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『九州侵攻 オリンピック作戦 Operation Olympic Kyushu 1945』(ボンサイゲームズ)を対戦する【1/2】

 

『九州侵攻 オリンピック作戦 Operation Olympic Kyushu 1945』(ボンサイゲームズ)を対戦しました。 1945年(昭和20年)、日本が降伏せず戦争を継続した時、実施される可能性があった米軍による九州侵攻作戦を扱った仮想戦です。

 

 

 

ゲームシステム

1ヘックス=約7キロ
1ターン=5日~7日
1ユニット=連隊/旅団

マップは鹿児島県・宮崎県の全部と熊本県南部まで収録され、精緻で美しいグラフィックになっています。南九州のマップは「九州三国志*1以外では見ることはないこともあり、興味深いです。

ゲームシステムは複雑ではありません。強襲上陸が実施される第1ターンでは通常のシーケンスを実施する前に、第1波上陸・第2波上陸の手順が行われますが、それ以降はアメリカ軍・日本軍の順に、移動-戦闘が実施されるというシンプルな内容になっています。第2移動や突破移動のような手順はありません。
若干アレンジはあるものの、変わったルールはないため素直にプレイできます。

 

ZOC(Zone of Control:支配地域)

  ZOCは「弱ZOC」を採用しています。敵ZOCからの脱出に追加移動力は不要で、敵ZOCから敵ZOCへの直接移動も全移動力を消費すれば可能です。このルールにより、大隅半島薩摩半島のような狭い地形部分からの脱出する術が得られています。

 

戦闘システム

戦闘は、攻撃側・防御側の戦闘力合計の比率から1d6で解決されます。
河川以外の地形効果、航空支援、司令部支援(砲撃等)、海上支援(海岸ヘックスから2ヘックス先まで届く!)、バンザイ突撃などは戦闘解決表の列をシフトさせる効果があります。損害は相互の損失ステップ数と後退が発生するのですが、敵ZOCへの後退も1ステップ余計な損害を受けることで可能なため、包囲して後退位置をなくして即ユニット除去という「はさんでポン!」が簡単にはいかないシステムになっています。
戦闘結果を受けての前進(戦闘後前進)についても特に+αの仕掛けはありません。後退の結果に対しては「死守」が可能です(判定あり)。

 

日本軍独自のルール

  日本軍特有のルールとして「特別攻撃隊」「国民義勇隊」「遊撃隊」があります。「特別攻撃隊」は毎ターン4回、後2者は毎ターン判定されるイベントの結果として登場します。

  • 特別攻撃隊」:航空特攻だけではなく震洋海上特攻)なども表現しています。成功判定の上、アメリカ軍の「海上支援」マーカーや攻勢マーカーを除去できます。
  • 国民義勇隊」:「バンザイ突撃」を行った際に日本軍に必ず発生する1ステップ損害を、通常は、バンザイ突撃に参加した部隊ユニットから損害を出すところを「国民義勇隊」ポイントで吸収できるというものです*2
  • 「遊撃隊」:沖縄戦でも行われたゲリラ戦部隊を指し、マーカーが置かれたヘックスのアメリカ軍の移動や戦闘を1ターン妨害します。

 

ゲームの流れ

  第0ターンでアメリカ軍の戦略爆撃(絨毯爆撃と交通路破壊)が行われ、第1ターンの冒頭にアメリカ軍は宮崎海岸、志布志湾大隅半島南東)、吹上浜薩摩半島西岸)に強襲上陸を行います。
強襲上陸ルールはシンプルで「強襲上陸表」を用いて判定します。上陸地点に日本軍が存在した場合と存在しなかった場合の2種類が用意され、上陸を行うヘックス毎にダイスを1個振り結果を判定します。
結果は上陸の成否*3、上陸側と守備側の損害で表されています。海岸ヘックスに日本軍がいない場合は無血上陸になりますが、上陸側に多少の損害が出る場合もあります。部隊ユニットこそないものの防御施設や防御部隊は少数ながらいたということなのでしょう。

 

史実背景との兼ね合い

この時期、日本軍は水際防衛戦術に回帰していました*4
「強襲上陸表」は構造上、防御側の戦闘力の大小にかかわらず、同じ確率、かつ高い確率で上陸軍側に損害を与えることができます。このシステムによって水際防衛戦術への回帰を表現する意図があったのかは定かではありませんが、戦闘力が弱い日本軍としては初期配置条件で可能な限り海岸線に沿った防衛線を構築すべきでしょう。

 

登場する部隊

  日米両軍あわせて戦闘力が最も高いのはアメリカの海兵隊の連隊(戦闘力9、3ステップ)。続いてはアメリカ陸軍の大部分の歩兵連隊(戦闘力8、3ステップ)となっています。
一方、日本軍の最強ユニットはスタート時で宮崎県小林に駐屯している第25師団*5。同師団の連隊の戦闘力は「8」で海兵隊には劣りますが、4ステップと非常に打たれ強い性能になっています。

第25師団以外の機動打撃師団に分類される師団の連隊(戦闘力7、3ステップ)も強力ですが、沿岸地域の防御に配置されている根こそぎ動員で組成された沿岸配備師団の連隊は戦闘力4、2ステップと評価されています。
日本軍は史実でも南九州に配備されていた軍団・師団・旅団が初期配置から配備されていますが、ゲーム途中に北部九州や中国四国といった他地域から増援として駆けつけ登場します。こうした戦闘序列の裏設定を読み込むことも興味深いところです。

 

