Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

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激闘!ア・バオア・クー(ツクダホビー)のすゝめ

ロボットアニメ(特に富野アニメ)での最終決戦を言えば、敵味方が全勢力を傾けた軍勢がワラワラと登場し、主人公キャラ&メカとライバルキャラ&メカとの宿命の対決があるなど、盛り上がることこの上ありません。

本ゲーム「激闘!ア・バオア・クー」は、ファーストガンダムこと「機動戦士ガンダム」の最終盤、宇宙要塞ア・バオア・クーにおける地球連邦軍ジオン公国との最終決戦を描いた作品です。

プレイヤーは、地球連邦軍ジオン公国双方の要塞戦をめぐる最高司令官の立場です。戦いの始まるの段階ではレビル将軍とギレン総帥の立場ということになるでしょう。*1

ゲームの背景

ゲームの発売は日本におけるウォーゲーム黎明期といえる1982年。
発売元であるツクダホビーは当時、モビルスーツを1機単位、パイロットや装備もユニット化してファーストガンダムでの陸戦を描いた「ジャブロー戦役」を販売しており、ガンダムシリーズ第2弾として発売されたのが本作となります。ちなみに第3弾は「ジャブロー戦役」の宇宙版である「ソロモン攻略戦」です。

これらのゲームにて成功を収めたツクダホビーはその後、システムを進化させ、富野アニメを中心としたロボットアニメのゲーム化、またガンダムについてもシステムを進化させて多数のゲームを発売していきます。それらの紹介はおいおいと・・。

本ゲームの紹介

前作「ジャブロー戦役」は1ユニット=1モビルスーツで表した複数機のモビルスーツ同士の戦いを細かに描いたいわゆる“戦術級”としてデザインされていましたが、本作は題名になっているア・バオア・クー決戦全体を表すため、1ユニットは、艦艇は1隻単位、モビルスツールや航空機、小艇は3~5機といった小隊を表します。

いくつかのシナリオははいっていますが、メインはア・バオア・クー攻略を描いた戦いになります。

マップは4枚のハードマップで縦長に設置すると中央に天頂から見たア・バオア・クーが描かれています。NフィールドとSフィールド、両方から迫る連邦軍艦隊に対して、ジオンの防衛軍が配置されます。

すべてあわせるとそれぞれの軍で100以上のユニットが登場することになります。

多彩なユニット群は眺めるだけで楽しい

登場するユニットは、連邦軍で言えば、マゼラン、サラミスといった艦艇、モビルスーツGMにボールです。もちろん、ホワイトベース隊も登場。ガンダムは1機で1ユニット、他にガンキャノンガンタンクGファイター*2など登場します。それ以外にもマイナー兵器で、パプリク突撃挺*3なども登場します。

対するジオン側は、グワジン、空母ドロス、チベ、ムサイといった艦艇に、ザクからはじまる各種モビルスーツ、当然、ジオングも登場します。マイナー兵器としては、ジッコ突撃挺、ガトル戦爆、隕石ミサイルなどもユニット化されています。ソーラ・レイそのものはルールにはありません。

モビルスーツユニットには能力に優れるニュータイプ部隊マークがはいっているものがある*4一方で、学徒動員による練度が低い(スペックが低い)部隊もあります。

さらにアニメエピソードでは登場しない、エルメス、ブラウブロ、ビグザム、ビグロなども登場します。特にビグザム、ビグロは量産されたらというIF設定用にそれぞれ10ユニット分も用意されていたりします。
エルメスについても2ユニットあるのですが、2ユニット目は富野由悠季の小説に登場するクスコ・アル中尉乗機の機体で、連邦軍側も小説に登場するG3ガンダムのユニットが用意されています。もう少し言うと小説版からは赤いリックドム(シャアの乗機、N3)やその配下のニュータイプチームが登場したりしています。 

モビルスーツと非モビルスーツとを意識した戦闘システム

戦闘システムの特徴としてはモビルスーツモビルスーツ以外の艦艇や小型機種とが混在する戦いを扱うため、①対艦戦闘力と対モビルスーツ戦闘力を分けて設定、②射撃戦と白兵戦の区別といった工夫が凝らされています。

ジ・オリジンでルウム戦役が描かれたことでもありますし、艦艇数では圧倒するもののモビルスーツをもたない連邦軍と、新進気鋭のモビルスーツ部隊を擁するジオン艦隊との戦いを扱うルウム戦役シナリオあたりをつくるのもよいかと思います。

圧倒的ではないか、我が軍は!

ルールが簡単な分、ア・バオア・クー戦など大規模戦闘を簡単に楽しむことができます。大量のユニットが並んだ姿など思わずギレン・ザビ総帥のセリフを吐きたくなるというものです。
ただユニットが多い分、戦闘判定は面倒になるところもあり、作業的になってしまうところがあるかもしれません。
ニュータイプ部隊は強いのですが、戦闘結果表のつくり上、アムロ・レイややシャアでも無敵ということはなく、一般兵ユニットでも押し包めば撃破できないわけではありません。ただし、損害もそれなりなので相手方のニュータイプ部隊をつぶすためにニュータイプを差し向けるのか、一般兵相手に無双させるのかなどは悩みどころかもしれません。

ゲームの展開は、地形の起伏がない宇宙空間ということもあり、ひたすらダイスの目の勝負といった側面が正直あります。マップの広さに比べて、ユニットの移動力はそれほど大きくはないので、例えば陽動をかけて側面に回り込む、挟撃するといった機動戦を挑むような様相にはなりませんし、艦艇の向きなども関係ないので後ろに回って奇襲といったことにはなりません。作戦といっても正面同士の力押しの展開になります。
あまり勝負に拘泥せずに楽しむほうがよいかと思います。

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*1:御存知の通り、両名とも戦いの途中で退場しますが

*2:Gファイターはセイラ機とスレッガー機は分かれています

*3:ビーム撹乱膜を展開できる大型ミサイル2基を抱えた小型艇

*4:ニュータイプ部隊はその程度により1から4までさらに詳細化されています