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歴史、ミリタリー、ウォーゲーム

「Alesia: Last Stand of the Gauls」(S&T誌)を対戦する(1/3)

ガリア戦記」で描かれた紀元前1世紀のガリアを題材にしたGMT Games社の「FALLING SKY」の対戦を画していたのですが、個人的な理由により準備なかなか進まない中*1、同じガリア戦記テーマでStrategy & Tactics誌の付録ゲーム「Alesia: The Last Stand of the Gauls」(以後、「Alesia」)を対戦する機会が先に巡ってきました。

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S&T 312 cover

GMT「FALLING SKY」がローマ共和国によるガリア平定全体(いわゆるガリア戦争)を題材にしたCOINシステムによるマルチゲームであるのに対し、本作はその平定の過程で実際に発生した戦いを題材にした作戦級ゲームになります。

ゲームが題材にしている「アレシアの戦い」とはガリア戦記の終盤の山場とも言えるもので*2紀元前52年、ローマ共和国ガリア総督ユリウス・カエサル率いるローマ軍とガリア(現フランス)の種族のひとつアルウェルニ族のウェルキンゲトリクス*3率いるガリアの部族連合軍のとの間に行われた戦いです。

ja.wikipedia.org

 

当時のガリアは支配を進めるローマ共和国と現地の反ローマ種族によるガリア戦争が続いていました。紀元前52年、反ローマ派の主導権をとったアルウェルニ族の首長ウェルキンゲトリクスが率いるガリア連合軍は各所でローマ共和国軍と戦いを続けるのですが、敗退しアレシアという町に逃げ込みます。
カエサルは好機と見てガリア国内に展開していた軍を集結しアレシアを包囲。包囲軍はローマ正規軍12個軍団の他、ゲルマン人騎兵、クレタ人投石兵、ヌミディア人軽装歩兵等の補助兵あわせて60,000人であったと伝わっています。

アレシアはブルゴーニュ地方の丘陵地帯にある町で周囲を睥睨するように頭一つ高い土地に位置していました。ここにウェルキンゲトリクスの「籠城部隊」80,000が籠もります。*4
するとカエサルは周囲の高原の稜線を利用して、ローマ人得意の土木工事を行い約1ヶ月でアレシアを包囲するように二重の陣を構築します。内側はアレシアからのウェルキンゲトリクスの軍を抑えるため、また外側は包囲部隊を攻撃してくるガリア人の解囲部隊から防御するための陣になります。

ガリア人達はウェルキンゲトリクスを解放のため、兵力を結集した解囲部隊を送り込みます。その規模25万の歩兵と8千の騎兵からなり、4人の指揮官が率いたと言われています。
こうしてカエサルは内と外とあわせて約34万人のガリア軍を約6万人のローマ軍で迎え撃つこととなったのです。

File:Muséoparc d'Alésia 0038.jpg - Wikimedia Commons

「アレシアの戦い」は総司令官であったカエサル自らによる「ガリア戦記」という稀代の記録により詳細内容が後世に伝わっています。このためゲーム化の機会は多く、中でもアバロンヒル社が発売していた「Caesal: Epic Battle of Alesia」は往年のシミュレーションゲーム誌「タクテクス」(ホビージャパン刊)の初期の号で紹介されたこともあって記憶に残る作品になっていると思います。

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アバロンヒル社から発売されていたアレシアの戦いを題材にしたゲーム

 

ゲームシステム

さて今回プレイした、「Alesia」ですが、ゲームシステムは簡単に言うと、チットドリブン、強ZOC、マストアタックにあたります。 
以上、と言うことで終わるとせっかくのゲームシステムのエッセンスが伝わりませんので、もう少し紹介します。

 

ゲームスケール

1日=9ターン、ゲームは3日

1ヘックス≒約500メートル

ローマ軍ユニット:1ユニット=3~4コホート(大隊)=1000~1600人

ガリア軍ユニット:1000~4000人、騎兵は500~1000人

 

ゲームシーケンス

以下を交互に実施し、全ての手持ちのチットを引き終わると1日が終了します。
チットの数は両軍10枚弱、ゲーム期間は全3日間です。*5

  1. チットを引く
  2. 活性化リーダーを決める
  3. 移動
  4. 射撃戦(射程を持つユニットのみ)
  5. 白兵戦
  6. プレイヤーの交代

 

チットドリブン

プレイヤーはチットを引き、チットに記載された数値分の人数のリーダーを活性化させます。活性化されたリーダーはそのユニットに記載された”指揮範囲”の数値のヘックス内にいる部隊ユニットを動かすことができるようになります。

