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『Model's Counterback』(Dissimula Edizioni)を対戦する【2/2】

東部戦線・作戦級

 

『Model’s  Counterback』(Dissimula Edizioni)を対戦しました。

 

 

1. ゲーム概要とテーマ

『Model’s Counterback』(Dissimula Edizioni)は、1944年夏、ドイツ軍中央軍集団崩壊後の戦局を扱った作戦級ウォーゲームです。攻勢を続けるソ連軍に対し、モーデル元帥がワルシャワ郊外で機動防御を駆使して反撃を試みる「防御側が主役」の戦いが描かれます。

ソ連軍のスチームローラーに対する機動防御のドイツ軍、と聞くと、鈍重なソ連軍と、少数精鋭で縦横に動くドイツ軍、「柔よく剛を制す」構図を思い浮かべがちですが、本作におけるソ連軍は決して鈍重ではありません。

ソ連軍の主力となる戦車軍団を構成する部隊ユニットは、ドイツ軍の部隊と同程度の機動力を持ち、戦闘力においても見劣りすることはありません。本作のソ連軍は数と戦力、さらに機動力を兼ね備えた、非常に使いやすい戦力として登場します。

一方ドイツ軍には、

  • 活性化における自由度の高さ(ソ連軍は活性化単位が軍団毎に固定)
  • 縦深陣地による損害回避(=後退することでステップロス損害を軽減できるが、ソ連軍は不可)
  • 強力なスツーカによる航空支援(ソ連軍にも砲撃支援があるが射程の制約ため局地的)
  • 特殊能力を持つモーデル元帥ユニット(ダイス振り直しや、活性化済スタックの再活性化等)

といった特徴的な優位点が与えられています。ただし、それらは決して圧倒的優勢といったことはなく、使いこなせなければ、ソ連軍の正面攻撃に押し潰される危険性を常に孕んでいる状態です。

 

2. 両軍の性格とプレイ感

ソ連軍:王道の正面攻撃+軽快な部隊による後方撹乱

ソ連軍は部隊数でドイツ軍より優勢です。ドイツ軍はもはや連続した強固な戦線を構築できるほどの兵力を持たないため、ソ連軍の機動力の高い偵察大隊といった部隊ユニットは、薄い防衛線を容易に突破し、ドイツ軍の背後へ回り込むことができるでしょう。

ドイツ軍が、道路結節点への注意が疎かになっている場合は、一般道路や幹線道路を伝って、一気に後方深く侵入されることになります。本作のソ連軍は、前線を押し潰すだけでなく、後方を荒らすことで勝利を引き寄せる軍でもあります。

ドイツ軍:ソ連軍を止めることはできないが遅らせることはできる・・

ソ連軍の活性化が軍団単位で、かつ軍団同士が協働しづらい関係性であるのに対し、ドイツ軍は未活性ユニットであれば自由に活性化可能です。後半に登場するSS装甲師団と組み合わせることで、局地的な優勢を作り出す余地は十分にあるでしょう

ただし、それは「ここぞ」という一点に限られます。漫然と、または全体で押し返そうとすると、ソ連軍の物量と機動力に飲み込まれかねません。

 

3. 本作を特徴づけるシステム要素

本作の印象を一言で言えば、盤面全体で展開する機動戦といえます。それを強く後押しする仕掛けが、いくつも用意されています。

■ 小さなマップスケールと大きな移動力

  • 1ターン=1日
  • 1ヘックス=2km

という細かいスケールのため、ユニットの移動力は全体的に大きい数値が設定されています。
偵察大隊14、戦車大隊12、機械化歩兵でも10と、道路移動を併用すれば20~30ヘックス以上の移動も珍しくないでしょう。

■ 移動しやすい地形

ワルシャワ郊外という設定上、マップには幹線道路と一般道路が密に張り巡らされています。
道路の消費移動力は次の通り定められており、

  • 一般道路:1/2MP
  • 幹線道路:1/3MP

高速移動が可能なため、部隊は想像以上の距離を一気に移動できます。

■ ZOC拘束の弱さと「離脱」ルール

  • ZOC侵入時:1MP追加、その時点で移動終了
  • ZOCからの離脱:ペナルティなし

さらに一定の移動力を持つ部隊であれば、相手の移動タイミングで相手ユニットが自部隊のZOCに侵入してきた際に、ノーコストで1ヘックス後退できる「離脱」が可能です。しかも回数制限はありません。無軌道に後退するのは得策ではないにしても、下手に相手に拘束されることを避け、自軍に有利な場所へ位置を変えることができます。
このため、戦線は固定化しにくく、毎ターンさらに毎ラウンドで状況が変わる流動的な戦いになります。

■ 強力なイベントカード

毎ターン両軍が引くイベントカードは、局地的ながら局面をひっくり返す力を持つものが多い印象です。
※ オリジナルは「イベント・チット」ですが、プレイアビリティ向上のためチットをカード化してプレイしています。

