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歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

2021年こんなゲームをした(下半期編)(1/2)【改訂】

 

キリストの降臨(Advend)を待ち望む・・転じてクリスマスの到来を扱う「Advend Calender」。ウォーゲーマーがクリスマスを待ち望んでいるのかはよくわかりませんが*1、今年5年目を迎えるHAさん主催の「War Gamers Advend Calender」に初参加させていただきました。
本記事はその投稿記事になります。

半ば無邪気に考えなしに応募したのですが、他のブロガーのみなさんの記事を見ているとテーマへの掘り下げや思慮の深さなどなど感心することしきり。翻って自分の記事は、というと、とりあげるゲーム類も流行りや時流など全く無視、気が向くままに選んだという一貫性すらないという・・。

自己満足的、プレイゲーム備忘録「こんなゲームをした」2021年度下半期版になります。まずはご笑覧ください。

 

ちなみに上半期版も記していてこちらになります。

 

 

 

戦術級

実は戦術級ゲームが好きです。
心理学的自己分析としては、戦術級ゲーム好きというのはプラモデルやミニチュアモデルのコレクションに代わる代償行為なのではないでしょうか。
模型やモデルを並べるのは場所が必要ですし、コレクションするには結構なお金も必要でしょう。プラモデルにはさらに製作時間の問題があります。時間がない(余裕がない)社会人には本腰いれて取り組むにはなかなかハードルが高いです。その点、ボードゲームであればユニットは場所をとりません。ともあれ。
兵器ファンとしては艦船 >陸上兵器 >航空機の順番で好きなのですが、ゲームとして好んで遊ぶのは、陸上兵器 > 艦船 >航空機 の順番ですね。

 

ASSAULT(GDW)

1980年代欧州を舞台に米ソ間で起こったかもしれない戦闘を小隊規模のユニットで描いた戦術級。ホビージャパンからシリーズ2作目まで日本語版が発売され、それなりに売れたっぽいので、当時のプレイヤー間での知名度はかなり高い作品。

状況が設定されたシナリオを選ぶと、勝利条件は公開されるものの、お互いに相手の兵力は全く不明というところから始まる*2。これがかなり新鮮で、刺激的。相手の勢力がわからない上に、盤上に登場した段階では「?」マークが描かれた隠蔽状態で登場するため、ダミーなのか本物の兵力なのかさえわからない。このため偵察ユニットによって敵情を確認するところから展開していくことになる。

スケールとしてはPanzer BlitzやPanzer Leaderと同規模ながら、司令部と指揮系統、移動時と戦闘時とで異なる隊列などもルール化されている。一方でハプニングやイベントといったゲーム内での不確実性の演出*3は抑え気味で真面目なデザインという印象。

良いゲームと思う一方、いまひとつブレイク感がないのはソロプレイに向かないためなのかな、と思う。対戦時の感覚は魅力なだけに残念。

 

 

 

SS装甲師団長(Game Journal)

オリジナルゲームはアドテクノスが発売していた「ドイツ装甲師団長」。ランダムに組成された師団規模の部隊を率いて戦っていく。
同じコンセプトでデザインされた作品がリリースされている。
ゲームジャーナル誌で「ドイツ装甲師団長2」、さらに好評であったということで西部戦線版として本作「SS装甲師団長」がデザインされた。

基本コンセプトはシリーズ作のいずれも同一で、相手の作戦意図や部隊内容が不明の状態ではじまる。「ASSAULT」では相手の部隊内容が不明という状態でゲームが行われるが、本作ではさらには作戦意図(勝利条件)も不明ということになる。勝利条件は両プレイヤーがそれぞれチットを引くことで決められ、チットの結果は最後まで相手に秘匿される。相手の目的が、戦線の突破なのか、点在する町や村の占拠なのか、相手の撃滅なのか等々、最後までわからない。ゲーム終了時に引いたチットを明かし、勝利条件を満たしているかによって勝敗を決めるというシステムになっている。