勝利条件と米軍の制約

勝利条件はゲーム開始時にアメリカ軍が秘密裏にランダムに引いた内容で選ばれます。
もともと本作戦は九州全土の占領を目指したものではなく、翌年1946年3月に計画されていたとされる関東侵攻を企図したコロネット作戦のための前哨航空基地を確保するため、作戦範囲を南九州に限定して実施される計画でした。こうした背景を受け、ゲームでの勝利条件はゲーム終了時に最大進出線(マップ上で設定されている)以南の鹿児島県全土と宮崎県の南半分にある拠点都市10か所(宮崎、鹿児島、鹿屋、川内、小林、都城など)の占領を基本として、進出線以南での日本軍の殲滅や、進出線以北の都市の占領も組み込んだものなど4パターンになっています。

アメリカ軍は戦死傷者が増えることに対してアメリカ国内の世論による制約を受けます。アメリカ軍は失ったステップ数がトラックされ、一定数を越えると「原子爆弾の使用」が許可され、さらに進むとサドンデス負けとなります。

 

アメリカ軍は宮崎海岸と志布志湾の上陸で大損害を受け当初計画の半分程度の兵力しか揚陸できずにいた。一方、吹上浜では日本軍の守備が薄い海岸を中心に強力な海兵隊第5軍団の揚陸に成功した。
色付きマーカーが置かれた地点は勝利条件に関わる進出ライン以南の拠点。

 

感想戦

ゲームは非常に面白かったです。
日本軍は予想以上に善戦することができます。一方で"下駄を履かせてもらっている"印象は拭えなかったのも事実です。具体的には、兵力の補充能力や補給線さえ確保できれば戦闘に対する制約が少ないという点での継戦能力、またマップ上の移動の容易さといった点に起因します。

 

日本軍の継戦能力

  日本軍の機動打撃師団は各連隊とも3~4ステップ保有しており、戦闘解決システムから即除去ではなく損害はステップで示され、さらに日本軍の毎ターン受ける補充はアメリカ軍のそれよりもわずかではありますが、上回っていることもあり回復力が高いです。
本土決戦での戦闘がそれまでの孤立した島嶼戦のような補給が断絶した戦闘とは異なることは予想されます。おそらく緒戦ではそれなりに善戦したかもしれません。ただし、それが数ターン(1ターンは5~7日)1~2か月にわたってアメリカ軍の上陸部隊を海岸近くに釘付けにするというのは、やや日本軍の継戦能力が過大評価ではないかとの印象を受けました。

3個登場する日本軍の戦車旅団は装備車輌のシルエットが描かれています。他2個旅団の装備は一式戦車に見えますが、上掲の独立第6戦車旅団は三式戦車のようですね(どうでしょう?)。
また日本軍の全ての師団・旅団ユニットにはそれぞれにつけられた通称号も掲示されている点も良いですね。第25師団の通称号は「国」、独立第6戦車旅団は「闘」です。

 

移動能力

移動能力についても1ターンが5日ですので、時間を考慮すると徒歩移動であったとしてもそれなりに移動は可能です。全軍機械化されているだろうアメリカ軍と機動力の差があまりないのも不自然かなという印象はあります。

 

地形効果

一部地形、例えば鹿児島・宮崎・都城・川内といった市街ヘックスは都市とされ、地形効果で3シフトという、強化陣地(要塞)よりも強力な地形効果が与えられています(強化陣地の地形効果は2シフト)

鹿児島・宮崎といった都市はすでに繰り返し空襲を受けており、おそらく本作戦が実行に移される世界線ではさらに重ねて襲撃されていたことは想像に難くありません。史実でも1945年8月時点で鹿児島市街の93%は焼失していたということです。石造建造物が多数ある欧州の市街とは異なり、日本の市街地にそこまでの防御効果があったようには思えないです。
ただこうした地形効果がなければ日本軍は有効に守ることができるところもないため、ゲームとしては仕方ないのかなとも思われます。

 

知識ギャップ

本土決戦計画に対する知識不足からくる誤解も判明しました。前述の、水際防衛への戦術変更もそうですし、南九州はその地質の関係から戦車の運用に適さないと判断されていた点もそうです。特に後者については、日本軍ユニットの戦力評価に比べると、相対的にアメリカ軍部隊の戦力評価が低いのではないかという点につながります。歩兵が有効な携帯対戦車兵器を持ち得なかった日本軍にとって、戦車を潤沢に備えたであろうアメリカ軍の部隊の戦力はもっと大きくてもよいのではないかという点になるのですが、地形(山地・狭隘道路)・地質(シラス台地)の制約からアメリカ軍の戦車が十分な実力を発揮し得ない状況を想定されたのかも知れません。

 

ゲームの流れ

強襲上陸時の水際防衛で米軍に多大な損害を与え、要塞ヘックスでの抵抗や複数師団による反攻も可能です。米軍は損害を少しずつ蓄積します。ゲームは対照的な両軍の戦いとして興味深く、デザイナーの「米軍が一方的なスチームローラーにならない」意図は達成されていると感じました。ただし、全体を通して末期戦の悲壮さは薄い印象です。

 

日本軍との戦力比を考慮したアメリカ軍は、宮崎海岸は橋頭堡防衛に絞り、増援(後続上陸)を志布志湾に集中させます。これにより志布志湾沿いに展開していた日本軍は湾周辺の陣地と後背地にあたる鹿屋を放棄し、防衛線を北に引き上げます。

 

(続く)

 

 

 

 

以下、末期戦の悲壮感がにじみ出る作品群

 

*1:または西南戦争テーマのキャンペーンゲームか?そういった作品があるのかは寡聞にして知らないです

*2:沖縄戦を扱った作品でも登場する「義勇隊」については、その表すところを想像するのは胸が痛くなります

*3:失敗した場合はそのスタックは撤収し、数ターン先に戻ってくることになります

*4:決定が遅かったこともあり徹底度は低かったようですが

*5:第25師団は、太平洋戦争前に満州で編成された後、戦闘に参加することなく温存された精鋭部隊だったとのことです