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「NAPOLEON’S TRIUMPH」(Simmons Games)を対戦する【1/2】

 

Napoleon's Triumph』(Simmons Games)は、ナポレオン率いるフランス軍とロシア・オーストリア連合軍によるアウステルリッツの戦いをテーマにした作品です。基本は2人用ですが、4人用ルール(2 VS 2でのグループ戦)が用意されています。今回、複数週に渡り、2人戦、4人戦をプレイしました。

 

 

ゲームの紹介

デザイナーのBowen Simmons氏は後に「TRIOMPHE A MALENGO」(Histogame)(以降、「マレンゴ」)をデザインしています。今回作品のシステムは「マレンゴ」と移動や戦闘の基本的な思想は同じですが、「軍団」に関するルールが追加されるなど、大規模な会戦を扱うためのアレンジが加えられ全般に複雑になっています。*1

 

決戦当日を扱うショートシナリオの初期配置の例(配置はあまりよい例ではない)。
青が仏軍、赤が連合軍。なお史実で連合軍の主攻を引き付けフランス軍の防御拠点として機能したテルニッツの町は上の写真では右側で見切れている。
初期配置は軍団位置・配置場所・最低配置駒数の指定はあるものの、兵種・兵力(最低個数以上)は自由に配置できる。さらに両軍とも決められた個数の駒を”散兵”として周囲に展開して配置し直すことができる。

 

木製の細長い積み木ユニットと、真鍮製の旗印を模した指揮官マーカー(凝ったデザインが魅力です)、2枚のマップはハードマップです。エリアマップ仕様のマップは美しく印象的です。

指揮官マーカーは「軍団」を表すために採用されている。真鍮製の立体的な美しい造形になっている。こうしたコンポーネントが再販にあたってのハードルになっているともいえるだろう。
軍団マーカーには軍団長レベルの将軍の名前と、会戦に参加した三国それぞれの旗があつらわれている(シールで貼り付ける)。なお指揮官能力のようなパラメータはない。

 

ルールブックはわずか12ページとシンプルですが、説明が不足している部分があり、BoardGameGeek(BGG)には有志によるルールの補足説明がはいったガイドブックやプレイエイド(チャート類)が各種公開されています。こうしたルールの不備、記述不足は、ともすれば「地雷ゲーム」と批判されかねませんが、システムの核心が明確でぶれていないこともあってかかえって独特の奥深ささえ感じさせる作品に仕上がっています。
プレイはスピーディーで、会戦当日を扱うショートシナリオは半日、会戦前日から始まるシナリオでも1日弱でプレイ可能です。この高いプレイアビリティも魅力の一つです。*2

 

ゲームの長さ(ターン)・駒・マップ

1ターンは1時間を表し、日中は10ターン(午前7時から午後5時)で進行します*3。夜間ターンも存在します。

ひとつの駒は歩兵(約2000人)、砲兵(約500人)、騎兵、近衛の4兵種で構成され、具体的な連隊名や師団名は記載されていません。各ユニットには1から3の戦力が設定されており、損害により戦力が1ずつ減少します。

マップは必要な情報が記載されていますが、地形の読み取りには若干慣れが必要です。騎兵や砲兵に移動や戦闘ペナルティが課されるエリアもあり、こうした地形効果の判別は通常のウォーゲーム以上に注意が必要です。南側に広がる湿地帯は全兵種進入禁止で、連合軍左翼の展開に影響を与えるなど作戦レベルに影響を与えるでしょう。

 

ゲームのシーケンスと活性化

シーケンスは連合軍を先攻にして交替していくI Go You Goスタイルです。
手番の中では軍団や独立部隊の活性化を行いそれぞれに決められた活性化回数を消費するかパスすることで交替となります。

活性化可能な軍団数はフランス軍は盤上に登場している全軍団*4が毎ターン活性化できるのに対して、連合軍は全部で9個軍団登場しているのに対し、毎ターン5個軍団までしか活性化できません。また軍団に属していない「独立部隊」の活性化可能数も、フランス軍の4個に対して、連合軍は3個となっています。

 

ランダム性を排した戦闘解決

戦闘解決にはダイスを使わないため、ランダム要素が排除されていることになります。戦闘は、戦力の集中と機動という実際の戦場での冷厳な原則に沿うことになります。奇跡や偶然性がない分、プレイヤーは戦略や作戦、局地的には後に書いている本作品のゲームシステムからくる駒の「位置取り」で戦っていくことになります。

戦闘はどうやって解決されるか?
その戦闘に投入された戦闘力の大小によって決められます。
もちろん両軍の参加兵力の戦闘力に地形効果や一部兵種による効果、また後述する「位置取り」の状況により増減がなされますが、本筋はいかに敵の戦力を引き剥がし、戦力の集中を防ぎ、局地的な戦力の優勢状態を作ることが必要となります。
そうでなければ大部隊を1か所に集めた方が勝ちという面白くもないことになってしまいますからね。

