「STALINGRAD -VERDUN ON THE VOLGA-」(LAST STAND GAMES)を再戦しました。
ルール等の紹介と、前回のAARは次の記事を参照ください。
見覚えのある絵柄ですが(レニングラードなんとかとか・・)スターリングラードの南駅(第二ステーションのことかな?)付近の第24装甲師団の兵士だそうです。
先月に続き「STRALINGRAD -VERDUN ON THE VOLGA-」(LAST STAND GAMES)をDragoonさんと再戦。ゲームバランスの良さと、どちらの軍を担当しても一歩誤ると破綻するかもしれないという焦燥感に駆られるところ、1日あればシナリオ完走できる点も良い。良ゲーです。 #ウォーゲーム pic.twitter.com/GY1GkccBGy
— yuishikani (@yuishikani1) 2021年4月4日
結論
全5ターンのシナリオをプレイし、4ターンに差し掛かったところまでに要した時間は5時間強といったところ。1ターン=1時間半くらいでしょうか。利用した施設の時間制限の関係で途中打ち切りとなったのですが、1日あればシナリオ完走できそうです。*1
ユニットを連隊単位、1ターン=4日間というスケールにしたことにより、ユニット数も多くはなく、取り組みやすいサイズ感になっています。
ゲームバランスも悪くありません。最後まで勝敗はもつれ込みます。ドイツ・ソ連の両方をプレイしてみた印象として両サイドともキリキリとした焦燥感の中でプレイすることになりスリリングです。
ユニットスケールを大きくし、ユニット数を少なくしたことによりプレイアビリティが上がっている点は書いた通りですが、一方で攻め口がパズルっぽくなっている印象はあります。エリアマップの宿命なのかもしれません。
戦闘結果においてダイスの結果による振れ幅が大きい点と「アドバンテージ」ルールの存在は、シミュレーション性よりもゲーム性重視のデザインという印象を受けます。
攻撃を失敗した際の攻撃側のペナルティが大きいシステム(攻撃に参加したユニットは全て1ステップロスする)のため、攻撃側はより失敗が少ないように防御側との戦闘力差をとった上で攻撃を行う必要があります。ところがゲーム後半になると、ソ連軍は得点エリア(ほとんどは防御効果が高い市街地エリア)に戦力を集中させ、さらに「陣地」を構築し、「瓦礫」の効果もあり防御力が非常に高い状態でこもってしまいます。ドイツ軍はそのようなエリアでも攻撃を継続していかなければならないのですが、防御効果が高いため十分な戦闘力差がないまま攻撃しなければならない場面が増えてきます。ダイスの結果による振れ幅が大きい戦闘システムもあって、ドイツ軍は攻撃の失敗が一大事故につながりかねません。保険として「アドバンテージ」を用意するわけですが、「アドバンテージ」がソ連軍の手にある間は、ドイツ軍は攻撃を控えてしまうようになるのです。
このように「アドバンテージ」の有無が特にゲーム後半の流れを左右してしまうのは少々気になるところでした。
ゲーム性重視とは言うものの、ヒストリカル性がないがしろにされている訳ではなく、スターリングラード戦における両軍の抱えたジレンマは十二分に感じられます。良いゲームだと思います。
対戦記録
2021年4月3日10時~16時30分
前野地域センター(東京都板橋区)
Dragoonさん
第1ターン
第1~4インパルス(昼)
ドイツ軍の最初の攻勢はスターリングラード市街南部をうかがった第24装甲師団、第29、第94歩兵師団の3個師団の攻撃より始まった。
スターリングラード市街外縁部に展開していたソ連軍部隊を撃破後、オーバーランにて市街地に突入。続くインパルスにはボルガ河畔の「食糧サイト」にまで進出した。並進した第29歩兵師団も同様に戦闘を重ね、河畔の「10月25日製材所」エリアに進出する。
オーバーランは、攻撃の結果発生した損害を防御側がステップロスや後退・ユニット除去により吸収できない場合、そのエリアを蹂躙して隣接エリアまで移動できるという突破戦闘の一種。
