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「ENEMY ACTION KHARKOV」(COMPASS GAMES)を対戦する(2/2)

 

マンシュタインのバックハンドブローこと第三次ハリコフ攻防戦を扱った作戦級ゲームの最新作「ENEMY ACTION KHARKOV」(COMPASS GAMES)を対戦した。

チットによる戦闘結果判定という特徴的なシステムを採用する一方、ルールの難易度は高くなく、気配りの効いたコンポーネントもありプレイアビリティの高い作品になっている。

 

 

ソ連軍を担当。

キャンペーンゲーム(1943年2月1日~)の初期配置。手前がソ連軍。

 

各ユニットは活性化の際の単位(ソ連軍の場合は軍、ドイツ軍は軍団)毎に色分けされたラインがはいっている。ソ連軍は向かって左側が南西正面軍。その主力は黄色ラインがはいった「ポポフ機動集団」、右側がヴォロネシ正面軍。主力は水色のラインがはいった「第3戦車軍」になっている。

マップを見るとマップ手前側に見えている太い河川がドネツ河(ドニエツ河)、写真の左奥に見えている太い河川がドニエプル河となっている。

ソ連軍の第1ターンのデッキは12枚(ドイツ軍はたぶん8枚)、手札は5枚(独4枚)となっている。カード枚数が多いほど活性化や戦術などの手数が多くなるため、戦場での主導権がとれることになる。枚数が少ないドイツ軍は手数が少ないため、ソ連軍と同じペースでカードを消費してしまうとターンの終盤にはソ連軍のアクションに対してタイミング良く対応ができなくなるという事態に陥ってしまう。デッキ枚数の差をターンの最中のどこかで処理(例:パスする)する必要がある。
(ゲームの後半はこの状況が逆転し、ソ連軍のほうが枚数が少なくなるため、ソ連軍側が対応を考慮する必要がでてくる)。

 

第3戦車軍(右手側・水色のライン)の正面のドイツ軍は損害を避け先に後退した。第3戦車軍は後を追うように前進し、ドネツ河付近で攻撃を行った。

 

ポポフ機動集団(左手側・黄色のライン)による正面のドイツ軍への攻撃は思わぬ損害を受けてしまう(ステップロスの上、ユニット上に混乱状態を表すピンク色のマーカーが載せられた)。

攻撃側の規模が多くなるほどドローできるチット枚数は増えるが、必ずしも攻撃側有利な結果に終わるわけではない。防御側1ステップロスに対して、攻撃側は3ステップロスの結果。防御側は後退することでステップロスに吸収できるが、攻撃側にはそうした代替手段はなく、損害が直撃する。しかも攻撃を行ったポポフ機動集団は戦車部隊を中心とした軍であるため、攻撃を吸収する歩兵軍団ユニットも少ない、という・・なんとも割があわない、またチットによる戦闘解決という本ゲームの怖さを垣間見た。

 

ポポフ機動集団」は損害は出すものの、このターンだけで3回活性化するなど、第1ターンの終了時にはソ連軍はドネツ河東岸からドイツ軍の主力を追い払ってしまう。ドネツ河を越えると、ハリコフ市街を臨めるところにきた。

 

ドイツ軍は占領地の維持には注力せず、予め後退できる分は後退し、戦闘におよんだ際も、後退によって損害を吸収できる場合は躊躇なく後退することで部隊の温存に努めた。

 

本ゲームはZOCの制約がゆるく、味方ZOCの効力が及んでいる場合は、敵ZOCは無効化でき、敵ZOCが有効なヘクスであっても1ステップロスを被ることで敵ZOCを通過して後退ができる。このため一般的な作戦級ゲームで行われる”はさんでポン”(防御側ユニットをZOCで取り囲むことにより、後退できずにユニットを除去させる基本テクニック)ができない。攻撃側が漫然と攻撃を行っても、防御側はするりと防衛線を下げるだけで、攻撃側だけが損害をうける結果となる。

都市・森林といったヘックスには地形効果があるのだが、必ずしも全ての戦闘において効果が出る訳ではなく、戦闘解決のチットの中で「該当する地形に存在する場合」の条件が登場した場合にはじめて地形効果があったということになる。河川についても、攻撃側の全てのユニットが河川越えでの攻撃であった場合のみ、地形効果を及ぼすなど、全体的に地形による戦闘に及ぼす効果は強くない(薄い)印象。この点も、一般的な作品にある、都市や森林のヘックスでは防御効果として防御側の戦闘力2倍、といった画一的な効果にはならない。