プレイヤーは交互にチットを引いていき、手持ちのチットを全て引き終わると”日”が終わり、再編成などを行う夜間ターンになります。

おなじ日の中でも、各リーダーやその指揮範囲内のユニットは何度でも活性化させることができます。
直前のチットで活性化させたばかりのリーダーとその指揮範囲内のユニットを今回のチットですぐに活性化させることも可能です。また指揮範囲内の部隊ユニットの活性化にあたっては、所属軍団や部族による違いによる制約はありません。
ゲームが対象にしているのはわずか3日間ということもあり、補給線などの面倒なものの考慮も不要です。

ガリア軍のチットは、アレシアに籠城した「籠城部隊」と、包囲を破ろうと外側から攻撃する「解囲部隊」と分かれています。ガリア軍のチットの中に1枚だけ、「籠城部隊」と「解囲部隊」の両方を同時に活性化させることができるものが入っていますが、それ以外の活性化チットは、どちらか一方に属するリーダーしか活性化できないようになっています。ローマ軍にはこうした違いはありませんので、アレシア攻撃にもまた郊外から押し寄せるガリアの解囲部隊への対処にも自由に対処できます。

両軍にはほぼ同数で同じ内容のチットが与えられています。一部のチットは特別のギミックが用意されています。

「総攻撃チット」はゲームを通して両軍とも1度だけ使うことができるチットで、使いたい”日”のチットの中に混ぜておき、引いた際には全リーダーを活性化させることができます(このあたりの処理は以前に紹介した「耳川の戦い」の「総攻撃チット」に似ています)。

「モラルチェックチット」はローマ軍には1枚、ガリア軍には2枚はいっているチットです。このチットを引くと、その軍はモラルチェックを行います。3D6により、そのタイミングまでに除去されたユニット数以上の数値を出せば成功、出せない場合は失敗となります。
モラルチェックに「成功」すると、その軍のリーダーは全て活性化させることができる一方、「失敗」した場合はそれ以上、活動を行うことができなくなり、相手軍に手番を交代します。

 

強ZOC、マストアタック

敵ZOCにいったん捉まると戦闘後の処理以外では脱出ができません。
ただしリーダーユニットは無条件に、また騎兵ユニットは敵ZOCの相手方にリーダーユニットまたは騎兵ユニットがない場合は離脱が可能となっています。

またマストアタックのため、敵ZOC内にあるユニットは必ずどれかの敵ユニットを攻撃する必要があります*6

 

戦闘解決はファイアパワー方式

戦闘解決はファイアパワー方式でかつ他ユニットと戦闘力を足さずにユニット毎に解決するという方式が採用されています。ファイアパワー方式ですので、防御側ユニットの戦闘力は関係なく攻撃することができます。
地形効果やリーダーユニットとスタックすることによる指揮効果は戦闘解決表のコラムシフトとして反映されるのですが、戦闘解決表の最も弱い欄は”戦闘力1以下”となっているため、シフトの結果戦闘力が”0”以下になるような場合も遠慮せずに積極的に攻撃していくことで、確率は低いとは言うもののなんらかの損害を与えることができるようになっています。
なお防御側に射撃戦を行うことができるユニット(弓兵、投石兵、ローマ軍の砦ユニット)がいる場合は1/6の確率で、攻撃側に損害が出る場合があります。

なおほとんどのユニットは2ステップになっています。戦闘結果としては1発除去は少なく、1ステップずつロスさせていき結果除去というパターンが多いでしょう。
戦闘力1や0以下といった攻撃も通るため、あちこちで戦闘が発生し、少なからず損害がでますので、ユニットは結構除去されていきます。

 

アレシアの特別ルール

ウェルキンゲトリクスの「籠城軍」が立てこもったと都市アレシアとアレシアの「籠城部隊」についてはいくつかの特別ルールが用意されています。

ローマ軍はアレシアのヘックスに対してZOCを及ぼすことができません。これによりガリア軍の「籠城部隊」は、アレシアを包囲しているローマ軍を必ず攻撃する必要はないため自殺的な攻撃を行う必要がありません。戦闘により後退が出た場合に後退する先がなかったりといった事態に陥ることはなく、またアレシア内の移動を自由に行うことができるようになっています。

