NHKで再アニメ版「銀河英雄伝説」の放送が始まった。
TV未放映だった第2シリーズもあわせて放映するらしい。
今回、第1シリーズ、ストーリーの冒頭、第1話・第2話で描かれたアスターテ会戦を観た。
「未来の宇宙空間は2次元平面になっている」と評されることもある同作のため、実質2次元平面の戦場描写でしかない小説の文章を、いかにそれっぽく3次元空間の戦いの映像に仕立て直して見せるかという点でアニメ制作者の苦労がうかがわれる。
ともあれこのアスターテ会戦、元ネタはイタリア戦役時代のナポレオンが戦ったカスティリオーネの戦い / ガルダ湖畔の戦い(1796年)らしい。
(ここでやっと本題のナポレオンが登場)
オーストリア軍1万が籠もるマントバ要塞を包囲中のフランス軍3万に対して、オーストリア軍は5万の軍を差し向ける。オーストリア軍はアルプスの峠道を三方に分かれて進撃、その兵力はそれぞれ、中央2万5千、右翼2万、左翼5千。
総兵力では圧倒的不利な状況のため、包囲を解いて撤退するのが常道とされる中、ナポレオンはオーストリア軍の横の連絡が困難という点に気づき、機動力を最大限に活かし各個撃破を試みる…。
銀英伝を観て、急にナポレオニックゲームがやりたくなった。
そこで、最も簡単そうで未プレイで積みゲーになっていたアドテクノス「バウツェンの戦い」を選んだ。
アドテクノス「バウツェンの戦い」
80年代、まとまった数のナポレオニックゲームを発売していた国内メーカーはアドテクノスだけだったと思う。リリースされていたナポレオニックゲームは次の4作。
- ナポレオン、モスクワへ
- ナポレオン帝国の崩壊
- バウツェンの戦い
- アウステルリッツの戦い(英語名はアウステルリッツの太陽)
いずれも手元にあるのだがなかなか取り組めないでいた。
ゲームの背景
題材となっているのは1813年5月20日午後から21日にかけて、フランス軍とプロシア・ロシア連合軍間で戦われた会戦だ。
この前年1812年のロシア遠征の失敗により一度は崩壊したフランス軍を立て直したナポレオンは、ロシアとプロシアの連合軍に対して打撃を与えるべくプロシア領内に侵攻した。
5月2日、リュッツェンで最初の戦いが行われフランス軍は連合軍を退けるものの、決定打を与えるまでには至らない。追撃したフランス軍に対し、ロシア・プロシア連合軍はドレスデンの60キロ東方、バウツェンにて陣を展開した。
ゲームシステムと特徴
スケール
- 1ヘックス=600メートル
- 1ターン=1時間(ただし19時~翌6時は夜間として1ターンとなる)
- 1ユニット=師団・旅団・連隊、他に指揮官ユニット(軍団長クラス)
基本システム
- フランス軍先攻、プレイヤーターンは①回復 ②砲撃 ③移動 ④戦闘からなる
- チットドリブンではなく、移動・戦闘は自由
- ZOCからの離脱時は士気チェックが必要。
指揮
- 指揮官ユニットはそれぞれの総指揮官ユニット(ナポレオン、ヴィトゲンシュテイン)と連絡線を確保する必要(距離の制約なし)
- 指揮官ユニットは指揮範囲(5ヘックス)を持ち、指揮範囲にはいっていない部隊ユニットは、移動、士気チェックにペナルティを受ける
- 指揮官ユニットとスタックしている部隊ユニットは、戦闘比修正、また士気チェック時にプラスの効果を得る
※ ただし総司令官であるナポレオンとウィトゲンシュタインユニットには上記の能力はなく、各指揮官への連絡線の大元としての役割しかない。なお、フランス軍側のネイとスールトは軍団長ではないが指揮能力を持つ指揮官ユニットとして登場している。
戦闘
- マストアタック