部隊編成や規模も兵種・装備兵器毎に何コマ登場するのかをひとつひとつダイスで決めていく。この瞬間は楽しい。
特に出現頻度が低い強力な兵器(ドイツ軍であればティーゲルⅡなどなど)やマイナー兵器(例えばヴィルベルヴィント)が登場することになった時には歓声をあげたくなる。登場兵器のダイスは相手に秘匿して振られるので、相手がどのような編成・装備なのかは戦ってみるまでわからない。

こうしたランダム性を取り入れたゲームシステムやダイスを振って決める自軍部隊の編成などもありプレイは非常に魅力的なのだが、おもちゃっぽい感覚というか箱庭感が拭えないのも事実。なんだろう、これは・・と思うに、「大戦略」のようなPCゲームに近いというか・・。師団対師団という規模の戦闘の割には舞台が完全なランダムマップで表現されているためなのかな?

 

 

 

作戦級

The Korean War(Compass Games)

旧VICTORY GAMESの再販。
ユニットもマップもサイズアップして、マップに至ってはフルサイズ4枚というビッグゲームになった。

ゲームのスケールが1ターン=1ヶ月であることを聞いて、戦線が南から北へ、さらに押し戻してと目まぐるしく変わっていった朝鮮戦争を再現できるものなのかと思ったが、全くの杞憂だった。
両プレイヤーが交互にユニットを活性化させていくアクティベーションシステム、補給廠を前線に設け補給ポイントを配分していく補給ルール、歩兵戦闘の前に解決される装甲部隊ルールなどにより見事に朝鮮戦争の雰囲気を出しているといってよい内容だった。

下半期だけで3回プレイしたがいずれも楽しめた。
マップの大きさに比べてユニット数が多くはないこともあり、1日あれば開戦から釜山防衛線、仁川上陸作戦あたりまでいけるという手軽さも良い。

上級ゲームになると国際情勢ルールが追加され、特に国連軍(アメリカ軍)側は介入の度合いを考慮しながらゲームをすすめることになる。
攻撃対象範囲を気にせずに攻撃するとか、大規模な介入を行うことも可能だが、単に朝鮮半島だけではなく国際情勢全体の緊張度を高めることになり、場合によれば核兵器の使用ができるようになったり、最後には第三次世界大戦の勃発することさえある。
北朝鮮軍側も国際情勢に基づくイベントが発生する。ソ連軍の介入、中共軍の台湾侵攻だ。当時の情勢が局地的な戦争にとどまらなくなる可能性があったことを示唆しており、単純にマップ上の状況だけではないという演出がよかった。*4

 

 

 

STORM OVER DIEN BIEN PHU(MMP)

ディエンビエンフーの戦いをエリアインパルスシステムで描いた作品。

元来の作戦意図はベトナム軍兵力を誘引し撃滅するというものだったが、想定を上回る兵力を集められて逆にフランス軍が討滅されてしまったという戦いだ。
ゲームは飛行場を中心に防御陣を展開するフランス軍に対して周囲からベトナム軍が攻撃を開始するところからはじまる。

ゲーム的ではあるがフランス軍は、飛行場より南方の荒れ地に構築した陣地数エリアをゲーム終了時に確保していれば勝利、という勝利条件を見越して段階的な戦線の縮小と遅滞行動をとり、ベトナム軍はそれらを阻止するべく動くことになる。フランス軍としては失陥することで補給や部隊の回復などで不利な条件がつくことになる飛行場をいつ諦めるのか、といった点もポイントになるのかもしれない。

防御側の占拠しているエリアが少なくなっていくと、勝利条件となっているエリアに大量の防御側ユニットが集中してしまい、攻撃側ユニットはなんとも攻撃がしくくなるという、エリアインパルスシステムあるあるな状況はこのゲームでも発生しがちな嫌いはある。
ベトナム軍としては、フランス軍の防御戦力が最終陣地に付近に集中しないように、集結を妨害する、分散している段階で削っていくといったことが必要となるのであろう。