「位置取り」とは何か?それが次で説明している「ロケール」の中での「リザーブ」と「アプローチ」という位置になります。またこの考え方が本作品の中心となるゲームシステムです*5

 

ロケール / リザーブ / アプローチ

マップには薄灰色の太線で囲われたエリアが多数並んでいます。このエリアを本作ではロケールと呼んでいます。地形効果はロケールを形作っている薄灰色の太線ごとに設定されています。各ロケールには収納できる部隊数の上限があります。
例えば、村落のロケールは騎兵や砲兵に対して防御効果がありますが収納できるユニット数は限られる一方、平原のロケールは大部隊を収納できるといった具合です。

 

部隊を表す細長い積み木はロケールの中に配置される際、リザーブプローチ」という2つの状態があります。

薄灰色の太線で囲われた場所が「ロケール」となります。「ロケール」の形状は場所によって異なります。上図の中でも、村落のあるロケールは三角形になっているに対し、野外のロケールは広くとられています。
各「ロケール」の中で、特定の「太線」=「辺」に沿って置かれた駒は「アプローチ」に配置されていることを表します。上図で黄緑円で囲われた駒が「アプローチ」に配置されていることを示しています。
残りの駒は「ロケール」の中央に配置することにより、「アプローチ」に配置されている部隊とは区別され、これらの部隊は「リザーブ」の状態になります。

 

ルールブックの中ではあえてそういう表現は避けているように見えますが、端的に言うとリザーブにいる状態は、機動性に優れた「行軍隊形」または「縦隊」の隊形にある部隊、アプローチでは戦闘用に隊形を変化した「戦闘隊形」または「横隊」の状態となっているのだと解釈できます。

 

 

当初はここで「位置取り」の話をしようと考えていましたが、その説明には「リザーブ」や「アプローチ」の概念に加え、戦闘処理の手順を詳しく述べる必要があり、BGGでガイドブックやプレイヤーエイドが多数作られているように、簡単には説明しきれないため断念します。


本作の戦闘システムは、単なる「軍団」同士の衝突に留まらず、散兵や尖兵、軽騎兵による敵の撹乱・混乱、本隊の突撃、さらには当時射程が短く直接射撃で運用されていた砲兵の運用までを巧みにシミュレートしています。これらの「仕掛け」を活用することで、初めて個々の戦闘に勝利できる仕組みになっています。
まとめると、ダイスを用いない戦闘システムにより、大局的には作戦・戦略レベルの優位性を確保し、個々の戦闘では、散兵・軽騎兵や縦隊・横隊の隊形変換といった戦術を駆使することが求められます、と言っておきます。

 

勝利条件

ひとつは士気崩壊による勝利。
部隊に損害が出るほどに士気が下がります。また「重騎兵」や「近衛」部隊が戦闘に投入されると士気が下がります*6

もうひとつは特定のエリア(ロケール)を占領することになります。
後者は若干複雑で、当初連合軍側が攻勢側になるため、占領が求められるエリアはフランス軍戦線の後方エリアが指定されています。ところが、フランス軍は任意のタイミングで、ダヴーとベルナドットの率いる2個軍団を増援として投入することができ、これらの増援が投入されると今度はフランス軍が攻勢側になります。占領が求められる地点は今度は連合軍戦線の後方と変わるのです。

この攻守転換はフランス軍判断となります。初期状態ではフランス軍は軍団数は連合軍より少なく兵力も少ないです。劣勢状態を挽回するために増援を得ると今度は攻勢側になり主導権を取っていく必要があるということになります。

 

(続く)  次回はプレイ報告のつもりだが、続くか・・?

 

同じデザイナーによる作品で、今現在、入手しやすい唯一の作品となっています。
システムやコンポーネントは今回の作品の流れを組んだものになっており、この作品もまた独特のプレイ経験を味わうことができる作品になっています。

 

 

*1:Napoleon's Triumph」の発表年は2007年、「TRIOMPHE A MALENGO」は2023年。デザイナー氏は寡作で、BGGによれば登録されている作品は5作のみとなっている

*2:決してルールが簡単な訳ではないことはこの後の記述からもおわかりになるかと思います。半日というのは両プレイヤーがそこそこルールに習熟していることが前提になるでしょう。ちなみに今回の一連の対戦では2人プレイでは半日、4人プレイで3/4日といったところでした。

*3:これは現地(チェコ)の12月の日の出(約7時30分)と日没(約16時)にほぼ符合します

*4:初期配置6個軍団+増援2個軍団

*5:後の”マレンゴ”でも継承されている。

*6:「重騎兵」「近衛」とも両軍に存在し、最初からマップに登場しています。両者は最初に戦闘に参加した時点で、投入した側の全軍士気が下がります