
戦術級・東部戦線
『SQUAD LEADER』(AVALON HILL)(以降、SL)を入手してシナリオ1をプレイした記事を書いたところ、その記事を読んだKさんよりお誘いをいただき、今回シナリオ5「Hill 621」を対戦することになりました。
『Squad Leader』(Avalon Hill)の名物シナリオ「Hill 621」を対戦。1944年夏の東部戦線。わずか8個分隊のドイツ軍が、48個分隊もの赤軍の猛攻を受ける。装甲部隊で機動防御を繰り返しつつ、最後は逆斜面戦術で粘るドイツ側の奮闘が熱いシナリオです #ウォーゲーム #WarGames #ボードゲーム pic.twitter.com/2yPSo94wtS
— yuishika (@yuishikani1) 2026年5月9日

今回の発端となった記事
シナリオ5「Hill 621」について
『SQUAD LEADER』には全12本のシナリオが付属しています。シナリオ6まではソ連軍とドイツ軍による東部戦線を扱い、シナリオ7以降はアメリカ軍との西部戦線の戦いをテーマとしています。
シナリオ5「HILL 621」は、バルジの戦いを題材としたシナリオ12*1と並んで、12本中でも最大規模の内容を誇ります。多くのSLプレイヤーにとって想い出深い、いわば「名物シナリオ」といえるでしょう。わたし自身も、多数のユニットが入り乱れる派手な展開が魅力で、かつてよくプレイしたシナリオです。今回は実に数十年ぶりのプレイとなります。
シナリオ5の題材は1944年6月、ドイツ軍の中央軍集団を崩壊させたソ連軍によるバグラチオン作戦の一戦場です。ドイツ軍はマップ内の丘陵地(621高地)を最後の防衛線とする中、大量のソ連兵が波状に押し寄せてきます。
ドイツ軍の守備隊はわずか8個分隊。しかもゲーム開始時に各分隊の士気チェックが強制されます。士気チェックに失敗した分隊は、回復するまで戦闘に復帰できません。一方のソ連軍は実に48個分隊が登場します。その後、両軍とも増援が加わりますが、ドイツ軍の数的劣勢が覆ることはありません。
使用するマップは3枚。西(写真上側)から丘陵地マップ(マップ2)、中央に開豁地が広がるマップ4、そして東側にはソ連軍が侵攻を開始する小村落が描かれたマップ3が並びます。