オーバーランによる移動先のエリアに敵ユニットが存在する場合、そのまま戦闘を行うことができる。この際、最初の戦闘の際に用いた砲撃支援や航空支援をそのまま継続して使用できるという点がユニーク。新たに別の砲撃支援や航空支援のマーカーを消費することなく、2度目の戦闘が可能となる。攻撃側からすると砲撃マーカー、航空支援マーカー含めて同一ターンに2回目の戦闘を行うことができるといううれしい仕様になっている。
ただ欠点もあり、1回の戦闘ごとに攻撃側の先導ユニットは戦闘結果によらず必ずステップロスするという仕様から、攻撃側は一挙に2ステップを失うことになる。
ドイツ軍は強力だが攻撃を漫然と実施していると前線に配置された精鋭師団のスタック(ドイツ軍の多くの師団はちょうど4ユニットで構成されていることが多い)はステップロスしたユニットの塊となってしまい、継戦にあたっての衝力を失うのとあわせ、損害吸収力も低下させてしまうことになる(全てのユニットは2ステップからなっているためステップロス状態では、一撃で除去となりかねない)。
ソ連軍はドイツ軍の進出にあわせ、全線に広く薄く展開した部隊を集結させはじめた。郊外の平地は地形防御効果も薄く、ソ連軍の弱い歩兵連隊ユニット程度の戦力展開ではやられ損という判断から市街のほうへ後退させたのだ。
冒頭からドイツ軍が躍進した南部方面だが、先の話をするとその後は終盤まで膠着することになる。
「食糧サイロ」に進出した第24装甲師団は後方の連絡線を厄されることを懸念したことにより後退し、ソ連軍が夜間インパルス中に、この一帯に虎の子の第13親衛狙撃兵師団(ソ連軍の最強師団)を展開したことから対峙状態のままとなった。「製材所」エリアは両軍とも増援(ユニットの追加やステップロスしたユニットの完全戦力への回復)を繰り返したこともあり戦闘状態が継続し、その決着はゲーム終盤まで持ち越されることとなった。
第1ターン 1~4インパルス。市街地南部地区に対し、ドイツ軍は装甲1個師団を含む3個師団で突入、そのままボルガ河畔のエリアに達するが、ソ連軍の激しい抵抗を受けた。過度な損耗をおそれたドイツ軍は受けた損耗分の補充を待つことにし、攻勢を緩めたことからこの地区における決着は終盤までもつれこんだ。
第5~7インパルス(昼)
ドイツ軍の主攻軸は戦線中央に移った。郊外に展開していたソ連軍歩兵連隊ユニットが市街地まで後退していたため、ドイツ軍の各部隊はさしたる抵抗をうけないまま、外縁部を抜け、ソ連軍部隊が展開する市街地に突入する。
移動ルール
敵ユニットに隣接していないエリアであれば、必要移動力は1エリア=1MPだが、敵ユニットに隣接しているエリアの場合は、1エリア=2MPとなる。隣接エリアであっても相手に対して余計に移動力を消費させることができることを考えると、ソ連軍は早々と外縁部から撤収し戦力集中を図るのではなく、しばらくドイツ軍の前進を抑えつつ後退するといった遅滞行動をとったほうがよかったのかもしれない。
第6インパルスのドイツ軍によるダイスチェックにて”夜”インパルスが到来するが、ドイツ軍は「アドバンテージ」を使用して”夜”の到来を中止させた。
兵站チェックと「夜間インパルス」の到来
ドイツ軍インパルスにおいて最初に振られた2D6のダイスの目が、現在のインパルス数よりも小さい場合、「昼インパルス」は終了し、次のインパルスから「夜間インパルス」になる。「夜間インパルス」になるとドイツ軍は航空支援を使用できなくなり、ソ連軍には移動や攻撃を行う際のボーナスが与えられるなどマップ上の主役が交代する感があり、その到来タイミングはゲーム行方に大きく影響する。詳細は前記事を参照。
アドバンテージ
アドバンテージマーカーは、ダイスの目が悪かった際の打ち消しや悪状況の減殺する機能として働く。ドイツ軍にとっては特に次の2点が重要。
- 戦闘解決時の悪い結果を減殺できる(本稿冒頭の「結論」欄で紹介した効果)
- 昼/夜の延長
アドバンテージは使用しなければ自動的に相手に渡るタイミングがある。「昼インパルス」から「夜間インパルス」に変わるタイミングでは自動的にドイツ軍からソ連軍にアドバンテージの所有が変わるため、ドイツ軍は「昼間インパルス」の間にアドバンテージを使っておくのがよい。
