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「Ney vs. Wellington: The Battle of Qatre Bras 」(SPI)をVASSAL対戦する(3/5)AAR - 序盤戦

 

ワーテルローの戦いの2日前に争われた前哨戦のひとつであるカトル・ブラの戦いを描いた「Ney vs. Wellington: The Battle of Qatre Bras 」をVASSAL対戦することになった。

希望によりDさんがフランス軍、当方は連合軍を担当することになった。

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カトル・ブラにてイギリス軍の方陣に突撃を行うフランス軍騎兵

 

 

 

 

 

前記事で紹介した通り、かなり細かいレベルまでルール化されたゲームだ。ルールが精緻になればなるほど、実際の戦術・作戦に近い運用を行っていく必要がでてくる。
もとより土地勘がないナポレオン時代のため、何をどのように適用させていけばよいのかわかりにくい。かろうじてルールから類推して、部隊の運用方法に気づくことが多い。騎兵の運用、独特の砲兵の運用、歩兵の行軍と隊形の選択などだ。
手探り状態でプレイは始まった。こうした事情から、プレイ内では、それはないだろう、といった用兵・戦術の間違いやルールの取り違えが頻発していることはご理解いただきたい。

 

初期配置

ネイ将軍はカトル・ブラの交差点の奪取を目指し、シャルルロアよりブリュッセル街道を北上した。カトル・ブラ付近にはすでにオラニエ公ウィレム*1麾下のオランダ軍が南西の森を中心に展開しており、さらにブリュッセルより南下してきたウェリントン公率いるイギリス軍が行軍隊形のままカトル・ブラに差し掛かろうとしていた。

ネイは騎兵斥候の報を受けると、連合軍の兵力は大きくないと判断、軍を展開させ、進撃を始めたところからゲームがはじまる。

 

カトル・ブラ南方に展開したオランダ軍の砲兵陣地(行軍隊形ではなく展開状態にある)のさらに1キロほど南に街道から散開しつつあるフランス軍が姿を表す。

フランス軍が登場したブリュッセル街道(南北に通った街道)沿いのマップ南端から、カトル・ブラの交差点までちょうど30ヘックス。1ヘックス=91メートルなので3キロ弱。当時の軍装状態での行軍速度はわからないが30分~1時間弱で到着できる距離だ。

初期配置は両軍とも決まっている。ブリュッセル街道の南、フランス軍勢力の少し上あたりに位置するオランダ軍砲兵隊2個だけが横隊状態、いわば砲兵陣地を敷いていたが、残りは縦隊のまま配置される。

 

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初期配置
マップは北が上側。上下(南北)に走るブリュッセル街道と東西に走った街道が交わった箇所がカトル・ブラ。マップ中央部に点在しているオレンジ地で黄色ラインのユニットはオランダ軍、ブリュッセル街道を数珠つなぎ状態で北側から進入してきつつある軍がイギリス軍(赤色)。南から展開した状態で迫っているのがフランス軍(青色)となる。

 

事前の作戦

フランス軍はカトル・ブラを奪取すること、さらには北端より突破することで勝利を確実にできる。連合軍はフランス軍の目論見の阻止が勝利条件となる。

改めてルールを読みながらフランス軍の侵攻路を考えた。
マップ西側(左手)にある森林地帯は妨害地形ヘックス(Obstructed Terrein Hex)となり、進入するだけでユニットは「混乱状態」(Disordered)になる。さらに妨害地形ヘックスにいる間、「混乱状態」からの回復はできないため通過はしても居残るような地形ではない。迂回部隊が登場したとしても主力が通るルートとは考えにくい。
マップ東側には池があるが、池のさらに東側を通るルートについては湿地帯があったり(砲兵や騎兵の通行に障害がある)、それを超えてもカトル・ブラへ向かうルート途中に森林ヘックスがあったりする。西側の”大森林地帯”に比べると規模は小さく、また平地だけで抜け出ることができるルートは設定できるが、こちらもやはり主力の侵攻路にはなりえない(ただし助攻部隊であればこのルートを目指す可能性は想定された)。
結果としてフランス軍の侵攻路は街道を中心とし、西の森林地帯と東の池の間を通った中央突破になると想定した。

中央部で連合軍が防衛線を引く場所となると、フランス軍の白兵戦や騎兵突撃を防ぐ意味で、西の森林地帯から東の池に向かって東西に流れている川(Gemioncourt)が、地形的には最初の防衛線になることであろう。
この川まで連合軍はなんとしてでも河畔をとって、フランス軍の渡河を妨害すること。

