Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム

「パットン」(ツクダ)を試す(2)~射撃戦がはじまるととても楽しいゲームになります。

 前回に引き続きツクダ「パットン」を取り上げます。

yuishika.hatenablog.com

コンポーネント

簡単にコンポーネントについて触れておきます。

ユニット

ユニットは車両ユニットは長方形型で車体を上方から見た線画と車両名称と車種毎の通番が印字されています。性能に関わるデータは全てデータカード側にまとめられていますので、火力や、移動力といったゲーム内で使う数値情報の記載はありません。

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左上から順にM60A3、スーパーセンチュリオン74式戦車、T54。
サンドイエローのユニットは良いのですが、地の色が濃い場合、特に濃緑色のユニットは文字が読めないです。ルーペが必要。ユニット種類が多く、適当な車両を探し出すのが大変です。ツクダのゲームは全般にユニットが小さいですよね。

 

各車両毎に少なくとも10ユニット前後以上ずつ用意されています。データカードから収録車数を数えると63種類*1あるのでそれだけでかなりのユニットが含まれていることがわかります。
砲塔は別ユニットになっており車両ユニットよりも小さいサイズと芸が細かい仕様になっています。
ユニットの整理、シナリオで使うユニットを探すのが結構大変です。バリエーションを分けると、付属のトレーだけでは足りず、セリア(100円ショップ)の”SIKIRI42”を2個追加投入してようやく整理がつきました。

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データカード

車両のスペックはデータカード上に全て記載されています。
地形別の必要移動力、兵装関係、フェイズ毎の分割された移動力、命中箇所判定表、装甲厚判定表、弾薬種類別の命中確認表といった情報が記載されています。
装填時間、仰俯角(稜線から下への射撃可否)、スタビライザー、砲塔旋回範囲、エンジンタイプ(誘爆に関係)、乗員パターン(乗員ルール)など細かく設定があります。ゲーム内では使わない、機関銃などの副武装NBC対応などまでデータに取り込まれています。

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下はGMTがシリーズ化している「PANZER」のデータカード。
「PANZER」はまたリプレイとか別記事でとりあげようと思っていますので今回は詳細割愛。砲弾種類毎の命中率と威力、下のほうは防御関係の数値情報になっています。構成要素としては「パットン」と似ているといえば似ていますね。戦車戦をシミュレートする際の基本要素なのでしょう。

German Data Card

 

リプレイ

ゲームシステムを理解したところで動かしてみましょうと、プレイしてみました。
ゲームの性格上*2、兵力や状況がしっかり設定しているシナリオは少数しか用意されてなく、基本はいくつかのシチュエーション(例えば、接触戦、待ち伏せ、突破、殲滅など)について状況や車両数の目安が示され、国や車種も含めて自由に設定して遊んでくださいというスタンスになっています。代わりにどの国がどの時期にどのような車両を使用していたのか、また主要な戦争における登場国やその装備などのシナリオを設定する上での参考情報は提供されています。

今回はソロということもあり、兵力や配置やその後の移動などに隠匿要素がないシナリオということで選んだのがベトナム戦争におけるアメリカ軍と北ベトナム軍の接触戦となりました。

シナリオ

ジャンクションシティー作戦(1967年2月~5月)

シナリオ背景

ジャクソンシティー作戦は、南ベトナム領内、サイゴン市の西方からカンボジア国境までの地域において南ベトナム解放民族戦線北ベトナム軍に対して行われた、アメリカ軍と南ベトナム政府軍による小~中規模の16個の作戦の総称。
アメリカ陸軍第1歩兵師団傘下の第34機甲連隊第2大隊に属する戦車は各所に分散配置されていたが、その一部隊が北ベトナム軍戦車部隊と遭遇したというもの。

登場兵力・勝利条件

アメリカ軍M48A1 4両、北ベトナム軍 T54 6両
マップ両端よりそれぞれマップ内に進入。相手を全て撃破するか、アメリカ軍は反対側のマップ端より2両を脱出させる。

