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「THE LAST HUNDRED YARDS」(GMT)を対戦する【2戦目】(2/2)

2戦目は西部戦線を扱ったシリーズ1作目から車両が登場するシナリオを選択。「THE LAST HUNDRED YARDS」(以降、LHY)の車両ルールは歩兵中心の戦術級ゲームということから、オーバーランや近接戦闘(歩兵と車両との白兵戦)などがルール化されています。もちろん戦車同士の戦闘や、戦闘車両と対戦車砲といった戦闘も扱うのですが、全体にはシンプルに組み上げられています。

 

 


 

 

ルール紹介

車両ルール

車両はASLと同じくユニットは1両単位。
車両ユニットに表記される情報は歩兵ユニットに近いです。
攻撃系は左側の上から、「対戦車戦闘値」「白兵戦戦闘値(近接戦闘値)」「小火器戦闘値」の3種類。防御系の数値として、右下に「正面防御力」と「側面・後背防御力」となっています。移動力の記載がないのは、ゲーム中、装甲車両、また非装甲車両はそれぞれ移動力が一律に決まっているからです。戦場での移動速度というのは車両によってあまり差がでないという整理なのでしょう。
ちなみに歩兵ユニット(ドイツ兵)はこちら。

左側の数値は上から「対戦車戦闘値」「白兵戦戦闘値(近接戦闘値)」「小火器戦闘値」と車両ユニットを同じですが、右下は「cohesion(統率値)」とASLでいうところの士気値のような数値になっています。

LHY独特の「アクション-リアクションシステム」の中で、車両は歩兵ユニットのように相手の活動を視認しなければアクションを起こせないわけではありません。非イニシアティブプレイヤーについて車両ユニット、敵のアクションを視認せずにアクションの実施が可能になっています。
ただし車両の活動は相手のリアクションを呼び起こすことになりますので、むやみに走り回っていると余計な敵ユニットを活性化させてしまうかもしれません。

マップ上にいる車両は機動中なのか、停車状態にあるのかは明確に区別されます。ターンの区切りに、あるヘックスに車両ユニットが配置されていたとして、その車両は移動途中にヘックスにいるのか、停車しているのかを区別しているということになります。

対戦車戦闘(対戦車射撃)の解決は、判定に用いる結果表は異なるのですが手順としては歩兵戦闘と同じ手順を踏みます。結果は効果があったかなかったか、効果としてはショック状態や破壊などがあります。

参考:

戦術級ゲームにおける戦車戦の戦闘解決の方法はゲームによって特色があります。
LHYでの対戦車戦闘の戦闘解決は、1回のダイスで決まります。判定には距離や車体の向き、機動中/停車中の差など複数の修正が加わります。砲弾による差異はなく、対歩兵戦闘に使われる榴弾を用いる射撃は考慮されていません。
ASLや「OLD SHOOL TACTICAL」の場合は、命中判定と、命中した場合の損害判定の2回の判定から成り立っています。同じ車体を使った車輌でも、短砲身のⅣ号戦車と、長砲身の車輌とでは命中率が異なってきます。射撃を行う際に使う砲弾でも異なる解決を行います。
さらに凝った対戦車線を扱う、いずれも戦車戦闘をメインテーマとする「タイガーⅠ」シリーズ(ツクダ)や「PANZER」シリーズ(GMT)といった作品では、①命中判定 ②命中箇所判定 ③破壊判定といったように戦闘解決のシーケンスが複雑になっていきます。ただこの種類の作品になると、「タイガーⅠ」シリーズは歩兵は登場しませんし、「PANZER」シリーズの歩兵は付け足しのような扱いです。

 

タイムラプス

LHYのシナリオにはターン数の定めはなく、代わりに45分や60分といったゲーム内時間の制限が定められています。

各ターンが終了すると、10面ダイスを振りそのターンに何分(2~5分)消費したのかを決めます。シナリオで設定された時間を使い切ったところでシナリオは終了となります。このためシナリオのターン数は可変ということになります。

参考:
ASL(Advanced Squad Leader)のシナリオでは通常のシナリオではターン数が決められていますが、OST(Old School Tactical)のシナリオは最終ターンにダイスを振って一定の目が出ると延長戦として2ターン程度ターンが追加になるという仕掛けがありました。

