Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

7 Ages(Australian Design Group)を対戦する(1)~ゲーム紹介編~

第2次世界大戦を世界規模で扱ったウォーゲーム「World in Flame」で有名なオーストラリアのゲーム開発会社”Australian Design Group"が2004年に発売した「7 Ages」を対戦しました。
「7 Ages」は紀元前4000年から現在、さらにはやや未来?にかけての人類史、文明の興亡を数千年を股にかけて扱うマルチゲームです。

7人プレイまで可能なのですが、今回は5人になっています。*1

 

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ゲーム紹介

ゲームの特徴

本ゲームの特徴としては次の2点をあげておきます。

・ プレイヤーは複数の文明を担当する

・ 全世界が対象

プレイヤーは複数の文明を担当することができます。今回の5人プレイであれば、1プレイヤーあたり3つの文明まで同時に扱うことができます。
わかりやすいところで例えば中国のエリアで登場する文明として、殷、周、秦、漢、唐、宋、明、清、中華人民共和国といった王朝/国が登場するのですが、全く別の文明として扱われています。これに周辺部の文明として、金、モンゴル、朝鮮、日本*2、シャムといった文明が登場するなど、ゲーム中、全部で110の文明が登場するのです。東アジアにおいてこの粒度で取り上げられているのですから、地中海世界・中東・インドといった文明発祥の地であれば推して知るべしです。

これにより文明は多数勃興し、逆に滅亡していきます。プレイヤーが例えば、カルタゴやエルトリアを担当したからといってこれらの早くに滅亡した文明がいつまでも隆盛を誇るのは(展開としてはありかもしれませんが)、不自然ともいえるでしょう。退場すべきものは退場しないと新しい文明が登場しにくいでしょうから。
文明の興亡を前提として、プレイヤーに複数の文明を担当させるというのは説得力のある解決法と感じました。

後に説明しますが、プレイヤーはカードがあれば文明を興すことができるし、また戦争や疫病・災害といった様々な外部要因で衰退や滅亡することもあります。またはこれ以上は発展がなく、プレイヤーの勝利に貢献しないといった判断があった場合に簡単に滅亡させることができます。

また、2番めの特徴については、「シヴィライゼーション」が地中海・中東を舞台にした作品だったのに対し*3、本作は全世界が対象です。マップの中心には地中海・中東がありますが、欧州・インド・アジア・アフリカ、さらには北欧、南北アメリカ、東南アジア、オーストラリア、太平洋の島々までカバーしています。このあたりさすがオーストラリアの会社だな、という印象です。
全世界を対象にしたことにより各地での文明も登場してきます。例えば、次のような民族・文明がどこの地域のものかわかりますか?また名前で見当はついても、歴史的にどの時代のものかわかりますか?

ヴァンダル族
ティオティワカン
チャヴィン文明
ムー帝国
ミタンニ
スリヴィジャヤ帝国
チャンパ王国
キンメリア
ズールー
クシテ
ハシシーン派
アーンドラ朝
ベナン
サンガ
メラネシア
ピクト人  ・・・まだまだ書ききれないくらいあります

名前だけでも歴史に対する知的好奇心が刺激されるってものです。

勝利条件

勝利条件は栄光ポイント(Gloryポイント)を貯めることが目標になります。栄光ポイントはプレイヤー毎に各ターンの終了時にカウントされ累計されていきます。栄光ポイントの計上基準は文明によって異なり、例えば、ヨーロッパ地域で最大規模であること、とか、都市を建設していること、とか、アーティファクトを作っていることなど様々な基準が複数個定められています。
たくさんの文物、遺跡などを残した文明がある一方で今では名前しか残っていないような文明も少なくないことを考えると、栄光ポイントは文明として”名を残す”ことを表しているのではないかと考えています。

文明について

ゲームの題名にあるように紀元前4000年から現代までの7つの時代が設定されています。プレイヤーに配られるカードの中から興す文明を選択するのですが、カードにはその文明の属性として(勃興できる)時代、セットアップ時の発展レベル、開始する地域、リーダー、資金などの初期値と修正値、その文明の特別ルール、栄光ポイントの入手基準などが記載されています。
例えば、シュメールは時代は「1」、開始地域は「メソポタミア」・・・といったことが設定されています。リーダーはその国に登場できる名前のある人物です。
ちなみに日本については、時代は「2~7」、場所は「Honsyu」、リーダーとしては4の時代に徳川家康、5の時代に葛飾北斎が登場できるとあります。その他にもいくつか特別ルールが設定されています。