プレイ

最初なので選択ルールも使えるものは適用しました。乗員ルール、砲弾数ルール。ただしダミーカウンタールールだけはソロプレイなので不適用です。
ダイスによる判定の結果、乗員は北ベトナムの1両だけが”ベテラン”クラスで、残りの車両は両軍とも”レギュラー”クラスになります。
操縦手が”レギュラー”クラスの場合、1ターン毎にチェックを行い約5%の確率で走行不能になる可能性があります。”ベテラン”クラスの操縦手はその半分の確率です。ただマニュアルには走行不能の適用期間や、回復方法について記述はないので、そのシナリオの間は走行不能になると解釈しました*3

前記事に書いたとおりこのゲームは移動計画をプロットする必要はありませんが、どれだけ移動力を使ったのかといった移動力消費結果を記録していく必要はあります。よって両軍、合計10両分の記録票を用意します。

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マップ左手より北ベトナム軍のT54 6両、右手よりアメリカ軍M48A1 4両が進入(1ヘックスのスタック制限は2)。写真の状況は、(おそらく)ちょうど第1ターンの6つのフェイズが終了したところです。

各地形の必要消費移動力は道路2、草原(黄緑色のヘックス)4のため、移動効率を考慮し、両軍とも道路伝いに進みます。
1つのフェイズに使える移動力は2か3なのと、同一ヘックスでの回頭は60°毎に2移動力ということもあって、道路が屈曲する毎に前進が止まったり、移動力の”前借り”が発生します。(仮に草原ヘックスを走ると、必要移動力が4のため1ヘックス進むだけでも移動力の”前借り”が発生することになります。)

この時点、まだ双方とも敵ははるか彼方にあります。
正直いうと2ターン目まで計12フェイズ分移動させたただけでけっこう疲れました。
敵は遠くにあるのですが、そこに接近する前の段階でもたもとしているキブンです。


アメリカ軍の勝利条件のひとつに突破もある以上、ソ連軍は街道を破られないようにする必要があります。マップ上側の街道を塞ぐように2両を森の中に配置し、残り4両を突出させます。
一方のアメリカ軍は相手の撃破か2両の突破なので、ソ連軍主力との砲戦を志向しながら4両を集中的にマップ下方の街道を進ませます。

最初の戦闘はマップ下中央部分で発生。
高い立木があり見通しがよくないため相互の距離500メートル。
M48A1 2両対 T54 4両、双方正面からの射撃戦となりました。
両車種ともスタビライザーを搭載していないため移動射撃には大きくマイナス修正がつきます。T54はT34以来伝統の避弾経始重視のデザインを反映してか前後方向からのサイズ修正にマイナス修正が施されます。一方のM48 は背高のシルエットから逆にプラスの修正です(命中しやすくなる)。また射撃の命中度はアメリカ車両が高く(射撃制御装置などの性能差といったところでしょうか)、ソ連車両は低いです。戦闘距離が延びれば延びるほどこの差は顕著になります。

【1フェイズ目】

T54 4両の前にM48 2両が現れ、相互に目標を確認、射撃が発生します。
M48 2両の射撃は移動射撃や初確認といったマイナス修正もありハズレ。
待ち構えていた状況になったT54  4両(うち1両はベテランチームが搭乗)からの射撃もM48側の移動やT54 側が制動状態、初確認といったマイナス修正によりハズレ。

【2フェイズ目】

両軍とも次弾装填中。
装填時間はM48は1フェイズ、T54は3フェイズと装填装置の性能差があります。

【3フェイズ目】

アメリカ軍。
M48 2両 射撃。射撃側・目標側の双方とも停止状態、かつ同一目標に対する射撃修正が加わり、よほどのことがない限り外さない状態でしたが大外し、命中は1発のみ。
T54 1号車が被弾、主砲が破壊され以後戦闘不能

北ベトナム軍は次弾装填中でまだ射撃できません。

【4フェイズ目】

両軍とも次弾装填中

【5フェイズ目】

双方射撃。

アメリカ軍の射撃

M48 からの射撃は2発とも命中。
T54 2号車(ベテランチーム搭乗車両)は砲塔正面に被弾。防盾の一番装甲厚が厚い箇所ではあったのですがHVAP*4の威力に抗えず爆発炎上(誘爆)。車長以外の3人の乗員は脱出*5
T54 3号車、キャタピラに被弾し以後走行不能

