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「ACROSS THE BUG RIVER」(VUCA Simulations)を対戦する【2戦目】

 

『Across the Bug River: Volodymyr-Volynskyi 1941』(VUCA Simulations)を再戦した。

本作には全7ターンのキャンペーンゲームの他、長さと使用するマップが限定された2篇のシナリオが付属している。前回は第1~3ターンを扱ったシナリオをプレイしたが、今回は第5~7ターンを扱ったシナリオを取り上げた。

前のシナリオから戦線は東に移り、ゲームタイトルであるブーク河はもはや後方だ。ドイツ軍には軍予備の装甲師団が新規投入され、ソ連軍にはシナリオタイトル「遅れた到着」にある予備の戦車師団(第19戦車師団)が到着しているところからはじまる。

 

Game cover

 

 

シナリオ概説 ー 東へ、東へ

舞台はマップ中央から東側を用いる。北側の端は切り取られている。前回のシナリオよりドイツ軍は東に踏み込んだ状態からシナリオの幕は開く。キャンペーンゲームの第5ターンから第7ターン、つまり最終幕までを扱う。1ターンの長さが8時間~16時間という設定であることからすると、独ソ戦開始の3日から5日くらいが舞台ということになるだろう。
ブーク河のような大河はない。装甲部隊や自動車化部隊が超えるには全力移動が必要な川がいくつか遮る他は平地が多い。主要なVP確保手段となるVPヘックスはマップ上に点在している(星印のヘックス)。茫洋としたウクライナの大平原。装甲軍団、東へ、だ。

勝敗は獲得VPによるが、ドイツ軍は勝利ポイント対象となる町や村の奪取、敵の戦力の除去、またマップ東端を突破した戦力合計からVPを得る。一方のソ連軍は、VP対象の町や村の確保、敵戦力の除去までは同じで、別にスターリンの命じる「反撃」を果たすことが求められている。「反撃」とは「周密攻撃」を3回実施することで、果たさなければVPがマイナスされるというペナルティが課せられる。

両軍とも一部損害を負った状態で始まるが、その配分は相手が決めるという意地の悪い仕掛けがある。
ボックスアートにフィーチャーされているドイツ軍のⅢ号突撃砲B型のシルエットが描かれた独立突撃砲中隊はこのシナリオには登場しない。とても残念だ。

部隊ユニットは師団ごとに配置される。司令部の位置は指定で、残りは師団単位に配置可能エリアかヘックスが指定される。

 

ドイツ軍の布陣は北から順に、第14装甲師団(黒)、第299歩兵師団(緑)、第13装甲師団(紺)、第111歩兵師団(紫)と並ぶ。装甲部隊は戦車のシルエットが描かれた駒で、移動力はおおよそ5から6移動力を有し、さらに道路を用いればヘックスあたり1/2移動力と快速に移動できるが、森や沼、川には極端に弱い。川に至っては全移動力の消費が求められるため、河川を超える際には道路橋や鉄道橋を用いるなど、進撃は道路・鉄道に沿ったものになるだろう。
いっぽう徒歩の歩兵は移動力3。道路を用いた高速移動は使えないが、移動前後と移動中、敵部隊に隣接しない場合は、移動力は5まで増加させることができる。

ドイツ軍は第13と第14装甲師団を柱に据え、戦車中隊と自動車化歩兵大隊を組み合わせた「キラースタック」をいくつか用意する。一方、歩兵大隊は1ヘックスに1個という縛りがあるため、分散して配置せざるをえない。

ソ連軍は配置可能なエリアよりもかなり後方に配置されている。Zaturtsiのように一部のVPヘックスを放棄してまで戦力集中をはかっていた。シャベルがデザインされたマーカーが置かれたヘックスは陣地構築されたヘックスだ。なお前シナリオで国境線沿いに固定で置かれていたようなトーチカはない。

 