ルールを読みながら・・・

手元に本作「Ney vs. Wellington」と、同じシステムを採用していると言われる「Wellington's Victory」(どちらかというとこちらが元祖)の両方の日本語訳ルールブックがあった。読みやすいのは後者のほうだったので後者を先に読んでいたのだが、微妙にルールに違いがあることが判明し、あわてて「Ney vs. Wellington」のルールを読み始めた。どうしても不整合な部分が判明したため、さらに英文ルールを参照するハメになった。「Ney vs. Wellington」のほうが日本語訳の精度がよろしくなかったため、この後も随所で英文ルールを確認することとなった。

 

第1~3ターン(14時30分~15時)

6月16日、午後14時30分。

フランス軍は街道東側の東翼を突出するように移動する。先頭は猛将で知られたネイ将軍が直率する歩兵連隊だ。さらに数個大隊規模の部隊を池の東側を大きく迂回するように移動させる。

連合軍はもっともフランス軍に近い位置に陣地を展開していたオランダ軍砲兵部隊を撤収させ、北上させる。西側(左手)の林内にいたオランダ軍も、Gemioncourt川に敷こうとしている防衛線へ参加するべく街道に近い位置まで移動を開始する。
イギリス軍の先鋒としてカトル・ブラの南東部に位置した軽歩兵(6個中隊)がフランス軍の足止めをするべく急ぎ南下した。

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第3ターン(15時)終了時
池の西側で足止めとして展開していた複数のイギリス軍散兵ユニット(100人規模、中隊規模のユニット)とネイ将軍直率の部隊とが接敵した。
ブリュッセル街道沿いでは最前線から撤収してきたオランダ軍砲兵部隊が展開し射撃準備にはいった。

 

フランス軍騎兵部隊が騎兵突撃の準備をはじめる。騎兵突撃が宣言されると騎兵ユニット前方に一辺が6ヘックス(=540メートル)の突撃ゾーンが設定される。ゾーン内にいるユニットは士気チェックが強制される。騎兵が突撃準備をはじめるだけでびびりあがってしまうようだ。騎兵突撃を宣言されてからあわてて防御のために方陣を組むといったことは難しいということだろう。もちろん練度や士気が高い部隊は士気チェックに成功しやすいので、方陣への隊列変更も容易ということになる。

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猛将ネイはイギリス軍本隊が到着する前に川を渡ってしまえとばかりに最前線の部隊を直率して前進してきた。かろうじてイギリス軍の先鋒を担っていた「散兵」中隊が川沿いに展開し、フランス軍を迎え撃った。まぁしょせん中隊規模の部隊なので鎧袖一触となるだろうことは必定。

フランス軍はそこで騎兵部隊に突撃を宣言させる。
突撃エリア内の連合軍は士気チェックを余儀なくされた。
街道沿いでは南下してきたイギリス軍先鋒と後退または移動してきたオランダ軍が団子状態になっている。とりわけ前線から急ぎ後退したオランダ軍砲兵が味方の中に位置していて、仮に砲展開状態に隊形変更した場合もうまく射界とれるかわからない状態になっている。

ここで早速、突撃ゾーンの適用範囲や士気チェック時の修正などでルールと首っ引きになる。しかも「Wellington's Victory」では小川は渡河不可能であり、小川を超えて突撃ゾーンは広がらないということなのだが、「Ney vs. ‥」のほうはそうした制約がないというルールの相違もあってプレイヤーが”混乱”してしまった。

川の側にあるGemioncourt(下写真)の扱いについても、初期配置段階でここにはオランダ軍歩兵大隊が配置されているのだが、ルールの適用間違いで早々に士気チェックを行い、士気が低いオランダ軍のため「混乱」状態に陥ってしまっている。実際は初期配置段階で建物ヘックスに存在する部隊の士気チェックは不要で、また建物内の部隊の士気チェックには相応のプラス修正が適用されるところでああった。
推測だが、Gemioncourt沿いの防衛戦の拠点として活動できる場所であったのだと思う。

作戦面でも最前線に展開中であったオランダ軍砲兵を早々と撤収させてしまったが、第二次世界大戦での用兵とは大きく異なり、砲兵は最前線に配置しなければ有効に砲撃できないという性能を考えると、オランダ軍砲兵は”半ば捨て駒”的に、移動させずにネイ軍の出鼻をくじく。その際、イギリス軍の「散兵」6個中隊も、ネイ軍の足止めのためにそこまで前進させる・・と行った作戦もあったかと後で気づいた。

 

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Gemioncourtで検索するとカトル・ブラの戦闘云々という説明とともに写真がでてきた。当時の建物が残っているかは定かではないが、ワーテルローにおけるウーグモント邸と同じ様に現存しているのかもしれない。
マップ上でもこの建物は登場しており、ブリュッセル街道がGemioncourt川と交錯したすぐ南、上記のマップ図ではオランダ軍歩兵大隊が籠もっているヘックスがそれにあたる。

 

(つづく)

*1:後のオランダ王。オラニエ公の綴は”Orange"となるのでユニットカラーがオレンジ色なのか?