補給チェックについては、前述のとおり味方ユニットのZOCにより敵ZOCの効果を無視できる点、また補給線は補給源とされる盤端からつながる道路に対して7ヘックス以内でアクセスできる場合は設定できるため、これもまた緩い印象。

 

第2ターン。「第3戦車軍」(水色)がドネツ河の渡河に成功し、ハリコフに肉薄する。


続けてポポフ機動集団も渡河に成功するが、実は写真のマップ中央に手前から奥に向けて縦に引かれたオレンジのラインが、第3戦車軍が属するヴォロネシ正面軍と、ポポフ機動集団が属する南西正面軍との正面軍の境界線になっており、ポポフ機動集団は右に旋回してハリコフに攻め上がることができない、という制限がある。ハリコフ攻略は第3戦車軍で行う必要があるのだが、このターン、同軍を活性化するカードはなかった・・。

一方でドイツ軍も少ないカードを駆使してソ連軍のアクションに対応せねばならず、「戦闘団活性化」や、指定外の部隊の活性化を駆使して、ハリコフ防衛と戦線の維持に奔走した。

「戦闘団」の活性化は周囲のユニットを所属を問わずに活性化できるという一見ドイツ軍らしい柔軟な運用に見えるのだが、活性化されたユニットが所属する軍団は、「同一軍団の連続活性化禁止ルール」の対象となってしまうので、次のイニングに複数の軍団が軒並み活性化不能という強烈な副作用を生む。
所属を問わない活性化は、緊急避難的に使われる使用法で、カードに記載された軍/軍団を活性化させることは可能になるというものだが、その場合、カード1枚を費やして活性化できる対象は1ユニットのみ、と非常に効率が悪い運用となる。

 

「第3戦車軍」に続き、「ポポフ機動集団」も渡河に成功。ただ戦域の境界線のためハリコフにはいけない(ハリコフは、道路が集約されている地点)

 

第3ターン終了時
ソ連軍はハリコフ前面にユニットを集結するものの、ドイツ軍も防衛態勢をとっている。それ以外の領域では占領域を拡大しているものの、目標が散漫になっている。

 

ハリコフに対する攻撃の機会を伺っていたが、ドイツ軍も部隊を集結し防衛態勢をとった。単純な戦闘力比率では攻撃の成否を量れないのがもどかしい。次の第4ターンからはドイツ軍の増援が次々と到着することがわかっているため、損害を押してでも攻撃をするべきなのか迷う。

ハリコフ以外の戦線でも、ドネツ河を越えたところで戦線が広がり目標が散漫になる印象。サドンデスを回避するため、勝利ポイント都市は確保していく必要はあるが、都市間の距離が開くこともあり、ソ連軍は部隊をどのように展開するべきか考えたほうがよいようだ。

 

第4ターン、第5ターンとドイツ軍には強力な増援が登場する(上記の各ターンのマス目)。

 

今回ここで時間切れ終了。
ソ連軍は第4ターンよりはじまるサドンデス条件について、第4ターンについては回避できそうだが、第5ターンについてはもう少し気張って戦線を広げる必要がある模様。
ドイツ軍の反撃がはじまる前での終了となったため、次回はバックハンドブローが炸裂するところを見てみたい。

 

感想戦

戦闘結果を予想にしにくい点は新鮮だった。敵に着実に打撃を与える、地点を占領するためにどの程度の攻撃部隊を集める必要があるのかがわからないという感覚。戦闘解決表(CRT)やダイスを使わないというだけで、こんなに違うものか、と。

損害を与える可能性を高めるためには、戦術(砲撃支援、航空支援など)を実施する必要があるが、カードを「戦術」に使ってしまうとその分、活性化に使用できるカードが減ってしまう。毎ターン、デッキ枚数は制限があるため、どのようにカードリソースを配分するか。
今回の反省としては毎ターン全軍がなんらかアクションを行うように活性化したが、側面の軍についてはそこまでリソースを回す必要はないかもしれない。

本文中に書いたとおり、地形修正・ZOC・補給等の縛りが緩いことも特徴。一般的なゲームの感覚でやっていると、するりとすりぬけられてしまう印象だ。

ドイツ軍の反撃がはじまる時点でソ連軍はどのような状態になっておいたほうがよいのかもソ連軍としては研究余地がある。逆算してどのように戦線を拡大しておくのか、勝利ポイントを稼いでおくのか。

ルール難易度は低いが、システムへの慣れも含め、研究余地が多々ある作品だった。