「ASSAULT - Tactical Combat in Europe 1989*1」(GDW)を対戦しました。
Hobby Japanがライセンス版を発売していたシリーズ作品の第1作目にあたります。
1980年代当時懸念されていた米ソ両陣営の激突時を想定した戦術級になります。
1ヘックス=250メートル、1ユニット=1個小隊(半個小隊規模のものもあり)と往年の、「Panzer Blitzs」「Panzer Leader」(以降、PB/PL)と同スケール、また1ターン=5分です。
本作が発売されていた当時は、「SQUAD LEADER」はプレイしていましたが、このクラスの戦術級には食手が伸びませんでした。
という訳で今回、四半世紀以上ぶりにプレイする機会を得ました。
「ASSAULT」の共通ルールは第2作「ブーツアンドサドルズ」で改訂されていることをツイッターで指摘を受けたので、今回のプレイはこの改訂版ルールに準拠して実施しました。ルールブックは改訂版を用いましたが、チャート類は「ASSAULT」のものを用いたため、一部混在した部分があったかもしれません。
ルール概要
特徴的な部分を紹介します。
- シーケンスはオーソドックスな交替制
ソ連軍移動 ー 射撃(両軍とも可/同時解決)ー ソ連軍第2移動
ー米軍移動 ー 射撃(両軍とも可/同時解決)ー 米軍第2移動攻撃タイミングとしては他に「臨機射撃」や「近接突撃」があります。
- 司令部による指揮ルール
本ゲームのルールの特徴のひとつです。詳細な指揮ルールが用意されています。
中隊以上の部隊には司令部ユニットが用意されています。
各司令部ユニットは能力値(指揮ポイント:CP)を持っており、その能力値はシナリオ開始時にダイスによって決めます。
CPにより、配下ユニットの「モード変更」「戦闘モード時の移動」などを行います。射撃自体にはCPは不要ですが、戦闘モードへの変更や戦闘モードのままでの移動にはCPが必要ですので戦闘実施時には司令部ユニットの近く(視認下)に配置するのが合理的です(多くのCPを消費すれば司令部ユニット視認範囲外でも行動を行うことは可能)。
- ユニットには「移動モード」と「戦闘モード」があります。
両モードには一長一短があり、モード変更にはCPが必要です。
- ユニットに向きがあります。
車輛には前面装甲値と側面装甲値があります。
- 視認ルール
本ゲームの特徴的なルールのひとつです。
相手ユニットに視認されるまで両軍ユニットは裏返し、矢印のみが表示された面を向けます。部隊編成によってはダミーが相応に混ざっている可能性があります。
視認前のユニットには攻撃はできません。
視認にはチェックが必要で、距離・地形・部隊の種類(車輛と歩兵とでは車輛のほうが発見されやすい等)によって成功値が変わってきます。
視認チェックを行うユニットが偵察部隊の場合、ボーナスが付きます。視認前の敵ユニットに攻撃ができないことなどとあわせ、偵察部隊の有用性がゲーム内で表現されています。
- 射撃には「通常射撃」「対装甲射撃」「間接射撃」があります。
「対装甲射撃」の解決には、「命中判定」ー「貫通判定」ー「損失判定」といったステップを踏みます。
- 各シナリオの両軍に登場する部隊はチットによって決めます。
シナリオは3種類用意されているのですが、その中で両軍の編成は6パターンずつ用意されています。組み合わせとして36パターンあることになります。強力な部隊編成の場合もあれば、変わった編成、または貧弱な編成も混じっています。編成毎の差は勝利ポイントの掛け目として調整されています。例えば、強力な編成の場合は掛け目を低く設定されている等です。
相手がどのチットを引いたのかはプレイの最後まで明かされませんので、プレイ中、相手の部隊規模や編成は不明のまま進行します。
プレイ前
プレイ前に念入りにルールを確認しました。
本ゲームの場合、プレイ冒頭の部隊編成のチット引き、司令部能力値の判定から、プレイ中の視認チェックなど相手に秘匿した形で進められる処理が少なくありません。お互いに処理内容の理解が一致していることを確認しました。
また戦術級といえばつきものの、地形に伴うLOSの考え方についても認識合わせを行っています。LOSが通る通らないはプレイ中の判断にも影響するところですので、予め認識合わせをしておくに越すことはないでしょう。
今回のプレイにあたっては、選択ルールのうちミサイルだけは搭載弾薬数に制限があることとしました。M2ブラッドレーやBMPがばかすかミサイルを連射するのは非現実的ではないかなという判断です。
ミサイル以外の通常の砲について弾数制限のルールは採用していません。
作戦計画