オーバーランの存在感

移動力が続く限り、何度でも攻撃可能なオーバーランは本作の華とも言える攻撃手段です。防御側も「離脱」で戦闘を回避できるため、戦闘は単発で終わらず、追撃と後退の連鎖になりやすいです。

■ 緩めの補給ルール

補給源につながる道路ヘックスから5ヘックス以内であれば補給下にあると判定されます。道路網が豊富なため、自軍ユニットの周囲6ヘックスを完全に囲まれ包囲状態でもされない限り、補給切れに陥ることはないように思います。
1ターンのスケールが1日という点も補給判定が厳しくない理由のひとつだと思われます。

 

4. プレイレポート

ソ連軍を担当しました。

写真右手が北になります。
マップ上部にある半円状の部分がワルシャワ市街。上端になっている東西に描かれているのがヴィスワ川(Wista)。

オレンジ色の星印で印をつけている勝利ポイント都市はマップ内に8か所あり、ゲーム開始時はすべてドイツ軍の支配下におかれています。

太い線が幹線道路。マップ上方向を左右に走るものから、マップ左下からワルシャワ方向、またマップ右下からワルシャワ方向に走る線の3本がメイン道路となります。
幹線道路以外にも縦横に細い線(一般道路)が走っていることがわかります。

ソ連軍は写真左端から第1ターンに2個戦車軍団、第2ターンに1個戦車軍団が登場。この3個の戦車軍団が主力となる。第7ターンにさらに1個軍団(非自動車化の歩兵)が写真下側(西側)から登場します。

ドイツ軍は第3ターンに第19装甲師団がマップ右上方向から、第4ターンに第5SS装甲師団ヴィーキングがマップ下左方向から、第5ターンに第3SS装甲師団トーテンコップがマップ下右方向からそれぞれ幹線道路をたどりマップ上に現れます。

 

第1ターン(1944年7月27日)

ソ連軍はマップ左端から2個軍団が登場します。
今回、ハウスルールとして、初期配置のドイツ軍はスタック禁止、またソ連軍登場ヘックスへの配置も禁止としました(初期配置条件からソ連軍の登場ヘックスを塞ぐことが可能であったため制約をかけたもの)。

第3戦車軍団(水色のライン)では、最初にドローしたイベントカードの中にあった「タンク・エース」を使い、同軍団の最強ユニットである戦車師団(8-4)に配置し、戦闘修正+4(元の修正値+2にタンクエース効果による+2)という戦闘修正値を得ます。このユニットが除去されない限りこの効果は続くのです。両軍の最強重戦車大隊(ドイツ軍のティガー、パンテル装備の大隊、ソ連軍の場合はJS2)(+3)すら上回るこの修正値は、本作では極めて危険な存在となりえます。

続くソ連軍第2活性化ラウンドでは第8親衛戦車軍団(赤色ユニット)も前進。薄く張られたドイツ軍防衛線を排除すると、「予備」指定されていた移動力14の偵察大隊が道路を使って、一気に前進。ドイツ軍側に対応可能な非活性状態の部隊ユニットがなかったことから、次ターンにはワルシャワ蜂起が発生する条件となる蜂起ラインを越えることが確定的となりました。

第1ターン終了時:
ソ連軍の2個戦車軍団がマップ左端より侵入。ソ連軍の偵察大隊のひとつがPraga付近に接近。ドイツ軍ユニットは明灰色のユニット(活性化済を表すトラックのシルエットが描かれたマーカーが載っている)

 

第2ターン(1944年7月28日)

第8親衛戦車軍団の偵察大隊が蜂起ラインを突破し、第3ターンからのワルシャワ蜂起が確定します。
同軍団の主力はドイツ軍の部隊ユニットを排除しつつ、道路移動を最大限活かしながら、Praga(ワルシャワヴィスワ川西岸地区)外縁まで進出します。

第3戦車軍団の「タンクエース」師団は、移動力の続く限りオーバーランを連続して実施します。3回目の攻撃ではVP地点 Minsk Mazowiecki のドイツ軍守備ユニットを攻撃し、さらに同市街を越えた実に4回目の攻撃でようやく停止するほどの暴れぶりを見せました。
Minsk Mazowiecki はその後、後続の第3戦車軍団主力により包囲攻撃を受け陥落しています。

ドイツ軍はバラバラと到着する増援ユニットから、ワルシャワ蜂起発生にあたって除去(蜂起の鎮圧に投入されるということで盤面から除去)されるユニットを確保し、Pragaの防御を固めます。

第2ターン終了時:

 

第3ターン(1944年7月29日)