シナリオ5の舞台となるマップ
上から丘陵地(マップ2)、郊外の開豁地(マップ4)、小村落(マップ3)と並んでいる。ドイツ軍の初期配置はマップ4、ソ連軍はマップ3。
マップ2の丘陵地の「V」マークが入っている地点が勝利条件となるヘックスで、ゲーム終了時に7個の「V」マーク入ヘックスのうち、5個について占有状態(Occupaying)にある側が勝利となります。
マップ3の赤い円で囲われた建物が因縁の2階建て建物で、終始ソ連軍の機関銃チームが配置されました。
ドイツ軍の初期配置はマップ4、ソ連軍はマップ3からスタートします。勝利条件は、マップ2の丘陵地における最高高度レベル4のヘックス全7つのうち5つを、ゲーム終了時にソ連軍が「占領」していること。ドイツ軍はこれを阻止すれば勝利です。
ゲームの焦点はマップ2となります。ドイツ軍はマップ4からマップ2へと後退しながら防衛線を維持し、ソ連軍はマップ3からマップ2へ向けて怒濤の進撃を繰り広げることになります。
適用ルールと今回の誤解
プレイに先立ち、Kさんと適用ルールの確認を行いました。
SLは12本のシナリオを通じて段階的にルールを拡張していく「ステップ方式」を採用しており、シナリオ5まで進んだ段階でもまだ適用しないルールが少なくありません。シナリオ3で戦車・自走砲などの戦闘車両が導入され、シナリオ4では野外の多様な地形と高度化した照準線(LOS)のルール、盤外射撃*2のルールが加わります。そしてシナリオ5でハーフトラックと対戦車砲がはじめて登場するという流れです。Kさんとの確認でも、全ルールではなくシナリオ5までの「ステップ方式」の範囲で適用することで合意しました。
ここでルールに関して1点、重大な誤解をしていました。それが今回のゲームの流れにも大きく影響することになります。
ソ連軍は初期配置において2個のMMG(中機関銃)を保有しています。本シナリオの定石として、マップ3(小村落)の端にある石造建造物の2階に火点を設けることで、マップ4の全域を射程に収め、マップ2まで射線下に置くことができます。
ところが私は、「2階建て建物への配置・移動ルール」がはいってくるのはシナリオ10からだと捉えていたので、今回のプレイでは建物の2階は存在しないものと解釈していたのです。
実際には、2階建て建物はシナリオ1の段階から登場しており、2階と1階を自由に使い分けられると定められていました。シナリオ10から追加されるのは、2階建て建物に関して、2階にいるユニットと1階にいるユニットがきっちりと分別して管理されるようになる細かいルールだったのです。
つまり本シナリオでは2階建て建物を使用でき、そこに火点を置いたソ連軍は広大な射程を確保できた、というわけです。
初期配置
今回はドイツ軍を担当することになりました。
配置はソ連軍が先。ほとんどのユニットはマップ3(小村落)とマップ4(平地)の境界に沿って、横一列に展開しています。
続いてドイツ軍が配置します。分隊ユニット8個、指揮官ユニット2個です。配置後は全分隊に士気チェック(ドイツ軍の場合、2D6*3で7以下が成功)が強制されます。指揮官とスタックしている分隊であれば第1ターンにすぐ回復を試みられますが、離れた位置に置いた分隊が失敗してしまうと、指揮官をわざわざそのヘックスまで移動させなければなりません。後継作の『ADVANCED SQUAD LEADER』(以降、ASL)では指揮官なしでも分隊単独での自己回復が可能ですが*4、SLでは回復に指揮官とのスタックが必須です。単独で配置された分隊がこの配置段階での士気チェックで失敗すると、ゲームを通じて回復の機会を失いかねません。
次に考えたのが「早々にマップ2へ後退すべきか、それともマップ4でも抵抗すべきか」という点です。かつてのプレイ経験からは「マップ2後退派」でした。
ソ連軍が押し寄せる前に最終的な防衛戦が行われるマップ2に移動し、よりよい地点を確保するという考え方です。
一方のマップ4遅滞案は、早々とマップ4から撤収するのではなく、ソ連軍の侵攻の気勢を制していく考えです。いきなり進撃を許すのではなく、ドイツ軍の機関銃の貫通力を活かしつつ、開豁地を移動するソ連兵に「-2」のペナルティを課しながら、平地で少しでも兵力を削っておきたいという考えです。
ところが改めてマップ4を眺めると、大きな麦畑エリアや建造物、林のヘックスが点在しており、思ったより照準線(LOS)が通らない――つまりソ連兵を捉えにくい地形だと気づきました。かつてはもっと派手にソ連兵を攻撃したイメージがあったのですが、思い出補正とは怖いものです。
ソ連兵を効果的に攻撃できる火点を確保しようとすれば前線への突出を強いられ、後退も難しくなります。もちろん犠牲を覚悟でそうした配置もありえますが、ただでさえ少ないドイツ軍ユニットを無駄に失うわけにはいきません。また、士気チェックに失敗した分隊の位置へ指揮官を差し向けることも難しくなってしまいます。
結論として、消極策ながら適度に攻撃を加えつつマップ2の高地へ後退していく方針を決めました。
配置後の士気チェックでは、8個分隊のうち3個が失敗。うち2個は指揮官とスタックしていたため第1ターンに回復を試みられますが、残る1個は指揮官から離れた場所に配置していたため、合流が難しい状況となりました。

