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「Granada: Last Stand of the Moors – 1482-1492」(Compass Games)を対戦する(2/2)

 

15世紀末のスペインにおけるレコンキスタを扱った「Granada: Last Stand of the Moors – 1482-1492」(Compass Games)を対戦した。

 

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グラナダの降伏:ナスル朝最後のグラナダ王であったボアブディルが、1492年グラナダの街を明け渡し、カトリックの君主であるカスティーリャ王国のイザベラ一世、アラゴン王国のフェルディナンド二世に鍵を渡した場面。1882年製作、フランシスコ・プラディーリア・オルティス作、マドリード上院議事堂

 

 

 

 

ルール補足

戦闘ルール

戦闘ルールの説明が十分ではなかったので蛇足ながら追記する。

戦闘は移動終了時に、マップ上の同一地点に両軍ユニットが存在した場合に発生する。
地点に城塞がありその地点に位置する防御側ユニット数が2個以下の場合は籠城することができ、攻城戦に移行する。防御側ユニット数が2ユニットを超える数の場合は野戦になる*1
「砦(監視塔/Watch Tower)」がある地点の場合、防御側が「Watch Tower」カードを出した場合は野戦軍対「砦(監視塔/Watch Tower)」の戦闘になるが、「Watch Tower」カードが提示されない場合は野戦とみなされる。

特殊ユニットに騎馬、クロスボウ、大砲があると説明したが、野戦、攻城戦、Watch Tower戦の違いにより特殊効果の効果が異なってくる。
例えば騎馬突撃は野戦では有効だが、攻城戦やWatch Tower相手では使えない。大砲は攻城戦やWatch Tower戦では半ば必須と言えるが、野戦では使えない。諮るに当時の大砲は城や砦といった固定目標相手に固定的な砲撃位置から射撃するのはできるが、野戦で自由に位置を変えたり、目標を変えたりする戦闘には向かなかったということなのだろう。

 

同一地点に味方ユニットを連れて行ってもそれだけでは戦力にはならないことは前記事で説明した。
お互いにカードを出し合い、カードに書かれた紋章と同じ紋章が描かれたユニットを、通常はカード毎に1個ずつ参戦させていく。参戦したユニットの戦闘力の合計値が相手に対する打撃となる。
最終的には出せるカードがなくなるか、参戦させるユニットがなくなるか、またはパスを宣言するかまでこの戦闘力ビッドが継続され、両軍がパスを宣言した時点で打撃力を比較し、上回ったほうが勝者となる。
打撃力に応じて相互に相手ユニットを除去し、敗者は退却する(攻城戦の場合で防御側ユニットが残っている場合は包囲状態が継続される)。

カードによって戦闘に参加する時点で同じ種類の氏族のユニットや、特殊攻撃ユニットが先に戦闘に参加している場合は、ユニットの戦闘力を戦闘力合計の値に追加するだけではなく、同一氏族効果または同一特殊攻撃効果によるボーナスポイントが戦闘力に加算される。一度の戦闘にあたって同じ種類の氏族や兵器種類を送れば送るほど、このボーナスポイントは大きくなっていくので単純にバラバラに異なったユニットを戦闘に追加する以上の戦闘力を入手できることになる。
ただし、同じ種類のユニットを一度の戦闘に集中して投入するためには、戦闘時のタイミングでそうしたユニットが手元になければならないし、同じ種類の氏族や特殊攻撃が可能となるカードを複数枚持っていることが必要となる。

 

その他

基本ルールでは補給の概念はない。補給ルールの有無は侵攻ルートの検討では必要。

 

 

プレイ

当方はイスラム教国を担当。

 

初期配置

ユニットは黒。初期配置位置は決まっているが、配置されるユニットのうち半分超は動員可能なユニットが入れられた袋からランダムに引かれる。このため各所におけるユニットの種類(強さ、特殊ユニット、氏族)はバラバラである。

戦場のほとんどはグラナダ王国いわば自国内となるため、イスラム教国軍ユニットは移動にあたって主要道路使用による移動力ボーナスを得やすい。

 

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マップの赤いエリアがグラナダ王国版図。ポイント間を結んだ道路のうち、赤色道路は主要道路ボーナスを得ることができ、大軍を動かしやすい。黒色ユニットがグラナダ王国軍。

1482~1483年頃

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キリスト教国は、国境沿いの数カ所にて軍を集結中。
イスラム教国は、国内にあったキリスト教国の拠点ポイントを殲滅。

 

1484年頃

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キリスト教国はイスラム国の西側から蚕食しはじめる。

 

1485年

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キリスト教国は東の拠点、内陸にある(写真ではターンの表示がある下あたり)であるバザを攻略。

 

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続けて西の拠点、港町のマラガが陥落。

 

前記事で少し触れたように史実としてグラナダ王国の内紛が背景にあるのだが、ゲームスタート時にイスラム教国側には2人の王が存在する。このうち一人の王はキリスト教国軍との戦闘で敗北すると、捕虜となり囚われ今度はキリスト教国側でその配下も含めて参戦する。
ところが今度はイスラム教国軍側との戦闘で負けると、イスラム教国軍側に寝返る・・。さらにさらに連合軍側勝つと・・・という特別ルールが用意されている。

 

1487年頃

基本的に主導権は常にキリスト教国側が握っている状態。
グラナダ王国はすべてを守ることはできないため、防衛線を縮小させていく必要があるのだが、勝利得点確保との兼ね合いからタイミングを迷う。
ただ退却していくばかりではキリスト教国軍の勢いを削ぐことはできないため、少ないユニットしか配置されていない地点をみつけると攻撃側有利な状況での攻撃を行うことで、少しでもキリスト教国側のユニットを減らすように務める。

