Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム

「STARGARD SOLSTICE(ゾンネンヴェンデ作戦)」(3CG)を対戦する

1945年1月~2月、ポメラニア地方のスタルガルト(Stargard)、シュチェチン(Szczecin)付近で行われた戦闘を扱った表題ゲームを対戦しました。

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1ユニット=大隊~連隊単位

チットドリブン制で、軍団毎に活性化を実施し移動や戦闘を行います。

題材はドイツ軍の最終盤に実施された攻勢作戦のひとつです。
序盤、ドイツ軍の攻勢にはじまります。当初、ソ連軍の対応は鈍いのですが、ゲームが進行するにつれ増援を得て、活性化も活発になっていくなど主導権を取り返していくというのが想定される展開です。

結果から言えばソ連軍を担当し、惨敗しました。
ドイツ軍から主導権を取り戻せないまま主力を失ってしまいました。ドイツ軍は途中、主力の2個軍団のうちの1個軍団を総統命令で転出させられるという(この主力1個軍団の転出はイベントとして発生するが、確率的にはほとんどの場合発生する)事態になるのですが、機動防御によりソ連軍の反撃の芽をへし折り続けます。

チットドリブン特有のクセはありますが、良いゲームでした。

またマップ、ユニットともコンポーネントがきれいです(最近のゲームはコンポーネントがきれいなものが多いですね)。箱絵の一斉射撃しているトラック搭載のカチューシャロケットのイラストも良いですね。

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フルマップ1枚。両軍の初期配置状態。両軍とも東西に翼を張っていて壮観。作戦級ファンとしてはこういう布陣を見るだけでワクワクする。
手前の赤色・茶色系のユニットがソ連軍。奥側の黒色・青灰色系のユニットがドイツ軍。黄色ユニットがおかれた場所は、勝利条件に関わる勝利ポイントが付与された都市・町を表す。
写真では、マップ手前が南・奥側が北になる。ソ連軍は南側から北に攻め上げている状態。マップ左奥にある大きな青色のエリアがオデール河やそれに連なる湖だが、マップから見切れている位置、すぐ北にはバルト海がある。
 

ゲームシステム

チットドリブンシステムです。
両軍の軍団名が記入されたチットをいれたカップの中から、1枚ずつチットを引きます。引かれたチットに記載された軍団が活性化し、活動が終わると次のチットが引かれます。両軍はターン毎に活性化できる軍団の数が決まっているため、その数に達するとそれ以上、そのターンは活動を行うことはできません。
またチットの引かれる順番はランダムになりますので、片方のプレイヤーのチットが連続して引かれたり、望んだタイミングで引かれない、一部の軍団は毎回動かないといったことが発生します。

 

ターンによって引くことができるチット枚数をコントロールすることで、ゲームに史実に即したドラマ性を与えています。最初ドイツ軍のチット枚数は多く活発に活動できます。一方のソ連軍は使うことができるチットの枚数は限定的ですが、ターンが進むにつれ枚数は増加していき、ある時点でチット枚数の多寡はドイツ軍と逆転することになります。

ドイツ軍は活性化できる軍団が指定されていないワイルドカードのようなチットを使うことができます。ソ連軍にもあるのはあるのですが、枚数は少ないです。ドイツ軍のほうがより柔軟に指揮を行うことができたという、指揮レベルでの違いを表しているものです。
このワイルドカードのようなチットを含めると、ひとつの軍団が1ターンの中で複数回、活性化することも可能です。
まさにゲーム展開はチットドローによって彩られるといってよいでしょう。

 

戦闘システムは通常の移動-戦闘のオーソドックスな手順と、メイアタックのシステムになっています。二次移動・二次攻撃はシステム化されていません。
敵ZOCへの侵入時と脱出時に+αな移動力を消費する必要があります。この+αなペナルティ移動力を支払うことができるのであれば、敵ZOCから敵ZOCへの直接移動が可能となります。移動力はドイツ軍ユニットのほうが優れるため、通常のZOCゲームではできないような動きができ、ソ連軍を翻弄するでしょう。

 

ゲームの展開

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ソ連軍左翼(西部)戦線。初期ターン。弱体化したドイツ軍(灰色ユニット)が守る町を、ソ連軍親衛戦車軍団(赤色ユニット)が迫る。ただソ連軍の軍団は複数の軍団が重