プレイ

第5ターン——北翼の賭け

最初に動いたのは北翼の第14装甲師団だった。東へ真っ直ぐ進み、Zaturtsiを越えてソ連軍の虎の子、第19戦車師団に挑むか、それとも手近なOzyutychiを落とすか。グデーリアンの言葉を借りれば「戦車は前進あるのみ」だが、今回は確実さを求めて北東へ進み、Ozyutychiを狙った。そのまま東へ突き進むことで司令部と前線の連絡線を無防備にさらすことを恐れたのだ。

これは後で悔やむことになる。Ozyutychi周辺は森と川と沼に囲まれ、占領はできてもそこから動くのに骨が折れた。結局、第14装甲師団は森に突入し、後から来た第299歩兵師団がZaturtsiを押さえ、さらにはTorchynとSadivの間の比較的狭い平原に楔を打ち込む形に進んだ。次のターン、この狭い平原=回廊にて戦闘が起こることになる。

南翼では、第13装甲師団がLokachiから道路橋を渡り、Shel'vivやPryvitneへ向かう。ソ連軍が陣地を構えていたが、打撃力に勝るドイツ軍にあっさり退けられ、森へ逃げ込んだ。第111歩兵師団はソ連兵が駆逐された平原をボーナス移動力も用い軽快に進む。東へ!
ソ連軍は活性化が鈍く、動きも控えめだった。活性化の回復力が限定されるだけに、先に活性化の権利を浪費してしまうと後のターンで動くに動けなくなるのだ。

 

第6ターン——回廊の激突

北翼の第14装甲師団はOzyutychiを落とした後、Torchynへ急ぐ。ソ連軍はTorchyn前面の森林ヘックスの連なりに陣地を構築し頑なに守るが、ドイツ軍は装甲の拳で殴り込む。Torchyn南西の平地でソ連軍がスターリンの厳命に従い反撃に出たが、ドイツ軍も応戦する。譲れないドイツ軍は後退せず、防御にあたった歩兵大隊が壊滅する。

 

南翼では、第13装甲師団と第111歩兵師団が東へ突き進み、Shel'vivとPryvitneを越える。平地続きで遮るものなく、先鋒はマップ右下のMyrneを落とした。ソ連軍にマップ東端までドイツ軍の進撃を塞ぐ力はもはやない。

※ 上の写真でSadivの町の場所が間違えている。実際は上の表記より3ヘックス西(左)の場所が該当

 

第7ターン——終わりと突破

最終ターン、ドイツ軍が主導権を握る。ルフトヴァッフェによる航空支援*1が絶頂に達し、ソ連軍の活性化の回復はわずか1~2回に抑え込まれる。ソ連軍は貯めた力を絞り出すしかない。

残るVPヘックスはTorchynとSadiv。いずれも周囲の地形が防御効果が高い地形に囲まれており攻めにくい。Torchyn周辺には第19戦車師団が控え、陣地が固められている。Sadivは湖と森に守られた要害で、装甲部隊の攻め口が狭い。
それぞれドイツ軍の第14・13装甲師団の主力が寄せ、さらに正面からではなく側面や背面からの攻撃をはかるものの、ドイツ軍の残る活性化レベルを考慮すればこのターンだけで攻め落とすのは難しいと判断された。ドイツ軍はVP獲得をマップ東端の突破に賭けた。南の第111歩兵師団はほぼ全てが突破し、北の第299歩兵師団はTorchyn南の回廊から一部を抜けさせた(上の写真では第111歩兵師団のほとんどの部隊ユニットが突破済みで盤面からいなくなっている)。

ソ連軍は「反撃」3回実施というスターリンの命令には忠実に従ったため戦意が足りないことをなじられたりするペナルティは避けられた模様。ポイントはドイツ軍の辛勝となった。

プレイ時間5時間程度。

 

(終わり)

 

 

 

 

*1:毎ターン、ダイスによってそのターンでのドイツ空軍の支援状況を決める(0~+2)。数値が大きくなるほど、ソ連軍の活性化レベルの回復量が制限され、結果としてマップ上の地上部隊ユニットがアクションを起こしにくくなる。