- 砲兵は2ヘックス先のユニットを攻撃可(LOS確保要)。ただし他の部隊ユニットを超えた砲撃は不可。砲撃結果は、士気チェック、無条件で混乱、無条件でステップロスがある(ただしいずれも確率は高くない)
- 戦闘結果表(CRT)の並びはランダム、高比率の場合も攻撃側が一方的に損害を受ける結果が散在している(”いじわるCRT”)
戦闘結果には、士気チェック、後退、1〜2ステップロス、双方1ステップロスがある。 - 戦闘結果によるステップロスについて1ステップ分だけは1ヘックス後退することで代替可
このため後退されてしまうと損害を与えられないことになる - 相手ユニットが後退・除去した場合、空いたヘックスに対して戦闘後前進が可能
- 戦闘結果による士気チェックに失敗したユニットは”混乱”となる。混乱状態のユニットは、ZOC無し。”混乱”状態のユニットは、敵ZOC内にあっても位置も攻撃は強要されない
- 騎兵には騎兵突撃などの特殊能力はない
その他
- ”混乱”ユニットは回復フェイズの士気チェックにより回復
- 夜間ターンは、砲撃、戦闘は実施不可。”混乱”は自動回復。
夜間ターンのはじめに相手ZOCにいるユニットはZOCにから離脱する必要(その際の士気チェック不要)
勝利条件
ゲーム終了時点での勝利ポイント差額により勝敗・レベルが決まる
勝利ポイントは除去したユニットの戦闘力(除去されたユニットが近衛軍団の場合は追加ポイントを被る)
町の占拠等はポイントに関係ない。
リプレイ
初期配置
マップ上方に左右に走るスプリ川の両岸に対峙する両軍(マップ上側が西、右側が北になる)。
スプリ川の上側(西岸)に位置した白抜き文字の青ユニットがフランス軍、川を挟んで、マップ右手側の黒文字の暗い青色(色がフランス軍と紛らわしい)のユニットがプロシア軍、左手側の緑色のユニットがロシア軍となる。
スプリ川東岸に陣取った連合軍に対し、フランス軍が集結するところからゲームは始まる。ゲーム開始後もフランス軍には陸続と増援が駆けつけるが、連合軍側はマップ上に並べられたユニットで全てとなる(今回は、史実ルールを採用)。
連合軍には制約があり、連合軍側はスプリ川河畔でフランス軍に直接対峙しているミロラヴィッチ軍団(ロシア)とクライスト軍団(プロシア)以外は予備部隊として、3ヘックス以内にフランス軍が近づくか、4ターンになるまでは活動を開始できない。
第1ターン/フランス軍プレイヤーターン
フランス軍はナポレオンがモルティエ率いる近衛軍団とともに戦場に到着するのにあわせ、15時に進撃を開始した。最右翼には、ウーディノ第Ⅻ軍団も到着。
マクドナル第Ⅸ軍団、マルモン第Ⅵ軍団、ベルトラン第Ⅳ軍団がそれぞれ橋梁や浅瀬の渡渉点より渡河を開始。
この3個軍団により、都合6箇所で発起された攻撃はダイスと”いじわるCRT”に阻まれ5箇所で失敗した。
第1ターン/連合軍プレイヤーターン
フランス軍の接近を受け(3ヘックス以内への接近)、プロシア軍総司令官ブリュッヒャー*1の軍団は待機状態から開放される。ブリュッヒャー軍団は、丘陵地帯を降り正面に位置する渡河点のフランス軍へ攻撃を開始した。
ブリュッヒャー軍団の勢いを前に、ベルトラン第Ⅳ軍団とともに渡河点を確保していたスールトは抗しきれず、橋頭堡を失い対岸へ押し戻された。
連合軍左翼に位置したミロラドヴィッチは、バウツェン市街防衛のため麾下の部隊を市街に集結させるが、これによりフランス軍右翼ウーディノ第Ⅻ軍団の前方がガラ空きとなった。
連合軍側の攻撃も全体には決して成功した内容ではなかったが、それでもブリュッヒャー軍団がフランス第Ⅳ軍団を押し戻したことは大きい。ただ戦闘後前進を行ったユニットは次のターン、マストアタックの制約に苦しめられることになる。
