第1次ユダヤ戦争(西暦66~73年)におけるローマ帝国軍によるエルサレム包囲戦(70年3月~9月)を扱った表題作品を対戦しました。
ダイス判定によってユダヤ側を担当しました。

包囲のはじまり
西暦70年、春。
ローマ帝国軍司令官ティトゥスは、叛乱の中心地エルサレムを完全に包囲した。四方から迫る鷲の軍団旗の下、赤いマントをなびかせた帝国の精鋭たちが、神殿都市を取り囲んでいた。

マップ概要
マップは右手側が北、左手側が南となっています。ローマ帝国軍(赤系ユニット)とユダヤ軍(青系・紫系ユニット)の初期配置は両軍とも位置は指定されています。
マップ四隅にある「Zone」と書かれたL字型のボックスには、ローマ軍の増援部隊が配置されています。毎ターン、この中から毎ターン合計6個のユニットが増援として登場します。各ボックスの総ユニット数は決まっていますが、どのボックスから登場させるかはローマ軍が選択できます。

地形の特徴
わかりやすくするため、防壁があるエリアサイドを赤茶色、マップ上の川を水色で強調表示しました。
川があるエリアでは、ローマ軍は頼みとする攻城兵器(攻城塔・攻城槌・坑道掘削・傾斜路)を使用できません。そのため、これらのエリアに面した防壁への攻撃は、防壁の防御効果を減殺できないまま実施する必要があります。
重要拠点
エルサレムの防壁内に赤い星印を2か所、緑色の星印を2か所配置しています。
赤い星印(勝利条件):
- ヘロデの宮殿
- 神殿丘地区
ローマ帝国軍がこの2か所を支配することで、サドンデス勝利となります。
最終目標エリアらしくこの2エリアは単独で防壁に囲まれています。
緑色の星印(戦略拠点):
- タイロプオン南部地区
- 庶民街
各エリアを支配することで、そのターンの手札上限枚数が1枚プラスされるボーナスを得られます。ゲーム開始時は両拠点ともユダヤの支配下にあるため、ユダヤ側は手札枚数+2枚のボーナスを得ています。ゲームが進行し、これらの拠点を奪われると、ユダヤ軍はボーナスを失い、逆にローマ軍の手札枚数が増加します。
プレイしてみてわかったのですが、「タイロプオン南部地区」のエリアは、「ヘロデの宮殿」と「神殿丘地区」の2つの勝利エリアの中間点に位置することもあり、この2つのエリア間での兵力の融通をはじめとする連絡にも重要な地点となります。
第一幕:新市街地区の崩壊
エルサレム北部の新市街地は周囲を防壁に囲まれた”城内”に位置していたが、壁の向こう側にはすでにローマ軍団の兵士たちがひしめきあっていた。城外にあった木々や家々を壊した材木から巨大な攻城塔がいくつも組み上げられているのを、防壁の守備についたユダヤ兵から確認された。
「塔を進めろ!」
兜に房飾りをつけた百人隊長による号令一下、軋みをあげながら塔が防壁に近づく。対抗して防壁からは矢の雨が降り注いだ。

第1~2ターン:新市街地区の攻防
ローマ軍の攻撃は、エルサレム北方の新市街地区の防壁から開始されました。
攻城塔が防壁に接近すると、ユダヤ軍は直ちに妨害に出ます。攻城槌に対しては火矢を用いて燃やし、攻城傾斜路に対しては設置カード自体を取り消すカードが使用されるなど、激しい攻防が展開されました。
ユダヤ軍は郊外でも暴動を起こし、この鎮圧のためローマ軍は一部の増援をそちらに回す必要がありました(ローマ軍の増援が減る)。
続く週(ターン)もローマ軍はしつこく傾斜路の工事や坑道掘削による突破を試みます。壁の破壊に対する補修と数次にわたる攻撃の末、防壁は突破され、ローマ軍は新市街地区になだれ込みます(「X」印は防壁が突破された場所になります)。
勢いに乗ったローマ軍は内側の防壁も突破し、旧市街の一角(タイロプオン北部地区)への進出にも成功しました。
一方、ユダヤ軍も新市街地区の1エリアを奪還しますが、損害の増大を恐れ1部隊を残すと旧市街側へ退避しました。手札枚数ボーナスを得られる「タイロプオン南部地区」の防御に注力する必要が生じたためです。
第二幕:南門の悲劇
ティトゥスは北部の膠着を見て、新たな決断を下す。
「南門から攻めよ」
エルサレム南半分の防壁は特殊な地形に築かれていた。川と丘陵に沿った防壁は、軟弱な地盤と急峻な高低差のため、攻城塔も攻城槌も使えない。だがそれでいい。ティトゥスの目的は、敵の兵力を分散させることにあった。
ところが――運命は予想外の展開を見せる。