アドバンテージを使ってまで「昼インパルス」の延長を試みたのだが、その直後の第7インパルスにて再度ダイスチェックにて”夜”の到来結果が出たため、ここで「昼インパルス」は終わりを告げた。
ドイツ軍第71歩兵師団はママエフクルガンの麓まで到達するものの”夜”が先に到来したため同エリアへの進出は諦めざるを得なかった。
ママエフクルガンの価値とボルガ河渡河チェック
ママエフクルガンはスターリングラードの制高点にあたる。ここを占拠すると夜間にボルガ河を超えてくるソ連軍の渡河移動の際に必ず発生する”渡河チェック”にあたってソ連軍は不利なダイス修正を被ることとなる。
ソ連軍の増援は夜間ターンにのみボルガ河を超えてくるため、この”渡河チェック”は必須となる。
第1ターン 第5~7インパルス
スターリングラード中央部には3個歩兵師団と複数個の装甲連隊が進撃した。ソ連軍が戦力集中のため予め後退していたためドイツ軍は容易に市街に取り付くことになった。
第8~10インパルス(夜間)
夜間インパルスの主役はソ連軍だ。夜間はドイツ軍のスツーカも出撃できないため、ソ連軍は増援をボルガ河を渡河させてスターリングラード市街に送り込むことができる。ただしやはりドイツ軍の砲撃が継続している状況のため、渡河にあたっては渡河チェックが必要となる。
第1ターンに登場するソ連軍の第13親衛狙撃兵師団は1万人規模の精鋭部隊で史実でもスターリングラード戦初期に投入されている。ゲーム中を通してソ連軍ユニットの中でも最強の戦闘力を有するのと、第1~3ターンの期間中においてソ連軍の中で唯一「ストームグループ」の使用が認められている部隊でもある。
ストームグループ
ストームグループはソ連軍が発動させることができる攻撃方法で、夜間ターンに市街地か森林エリアにおける攻撃にあたって戦闘解決のダイスの目に1D6の結果分を加算させることができる。効果をとってみれば、昼間におけるドイツ軍の航空支援と同じ効果といえる。ただし第1~3ターンまではソ連軍の中でも第13親衛狙撃兵師団の3ユニットのみが使用できるという制約がある。
前回プレイ時には全ユニットステップロスした状態のドイツ軍歩兵師団のフルスタック(4ユニット)に対して、この「ストームグループ」による攻撃が実施され、1個師団全て除去されるという戦果を上げている。損害の大きさにおののいたドイツ軍は市街地から損耗状態のユニットを引き上げるなど動揺が走った。
第13親衛狙撃兵師団はドイツ軍に占拠された「食糧サイロ」エリアの北方のエリア(中央ステーション付近)に上陸し、そのまま食糧サイロエリアに向かい進撃する。
精鋭とはいえ損耗が重なっていたドイツ軍第24装甲師団は後背に回られるのをおそれ、つぶしあいになって損害を重ねることを嫌い「食糧サイロ」エリアから退き、そのままソ連軍との対峙状態にはいった。
第1ターン夜間インパルス(第8~10インパルス)
第13親衛狙撃兵師団はボルガ河を渡河し、第2ステーション付近からドイツ軍の後方に進出。食糧サイトを占拠していたドイツ軍第24装甲師団が後退したところで両勢力は衝突した。
第2ターン
第2ターン、ドイツ軍第71歩兵師団は主力が後退したことで手薄となっていた「ママエフクルガン」を突破し、ボルガ河畔まで進撃した。
ドイツ軍のボルガ河畔エリアに向けての攻撃が進行し、一方でソ連軍は戦力の集約と、集約したエリアでは「陣地」構築が行われていった。
第2ターンの昼間インパルスは、早々とドイツ軍が「兵站チェック」において「一時停止」の ダイスを出してしまい、攻勢活動がとれないままに夜間インパルスに突入。
夜間インパルスにおいてソ連軍も攻勢活動はとらなかったことから、大きな戦線の動きにはつながらなかった。
兵站上の理由による「一時停止」
ドイツ軍インパルスの最中に最初に振られるダイス2D6の目を「兵站チェック」といい、その値がその時のインパルス数より小さい場合、「昼」または「夜間」が終了することは説明したが、2D6の目の値がインパルス数と同じ値の場合、ドイツ軍は「一時停止」状態となり、次のインパルスから攻勢活動を行えなくなる。
「一時停止」状態の解除には、次のインパルス以降に同じようにインパルス数と同じダイスの目を出すか、ターンが終了することが必要となる。