エリアインパルスシステムに良くフィットした好ゲームだった。

 

 

 

STARGARD SOLSTICE(ゾンネンヴェルデ作戦)(3CG)

1945年2月、ドイツ軍の敗色濃い東部戦線、ベルリンまで間近に迫ったポメラニア地方(ポーランド西部の地域)で行われたドイツ軍による限定的な反抗作戦を扱う。

チットドリブンで師団単位に活性化を行っていく。
圧倒的な兵力のソ連軍だが、ゲーム序盤は、部隊ユニットが師団司令部の指揮範囲を超えるほど分散しすぎていたり、部隊によって活性化可能となるタイミングがずれていたり、と連携がままならない状態ではじまる。
一方のドイツ軍は主力となる2個装甲師団を駆使して、相手の動きが鈍いうちに機動的に打撃を与えていくことになる。
ところがこのなけなしの兵力も、タイミングこそ若干ぶれるが、1個師団は確実に総統命令により転進させられるという、無慈悲としかいいようがないイベントが用意されている。
対称的な両軍を率いぎりぎりの戦いが展開する。

最近のゲームらしく、ユニットやマップなどのコンポーネントがキレイなのもうれしい。

 

 

 

Decisive Victory 1918:Soissons(ソワソンの戦い)(LEGION GAMES)

第一次世界大戦終盤1918年の西部戦線。連合軍の反撃を描いたシリーズ作品のうちのひとつ。
1日をさらに午前・午後・夜間の3ターンに分け、第一次世界大戦における陸上戦闘を作戦級の目線で緻密に描いた。

効果的な攻撃のためには「突撃」が必要。突撃を行うには前のターンには敵に隣接したヘックスに移動し、「突撃準備」態勢にはいる必要がある。突撃前には「準備砲撃」で敵を叩く。もちろん敵からも「阻止砲撃」を受ける場合もある。航空支援や戦車も出撃する。この時代の戦車はポンコツなので2、3回出撃を繰り返すと自然に消耗していく・・。
敵が潰走するとすかさず追撃。ただ左右の味方と歩調をあわせないと、戦線にほころびができ、反撃を誘発してしまうかもしれない。
夜間は「突撃」は行えないものの、補充と戦線の整理、損耗した部隊のローテーション、翌日の「突撃」に向けた移動や準備と忙しい。

「移動」「突撃準備」「支援砲撃」「(敵の)阻止砲撃」「突撃」「追撃」といった一連の攻撃のサイクルに対して、部隊のローテーション、戦線の状況などを加味し、連続的に攻撃を継続していくリズムのコツを掴まないと連続的な攻撃にならない。

紹介記事ではこれをダンスのように・・と表現したが、まさに整然とダンスを踊らせることができるかが勝敗を握っている印象。

 

 

 

シンガポール攻略戦(エポック/国際通信社)

時間が空いていた時にやってみたソロプレイ。

エポック社レックカンパニーデザインゲームの再販版。
「マレー電撃戦」に同梱されているが、マレー電撃戦本体とはルールの互換性やゲームとしての連続性がある訳ではなく独立している。
マップには大きくシンガポール島が描かれ、周囲のジョホール水道を超えた日本軍の上陸侵攻が始まるところから描かれる。シンガポール島内は思いの他、地形のバリエーションに富んでおり、兵力・戦闘力に優れる日本軍も地形に依り遅滞行動をとったイギリス軍の排除には手こずるかもしれない。

部隊のスケールが不明、部隊番号などのヒストリカルな演出もない。ミニゲームというにはユニット数が少なくない。小規模なゲームが詰め合わされた「ドイツ戦車軍団」に収録されていたゲーム群に比べるとどうしても荒削りな印象は否めない。まぁ何も考えずに両軍とも続々とユニットが除去されていくようなゲームをやりたいときにはよいかも。