もうひとつ、ローマ軍はアレシアの都市ヘックスに進入することができないとルールも影響が大きいです。

包囲戦を扱うウォーゲームの場合、包囲されている側が、ZOCルールやマストアタックのルールを適用されることにより、自殺的な攻撃の強要や後退位置がないことからの強制除去などが生じ、急激にジリ貧になるものが少なくないのですが、本ゲームでは包囲される都市に特別ルールを適用することによりこうした事態を防いでいるようです。

 

夜間ターンルールと勝利条件

両軍に与えられたチットを全て引き終わるとその”日”は終了し、夜間ターンになります。夜間ターンではユニットの回復と再配置が行われます。

両軍ともステップロスしたユニットは全て完全回復します。

ローマ軍はアレシアの周りを取り囲むように設置された包囲線かローマ軍キャンプに戻り、ガリア軍はアレシアから3ヘックス以内に位置しているユニットはアレシア都市内に、また4ヘックス以上のヘックスにいるユニットは全て盤外まで退却します。

両軍とも夜になると出撃前の陣地に戻り、翌日また攻めてくるという訳です。

 

勝利条件は、基本ポイント制です。
ガリア軍はウェルキンゲトリクスの盤外への脱出やカエサルユニットの除去により大きな得点を得ることができ、それ以外は除去したローマ軍部隊ユニット、砦ユニットの数により得点します。

ローマ軍はウェルキンゲトリクスユニットの除去、また除去したガリア軍ユニットにより得点します。
それ以外には両軍の総司令官ユニットの除去などにより、サドンデスルールもあります。

 

ルールについては適用にあたり不明点を中心にハウスルールを取り決めてプレイしてす。
騎兵突撃など用意されている選択ルールは左様していません。

また実際のプレイの中では不自然に感じられる部分もありましたので、後ほど紹介します。

 

マップ等の紹介

今回のゲーム、ガリア軍、ローマ軍が初期配置した状況です。
中央に配置された青いユニットがガリア軍の「籠城部隊」で配置されているヘックスがアレシアの都市ヘックスになります(上記の、ローマ軍が進入不可のヘックス)。

アレシアを取り囲むように、オレンジ色と赤色の線がありますが、これがローマ軍が構築した包囲線を現し、ところどころに砦ユニット(砦ユニットの配置位置は自由)が配置されています。

ガリア軍の「解囲部隊」はこのマップの周囲6方向のどこからか(複数も可)に配置されており進入していくるのですが、進入してくるまでは、解囲部隊がどこから現れるかはローマ軍にはわからないようになっています。

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中央の青色ユニットはガリア軍のアレシア「籠城部隊」、オレンジと赤で描かれたローマ軍の包囲線に沿い、堡塁ユニットや部隊ユニットが配置されている。
なお写真上は南、下は北となっている。

以下はご参考、前述のアバロンヒル社「Caesal: Epic Battle of Alesia」のマップです。アレシアと取り囲む包囲線が描かれている。なお南北の方向は、今回の「Alesia」と同じ下側が北方向になる。

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ガリア戦記 (岩波文庫)

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ガリア戦記 (平凡社ライブラリー664)

ガリア戦記 (平凡社ライブラリー664)

 

文庫版ではユリウス・カエサルは8巻より登場し、ガリア戦記で記録された時代は9巻から10巻、さらにアレシアの戦いは10巻で描かれています。

*1:現時点2020年12月にプレイ予定です

*2:ガリア戦記自身の記述はかなり淡々としているのですが(記録として書かれたものなので当然といえば当然ですが、読み物としては少々退屈です)、ガリアの各種族を平定するほぼ最終盤としてこのアレシアの戦いが描かれ、作品そのものの山場にもなっています。

*3:塩野七生の「ローマ人の物語」では、ヴェルチンジェトリックスと表記されている

*4:籠城にあたって食料の節約のため、ウェルキンゲトリクスはもともとのアレシアの住人だったガリア人の種族を追い出します。まぁ住人からすると酷い話です。その数10000人程度と伝わっています。追い出された住人はローマ軍に助けを求めますが、カエサルはこれを無視します。住人がどうなったのかは伝わっていませんが、塩野七生は夏場でもあったので冬場とは異なり彼らが生存する術もあったのではないかと書いています。

*5:史実では、ガリア軍の解囲部隊が到着して、包囲陣の内側と外側との戦闘が本格的に開始して3日にて決着したことを受けこの日数で設定されているのでしょう。

*6:隣接する全ての敵ユニットを攻撃する必要はなく、敵ユニットに隣接するユニットは隣接するいずれかの敵ユニットを攻撃する必要がある