特に前者なんてほぼ無理じゃない?という条件であるため、この時も、第6インパルスに「一時停止」状態となったドイツ軍は、その後、インパルス数と同じダイスの目を出すことができずに、ターン終了まで攻勢活動はできなくなっった。
第3ターン以降
ドイツ軍はいくつかの河岸エリアを占拠し、ソ連軍は防御力が高い市街地エリアに戦力を集中させた。ソ連軍は、ボルガ河を渡ってふんだんに送られてくる補充兵によりステップロスを回復させ、「陣地構築」を行った。戦闘が行われた市街地の多くでは「瓦礫」が発生するが、「瓦礫」や「陣地」はドイツ軍の航空支援の効果を減殺させる上に加えて防御効果があるため、そこに籠もるソ連軍の防御力を強化させることとなった。
ソ連軍が籠もる河畔の市街地を攻撃するドイツ軍は先導ユニットに強力な装甲連隊を置いたとしても戦闘力差がほとんど発生しない事態となっていく。勝敗はダイスの目勝負となり、攻撃側は攻撃失敗時のペナルティ(攻撃に参加した全ユニットがステップロスする)を恐れ、「アドバンテージ」を保有している時にしか攻撃ができなくなってしまった。
それでもドイツ軍はソ連軍の防御が弱いところを穿つように攻撃を続けた。
やがてあちこちの河畔のエリアへドイツ軍は進出し、ボルガ河畔に追い詰められたソ連軍は分断されていった。
特にママエフクルガンを経由しての進出、中央駅を迂回した進出により、スターリングラード市の中心部は大きくドイツ軍の占拠下におかれることとなった。
この頃になると、ソ連軍が占拠したエリアはいずれもフルスタック状態となりスタック制限から、ソ連軍はボルガ河を超えて援軍を送れなくなってしまうというおかしな事態になった。もっとも援軍を送れる余地があったとしても、ママエフクルガンを失い、河畔エリアの半分近くを失った状態では渡河チェックでのペナルティが大きくなっていたことは疑いない。
河畔の戦闘のひとつでは、ドイツ軍が航空支援のダイスを含め戦闘結果のダイスの目で3個のダイスすべて6という目を出したことで、そのエリアのソ連軍フルスタックは事実上、吹き飛ばされるという事態も起こっている。
第4ターン途中の状況(VASAALにて再現)。ドイツ軍がソ連軍の防御が少しでも弱いところを攻撃していったことで、ソ連軍は河畔に追い詰められ分断されていった。残ったエリアはフルスタック状態で「陣地」と「瓦礫」により強力な防御効果を持つ要塞と化していた。これにはさしもの強力なドイツ軍も攻撃を躊躇し、「アドバンテージ」による救済を助けに攻撃を仕掛ける状態になっていた。
一方でソ連軍はフルスタック状態となったため、これ以上の増援はスタックオーバーとなるためままならず、また河畔エリアの多くを占拠されたため、渡河チェックにもかなりのペナルティを要する状態となっていた。
時間の関係で4ターンに差し掛かったところで終了となった。この時点でドイツ軍のVPは6。第5ターン終了時にドイツ軍が10VP以上獲得するとドイツ軍の作戦的勝利、9VP未満はソ連軍の作戦的勝利となる。
実質あと2ターンがフルに近い状態に残っており、2エリア占拠すればドイツ軍の勝利(3エリア占拠だとサドンデス勝利の条件を満たす)。
第4ターンにドイツ軍は大規模な増援を得ているため第5ターンにはそれらの部隊も含め、総攻撃を仕掛けることが可能そうだ。一方のソ連軍も同様に増援を得ているのだが、占拠していエリアの制約のため部隊を送り込むことができないという事態になっているのは述べたとおり。
全体の趨勢ではドイツ軍有利な状況といえるのではないか。ただ夜インパルスの到来をチェックする「兵站チェック」で思わぬ値を出すなど、ダイスの目に左右されるのも事実。最後まで予断を許さない。
(了)
本ゲームと同じデザイナーによるエリア・インパルスシステムを用いた「伊江島1945」が収録された号です。いつか挑戦してみたい作品です。本誌のほうもエリア・インパルスシステムの歴史を紹介する記事など、参考になる号です。
*1:キャンペーンゲームは全10ターン。シナリオとしてはキャンペーンを2つに分割してそれぞれ5ターンずつのものが2本用意されています。