 

AAR ミッション7「Sickle(鎌)」

1944年8月、補給不足から進撃が止まったアメリカ第3軍に対してドイツ軍が反撃を行ったというシナリオです。攻撃側がドイツ軍、防御側がアメリカ軍というシナリオにあたります。アメリカ軍を担当。

勝利条件はゲーム終了時に、川に架かる橋(2箇所にある)か、浅瀬(盤面の12という数字の記載箇所の左上あたりに川を横切る薄い茶色の部分:1箇所)のヘックスに隣接しているか2ヘックス以内にいることが必要とあります。
こうした、最終ターンにある地点の占拠が要求されるタイプの勝利条件の場合、最終ターンに登場して勝利条件を満たすように動くというタッチダウンができるので、直感的には防御側にあたるアメリカ軍有利のように感じました。

 

攻撃側になるドイツ軍はマップ右側から侵攻。2個歩兵小隊に機関銃班、さらに四号戦車4台。
アメリカ軍はマップ12に隠蔽配置。1個歩兵小隊に、M36が1両、57ミリ対戦車砲、対戦車チーム(バズーカー砲装備)。
マップの広さやユニットの数からすると、ASLというよりはASLSK(ASLスターターキット)のシナリオ規模ですね。

 

アメリカ軍の初期配置。マップ右端から、下側の丘陵に57ミリ対戦車砲。ASLでの経験則からは57ミリ対戦車砲は非力な部類の砲なのでどこまで効果があるかは不明。接近する戦車を撃った後、後退する想定だったが・・。
同じくマップ右上の丘陵に支援砲撃の要請のために指揮官と機関銃班を配置。LHYの機関銃は歩兵ユニットの火力強化版という性格に過ぎず、ASLの機関銃のようにROFが回るといった凶悪な性格は与えられていない。
アメリカ軍唯一の装甲車両となるM-36は街道沿いの建物の連なった最初のヘックスに配置。
歩兵1個小隊(3個分隊)はそれぞれドイツ軍の立場からすると籠もられるといやだなと思うような場所に配置。最後に左端に1個対戦車班ユニットを配置。最後のタッチダウン担当です。
なおここまで挙げた配置は初期状態では隠蔽状態(盤面には登場しない)、かつIP(タコツボのような簡易陣地)にいることになります。

 

アメリカ軍頼みのM-36。
対戦車戦闘値は圧倒(Ⅳ号戦車の5に対して8)しているが、防御力はⅣ号戦車にやや劣るため、撃ち合いになると撃破される懸念は十分にある。一撃目で確実に相手を仕留める必要がある(戦闘解決は同時解決のため、相互に撃ち合った場合、同時に損害が適用されることになる)。

 

対戦車値3の57ミリ対戦車砲。Ⅳ号戦車相手だと本来は横や後ろから撃ちたいところですが、今回のマップは前線が狭いのでそういうポジション取りができないですね。

 

右側の丘陵地の上にいる対戦車砲(☆マークが載っているスタック)は、1回程度Ⅳ号戦車に射撃するがいずれも効果無し。丘陵地の浅瀬を渡ってドイツ歩兵があがってきて、このまま居座るか(戦闘不能になるのは時間の問題)、撤退するか迷っている図。実を言うとこの丘陵地のふもとに浅瀬があることを見逃していて、これほど急にドイツ軍に迫られることを予想していなかった。

左側の丘陵地にいた指揮官+機関銃チーム(☆マークが載っているスタック)もあまり戦果はなく、支援砲撃は1~2回働いたものの、その後、呼び出すのを忘れていました!
戦車砲チームよりは長持ちはしたものの、その後、ふもとからⅣ号戦車や歩兵に迫られてやがて、村のほうに落ち延びていくことになります。

ASLで軽機関銃以上の機関銃や対戦車砲のような火砲には「ROF」というナンバーが与えられており、戦闘解決時にダイスの1個がROF以下の目であった場合、そのまま2回目の攻撃ができるという性能が与えられている。ROF以下の目を出す限り、回数は無制限に射撃でき、ゲーム中、発生した場合は俗に「ROFが回った」と言ったりする。中でも機関銃は”ROFが回りやすい”設定になっており、時として何度も機関銃による射撃が続くという凶悪な状況が起きたりする。
前段が長くなったが、LHYの機関銃班にはASLのROFのような凶悪な性能は与えられていない。歩兵ユニットの火力強化版(ただし人数が少ないので白兵戦は弱いよ)というユニットになっている。