 

 

 

コレヒドール1945(国際通信社)

エリアインパルスシステム。
1945年2月、マニラ湾に浮かぶ要塞コレヒドール島での1週間の戦いを1ターン=1日で描いた。
空挺降下と海上から島に侵攻するアメリカ軍。昼間ターンの間は、島のどこにいても艦砲射撃と空爆の目標となる。
日本軍は地下壕に潜み、アメリカ軍の攻撃をやりすごす。ただ籠もったままでは侵攻を食い止められないので損害覚悟で地上に展開する。
地下壕から日本軍はアメリカ軍が占拠していないエリアであれば島内のどこにでも出現することができる。浸透攻撃によりアメリカ軍が位置するエリアに進出し、さらにダイスの目がよければバンザイ突撃(という名の白兵戦)を仕掛けることができる。通常時の戦闘力ではアメリカ軍ユニットより劣っている日本軍にとって戦闘力が2倍になるバンザイ突撃は数少ない有効な戦術である。
日本軍は地下壕に予備部隊を持っている間は島内のあちこちに出撃することができるため、アメリカ軍からするとやっかいな相手かもしれない。

とり得る手段が少ない日本軍のほうが厳しいかなという印象。太平洋戦争末期、悲痛な防衛戦を戦った日本軍に思いを馳せ、疼痛を抱えながらプレイした。

 

 

 

 

 

NATOCompass Games)

VICTORY GAMESで最も売れたゲームのひとつ(とのこと)。再販にあたってデザイナー自ら、ルールや戦闘序列などかなり手を入れたという。実際、オリジナルの1983年シナリオの他、NATO軍側が強力になった1988年シナリオが追加された。
丁寧に記述されたルールブックはかなりの枚数で読むのが大変。ひとつひとつのルールは決して複雑ではないのだが、現代戦らしく様々な手段・手法が提供され、細かなルールが積み重なっているため、組み合わせて適切な戦術(ゲーム内テクも含む)にしていくかはルールへの十分な理解と、慣れが必要に感じた。

  • ZOCは弱く機甲ユニットはすり抜けて侵攻が可能
  • 包囲・半包囲という概念から戦線の張り方も工夫が必要
  • 敵包囲の手段として空挺降下を多用できる
  • 攻撃ヘリによる地上支援
  • ほとんどのユニットは1ステップのみであるため、派手にユニットが飛んでいく
  • スタックは狙われる。戦術空軍による地上支援により強力なユニットでも簡単に飛ぶ(ショックが大きい)

などなど本ゲームならではのシステムへの慣れや作戦を考慮しないといけない印象。

 

紹介記事は別途作成予定

 

 

 

下半期でやったゲーム記事、1回で終わらなかったのでもう1回続きます。

 

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写真に特に意味はありません。MMPの11月セールで購入した製品を写しました。せっかく写すなら2021年に購入したゲームを全部出せよ、という話もありますが、これはこれでいろいろと悔恨というか現実を見たくない、自覚したくないというモーメントの中でとりあえず手元に固まっていたものを写したというところです。

(つづく)

 

 

2020年「こんなゲームをした」は次の記事。

*1:いまさらプレゼントがもらえる訳でもないでしょうしねっ!

*2:両プレイヤーはチットを引いて各シナリオ毎に6パターン用意されたユニットを登場させることができる

*3:例えば戦術級の代表作「ASL」では、2D6により2個とも「1」、いわゆるゾロ目が出た場合、なにかしらのハプニング。一部の兵が凶暴化したり、弾切れや故障が発生したりする。わざとこうしたハプニングが起こる仕掛けを施されている。

*4:実際に上級ルールを導入して試してみると、史実以上に厳しい国際情勢にすることはなかなかハードルが高いのも事実で、簡単には第三次世界大戦勃発・即ゲーム終了というシチュエーションを実現するのは難しいかな、という印象を受けた。