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『War of 1812』(Columbia Games)を対戦する【追加情報あり】

作戦級

 

クラシック音楽ファンに「1812年」と言うと、チャイコフスキーね、と返される訳ですが、ウォーゲーマーに同じことを質問するとどうなるでしょうか。

BGGから作品タイトルに1812の数字が入っている作品を選び、その題材をカウントしてみました。雑な調査なのでお遊び程度に見てください。

「BGGで"1812"をカウントしてみた!」

作品タイトルに1812という数字が入っている全作品:73作品

<内訳>

  • ナポレオンのロシア遠征を題材にした作品:32作品
  • 米英戦争を題材にした作品:34作品
  • フランス対イギリスの半島戦争を題材にした作品:5作品
  • その他(不明):2作品

予想以上に米英戦争を題材にした作品が多く、驚く結果になりました。

 

さて、今回プレイしたのはその米英戦争を扱ったクラシックな作品『War of 1812』(Columbia Games)です。

 

 

 

 

2026/08/13 追加情報

オプションルールとして移動にあたって「プロットー移動」ルールが提供されているのですが、同ルールを導入することで大変面白くなるという情報をいただきました。

 

ゲームの紹介

初版の発売は1973年。Columbia Games得意の積み木ユニット、ポイント・トゥ・ポイント(P2P)のマップ、基本ルールも同社の積み木ゲームシステムに沿った内容です。

マップには米英戦争で主戦場となった五大湖付近が取り上げられています。現在のカナダとアメリカの国境付近、五大湖のエリー湖・オンタリオ湖全体を含んで、西はデトロイトあたり、東はモントリオールからケベックあたりまでを収録した細長いマップになっています。

実際、デトロイトからケベックまでは直線距離で1,100キロ程度あるそうです。これは東京から熊本・鹿児島まではいる距離にあたり、想像以上に広いエリアであることがわかります。さながら、エリー湖・オンタリオ湖あたりは瀬戸内海といったところでしょうか。実はもっと狭い領域を想像していたのですが、かなり広いです。艦隊を運用するだけのことはあります。

 

マップと登場勢力

登場するのはアメリカ軍とイギリス軍で、両軍には陸上兵力のほか、湖上艦隊が登場します。正規軍のほか、アメリカ軍側には民兵部隊(国境を超え相手領土に入る際にチェックが発生)、イギリス軍側には実際にイギリス側についたインディアン部隊が登場します。

1年は10ターンで構成され、うち最後の1ターンが冬季ターンにあたります。戦争が続いた期間を考慮して3年分収録されているため、合計30ターンというボリュームになっています。ただし、1ターンに移動や戦闘を行えるのはポイント1か所にあるスタックだけになりますので、ゲームはかなり早く進行します

マップ全景(左側のエリー湖の西側が見切れています)。
写真上方が北方向になります。

初期配置を行った状態。赤がイギリス軍、青がアメリカ軍です。
配置はそれぞれの国境内で自由に行うことができますが、各町には収容力の制限があるため1か所に戦力を集中させるといったことはできません。

 

基本システム

シーケンスは、プレイヤーごとに以下の手順を実施します。

  • 海軍フェーズ(艦隊ユニット建造、艦隊ユニット移動)
  • 陸軍フェーズ(陸軍ユニット移動)
  • 戦闘フェーズ(海戦の解決、陸戦の解決)※海戦は同時、陸戦は防御側先攻で交互に攻撃

登場する兵種は歩兵・騎兵・砲兵です。湖上艦隊を用いた輸送や上陸攻撃も実施可能で、艦隊同士の海戦もあります。騎兵を除き、陸上部隊の移動はかなり限定的、かつ1ターンに活動できるのが1スタックのみなこともあり、動きはかなり制約されます。湖上艦隊を使った輸送を多用したほうがよいのかもしれませんが、湖上艦隊も3つの湖それぞれに存在し、湖間を相互に移動できるわけではありません。

戦闘は、戦闘に参加したユニットの戦闘力分の個数のダイスを振って、「6」が出た数の損害を与える、いわゆる「6出ろシステム」です。陸戦の場合、防御側が先に攻撃を実施し損害を与えることができるため、防御側優位になっています。

特徴的なルールとして冬季ターンがあり、各町には収容力が定められています。冬季ターンに収容力を超えた戦力を保持していた場合、自国内の町であっても損耗を被ります。このため冬季ターンが近づくと、よほどのことがない限り、集中させていた戦力を分散させなければなりませんし、敵国内の町を占拠中の場合は特に注意を要します(敵国の町の収容力を超えて戦力を置いていた場合、損耗の程度が厳しくなります)。特に陸軍ユニットは各ターン1地点でしか移動を起こせないため、収容力オーバー状態の地点が複数存在する場合は計画的に移動をしておかなければ大変なことになるので注意が必要です。

増援や補充ポイントは各年決まっており、その中でやりくりする必要があります。

 

勝利条件

勝敗は以下の内容でVPをそれぞれ計算し、10VP以上の差をつけた側が勝利します。

  • 占領した敵の町のポイント(地点によって異なる:1〜3VP)
  • 除去した陸上ユニット(1VP)
  • 制海権を確保した湖(湖ごとに2VP、マップ内で3つの湖がある)

ルールは英文ルールで4ページに過ぎないため、難しくはありません。特にColumbia Gamesの積み木経験者であれば基本部分は同じなのでなおのこと容易でしょう。もちろん細かい点は確認が必要と思われます。なお、流通している日本語マニュアルは第1版のものですが、英文の最新版は3版になっているので注意が必要です(勝敗判定の細部などは版によって扱いが異なる可能性があります)。

 

