旧作ゲームは買わないと誓ったはずなのですが、細々ながら好みの作品が出品されているとついつい入札してしまうこの頃です。
先日入手したツクダ-ホビー製「レオパルトⅡ」開封未使用品が箱絵や箱の周囲の色の色あせなどもない良品美品だったので嬉しくなり、記事を起こしています。
高荷義之によるボックスアートのかっこよいこと!これだけでも飾っておきたくなるレベルです。TRPG「TRAVELLER」の加藤直之といい、この時代の国内発売ゲームのボックスアートは画集が欲しくなるレベルですね。
ゲームのほうは「タイガーⅠ」から発売されていたタンクコンバットシリーズの中の現代戦版で、1986年の発売。同シリーズの最終作になっています。(2021/04/11 再訂正*1)
タンクコンバットシリーズについては以前に第二世代車輌を扱った「パットン」の紹介とリプレイを書いています。
開封した
まず驚くのが束になったユニットシートの物量です。同じツクダ製ゲームの「航空母艦」あたりだと、航空機・艦艇・各種マーカーとバリエーションが想像できるので分量が多くても驚きはしないのですが、戦車しか登場しないはずの本作でこの分量か!と驚いてしまう量でした。末期ツクダゲームの物量戦か!と感心した次第です(そういうものがあったのかはわかりませんが)。
今回うれしかったのは以前の「パットン」に比べてかなりユニットが見やすくなっていること。「パットン」のユニットは車輌毎に異なる車体上面図が細かい線画で描き分けられている一方で、車輌種類を書いた字が、特に濃緑色のユニットなど背景が暗く読めないくらいでした。今回のユニットはユニット背景と車体が別のカラーになっているため、線画がくっきり見えるし、またユニットも若干大きくしたことで車輌名も読みやすくなっていました。
マップが2種類になった
マップとして、ヘックスのサイズが若干大きい「戦術マップ」と、小さい「索敵マップ」の2種類が含まれています。従来は「戦術マップ」1種類だけを使っていたのですが、本ゲームから「索敵」ルールが加わったことにより、マップ種類が2種類に分かれ、システムが大きく変わっているようなのです。
両軍プレイヤーの間に共通の(小さいヘックスが描かれた)「索敵マップ」を置き、それとは別に両軍プレイヤーはそれぞれに「戦術マップ」を使う、とのことです。
ここまで言うと、敏いプレイヤーや歴戦のウォーゲームプレイヤーは想像がつくでしょう。かく言う当方もまだルールはななめ読み状態なので多分に想像なのですが、前作までに培われた、ひとつのターンを細かいインパルスに分け、各インパルス毎の移動をプロット式で行う”タイムスライスシステム エンドレスフェイズシステム*2”(詳しくは上に紹介した「パットン」のゲーム紹介記事を参照)に加え、”ブラインドサーチシステム”の複合技に出てきたのです。
手前のヘックスが小さいマップが「索敵マップ」、奥の大きなマップが「戦術マップ」
両方のマップが同じ地域を表示しているのがわかるだろう。
実は・・
箱を開けた時に最初にチェックしたのはデータカードです。
データカードを1枚ずつ見ていった時、大きな誤解をしていたことに気づいたのでした。
カードは2種類に色分けしていたので、東西勢力でのカラーリングだと思ったのです。西側カードを見ていると・・あれ?M1エイブラムスは?M60は?
