アメリカのSF作家フランク・ハーバート原作「デューン/砂の惑星」を題材にしたマルチゲームを対戦することになりました。
原作小説は古いSFファン、ハヤカワSF文庫フリークであれば知らない人はいないのではないかと思います。早川書房より「砂の惑星」シリーズとして出版されていました。また今回プレイしたゲームは古くはアバロンヒル社から販売されていて、往年のタクテクス誌の裏表紙の広告などを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。
上が1979年にリリースされたアバロンヒル社版の「DUNE」、下が今回プレイする2019年版です。どちらもサンドワームがフィーチャーされていますね。
ゲームの紹介にはいる前に小説の話とか映画の話とかを少し書きます。
小説の話~ハヤカワSF文庫版への恨みつらみとか~
原作小説の和訳版は早川書房から出版されており、アメリカで熱狂的なファンがついている作品という触れ込みだったので、30年ほど前ですが、原作シリーズの1巻目(日本版は1巻目が4冊に分冊されていました)を読みました。下にカバーを紹介している、矢野徹訳、石森章太郎イラストというものです。
が、これが全然おもしろくない。
登場人物が多く、しかも名前が覚えにくい。世界設定が複雑という側面はありましたが、文章がパラパラしていて、ストーリーが全然頭に残らないのです。第1巻目にあたる日本の文庫4冊についてはなんとか読み切ったのですが、シリーズの次作にはとうてい手を出す気力はありませんでした(ちなみにシリーズは全6作とのことです)。本国での作品の評判と和訳版とでここまで落差があった小説は本作と「指輪物語」くらいです。
当時は、矢野徹の翻訳文がいまいちで、さらに石森章太郎の全然そぐわないイラストが興を邪魔したのだと考えていました。
今回ゲーム実施の調整のやり取りの中で、矢野徹訳はいまいちだったのではないかという意見については他からも得られています。
ただ新たに読もうとする方はご安心ください。現在早川書房から出ている本作は別の翻訳家による新版になっています。新版を読むとこれまでの印象は変わるのかもしれません。当方について言えば残念ながら新訳版に手を出すだけの気力と時間はないです。
なお矢野徹の名誉のために言うと、同じく翻訳を担当したハインラインの「宇宙の戦士」あたりはそれほど苦にならずに読めましたし*1、矢野徹自身が書いたSF小説「地球0年」あたりも嫌いではなかったので、決して彼が紡いだ文章が読みにくいとかそういうことではなかったのだろうとは思います。まぁ決して上手な書き手とも思いませんが・・。
ハヤカワSF文庫版の印象を著しく落としていたのはカバーイラストや挿絵にもありました。石森章太郎によるものなのですが、これが全くというほどストーリーの雰囲気にそぐわないのです。下手なイラストなら無視すればいいのではないかという話もあるのですが、本作について言えばどうにも邪魔しているようにしか思えませんでした。
ハヤカワSF文庫の初期のラインナップには、藤子不二雄や松本零士、また本作のように石森章太郎などがカバーイラストや本文中の挿絵を担当することが少なくなかったようです。こうした漫画家がカバーや挿絵を担当した作品でも、松本零士が担当したC.L.ムーアの「ノースウェスト・スミス」シリーズや「処女戦史ジレル」シリーズ、中でも「シャンブロウ」(邦題は「大宇宙の魔女」だっけか?)などは松本零士独特の妖艶な美女が描かれていたりして、印象的で、原作の持つ雰囲気や作品にプラスαの魅力を加えていたように覚えていますが、残念ながら「砂の惑星」は逆パターンだったということでしょう。
*2
「砂の惑星」1冊目の最初のあたりにあった挿絵。主人公と誰かの決闘シーン。こんな当時の少年誌の絵のようなものを差し込まれるくらいなら、挿絵無しのほうがずっと良い。
映画の話
「DUNE」は2回映画化されています。他にもTVシリーズになっているのもあるようですが未詳です。
1回目の映画化は1984年、監督は「ツイン・ピークス」「エレファント・マン」「ブルーベルベット」など独特の映像美でカルト的人気があったりするデビット・リンチです。主役はカイル・マクラクラン。本作が映画初主演だったようです。
内容は全く印象に残っていませんが、上に紹介した石森章太郎が書いた決闘シーンは映画にもあったのを覚えています(たぶん)。
メインテーマはまぁ当時少し聞きました。
2回目の映画化作は2020年公開予定だったのですが、コロナのため翌年まで延期になっています。トレイラーがアップされていましたので紹介します。
見た感じ正直言うと退屈です。場面場面が点描されたイメージビデオのようになっていて、どういう作品なのかこれだけではよくわかりません・・。また音楽も退屈に感じました。
監督はドゥニ・ヴィルヌーブ。「ブレードランナー2049」の監督だったりします。あー、って思いましたが口には出しません。
新版のイラストはカッコ良くなってますね。これで安心して読めそうです。
1回目の映画化のほうです。ゲームを研究する上ではさっぱり役にはたたないのかとは思います。惑星の雰囲気と一部の勢力の能力は描かれているかもしれません。