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「Granada: Last Stand of the Moors – 1482-1492」(Compass Games)を対戦する(1/2)

 

15世紀スペインにおけるレコンキスタを扱った「Granada: Last Stand of the Moors – 1482-1492」(Compass Games)を対戦した。*1

Final Cover

 

ゲームの紹介

15世紀末スペインにおけるレコンキスタレコンキスタ自体の開始は8世紀はじめなので実に800年近く抗争を続けていた事になる)の最終盤にあたる、スペインにあった最後のイスラム教王朝のナスル朝グラナダ王国の滅亡までの10年を描いたゲームである。

本作デザイナーは、GMT社から発売されている、”積み木”の関ヶ原として有名な「SEKIGAHRA The Unification of Japan」*2をリスペクトしていると書いており、基本的なゲームシステムは同作に類似している。関ヶ原の戦いが比較的短期間の戦役であったのに対し、本作では10年に及ぶ長期の争いを描くにあたって各所で見直しが図られている。

 

ターン

対象期間はグラナダ王国内で内乱*3が発生した1482年にはじまりキリスト教国軍によりグラナダが陥落した1492年までの10年間が対象。1ターン=半年~1年(ターンによって異なる)とし、全12ターンで構成される。

 

マップ

マップはグラナダ王国の全体が描かれている。
ゲーム内を通してイスラム教国(グラナダ王国)側が攻められ続けることになる。対するキリスト教国は、カスティーリア王国とアラゴン王国。この両国、アラゴン王太子フェルナンドとカスティーリア王女イサベルが結婚したことにより連合王国となっている(後のスペイン王国)。

 

Granada printed map

マップはポイントトゥポイント方式。赤いカラーリングのエリアがグラナダ王国版図。首都グラナダは赤い版図の中の内陸中央部よりやや右側に位置する。
対するカスティーリア=アラゴン王国は緑の版図として登場するがゲームのマップでは現れていない実際の国土はかなり広い。
上記の緑の版図の中では大きめの都市としてコルドバが登場するが、首都などではない。

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ジブラルタル海峡のそば、地中海に面した小さな国「REINO DE GRANADA」がグラナダ王国。マップはこのグラナダ王国の全体が収まるようなスケールになっている。
グラナダ王国に対するキリスト教国は、カスティーリア王国とアラゴン王国の国王・王女の結婚によって生まれた連合王国。国土の広さから、見るからに国力の差があったことが伺える。

 

勝利条件

サドンデスによる勝利条件は、イスラム教国側は、カスティーリア=アラゴン王国のフェルナンドとイサベラのユニット(将軍ユニットとして個々に登場する)を除去すること。対するキリスト教国側は、首都グラナダの陥落となる。
サドンデスが満たされない場合は、最終ターン終了時に、各々支配している「城塞」「砦(原語では監視塔/Watch Tower)」「資源地」の数にそれぞれ定められたポイントから算定された数字の合計値で比較する。

 

ユニット

ユニットは”積み木”になっており陸上部隊の場合はそれぞれ有力氏族の紋章が描かれている。イスラム教国側には、Banu Sarray、Zegríes、Banu Bannigas、Nasridsなど、キリスト教国側には、Andalusies、Aragon、Leoneses、Castile、Leonとそれぞれ5種類程度?が登場する。1ユニットあたり1000~1500人規模とされている。

他に両軍には王族クラスの将軍(司令官/Commander)ユニット、海域エリアに登場する艦隊ユニットがある。

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黒色ユニットはイスラム教国軍、白色ユニットはキリスト教国軍を表す。
横長のユニットにはそれぞれ氏族の紋章と描かれた紋章の数によりユニット毎の強さ(1~4)を表している。騎兵・クロスボウ・砲兵といった特殊ユニットには、氏族の紋章とこれらの兵器のシルエットが描かれている。

 

ゲームシステム概要

各ターン、プレイヤーは決められた枚数のカードを受領し、カードを使いイニシアティブをビットし、活性化の規模を決める。活性化により陸上部隊や艦隊を動かし、動員を行う。

カードを最も使うタイミングは戦闘時になる。
戦闘に参加させるためにはそのユニットの氏族の紋章が描かれたカードを使う必要がある。1枚のカードを使うことで参加させることができるユニットは基本1個に限定される。つまりあるポイントに複数のユニットからなる部隊を引き連れ進撃したとしても、戦闘(野戦や攻城戦)にそれらを活性化させることができる(氏族の紋章が描かれた)十分な数のカードを持っていなければ、戦闘に参加させることはできずにただ損害を受けるだけになってしまう。

ユニットの中には歩兵だけで構成されたユニットの他、騎兵、クロスボウ、砲兵が登場する。これらの特殊ユニットの効果を得るためには氏族のカードの中でも、特殊攻撃を実施することができるカードを出す必要がある。ここでも手持ちカードの使い方がポイントとなる。

 

戦闘時は氏族カードにより戦闘参加を行う必要があるが、移動は活性化範囲であれば氏族カードに関係なく実施させることができる。
移動にあたっては道路状況・司令官の有無・強行軍・同時移動するユニット数などにより移動力が増減する(1~3)。

 

艦隊は部隊の輸送(海上輸送)を行うことができる*4敵艦隊が存在する海域エリアに突入すると海戦が発生する可能性があるが確立は1/3程度なので大きくはない。

「SEKIGAHARA」になかった概念として、「城塞」「砦(監視塔)」があり、防御側に特別な効果を及ぼすが、防御側が全滅すると相手に奪われる。
本ゲームでは城塞や砦の破壊や構築、また増強といった概念はない。

1ターンの期間は長いが内政にあたる機能はない。

 

毎ターン終了時、手元に残ったカードの半分は強制的に捨て、その時の城塞の支配数に基づいた数分を新たにドローする。このためカードの流動性は高く、手元に蓄積することができる枚数は多くない。

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カードには戦闘時にそのカードを使うことにより戦闘に参加せることができる氏族の紋章・名前、騎馬・クロスボウなどの特殊攻撃の可否、またビット用の数字などが記載されている。

 

(つづく)

 

 

 

*1:前号まで展開しようとしていた「Ney vs. Wellington」はどうなったのかと言う話だが、これはこれで対戦継続中であるので、別の機会に紹介していきたい。

*2:

boardgamegeek.com

*3:国王アブルハサン・アリーに対して息子のボアブディル(後のムハンマド11世)が起こした。ボアブディルグラナダを奪い国は2分された。

*4:イスラム教国は北アフリカに領土があり、またひとつの氏族の動員場所が設定されているため、北アフリカから部隊を輸送させる必要がある。