あわててボックス裏面のゲーム紹介を見ると・・
ゲームのテーマは、「現代における架空の戦車戦」とある一方でよく読むと、ソ連軍と西ドイツ軍の50年代から現代までの車輌を収録とあるのです・・。
「パットン」が第二世代車輌を収録していたということから流れとして、本作は第三世代車輌が収録されているものとばかり思っていたのです。ところが内実は、西ドイツ軍とソ連軍のみ。代わりに両軍については第二世代車輌と、さらに戦車戦では活躍できないという理由から省かれていた装輪系の装甲車などが収録範囲として追加されています。
ルールブック末尾におかれた岡田厚利氏によるデザイナーズノートを見てわかりました。
・・将来的には、今回の西ドイツ軍とソ連軍だけではなく、アメリカ軍やイギリス軍、そして自衛隊を入れたいと考えています。
「レオパルドⅡ」デザイナーズノートより
また「索敵」ルールの導入に伴い、「パットン」ではオミットされていた多くの偵察用の装輪式車輌が本作では取り入れられているのですが、あわせて現代陸戦を表現するためには歩兵の要素が第二次世界大戦時と比べ大きくなっている、と語り、
・・今回歩兵を入れられなかったのは残念なのですが、これは来年にでもエキスパンションキットとして発表すると思います。そうすると初めてこの「レオパルドⅡ」のシステムが完全な形でプレイできるのです。
「レオパルドⅡ」デザイナーズノートより
戦車戦闘のゲームが、歩兵を加えた形になるというのです。戦車移動を前提にした”タイムスライスシステム エンドレスフェイズシステム”が歩兵を加えうまく機能するのか(プレイアビリティを確保できるのか)疑問なところは多分にあります。
結局、デザイナーズノートで書かれている、他国車輌の追加も、歩兵を加えたエキスパンションキットの発売もなかったのですが(と記憶している)(2021/04/11 再訂正*3)、続刊が発表されていた場合にどのようなゲームになったのだろうと想像するのは楽しくはありますね。
続きが発売されなかったのが、すでに時期的にボードシミュレーションゲームが黄昏期にはいっていたからだったのか、「レオパルドⅡ」の売れ行きが芳しくなかたからなのか(デザイナーズノートを見ると、ツクダゲームにしては破格の6,800円という値付けで、コンポーネントからするとそれでもコスト吸収が・・とある)、はたまた歩兵追加を詰めていくとシステム的に破綻したが、宣言した以上、引っ込みがつかなくなったのか、はよくわかりません。
直感的には、”タイムスライスシステムエンドレスフェイズシステム”で歩兵分隊ユニットをプロットして移動させるというのは(さらには「索敵」ルールによるブラインドサーチも加わり)、プレイアビリティの著しい低下から、システムとして破綻したか、または実質プレイ不可能なモンスターゲームになってしまったか、のどちらかかな、と思います。
この時期のシミュレーションゲームはこういった、ゲームの巨大化、ルールの複雑化によるプレイアビリティの著しい低下といった作品が多いような印象ですね(あくまで個人の感想です)。ツクダ「航空母艦」、エポック「バトル・オブ・ブリテン」、STR「ノースアフリカ」、アドテクノスの仮想戦のゲーム群など。
気が向いたら、データカードの中の散策や、実プレイなどもやりたいなと考えています(ブラインドサーチシステムはソロにはひたすら不向きでしょうが・・)。
そうそう、ソ連戦車のカードの中に「T-74」というレアものが含まれていました。
もしかしたら本作の補完が、当時のツクダゲームの機関紙などで行われたのかなぁ?
2021/04/11 追記:
本作が発売された頃はタクテクス誌が月刊化された直後でした。黄昏期どころかボードシミュレーションゲーム絶頂期と言っていい頃ですね。ただし最後のほうに書いているとおりこの時期、趨勢としてゲームの複雑化・巨大化が進んでいたのも伺えます。当時のファンとしてはそういう方向性を望んでいたのでしょう。
*1:2021/04/10 本作の後に出ている「コンバインド・アームズ」が本作の後継作という情報をいただきました。手元にないため、要確認です。
2021/04/11 再訂正。タクテクスの記事などからルールを見ると直系の後継作という訳ではなさそうです。詳しくは別記事にて
*2:タイムムスライスシステムは別ゲームのシステムでした。基本的な確認を怠ったのがバレバレです
*3:
2021/04/10 本作の後に発売されている「コンバインドアームズ」が後継作という情報をいただきました。名称からすると装甲車輌と歩兵の連携戦術が表現されているということだと思われます。戦車の名前をタイトルとしていたタンクコンバットシリーズの伝統から外れたネーミングから推測すると、歩兵を登場させたことで別ゲームシステムになったということを表したかったのかもしれません。いずれにせよ、現物がないので要確認です。これはこちらも入手しないといけなくなったような・・
2021/04/11 再訂正 タクテクス等の記事で「コンバインドアームズ」のルールを確認しましたが、タンクコンバットシリーズの直系の後継作というわけではなさそうです。詳しくは別記事にて