リーダー

古今東西の各文明における有名人がユニットとして登場します。
リーダーとしては政治家(行政官)だけではなく、芸術家、建築家、探検家、哲学者、人民主義者、宗教家、科学者、軍人といった属性がありそれぞれ属性に応じて能力が付与されています。
日本から登場するリーダーは前述の2名で、文明によってだいたい0~2名、多いところで5名といったリーダーが登場します。
ただそうした有名人を輩出していない文明も少なくなく、プレイ内ではランダムに名前がはいっていないリーダーユニットを引いてくることは可能です。
ただゲームの進行上、リーダーが必須というわけではなく、いれば便利といったところでしょうか。

発展レベル

各文明には発展レベルという指標が設定されていて、発展レベルを10程度すすめると時代がひとつすすめることができるようになります。発展レベルは基本は1ターン毎にひとつずつ進んでいく(自然発展)のですが、いくつかのマス目には暗黒時代が設定されており、発展レベルがそのマス目にさしかかると自然発展はストップしてしまい、なんらかのブレイクスルーを行う必要があります。

ブレイクスルーとしては発展レベルが優れた他国との貿易や科学者の存在により暗黒時代での自然発展が可能となります。このあたりのデザインは上手だなぁと思いますね。貿易や科学者の発生といった機会を得ることができない文明はそれ以上発展できないことになります。

文明のレベルはこの「発展レベル」という概念の中で丸められていますので、様々な発明・発見などを分野毎におっていくという処理はありません。例えば、青銅器が鉄器に変わってとか、農業の普及により扶養できる人口が増えてといった細かなパラメーターはありません。

軍事関係だけは(このあたりはウォーゲームを得意している会社だからなのかもしれませんが)、最初シンプルな歩兵なのが、騎兵になり、舟を装備できるようになり、歩兵や騎兵の装備が発展したりと「発展レベル」によって軍事力としての装備が変わっていくことは表現されています。

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かなり歪んだ世界地図ですがけっこう細かいエリアに分割されているのがわかります。写真にははいっていませんが、日本は4エリアに分割されています。

ゲームの流れ

冒頭、各プレイヤーにはカードが配られます。配られた手札より最初に興す文明を決めます。
オリジナルルールに従えば、このタイミングでプレイヤー間でビットによりイニシアティブを決めて、イニシアティブをとったプレイヤーが興した文明の時代がゲームスタートの文明になります。
例えば、イニシアティブプレイヤーが時代3に属する文明を興してしまうと、時代3からスタートすることになるようです。ただこの正式ルールに従って途中の時代がスタートになってしまうと古代文明は登場しなくなるので、今回ハウスルールとして、時代1からはじめると固定しました。

ゲームの進行は各文明毎に1個の命令を行うことができます。
命令の種類としては、

・ 文明を興す(カードにより文明を新規に興す。最大3文明まで担当することが可能)
・ 生産(収入を得て軍隊の維持費を払い、軍隊の生産を行う)
・ 軍事行動(軍隊を移動させる。敵と同一エリアで戦闘)
・ 手札の入れ替え(不要カード廃棄、カードドロー)
・ 文明化(リーダーを雇う、都市を発展させる、宗教・政治形態の採用、アーティファクトを制作する・・・)
・ 文明の廃棄(担当する文明を強制的に滅亡させる)

といったものがあります。
特に強烈なものは最後の、「文明の廃棄」でしょうか。
前述のとおり、プレイヤーは複数の文明を担当しますが、これ以上発展がないと判断すると、自分が担当する文明を廃棄(滅亡)することができます。さながら神の立場でしょうか。

 

(つづく)

 

yuishika.hatenablog.com

 

 

*1:話では5人プレイがベストだとか

*2:日本がひとつの文明にまとめられているのは天皇制ということで一貫した体制をとっているからと善意に解釈しましょう。ちなみに日本は紀元前から現代に至るまで存在(登場)することができる文明として設定されています。

*3:PCゲームですが「Age of Emprires」は後の作品になると日本なども登場しましたが文明として登場しただけで、地理的状況はリアルとは異なる世界だったかと思います。