前線3個軍団以外の連合軍部隊は動けず。
第2ターン/フランス軍プレイヤーターン
フランス軍右翼
バウツェン市街への包囲についてマクドナル第Ⅸ軍団に近衛軍団の一部が加わった。近衛部隊は除去された際のペナルティが通常部隊より大きいため扱いには注意が必要だが、勝ちが見えている戦闘であれば積極的に参加させていきたい。
最右翼、ミロラドヴィッチ軍団が退いた領域をウーディノ第Ⅻ軍団が進撃する。定石に従えば連合軍左翼に対してこのまま延翼運動を行うのだろうが連合軍に仕掛けるタイミングを決めかねている。
フランス軍左翼
マルモン第Ⅵ軍団が中央部のプロシアのクライスト軍団を退け、連合軍中央部を開削した。
問題はスールト/ベルトランの第Ⅳ軍団。ブリュッヒャー軍団に対して渡河攻撃を試みるがことごとく跳ね返され、逆に河畔からも退かされる結果(AR:攻撃側撤退)となった。
ラ・トゥール・モーブールの騎兵軍団は後置状態だったが、ブリュッヒャー軍団が陣取る丘陵地域への攻撃に参加する。このゲームの騎兵ユニットは移動力が大きい部隊でしかなく、騎兵突撃のような特殊ルールは用意されていない。(ラ・トゥール・モーブール麾下の騎兵軍団のユニットは攻撃力も高いため、騎兵突撃等の能力は攻撃力として評価されているのかもしれない)。
第3ターン/フランス軍プレイヤーターン
フランス軍右翼
ウーディノ第Ⅻ軍団、マルモン第Ⅵ軍団は連合軍第2線に対して3ヘックス以内に抵触しない位置まで前進。
バウツェン市街では包囲されたミロラドヴィッチ軍団の残余の抵抗が続く。市街地の地形補正の効果は大きくなかなか排除できない。
フランス軍左翼
スールト/ベルトラン第Ⅳ軍団に対しブリュッヒャー軍団が頑強に抵抗を続けている。
最左翼にネイ第Ⅲ軍団がみえてきた。
第3ターン/連合軍プレイヤーターン
連合軍左翼
ミロラドヴィッチ軍団
は頑強に抵抗。ただし四方を囲まれた状態でマストアタックのため、後退できずに除去といった損害が増加。 フランス軍の攻撃で除去されるよりも、マストアタックにて攻撃を強要されたことによる自滅的な損害が大きい。
連合軍中央
クライスト軍団は壊滅状態だが第二線としてゴルチャコフ、ベルグ、ヨーク*2の各軍団が控えている。いずれも河川や堡塁に籠もっておりフランス軍も攻めあぐねるのではないかと期待する。さらに後方にはヴィトゲンシュテインとコンスタンティンのロシア近衛軍団が控えている。
ただいずれもこのターンはまだ活動できない。
連合軍右翼
ブリュッヒャー軍団から対岸のフランス軍への攻撃は失敗し逆に戦闘後前進によりフランス軍の再渡河を許すこととなった。このあたりマストアタックだけに難しい。ただ全体としてはスプリ川と丘陵による抵抗が続いている。
第4ターン/フランス軍プレイヤーターン
このターンより連合軍の移動制約がなくなるため、フランス軍側からしても今まで接近を避けてきた連合軍第二線に対して、全戦線で前進を開始する。
5月20日日中のターンはこのターンまでで、次の第5ターンは夜間ターンとなる。夜間ターンでは敵ZOCにはいっている部隊は全て退くことになるため、この第4ターンでどこまで攻撃するのかは検討が必要だろう。
フランス軍右翼
バウツェン市街に残ったミロラドヴィッチ軍団残余に対する包囲部隊を残し、マクドナルの第Ⅺ軍団、モルティエの近衛軍団が前進。バウツェン市街への攻撃は継続中
フランス軍中央部
スールト自ら渡河点に立ちようやく再奪取した橋頭堡(わずか1ヘックス)の拡大を図るべく将兵を叱咤激励するが、膠着状態はなかなか打破できない。