川岸の土手に潜んでいたアメリカ軍歩兵分隊(上にタコツボのマーカーを載せている)は、浅瀬を渡河しようとするドイツ兵に射撃した(上に若葉色地に「2」という数値を載せたスタック)。

 

右側の丘陵地では対戦車砲が牽引トラックに引かれて逃げ出しています。ドイツ歩兵にかなり接近したのですが、攻撃をかいくぐったようです。

ASLでは対戦車砲や機関銃などは砲火器のユニットとその操作を行う操作班とが別ユニットで用意されていましたが、LHYでは同一のユニットになっており、対戦車砲のユニットは操作班を含んだ扱いになっています。
LHYは火砲を牽引するトラックの扱いがユニークです。
ASLで火砲を移動させる場合は、火砲のところまで車両(トラック)ユニットをもってきて、牽引させる必要があるのですが、LHYは火砲を牽引して移動したい時にその場にトラックユニットが登場するのです。使わない時にはいったんマップ上から取り除き、移動の際に登場するというものです。たしかにASLのように常時、牽引トラックのユニットがマップ上にあるのも自然ですが、使わない時にはトラックのユニットって持て余してしまうんですよね・・。歩兵の移動に使おうと考えても、中途半端にしか使えないなど。

左側の丘陵地も、指揮官+機関銃チームは稜線沿いに建物があったヘックスに退避しています。その近くにいるドイツ歩兵から「ヒーロー」(鉄十字章のマーカー)が発生しています。戦闘結果の判定時に稀に現れ、ASLの狂暴兵と同じく無条件に敵に突入していく兵になります。

川岸の土手にいる歩兵分隊はいやらしくドイツ歩兵を近づけずに持久しています。

マップの一番奥に横に並んでいるのが4両のⅣ号戦車。

 

中盤から終盤にかけての展開。
この時点までにM36はⅣ号戦車2両を撃破。90ミリ砲の威力を見せつけていたが、ここに来て左側の丘陵地を迂回してきたⅣ号戦車がM36の側面を捉え、一方正面にはもう1両のドイツ戦車が射撃してきた。さらには近接してきたドイツ歩兵の近接戦闘(白兵戦)を仕掛けられたため、アメリカ軍は近場にいた半個分隊を白兵戦に投じた!

絶対絶命の状態であったアメリカ軍戦車は、混乱状態に陥るものの撃破は免れ、側背にまわってきたⅣ号戦車を逆に撃破し、さらにドイツ歩兵による近接攻撃を斥けるという離れ業を見せた。

LHYの車輌は、ASLの車輌ユニットのように常にユニットの向きで厳密にどこを向いているのかという管理をされる訳ではない。移動した直後や射撃を行った場合、その方向が正面として扱われる。また今回のように敵ユニットから異なった方向から射撃を受けた場合は、正面と後面とが区別される。車輌の場合は防御力に大きな影響がある。融通性をもたせたルールと言って良い

 

終盤、タイムラプスシステムによりシナリオで定められた時間を使い切った段階。橋梁2箇所は優にアメリカ軍が抑えた状態。

本日の1戦目のシナリオをもそうだったが攻撃側は時間制約が厳しい。攻撃側はもっと積極的に、損害を顧みずに進撃しろ、ということなのだろう。

今回、1両しかないM36の目が良く、ドイツ軍の攻撃をぎりぎりのところで交わし続けたが、アメリカ軍からするとこのM36 がいなければドイツ軍にどう対抗するかわからないというところはある。

 

久々にプレイしたLHYだがルールがかなりクリアになってきた。シナリオ規模も小規模なのでプレイしやすく、またルールも重くないのも良い。また機会があればプレイしたい(VASSALモジュールもあるのでソロも含め)

同じく新興の戦術級ゲームである「OLD SCHOOL TACTICAL」(Flying Pig Games)を対戦した際は、プレイ後に未消化感があったが本ゲームについて言えばプレイ後感覚も悪くなかった。

 

(了)