プレイ:アメリカ軍を担当

米英戦争がどのような展開をたどったのかは正直よく知りません。スタート時点で両軍のユニット数は拮抗しているため、どこかを押すために戦力を集中すると、他の地域の戦力が薄くなるのではないかというジレンマを抱えます。
もちろんゲームが進むにつれ増援が到着しますので、戦力配置の不均衡はだんだんとでてきます。
ところがマップは東西に長く、自在に兵力移動ができない(1ターンに移動を起こせるのは1つの地点のユニットのみ、かつ移動力は限定的)、戦略移動や再配置ルールもないこともあり、通常移動の中で不均衡解消がなかなか苦労します。こうしたこともあり、両軍とも不均衡を避けるようなムーブも発生します。*1

 

1年目

よくわからないまま、3つの湖の中でもっとも東側(モントリオールなどイギリス軍の本拠地側)のシャンプレーン湖周辺の兵を集め、北上を始めますが、防御側先撃ちの原則により、イギリス軍の逆襲にあいます。一度戦力の均衡が崩れると、年の途中での増援などはなく、また移動が限定的なこともあり他地方からのユニットの移動もままならないまま、押されることになりました。

冬季ターンに入り冬営のためイギリス軍が引いたので小康状態を得ますが、アメリカ軍はこの地方の海軍基地を失い、そのままシャンプレーン湖の支配を失います。

 

2年目

増援を得ると、中央のオンタリオ湖周辺で両軍は軍勢を集めます。両軍とも建艦競争に入り、オンタリオ湖艦隊が次々と増強されていきました。一番西にあたるエリー湖では、イギリス軍が戦力を集めなかったこともあり、この方面はアメリカ軍が優勢に展開します。イギリス軍のエリー湖艦隊を撃滅すると、軍港も奪いました。

そうこうするうちに冬が近くなり、軍勢を集中させていたオンタリオ湖周辺を中心に、冬営に備えた兵力の分散(町の規模に応じた部隊数しか収容できない)を図らなければなりません。

 

3年目

イギリス軍はシャンプレーン湖周辺で南下を図りますが、アメリカ軍は損害を恐れ後退します。その分の兵力は中央のオンタリオ湖周辺に展開し、逆にここでは北上を開始しました。アメリカ軍を構成する部隊の一部は民兵で、民兵は国境を超えて進撃する際にダイスチェックが発生します(失敗すると、その民兵ユニットは国境を超えての遠征に参加しなくなります)。

いったんは国境を超えたアメリカ軍ですが、イギリス軍も兵力を集中してきたことから、民兵分の兵力を加えるため国内まで退却し、進撃してきたイギリス軍との決戦に至ります。最強の兵団(戦闘力4)を集中していたイギリス軍はアメリカ軍の防御先撃ちにも耐え、アメリカ軍の陣容を突き崩しました。最後は退却を決めたアメリカ軍への追撃(追撃ルールの適用を誤っていましたが)によりアメリカ軍は壊滅的な被害を受けました。

結果、6VPイギリス軍がポイントで優勢だったのですが、勝利判定では10VP以下の場合は引き分けということになりました。


なお、この「引き分け」判定については別の方からの情報でも、本作は引き分けの範囲が広すぎて引き分けにしかならない、という意見をいただきました。

 

3年目の終盤。オンタリオ湖岸周辺へ戦力が集中されます。

 

決戦後の状況(ゲーム終了時)。
個々の戦闘においていったん劣勢になるとなかなか逆転は難しくなるようです。最後は後退を選ぶのですが、追撃戦の中でアメリカ軍主力は壊滅しました。
左のほうに部隊ユニットが残っているのですが、移動力の制限のため、主力との合流ができなかったユニット群です。プレイ中、こうした”移動のままならなさ”に悩まされ続けます。

 

ゲーム終了時。エリー湖周辺。このあたりはアメリカ軍が優先状況でした。

 

感想戦

プレイアビリティはとても高いです。30ターンもあるのですが、実プレイ時間は2時間程度でした。ルール難易度が高くないのは書いたとおりです。

ゲーム展開としては、1エリアずつの移動で移動力も限定的なため、艦隊での輸送ができるとはいえそれはそれで手間がかかります。冬営ルールのため、せっかく集中させた兵力もいったん解消しなければならず、戦闘は防御側先撃ちによる防御側優位でダイス運の要素もやや大きく、一度崩れるとランチェスターの法則よろしく逆転がなかなか難しい、という展開になりやすいゲームのように感じられました。

ゲーム中、どちらかの一方的な展開になることもないため、ある種安心して、酒でも飲みながら、気軽にプレイするような作品とでもいうのでしょうか。「知らない戦争を、軽い手触りのゲームで体感してみる」という、たまにはこういう一戦もいいものだと思わせてくれる作品でした。

(終わり)

 

 

今回作品と同様に米英戦争の五大湖・カナダ国境戦線を扱った作品です。
海戦ルールはじめ、各種ルールも詳しく、本格的に米英戦争に触れるにはこちら。

 

ナポレオンがロシアから撤退してきた後の1813年からを扱うマルチプレイの作品です。
イギリスはイベリア半島でフランス軍と対峙状態にありますが、一方でアメリカ大陸で米英戦争を継続しており、米英戦争の継続状況により戦力を貼り付けて置かなければならないという状況にあります。
米英戦争を間接的ですが、グローバルベースの戦略レベルで扱っているともいえるのではないでしょうか。

*1:2年8ヶ月も戦争をしていたそうですので、1ターン(約1ヶ月相当)に1スタックしか移動できないとか、戦略移動や再配置のルールがないというのはどうなの?という印象はあります。