なり合うように左右に広がって展開しているため、各軍団司令部の指揮範囲のコントロールが面倒。
装甲車輛を装備した部隊のユニットは主力車輛のシルエットがデザインされていてきれい。ドイツ軍にはパンターヘッツァーに混じってティーゲルⅡがいたりする。一方のソ連軍にはT34系やJS系に混じってレンドリースっぽい車輛も。

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ソ連軍右翼(東部)戦線。両軍薄く展開している。このあたりに配置されたソ連軍の軍団は初期ではなかなか活性化しないため扱いが難しい。

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中央戦線。中央で目立つ黒地に白抜き文字は言わずもがな武装親衛隊(SS)の2軍団。兵種記号が青く塗られているユニットと赤く塗られているところで区別する。
この後、両軍団は南下(写真手前方面に移動)していく。

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中央戦線。SS装甲軍団2個の攻撃にソ連軍は手前に押し込められつつある様子。この直後、SS装甲軍団の1個は総統の命令により転進することを余儀なくされるというイベントが発生(一定ターン内でゲームからの脱出が求められる。満たせない場合はベナルティが課せられる)、ソ連軍はその戦線に開いた穴を・・とか虫の良いことを考えるが・・。

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ソ連軍投了間近な状態。ドイツ軍の黒色のSSユニットが半減しているのは1個軍団がごっそりと転進させられたため。
ソ連軍に援軍は集まっているものの、戦力の集中が不十分。ドイツ軍は勝利ポイントを得る町はがっちりと守備に転じ、どうしようも動かし様がなくなったと判断し、投了を宣した。

 

感想戦

チットドリブンシステムはチットを引くということから来るランダム性と、チットの枚数や性格付けを行うことでゲームの流れにデザイナーによる恣意的な演出を施すことができるといった特徴がある一方、いくつかの弱点があるように思います。この点は以前にプレイした「耳川の戦い」(国際通信社コマンドマガジン付録)のプレイ時にも感じましたがゲームが進むにつれ1枚のチットにより動かすことができるユニットが少なくなっていき、相手に与える衝力が小さくなっていく。もちろんチットドリブンではない通常のゲームでも、後半になると部隊数が少なくなっていくため全軍での攻撃力が失われていくのですが、チットドリブンの場合は一度に移動や戦闘ができるユニットがそのチットが活性化できる範囲に限定されるため、攻撃力の減衰がより顕著に現れるように感じます。隣の軍団にはまだ十分なユニットがいるのだが、チットで活性化できる範囲を越えて共同での攻撃はできないので(複数軍団を同時に活性化できるチットを含めているゲームもある)、自前の軍団だけで攻撃をおこなわなければならない。だが、もはや自前の軍団配下には十分なユニットがない、ということが起こり得ます。

ゲームスタート時点では均衡していた両軍の戦力がある時点でバランスを崩し始めると、通常のゲームに比べチットドリブンのほうが減衰スピードは顕著になるような印象です。

今回のプレイで何が起こったかというと、ドイツ軍は前半の活発に活動できる間に、逆に反応が鈍いソ連軍の各軍団の主力である最大戦力である戦車連隊・大隊のユニットを集中的に攻撃したこと。もちろんここにソ連軍が戦線の後退を含めた柔軟な対応ができなかったこともあり、ソ連軍は各軍団に数ユニットある最精鋭の虎の子部隊を失っていくことになりました。
いざソ連軍が反攻を行う段階になっても各軍団は最大戦力ユニットを失ったこともあり、チット1枚の活性化の中で活性化できる戦力に限界が生じ、ドイツ軍に対して十分な反撃をできなくなってしまったのです。

もちろん現実においても軍団の指揮範囲を越えた部隊を用いた共同攻撃は難しいんだよとか、ゲーム的にはチットドリブンの特性を踏まえた上で行動するべきだという話はあるのでしょうが、まぁここにひとつの戦訓を得た訳です。

 

「PETIT WARGAMES SHOP 小さなウォーゲーム屋での本ゲームの紹介では、「両軍に勝利するチャンス、あるいは敗北するリスクが潜んでおり、」とあるのですが、まさにそのとおりだと思います。