第3ターン:二正面作戦の展開
北部戦線の進展
北部では、ローマ軍が新市街地区のほとんどを支配下に収めると、旧市街への防壁を越えた攻撃を開始しました。一度ローマ軍の手に落ちた地区を再奪還するのは、戦闘力の差から難しく、ユダヤ軍は部隊を後退させ防衛ラインを整頓します。
南部からの新たな攻撃
ローマ軍は北部で戦線が膠着するのを見ると、異なる方向から攻撃を開始します――都市南部からの攻撃です。
エルサレム南半分の防壁は、川と低い丘陵に沿って建造されています。軟弱な地盤や高低差のある地形により、攻城塔や攻城槌といった平地での運用を前提とした攻城兵器の使用は不可能でした。ローマ軍はユダヤ軍防衛部隊の戦力配置を分散させるため、この南方からの攻撃も開始します。
ところが、エルサレム南方の庶民街への攻撃時、ダイスの目が想定外に振れます。攻城兵器なしでも防壁を乗り越えたローマ軍は「庶民街」エリアになだれ込み、ユダヤ軍を排除して瞬く間に占領してしまいます。
ユダヤ軍の反撃
ユダヤ軍は、ローマ軍包囲網のうち手薄となった城外の南部エリアへ出撃します。庶民街への進出に伴って城外のエリアががら空きとなっていたのでした。
これにより包囲網が破られ、外部からの補給が回復したことで、「補給制約レベル」が2レベル改善しました。このレベルはゲーム中、通常は悪化していく方向に動くため、この改善はユダヤ軍にとって大きな助けとなりました。
第三章:タイロプオンの死闘
最も激しい戦いが繰り広げられたのは、タイロプオン南部地区だった。
市街地の地形効果は強力だった。入り組んだ路地、急な階段、密集した建物――都市戦闘に不慣れなローマ軍にとって、これは地獄だった。「増援を送れ!周囲から少しずつでいい!」
ユダヤ軍は周辺エリアから次々と増援を投入する。一度でも支配権を失えば、地形効果は失われる。それだけは避けねばならない。
ローマ軍側も苦しんでいた。投入できる兵力には限界がある。攻撃後の疲弊した部隊がエリアに残り続けるため、後続部隊の展開を妨げてしまう。
「防壁なら攻城兵器で防御を削ることができるが、市街地では手がない……」
ローマ軍の前線指揮官は歯噛みした。
こうして戦いは消耗戦の様相を呈していく。ローマ軍が集中できる攻撃力と、ユダヤ軍の増援投入能力との、力比べが続いた。

タイロプオン南部地区の激戦
前ターンから激戦が続いたのが「タイロプオン南部地区」です。ローマ軍による数次の攻撃に対して、ユダヤ軍は周囲のエリアから増援を送り込み、粘り強く抵抗しました。
エリアの支配権を維持している限り、市街地による「+3」の地形効果を継続して得られます。この効果が大きく、ローマ軍の度重なる攻撃にもユダヤ軍が耐え続けることができた理由となっていました。
攻撃を行うローマ軍側では、エリアごとのスタック制限により集結できる部隊数が限定されます。攻撃を実施した部隊ユニットは「スペント」状態でそのエリアに残り続けるため、後続の攻撃実施時の障害となってしまいます。防壁と異なり、カード効果などで地形効果を減殺する手段もないため、膠着状態に陥っていきました。
ローマ軍が集中できる攻撃力と、ユダヤ軍の増援提供能力との消耗戦となっています。
第四幕:血塗られた谷間
ユダヤの民は一枚岩ではなかった。
城内には複数の派閥が割拠し、その対立は殺し合いにまで発展するほど深刻だった。熱心党、シカリ派、そして大祭司派――彼らは互いを憎み合っていた。だが今、ローマという巨大な敵を前に、彼らは一時的に手を結んだ。あるいは、たまたま二つの派閥が同時に反撃に出ただけだったのかもしれない。
タイロポエオン南部地区に、二人の指導者が現れた。
「我らが戦う時は今だ!」
彼らは自派閥の兵士を率いて突撃する。疲弊した兵士たちにさらに檄を飛ばし、再び戦意を奮い立たせる。死を恐れぬユダヤの戦士たちが、怒濤の如く反撃に出た。
「押し返せ!異教徒どもを!」