本作では各ターンの先攻はソ連軍に固定されており、常に先行するソ連軍がターン開始時の主導権を握る展開になります。

第8親衛戦車軍団はワルシャワへ突入するのではなくPragaを左手に見ながら、北上し、Radzymin、Nieporet付近の渡河点ヘックスといった他のVP地点を目指します。
Pragaの市街にドイツ軍が対戦車砲部隊を混在させ、陣地構築したハイスタックをいくつも作ったことにより、無理攻めによる損害と部隊の拘束を嫌ったのです。

補足:ワルシャワ蜂起前後
史実でもソ連軍はPraga外縁まで進出した後、7月29日に攻勢停止命令を出している。
政治的な理由が主と言われるが、Pragaへの本格侵攻は9月10日と約1ヶ月後に先送りされた。

ドイツ軍はもともとPraga北側付近で戦線を張り、ソ連軍の北上を避けることを企図していたようですが、ソ連軍先鋒の侵攻が早かったことから、マップ北側より増援で到着した第19装甲師団もRadzymin(VP地点)等の防衛に送り込むしかなかった。

第3ターン:
ソ連軍第8親衛戦車軍団はParagaへの攻撃は避け、そのまま北上し、RadzymiやNieporet方面へ向かいます。後続の第16戦車軍団もそれに続きます。
ソ連軍第3戦車軍団は、第4ターンにマップ左下からドイツ軍の強力な増援である第5SS装甲師団が進出してくるのに備え、Minisk Mazowieckiの防御を固めます。

第4〜5ターン(1944年7月30日~同8月1日)

ソ連軍の先鋒となった第8親衛戦車軍団とそれに続いた第16戦車軍団とともに、北西に進路を取り、Radzyminを攻撃、さらに北側から登場したドイツ軍第19装甲師団とNieporet付近の渡河点(VP地点)を巡って激突しました。ドイツ軍は森林や湿地ヘックスを巧みに使いながら戦線を張り、スツーカを使った対地支援を執拗に行うことでソ連軍を悩ませますが、押し切られ、渡河点(VPヘックス)はソ連軍の手に落ちました(第5ターン)。


第5SS装甲師団ヴィーキングは第4ターンにマップ西端(写真手前側)に登場することが可能でしたが、登場タイミングを1ターン遅らせることで、登場位置を北側のRadzyminに続く街道に変更しました。
これによりソ連軍第3戦車軍団が位置していたMinsk Mazowiecki への圧力が減り、代わりにRadzyminへの圧力が強まることが必至となります。
ソ連軍は第3戦車軍団をRadzyminへ向かわせ、ドイツ軍の第5SS装甲師団ヴィーキング、第3SS装甲師団トーテンコップ(第5ターンに登場)の最強2個師団とソ連軍の2個戦車軍団がRadzymin付近で激突することになるのです。

第4ターン:
Radzymiは第8親衛戦車軍団の攻撃により陥落。第16戦車軍団、また第8親衛戦車軍団の一部はNieporetの周囲に展開するドイツ第19装甲師団他を攻撃しました。

 

第6ターン(1944年8月2日)

Radzyminにおける2個のドイツSS装甲師団との激突が予想される中、ソ連軍はRadzyminを堅守すべきか、いったん引くかを迷いますが、VP確保を優先しRadzymin周辺を強化します。

一方、Nieporet周辺のVPヘックスも確保済ですが、こちらはドイツ第19装甲師団が執拗に絡んでくることから、ソ連軍(第3戦車軍団中心)は、同師団の後方に部隊を迂回させ、北上を目指します。

SS装甲師団ヴィーキング、トーテンコップがマップに登場し、Radzymin付近でソ連軍と激突、ソ連軍防衛線は押し込まれました。ただしドイツ軍も戦力分断を恐れ、オーバーランの使用には慎重のようです。

コラム:勝利条件

ゲーム終了時のVP獲得状況による

マップ上には8か所のVPヘックスが存在し、この時点でソ連軍は4か所(Minsk Mazowiecki の2か所、Radzymin、Nieporet付近の渡河点)を確保済であるためドイツ軍と同点の状況ドイツ軍はPragaの3か所と北方の1か所を確保中。
他にはドイツ軍がスケジュールとして決まっている他戦域や蜂起鎮圧への戦力引き抜きに対応できない場合のペナルティがある

 

というところで時間切れ終了。両軍のほとんどの戦力が登場する中、残り4ターンがどう展開するのか読めない状況です。

「タンクエース」1枚、また戦線を張れないにしても部隊ユニットの位置ひとつで間隙を突かれ、移動力の大きさゆえに主戦場が短期間で南から北へ移っていきました。
こうしたダイナミズムこそが、本作の魅力となっています。

第6ターン終了時:
ドイツ軍のSS師団2個が到着し、Radzymiへの攻撃を開始します。
ソ連軍はMinsk Mazowiecki方面から第3戦車軍団の主力を急ぎ移動させます。各軍団の所属部隊がバラバラになりかけていますので、この後のターンにおいて課題となった可能性があります。

 

(終わり)