フランス軍左翼
ネイに続いてロリストンの第Ⅴ軍団がフランス軍最左翼に登場。これでフランス軍側もおおよそ部隊が揃った状態(翌日、若干追加で登場する)。
第4ターン/連合軍プレイヤーターン
(写真なし)
連合軍側の活動制約がなくなり全ての部隊が自由に移動・接敵が可能となる。
連合軍左翼
最左翼に位置するゴルチャコフ軍団はウーディノの軍団から回りこまれないように延翼するが、現在の林、村、河川、堡塁といった陣地自体をそのまま堅守する。
その右側に位置する、ベルグ、ヨークの各軍団も同様。
ロシア軍近衛軍団が丘陵を降り前進、かなりの部隊数だ
連合軍右翼
ブリュッヒャー軍団の抵抗は続き、橋頭堡を巡る戦いも膠着状態。
最右翼に位置するバルクライ軍団は、ネイとロリストンの軍団を湿地帯に挟まれた狭隘な地形部分に陣をとる。
感想戦
いったんプレイはここまで。
いろいろルール適用の間違いなど、細部への適用がずさんになってきたので仕切り直しです。
またそもそものナポレニックをしたい!という欲求がいったん満たされたので、おしまいとしました。
勝利条件が相手ユニットの除去だけなので、漫然と攻撃をしているだけではずるずると下がられてしまうだけです。史実と同じように”決定的な打撃を与えられない”まま終わることになります。
ついては包囲して相手の退路を断った状態での攻撃が必要となります。
フランス軍は両翼を延ばし相手を包囲するように動いていくことになるでしょう。ロシア・プロシア軍はフランス軍の延翼運動を妨害するように同様に伸ばしていくことになるのでしょう。
ただし部隊数は有限ですし、また移動力の制約もあります(ネイが進撃する北方地帯は湿地などの地形も妨害要素になります)
ツイッターでご教示いただいたのですが、フランス軍はこの後、第3ターンより登場したネイ麾下第3軍団の動きがポイントになるようです。ということは、このゲームの本番はこれからということですね・・・。
バウツェンの戦いに関する英語Wiki(この戦いは日本語Wikiがありません)によると史実では、ネイが包囲の口を閉じなかったためフランス軍が決定的な打撃を与えることができなかったといった趣旨の説明になっています。
ドイツ語Wikiでは戦いの様子は英語版よりも詳細に説明が施されていますが、ネイの責任については言及はあまりありません。ただネイの進撃により丘陵地帯に拠ったブリュッヒャー軍団が3方向から砲撃を受ける状態になったという記述はありますので、ネイ軍団の行動としては延翼と包囲ということなのでしょう。
私見ですがネイの置かれた状況は(結末も含め)、奉天会戦の際の乃木将軍麾下の第3軍の置かれた立場に通じるところがありそうです。
両軍複数の軍団(とそれに属する複数のユニット)が幾重にも重なる陣を引いた状態など、まさにナポレオン時代の会戦になっていて当初のナポレオニックをしたいという欲求を満足できました。
ルールの難易度は低くインストも簡単に済みます。
ゲームとしても、おそらく3時間程度で勝敗をつけることができる規模なのでゲーム会のあまった時間などで取り組むにはちょうど良い規模のように思います。
またマップもA2大ですので広げてもそれほど多くの場所をとらないためソロにも良さげです。
作戦研究の余地もありそうです。
マストアタックである点は慣れだとは思いますが、このゲームのアクセントのひとつだと思います。
さて今回のゲームではナポレオニックっぽい騎兵突撃や隊列変更といった要素はなかったので、次はそのような戦術要素があるナポレオニックを試してみたいなというところで終わりとします。
(おしまい)