北ベトナム軍の射撃

T54 からの射撃は3発とも命中。
M48 1号車。HEAT弾による命中弾を車体とキューポラに受け(2両からの射撃が命中した)、装甲内側の金属飛散により乗員全滅。
M48 2号車、砲塔に被弾するも跳弾により損害なし*6

【6フェイズ目】

北ベトナム

T54、1号車(主砲使用不可)と4号車が退避行動にはいる。
双方次弾装填。
旋回30°あたり2移動力必要なためT54 1号車・4号車は同一ヘックスから動けず。このあたり1フェイズ=5秒という設定なので仕方ないでしょう。

【次ターン 1フェイズ目】

移動の先攻が北ベトナム軍に交代。

T54 1号車・4号車が旋回完了(3号車は走行不能のため移動不可)。
少し離れて後続していたM48 3号車・4号車が到着し、射撃態勢にはいります。
T54 は装填時間の関係で射撃できない。

アメリカ軍

M48 は3両が射撃。
が、ここで外すか、M48 2号車!
M48 3号車は移動射撃に関わらずT54 3号車に命中させるも、同じキャタピラを破壊するに終わる。すでにT54 3号車は走行不能になっているので意味なし。
M48 4号車の射撃はハズレ。

【次ターン 2フェイズ目】

北ベトナム

T54 1号車・4号車が退避開始。
双方次弾装填

【次ターン 3フェイズ目】

北ベトナム

M48 2号車、キューポラに被弾、爆発炎上(乗員脱出チェックは割愛)。
退避中のT54 4号車の射撃はハズレ。T54はスタビライザー非搭載でもともと射撃性能もよくないので移動中に移動目標を狙うのはかなりの困難になります。

アメリカ軍

北ベトナム戦車の追撃にはいります。

T54 3号車。主砲に被弾、以後戦闘不能になります。さきほどからキャタピラ、キューポラ、主砲と特殊な部位にばかり命中しているように見えますが命中箇所判定表のせいではなく、ダイスのせいです。
T48 3号車・4号車の射撃はハズレ。

・・・

プレイはここまでにします。

結果

アメリカ軍<M48A1>

  • 1号車 破壊
  • 2号車 破壊(炎上)
  • 3号車 健在
  • 4号車 健在

北ベトナム軍<T54> 

  • 1号車 主砲破壊され戦闘不能。退避行動中
  • 2号車 破壊(炎上)
  • 3号車 キャタピラと主砲にそれぞれ被弾し、走行不能・戦闘不能
  • 4号車 健在
  • 5号車 後方配置中
  • 6号車 後方配置中

 

今回意外だったのはM48とT54というやや旧式に属する車両の対戦においても、両車両(またはそれをつくった米ソ)の特徴がよくでていたことです。命中精度、射程、次弾装填などの機構に優れるが背高のシルエットでサイズ感大のM48に対して、走行性能、防御性能、避弾経始に優れる一方、命中精度、射程、また次弾装填性能などに劣るT54。両車両ともスタビライザー非搭載のため移動射撃時の命中性能は劣るものの、T54はもともと主砲の命中精度が悪いため与命中がかなり難しいのに対し、M48はまだ可能性はあるといったこと。

この1シナリオを少しかじっただけでもこうした車両毎の性格の違いや性能差を感じることができたのですから、他の様々な車両も試してみようという気になります。

これもデザイナーが凝りに凝った詳細なデータカードを整備したことによる最大のメリットといえるのかもしれません。*7

 

(ひとり)感想戦

射撃戦がはじまるととても楽しいゲームになります。
ただそれまでの移動がつらい。退屈なだけではなく、記録票を使った移動力消費の記録の部分が煩雑です。
双方じりじりとしか動かないので、途中作戦なんてどうでもよくなってきます。早く接敵して射撃戦を始めたいという誘惑にかられてしまいます。
エンドレスフェイズシステムの利点としては、移動距離が細切れになっていて射撃解決は同時のため、戦術級ゲームによくある”先に動いたほうが負け”的な部分が少ない点ではないでしょうか。
いったん射撃戦がはじまるとこれは盛り上がりますね。
海戦ゲームに通じるところがありそうです。今回はキャタピラやキューポラなどの特殊部位への命中が目立ちましたが、本来はもう少し砲塔や本体などの命中が多いような判定表になっていますので、ご安心ください。