このターン、イスラム教国軍側に千載一遇のチャンスが生まれた。
前ターンにバザ城を陥落させたキリスト教国軍のユニットに対して、イスラム教国軍は相手を上回る戦力を投入させることが可能な状況になっていた。
バザ郊外で発生したキリスト教国軍約20000(13個ユニット)とイスラム教国軍約23000(15個ユニット)による会戦は、より戦闘力が高いユニットを投入することができたことからイスラム教国軍側が勝利した。キリスト教国軍は2/3の兵を失い(8個ユニット)、退却した。イスラム教国軍も相応の損害を受けた。

 

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バザ会戦直後の状況。
イスラム教国はすでに少なくない数の城塞・砦・資源地を失っていたが、ポイント評価ではまだキリスト教国軍を上回っている状況にあった。

 

1492年頃(最終局面)

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写真は1492年(最終ターン)開始時の状態。
キリスト教国軍はグラナダの周囲に大軍を進出させているが、イスラム教国軍も少なくない防衛軍をグラナダに配置している。グラナダは通常の城塞都市ではなく、アルハンブラ宮殿の特別ルールが用意されているため、容易に陥落させることは難しくなっている。残りターンを考慮すれば、キリスト教国軍がグラナダを陥落させることによるサドンデス勝利はなくなっていた。
勝利得点についてはこの直前の状態で1ポイント差でしかなかったが、このターンで、勝利得点獲得のためのムーブを両軍とも行ったとすると、キリスト教国軍がポイントを稼ぐ機会は多いと判断されるため、同国優勢状態と判断された。
イスラム教国軍はマップ最東端の、キリスト教国の港町に強襲上陸を成功させている。

 

感想戦

生産や内政といった要素は捨象されているため戦闘によって土地を奪い合う戦争ゲームになっている。ゲームの中心となる戦闘ルールが、戦略性や作戦性を追求するにはランダム要素が強い構造になっている点が気になった。

ランダム性が高いというゲームの方向性を否定するつもりはないが、その割には必要となるプレイ時間が長い印象を受けた。時間をかけてプレイしても、戦略や作戦といった要素での工夫が限定されるため、結果として徒労感が伴ってしまう。
ランダム性が高いゲームとするのであればプレイ時間は短縮化する方向に持っていったほうがよかったのではないか。

戦闘ルールにランダム要素が強いのは、氏族毎の活性化ルールと、カードの取り回しに起因している。せっかくの氏族活性化ルールが単なるフレイバーに終わっている点、さらにはゲーム中の手札カードの入れ替わりが激しいためカードデッキを構築するといった工夫する余地があまり働かないことだ。

このゲームの手札はかなり流動性が高い。毎ターンはじめにはおおよそ10枚弱から10枚強のカードが手札に存在するのだが、それらはターンの途中で、特に戦闘が発生すると1回の戦闘で手札の半分以上、どうかするとほとんど一新するくらいに変わってしまう。それだけ戦闘の中で使ってしまい、戦闘後補充される。1ターンの間に複数回戦闘が発生すると、ターン途中で何度も手札の変わっていってしまうと言ってもよい。
最後は各ターン終了時に残った手札の半分は強制的に捨てさせられ、新たにドローする。
戦略・作戦として特定のカードを保持しようとしても、ほんの数枚程度であれば可能だがほとんどのカードはターンのうちに使わざるを得ない状況になる。カードデッキを構築するより先に、手札はほとんどランダムドローされたカードという状態になる。

戦闘時において氏族ユニットの参戦には合致した紋章カードが必要であることは説明したが、手持ちカードの流動性の高さのため、氏族の活性化自体がランダムに引き当てた手札に依存することになってしまっている。
結局、せっかくの氏族の概念が、記号合わせや数合わせの単なるフレイバーになってしまっているように感じた(別に氏族という概念を持ち出さなくてもいいのではないかという状態)

封建時代を扱うゲームにおいて、領主が勢力圏内の豪族や氏族を動員して戦争に向かわせるということを表すのに、氏族毎に動員や活性化を行うという方向は良いと思う。こうしたコンセプトを導入して成功しているゲームに、例えば「NEVSKY」(GMT)がある。「NEVSKY」では配下の豪族/氏族を一定期間の戦役に動員すると、就役期間が過ぎると勝手に帰ってしまったり、恩賞与える必要があったりする。もちろん「NEVSKY」のプレイ時に感じる、封建領主としてのままならなさや苦労を感じさせる事は本ゲームの主題ではないのはたしかだろうが、戦闘ゲームを展望している割に、戦闘の行く末が、その時点でランダムにドローしていた手札の内容とたまたま戦闘に参加させていたユニットの顔ぶれという偶然性の中で、一種のプレイテクニックに依存しているように感じてしまった。

ゲームを通してこうした偶然性に支配された戦闘が繰り返されることもあり、ゲームに登場する、氏族をはじめとする各要素が単なる記号に終始している感じがしたのだ。

 

 

(終わり)

 

*1:城塞の防御にあたる2個ユニットを残して残りのユニットは野戦を行うという選択肢はない。野戦になるとユニット数が少ない側(通常は防御側)が不利なため、全滅することがよくある。城塞が存在する地点には3個以上の防御ユニットを配置していると、城塞を使うことができずに強制的に野戦となることにより、防御側が不利に働くという変な作用がでてしまう。