしてきたすべてのものを含めて、より不吉な新しい暗黒時代の奈落の底に沈むだろう。そして誤った科学によって、暗黒時代はより長く続くだろう。
(だからこそ)私たちは自分たち自身の責務を果たし、耐え抜こうではないか。そうすれば、大英帝国と英連邦が 1000年続いたとしても、人は「この時が彼らの最高の時だった」と言うだろう。

 この演説の2日前の6月16日、フランスはドイツに休戦を申し入れています。イギリスの同盟国のひとつが脱落しようとするときにこの演説がなされます。

Animated “This Was Their Finest Hour…” speech by Winston Churchill

 

上の引用では省略していますが、チャーチルヒトラーの侵略と戦うのは、英国民の生存と国益だけではなく、イギリスが戦う気高い理由(自由、キリスト教文明、小国の権利*3)ためだと言っています。
その上で、国民に対し、義務・責務を果たし、耐え抜こうと呼びかけます。そうすれば、1000年後にも、「(国民が一致団結して責務を果たそうとするこの時が)最良の時だった」と言われるだろう、というとてつもないレトリックを駆使しているのです。

最悪の時は、最高の時に変えることができる、という、あれ、これって人生訓か?

 

そしてようやく本題

ながながとチャーチルの演説の話をしたのはこの演説からとられた言葉を題名にしているゲームをすることになったためです。

2020年の対戦納めは「DUNE」のつもりだったのですが、ひょんなことから表題のゲームを対戦することになりました。

Copyright © Rodger B. MacGowan, Hobby Japan Ed.

ちはら会のMさんがソロをして対戦相手を求めるという書き込みをされているのを見て、ブログの題名にも使っているゲームをせねばなるまい、という変な義務感(もちろんこの機会を逃せば、ゲームの状況からして、5年10年単位で機会は巡ってこないであろうという判断から)より申し入れをさせていただいたものです。

 

エウロパシリーズ

本作は同一スケールで第二次世界大戦中の全戦域をゲーム化しようというゲームシリーズであったエウロパシリーズの中の1作です。
同一スケールというのは、ユニットは陸軍は1個師団単位(最小大隊単位もあり)、航空機は40機、艦船は大型艦は1隻、小型艦は数隻単位、1ヘックス=16マイル(約25キロ)。タイムスケールは1ターン2週間となっている(らしい)。

もともとアメリカのGDW社より1976年から発売が開始され、1980年代にはホビージャパンから数作が日本語版のライセンス販売されました。その後、日本での販売は80年代後半のウォーゲームの低迷もあってか、ぷつんと切れ、90年代にはいってGDW社自体も解散しました。
ところが米州では販売会社を変えながら、シリーズとしては継続していることになっているようです。

en.wikipedia.org

 

今更シリーズを追いかけるだけの気力も興味もありませんが、かつて心を踊らせたゲームとしては試してみたいということですね。

次回はゲームとルールの紹介をします。

(つづく)

 

yuishika.hatenablog.com

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航空戦史 (航空戦から読み解く世界大戦史)

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  • 作者:古峰 文三
  • 発売日: 2020/02/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

*1:5/28 ベルギー降伏
6/14 ドイツ軍によるパリ無血入城
6/16 フランスがドイツに休戦を申し入れる
6/22 ドイツ・フランス間での休戦協定調印

*2:イギリスに対するアメリカからのレンドリースが始まるのは1941年3月になってから

*3:チェコポーランドノルウェー、オランダ、ベルギーの国名があげられている