指導者たちの決起
激闘が続くタイロポエオン南部地区に、ユダヤ陣営の2大派閥の指導者がそれぞれ乗り込みます。彼らは自陣営の兵士を率いて攻撃を行うと、さらに兵士たちを鼓舞しました(一度スペント状態になった兵士を「フレッシュ」状態に戻し、再度アクションを実施させることができる)。ついにはローマ兵を同地区から排除することに成功したのです。
ユダヤ軍の苛烈な攻撃にローマ兵は退却する場所を失い、次々と倒れていきました(隣接する支配下のエリアが後続のローマ軍部隊で満杯だったため、退却可能なエリアがなく除去されました)。
しかし、それも束の間でした。ローマ軍は隣接するエリアから新たな梯団を送り込んできます。もはやほぼ全市、防壁の内外に戦闘は広がっています。
第五幕:地獄の包囲戦
歴史家フラウィウス・ヨセフスは、後にこう記録している。
エルサレムに籠城していた人々は60万人。三重の城壁に守られた聖都は、しかしローマ軍の鉄の包囲網によって外界から完全に遮断された。水も食糧も途絶え、飢餓と疫病が城内を襲った。死者は日を追うごとに増えていった。「包囲を破って脱出を!」
絶望した市民たちが、何度も脱出を試みる。
成功する者もいた。だが多くは失敗に終わった。ローマ騎兵隊が包囲網から抜け出した者たちを追い、郊外で虐殺を繰り広げる。血が大地を染めた。ローマ軍の暴虐は、戦場でも発揮された。
撤退しようとするユダヤ兵に対して、ローマ軍は退路を断つ。追いすがり、殲滅する。生きて帰れると思った兵士たちは、二度と戻ることはなかった。守備兵力の逼迫は、日に日に深刻さを増していった。
「包囲の脱出」イベントにより、数次にわたり城内からの脱出が試みられます。成功する場合もあれば、失敗する場合もありました。ローマ騎兵部隊は包囲から抜け出した人々を追い、都市郊外で虐殺が起こることもしばしばでした。
ローマ兵が後退位置を失って除去されるのと同様に、ローマ軍はエリアから撤退するユダヤ軍部隊に対して退路を断ち、退却さえも妨害することが頻発します(「ローマ兵の暴虐」イベント)。撤退するユダヤ兵を追いすがり、そのまま殲滅するのです。ユダヤ軍は撤退したものの、次のエリアを守るべき兵たちが帰ってこないことになり、守備兵力の逼迫が深刻化していきます。
内線の崩壊と補給の枯渇
ゲームのターン数は全8ターンですが、ユダヤ側のイベントカードにより終了が1ターン繰り上がっていました。ローマ軍は第7ターンまでに決着をつける必要がありました。
両軍が兵力を投じているタイロプオン地区は、神殿丘とヘロデの宮殿の中間に位置し、両方の丘の間に挟まれた谷間のような地形になっていました。
それだけではなく、エルサレム市街の南北の中間にも当たります。いわばエルサレム全体の中間点として、ユダヤがここを失うことで、至る所で激戦が起こっている市街の中での移動が著しく損なわれることは確実でした。内線の利を活かせなくなるのです。
またこの頃になると市内の補給の欠乏の深刻度が増し、スペント状態のままスペント状態から回復できないエリアが増えていきます。
第六幕:終わりのはじまり
ローマ軍の総攻撃が始まった。
新市街地から東進した軍勢は、ついに聖なる「神殿丘」に到達する。堅牢な門扉が、最後の障壁として立ちはだかる。
「門を破れ!攻城槌を前へ!」
轟音とともに、槌が門を打つ。一度、二度、三度――。
西方では、「ヘロデの宮殿」への攻撃も開始された。二つの赤い星――ローマ軍の最終目標が、同時に攻撃を受けている。
南方から侵入した部隊は「貴族住居地区」に雪崩れ込んだ。これはユダヤ軍が防御を諦め、防衛線を縮小したことで生じた空白だった。
「もはや全市街が戦場だ……」
火と血にまみれたエルサレム。ほぼすべてのエリアに戦火が及ぼうとしていた。