ドイツ軍は前半比較的活発に行動できる反面、主力となる2軍団以外の部隊は貧弱です。しかも2個の主力軍団のうちのひとつは前半にランダムに発生するイベントにより強制的に退場させられます(総統命令による転進)。ランダムとはいいながらも、ゲーム内でその転進命令が出ない確率は36分の1ということなので、タイミングは別にしてほぼ実施が予想されるイベントということができそうです。
主力の転進後、残る1個軍団でどう戦っていくのか・・。ドイツ軍にとって良い材料のひとつは航空支援が厚い事です。この時期、あまりにも急速な戦線の進展によりソ連軍は航空部隊の再配置・前線飛行場の整備等が追いつかず十分な航空部隊を地上支援に回せなかったという事情の一方で、ドイツ軍は急速に詰まった戦線により航空支援を多く集めることができるようになっていたというのです。

一方のソ連軍は冒頭、不意を討たれたようで活性化は限定的です。ただしこれはターンを追う毎に拡大していく。また毎ターンの増援も強力です。一つ問題があるとすると活性化単位であるそれぞれの軍団が散らばりすぎているところがあること。
チットを引いて活性化する際、活性化することができるユニットはその軍団司令部ユニットの指揮範囲内にあるユニットのみです。ソ連軍は初期配置や増援としての登場位置が同じ軍団であっても離れているものもあるなど、一部行動に足枷をはめられたようなところがあります。

ゲーム端緒においてはドイツ軍の勢いを止めることは難しいと割り切って、柔軟に戦線を後退させるなりしておけばよかった。
実はソ連軍には各都市についていつまでに占拠することという占領期限がペナルティ付きで用意されています。期限は史実における占領時期にあわせて設定されているのですが、ついつい強気の強硬策にはしってしまいました。

 

ゾンネンヴェルデ作戦

例によって日本語ウィキはありませんので英文ウィキから*1

 

 

 

ポメラニア

舞台となったポメラニア地方はベルリンからみると北東。今回のゲームの舞台となるシチュチェンは北東150キロの距離にあたります。東京から北東に150キロだと日立市あたりになると思えば、ソ連軍は目と鼻の先に来ている、ということになるでしょう。

このポメラニア地方、現在はポーランド西部に位置します。歴史的に大ドイツの植民がされてきた地方ですが、幾多の変遷をたどって今にいたっています。

  1. 1871年ドイツ帝国建国時はドイツ領でした。
  2. 第一次世界大戦後のヴェルサイユ条約において建国されたポーランドに割譲されます。
  3. 第二次世界大戦開始後、1939年にドイツに占領され、ドイツはドイツ系住民による投票などを行いドイツ領であることを宣言します(が、戦時中であったため、連合国には無視されます)。
  4. 第二次世界大戦後のポツダム会談で宣言されたポツダム協定において ポーランド領とされ、さらにポーランド領・ソ連領とされた地域に住むドイツ人はすべてドイツ領まで追放されます(ドイツ人追放)。この時生まれたドイツ難民の数は一説には1400万人になるといいます。
  5. 戦後、西ドイツはポメラニアを含む「旧ドイツ東部領土」がソ連ないしはポーランドの占領下に置かれているという見解を取っていました。
  6. ベルリンの壁崩壊をきっかけとした東西ドイツ統一の動きの中で、時の首相、ヘルムート・コールポツダム協定で制定たれたオーデル=ナイセ線の承認へと動き、国内勢力の猛烈な反発を招いたものの、1990年東西ドイツの統一が達成されると、オーデル=ナイセ線の東領域に対する全ての請求を放棄します。これによりオーデル=ナイセ線は、正式な条約として確定します。1990年11月14日にドイツ・ポーランド間で国境条約が締結され、国境が正式承認されることになります。

長々と引用したのは戦後処理の話を初めて知ったため。今どきは学校の地理や現代史の中で触れるのかな?それにしてもこのドイツの領土放棄の話って、日本ではあまり引用されませんよね?終戦前に占領された地と、終戦後の火事場泥棒的なやり方で奪われた地の違いということでしょうか。

さて蛇足な情報ですが、犬種のひとつであるポメラニアンポメラニアが原産だそうです。

 (おわり)

 

 

*1:歴史・戦史・兵器の記事について日本語版には記事がなく、英語や他言語に記事があるということはよくあるが、中文版はあることがけっこう多い。それだけ記事を書いてくれる人がいるということなのだろうが、素直によいなと思う。