プレイにあたっての改善点

プレイのスムーズな進行や各種ルールの適用漏れなどをなくすために考えた改善点を書きます。

マニュアル不明確点と誤植の明確化

ツクダのゲームは当時同社が出版していた機関誌「オペレーション」に正誤表や追加ルール、改善ルールが発表されていたそうですが、今となっては入手は難しいです(今となってはせめてネットに公開されていたりするとうれしいですが)。 
マニュアルの不明確点、たとえば、HEAT弾の使い方、効果については断片的にしか記載がないように見えます。今回はAP弾と同じ命中表としましたが実際はどうなのでしょう。
また今回プレイには登場しませんでしたが、ミサイルの被害判定の数字が小さい(被害がでにくい)ように見えます。不発が多かったとかそういうことでしょうか。
また取扱説明書全般に誤植が少なくないです。しかも修正値のプラスマイナスが逆とか記載している表全体の左右の数字が逆とかそういうなんとも悩ましいものがあります。今回プレイに使用したゲーム本体は前オーナーが細かに手書き修正をしてあり、迷わずにすんだところはあります。ただデータカードの数値とかになるとお手上げです。

プレイエイドの整備

プレイのスムーズな進行と各種ルールや数値の適用漏れをなくすためにプレイエイドを準備したいところです。あわせて表類の見直しをしたいものです。

車両の行動状態の明確化

車両の行動状態の定義が面倒です。車両の状態には、「発進」「移動」「制動」「停止」という4つのステータスがあります。
ASLの場合は車両が動き出したり停止したりを相手プレイヤーに宣言するので、車両の状態は明示的にわかりやすいのですが、このゲームの場合、攻撃を受けたり、攻撃をしたりする際に、今の車両の状態は・・と確認することになります。定義ははっきりしているので、これもまた記録票から移動状況を見て確認するだけだというとそうなんですけどね。実際のプレイにあたってはASLと同様に宣言するというのもよいのかも。

目標の確認タイミングの明確化

同様に相手をいつ確認したのかという要素も攻撃時の修正値に影響します。今回はじめて視認できたのか、もっと以前より視認できていたのかというのも、判定が面倒です。

 

戦車戦に特化したゲームということ

このゲームの評価にあたって、戦車戦だけに特化した戦場というのは非現実的ではないかという意見があるようです。当方もプレイするまではそう考えていました。一方で、戦車戦に特化することで、歩兵の考慮がなくなり、エンドレスフェイズシステムを採用でき、また複雑な歩兵が関係するルールも捨て去ることができるなどゲーム全体の難易度を抑えることにつながっています。
また上に紹介したとおり射撃戦はおもしろいです。

では、戦車だけに特化できる状態というと、あるじゃないですか。
「ガールズアンドパンツァー」の戦車道の世界です。
ちょうど乗員ルールもありキャラ性を出していくこともできそうです。

ガルパンの世界を真正面からウォーゲーム化した国際通信社「ぱんつぁーふぉー!」(特に1作目)がありますが、同ゲームのステップアップ版としてタンクコンバットシリーズはかなり良さげじゃないかな。

 

(おしまい)

 

 

ザ・タンクブック 世界の戦車カタログ
 

 

*1:中にはひとつの車種でも朝鮮戦争時については装備品の関係からか別バージョンとして収録されているものもあるためユニットのバリエーションとしてはもう少し少ないです。

*2:純粋に戦車同士の戦闘というのは起こりにくいと思われます。

*3:戦後、回収されて整備班による整備になるということでしょうね

*4:高速徹甲弾HVAP:High Velocity Armor Piercing)は、戦車の主砲弾や航空機関砲に使用される砲弾で、装甲を貫くのに特化した弾である。 硬芯徹甲弾APCR:Armor Piercing Composite Rigid)とも呼ばれる。

*5:このゲームでは歩兵は登場しないので、脱出した操作チームがゲーム中に登場することはない。キャンペーンシナリオなどを自作する際に使うということだろう

*6:装甲厚判定の際に一定割合で跳弾が発生し損害無しとなる

*7:デザイナーズノートに「テストプレイをして驚いたのは、74式が意外に強かったことです。」とあるので北海道仮想戦なども試してみたいものです。