マップ3(上側のマップ)の端に集まったソ連軍部隊に対し、ドイツ軍はわずかな兵力であることがわかります(写真は初期配置後の士気チェック前)

第1ターン ―― 緒戦の悲劇
先攻はドイツ軍。悲劇は緒戦で起きました。
「ソ連兵から見えるはずがない」と油断して道路を移動していた、9-2指揮官に率いられた3個分隊+通信機+重機関銃のスタックが、ソ連軍が2階建て建物に構えた機関銃火点からの射撃を受けたのです。見えないと思い込んでいたため平地移動のペナルティを物ともせず堂々と前進していたところを撃たれたのですから、ひとたまりもありません。
しかも出た目が小さい。SLではダイスの目は小さいほど効果が高く、平地移動のペナルティも加わって、結果は最悪の「KIA」(ユニット除去)。問答無用で全ユニットが除去されます。
わずか8個分隊・2個指揮官しかいないドイツ軍から、いきなり3個分隊と1個指揮官が消えました。正直、このまま投了しようかとも思いましたが、久方ぶりのプレイをいきなり諦めるのも惜しく、もう少し続けることにしました。
ソ連軍ターンになると、小村落マップ端の林からソ連兵が前進を開始します。麦畑・林・建物といった地形を巧みに使い、平地に身をさらすことなく進んでくるあたり、見事な動きです。
第2ターン ―― 戦車の登場
意気消沈のドイツ軍に、強力な増援が到着します。75ミリ砲搭載のⅣ号戦車F2型が4両です。SLでは、独・米・ソ各軍の主力戦車としてそれぞれⅣ号戦車F2型、T34/76、M4シャーマンが登場します。SLのテーマはあくまで第二次大戦中の歩兵戦闘ですから、ティーガーやパンターといった重戦車は登場しません。現場で地道に戦い続けたⅣ号戦車やⅢ号突撃砲が主役です。
到着したⅣ号戦車は、麦畑に身を隠しながら進むソ連兵の集団に横合いから突進します。有効な対戦車兵器を持たないソ連兵に対してオーバーランによる攻撃を行うのです。ソ連歩兵側も防御射撃で走行不能を狙いますが、ことごとく失敗。成功確率が低いので、ある意味当然の結果です。戦車1両あたり歩兵火力16(4個分隊相当)のオーバーランにより、ソ連兵の一部ユニット群が蹂躙されました。
とはいえ、次のソ連軍ターンにはT34/76が6両登場することはわかっています。あまり無理な動きはできません。ソ連戦車が現れたときに不利な位置にならないよう、オーバーランの位置や移動終了後の配置を慎重に考えながら動かします。

第2ターン ドイツ軍プレイヤーターン:
マップ左手より侵入したドイツ軍Ⅳ号戦車は麦畑内のソ連兵をオーバーラン攻撃を行うと歩兵から距離をとるような位置に移動した。歩兵の近くにいた場合、成功確率は低いとはいえ、走行不能の試みや白兵戦を挑まれる懸念があるための用心だ。
ソ連軍プレイヤーターン、マップ3の向こう側から登場したT34/76の6両は、快速を活かしてたちまち村外れのドイツ戦車に近い丘陵地に姿を現します。6両が分散せず固まっているのは、ランチェスターの法則よろしく数の優位を最大限に活かす狙いでしょう。
突出していたドイツ戦車1両とさっそく砲撃の応酬が始まります。生け垣に囲まれた道路に位置していたドイツ戦車でしたが、生け垣は徹甲弾を防げないため直接射撃を受けます。比較的近い距離(約200メートル)にもかかわらず、移動直後だったこともあり、ソ連戦車の射撃は悉く外れました。

第2ターン ソ連軍プレイヤーターン:
ソ連軍のT34/76が急行し、ドイツ軍戦車に対抗する。ドイツ戦車の周りにはソ連歩兵も群がってきているため、次のターンには歩兵から離れるように移動する必要があるだろう。

ドイツ軍陣地よりソ連軍を臨む(イメージ)
(つづく)