選んだシナリオはシナリオ1「威力偵察」。
ダイスにより、当方はアメリカ軍を担当。Yさんがソ連軍を担当しました。
東西に横長のマップで、東端から侵入してきたソ連軍部隊が西端からの突破をはかり、アメリカ軍が阻止するというシナリオです。
勝利ポイントには突破成功または完全阻止による得点、突破ユニット数、撃破ユニット数による得点が計算されます。
全18ターンなので現実時間で1時間半の戦闘(5分x18=90分)に該当します。
問題のチット引きでしたが、けっこう強力な編成をひくことができました(戦力パターン=「4」)。
1個大隊規模のM1エイブラムス装備の戦車大隊(3個中隊編成)に、1個中隊規模の機械化歩兵、迫撃砲小隊、偵察小隊という編成です。
ただしプレイ開始時に手元にあるのは、このうち1個戦車中隊+偵察小隊のみ。ユニット数でいくとM1エイブラムスが4ユニット(3個小隊+司令部チーム)、M-3騎兵戦車が3ユニットにすぎません。残りは増援として8ターン後に登場することになります。
マップは細長く縦深があること、中央に丘陵地帯をおいた起伏のある地形のため、複数の防衛線を予め想定し、損害を与えつつも戦線の維持には固執せずに段階的に後退する遅滞戦闘を構想しました。
増援兵力がかなり強力なこともあり、中盤から終盤にかけての防衛線の設定は増援にまかせるとして、初期部隊についてはマップ中央部でのラインと、ソ連軍が来襲する前に前進することで確保する丘陵地帯を軸とした前進陣地を第1ラインとしました。
またソ連軍部隊に比べ米軍部隊はユニット数が少ないと想定されるため、M-1エイブラムスを用いた長距離攻撃をメインとし、第1ラインでの防衛は相手の出方次第では早々に捨てることも想定していました。
米軍は中央部より左側に配置、ソ連軍はマップ右端より登場し、左端に向けて突破を図る。今回増援が比較的充実していたため、初期配置部隊は後方の防衛線の事は考えずに正面に兵力を集中した。
なお実際のプレイにおいてはアメリカ軍のユニットはすべて裏向きの矢印が表示された面を表にした状態で配置される(写真内での矢印ユニットはダミーマーカーを表す)。
アメリカ軍の作戦想定
アメリカ軍の想定第1防衛戦は右側の黄色点線のラインとした。
主力のM1 2個小隊と中隊司令部チーム(半個小隊規模)は、「D」「E」がある丘陵地に位置させ、M3小隊を「A」「B」「F」に配置する。これによりソ連軍がどのルートをたどったとしても捕捉できると想定した。
特に「E」点については、中央の国道を邴原できる制高点にあたるため、いち早く確保することが必要とされる。ソ連軍の出鼻をくじいた上で、損害を広げないうちに第2防衛線に後退することを想定した。
またM3については防御も弱いため、敵部隊の当たり具合によってはすぐに後退する。「C」点の市街ヘックスにはダミーを進出させる。同様に「A」「B」「F」の各M3小隊の前方にもダミーを進出させ、撹乱させる。
第2防衛線には予備部隊として「J」地点にM11個小隊を後置する。
初期ターン(第1~6ターン)
ソ連軍の先鋒が進出してきますが意外に数は多くはありません。
前哨戦は「A」対「1」、また「B」対「3」の間で開始されます。いずれも偵察車輛のため相手に有効な打撃を与えることができないでいましたが、数度の射撃の応酬の果てに、武装に優れるM3装備のアメリカ軍偵察小隊により、ソ連軍の偵察小隊はいずれも撃破された。
M3はM2ブラッドレー歩兵戦闘車から乗車歩兵を減らし代わりに予備弾薬を多く搭載していると言われる。武装はM2ブラッドレーと同じで主武装が25ミリ機関砲、またTOW対戦車ミサイルを搭載している。
ゲーム内ではM3のミサイル積載数は1発となっている(実際は2発)。ソ連軍側の偵察小隊が装備する車輛は、BMP-2とBRDM-2。
BMP-2(ゲーム内ではBMP-B)は、歩兵戦闘車BMP-1の改良型。主武装は30ミリ機関砲、対戦車ミサイルランチャー。
BRDM-2装甲偵察哨戒車の主武装は機関銃(14.5ミリ)。
アメリカ軍偵察小隊も、ソ連軍偵察小隊も、搭載のミサイルを使うのは主力戦車が姿を現してからということで使用を控えたことにより、両軍とも機関砲の打ち合いというこにとになったのでした。
上のマップ図と左右が逆なので注意されたい。
なおソ連軍が陣する丘陵地には林や住居地がなどが点在しているため、M1エイブラムス小隊が位置する「E」地点付近からソ連軍の「3」や「4」の地点などは視認できない状態でした。
(つづく)
*1:GDWのオリジナル版はサブタイトルが、”Tactical Combat in Europe 1985"と日本版と異なるんですよね。内容が異なるのかは現時点不明。