※ タイロフォン ⇒ タイロプオン
聖地と王宮への迫撃
新市街地から進撃するローマ軍は、ついに市街の東方に位置する「神殿丘」の堅牢な門扉を打ち破らんと攻撃を繰り返します。西方の「ヘロデの宮殿」にも攻撃が開始されました。また市街南方から防壁を越えた軍勢は「貴族住居地区」になだれ込みますが、これはユダヤ軍が防御を諦め、防衛線を縮小したことによって生じた兵力の空白に乗じたものでした。
ほとんどのエリアに戦火が及ぼうとしていました。
「神殿丘」と「ヘロデの宮殿」の間をつなぐのは「タイロプオン南部地区」を核とする谷間のエリアだけで、南北から挟撃されようとしていました。
包囲網の収縮と戦力密度の増大
一方で包囲戦(のゲーム)では起こりがちな、包囲網が小さくなるにつれ被包囲側の戦力密度が高くなる現象から、ローマ軍も攻撃エリアを厳選せざるを得なくなってきます。
もちろんローマ軍が目指すのは「神殿丘」と「ヘロデの宮殿」の2エリアです。
ユダヤ軍はもはや毎ターンに引くことができるカード枚数もかなり限定され、ローマ軍との差は圧倒的です。様々なカードによるイベントや攻撃を繰り出すローマ軍に、十分対応できなくなってきます。
第七章:最終段階
包囲戦の常として、包囲網が収縮すれば被包囲側の戦力密度は高まる。
限られた空間に追い詰められたユダヤ軍は、少ない兵力でも局地的には強力な防御を展開できる。ローマ軍も、攻撃エリアを厳選せざるを得なくなってきた。「目標は二つだ――神殿丘とヘロデの宮殿!」
ティトゥスの命令は明確だった。包囲網は確実に首を絞め、戦いは最終段階を迎えつつあった。
ゲームはここで時間切れ終了となりました。
前記事で紹介した「STORM OVER DIEN VIEN PHU」でもそうでしたが、最終段階になると防御側の戦力密度が高くなり、攻撃側は最後の勝利条件エリアを確保することが非常に難しくなってきます。今回、第7ターンに差し掛かるところでの終了となりましたが、その時点で残り1ターン(イベントカード効果がない場合は2ターン)の間に「神殿丘」と「宮殿」を攻め落とせるかというとなかなかむつかしいかなという判定でした。
もちろんこうした最終盤での戦力密度の集中を避けるように、あらかじめ防御側の兵力を削っておくというのは定石なのでしょう。
感想戦
本作をプレイして感じたのは、緻密な作戦・戦略を練るタイプの作品ではないということです。多少のテクニックやコツなどはあるかもしれませんし、プレイを通しての反省点もあるでしょう。しかし、あまり深刻に考えずに、ひたすら互いのカードや戦力をぶつけ合って殴り合う――そんな感覚のゲームです。
ただ、それが楽しい。
シンプルな攻防の応酬の中に、この包囲戦の激しさと悲惨さが見事に表現されています。カードの引き運、ダイスの目、そして限られたリソースをどこに投入するかという判断。複雑なルールに悩まされることなく、純粋に戦いの駆け引きを楽しめる作品でした。
最後に――「強襲(STORM OVER)シリーズに外れなし」のジンクスは、今回も健在でした。
(終わり)