■ ”38度線”と”軍事境界線”は異なるという事実
記事を書くのに現在の韓国のマップとゲーム内のマップを照らし合わせていると、南北朝鮮の国境線がよく言われている38度線とは異なる状態にあることに気づきました。
朝鮮戦争がはじまった際の国境線は北緯38度のラインに沿って設定されていたのですが、戦争を経て現在の北朝鮮との境界線は1953年の休戦時の実効支配地域に拠っています。
これにより、ゲームマップ(1950年開戦時)の境界線と現在の境界線を比べると、東海岸側は若干北側にあがっている一方、西海岸側、ソウル北西部については北朝鮮の支配地域が広い状態になっています。マップ内でソウル北西部(左斜め上5ヘックス)に位置し重要都市になっている開城(ケソン)は現在、北朝鮮側にあり開城南方の河川が境界線になっているようです。
実際のマップで調べると、ソウルと開城の距離は53.7キロ、外縁部だけであれば30~40キロといったところでしょうか。軍事境界線上にロケット砲を並べればソウルを砲撃できるというのもよく理解できますし、侵攻する側からすると指呼の間といったところでしょう。
と、こういう地理や地政学的な発見ができるのもこうしたゲームの醍醐味でしょうね。
AAR続きです
■ 第4ターン 国連軍フェイズ終了時 ~金泉の攻防(その2) (7/17~7/23)
金泉に突入したのは北朝鮮軍の2個戦車連隊でした。
国連軍は周辺の部隊を集結させ金泉を包囲します。さらには釜山の空軍基地と日本海を遊弋する航空母艦から発進した現有2個航空部隊も地上支援に駆り出します。*1
ダイスの目次第では2個連隊とも殲滅できる状況です*2。
連合軍初の反撃作戦に、無情にもダイスは渋い結果となります。
まず地上支援効果のダイスは、1個部隊の航空支援は有効、もう1個部隊は誤爆*3で、プラスマイナスゼロと効果なしの結果*4。
地上戦闘の結果は防御側の2ステップロスということで、殲滅はならず、戦力半減した戦車連隊が2個とも残ることとなりました。最悪ではないが最良でもない・・とひとりごちてはみたものの、防衛線を張る側が逆襲した際には戦線が乱れる鉄則のとおり、打ち漏らしたことが後に響いてくるのでした。
■ 第5ターン ~金泉の攻防(その3) (7/24~7/30)
北朝鮮軍は接近していた歩兵師団を集め、金泉の戦車連隊を包囲している国連軍を逆包囲の上、攻撃します。韓国軍2個歩兵連隊からなるスタックは除去。続く戦車移動フェイズで包囲下にあった戦車連隊は金泉を脱出します。
国連軍ターン、金泉包囲のため西部方面の韓国軍は部隊を抜かれており、戦線を維持できないと、南部へ撤収、大田を撤退します。半島の西半分からほとんど部隊がいなくなります。これにより北朝鮮軍オートバイ連隊がその快足で、南部の都市を次々と陥落させます。北朝鮮軍は韓国の都市を陥落させるとその都市より1度だけ徴兵できるようになり、補充兵としてステップロスした歩兵師団のステップ回復ができます。*5。
中央方面も、安東が陥落。東部方面も浦項近くまで北朝鮮軍がせまりつつある状態です。
アメリカ軍増援部隊を中心に、大邸を核とした戦線を張ろうとします。出血が多すぎた韓国軍ユニットはもうほとんど残っていない状態だったのです。
このゲームの勝利条件のひとつとしてサドンデスルールがあります。条件は2つありいずれかが達成できた時点で北朝鮮の勝利となります。
ひとつに”釜山最終防衛ライン”*6に北朝鮮軍のユニットが侵入した時点、または第8ターンまでに、馬山、大邸、慶州、浦項の4都市*7を占拠した場合です。
■ 第6ターン ~山地ヘックスにZOCは無効! (7/31~8/6)
第2金日成ラインと称せられているラインに沿うように国連軍の戦線は張られていたのですが、1か所穴がありました。山地ヘックスにはZOCは無効です。
永川から大邸北方にかけての山地沿いにはられた国連軍(主力はアメリカ軍)戦線に穴があり、北朝鮮軍1個歩兵師団が突破し、国連軍は対処を余儀なくされます。
■ 第7ターン (8/7~8/13)
中央方面を中心に北朝鮮軍の攻勢が拡大します。
高雲付近で戦線の弱い部分を攻撃され戦闘後前進(2ヘックス)により海兵連隊と韓国軍歩兵連隊が包囲されてしまいます。
また北朝鮮軍戦車連隊の前方にはぽっかりと穴が開くなど、押しまくられています。
■ 第8ターン (8/14~8/20)
このターンより北朝鮮軍は”マンセー(万歳)突撃”が可能となります。
マンセー突撃は完全戦力の歩兵師団のみが行なうことができ、その攻撃力は通常の攻撃力の倍となる代わりに、宣言した部隊はペナルティとして2ステップの損害を強制的に適用されます(完全戦力の歩兵師団から攻撃力が半減します)。また各師団1回ずつ、全軍でも合計4回までしか行えないという回数制限が付されていますので、北朝鮮軍にとっては最後の”寄せ”にあたっての切り札ということになるでしょう。
韓国軍部隊がほとんど残っていない状態で戦線を維持しているのはアメリカ軍部隊になっています。複数箇所で包囲されたり穴が開いたり戦線は惨憺たる状況になったところで投了しました。
確かにもう1~2ターンはなんとかしのげるかなという印象もありましたが、国連軍側はしばらく増援もないこと、北朝鮮軍は切り札のマンセー突撃があり、また戦力的にはほぼ力はないものの、サドンデスの条件となる最終防衛ラインの突破には使える戦車連隊もあります。仁川上陸用の増援が到着する12ターンまでは持たないかな、という判断の結果の投了でした。
史実での戦線もおおよそこれと似たような状況かそれより押し込まれたところまでいったようですが、ここで国連軍は9月の仁川上陸まで踏ん張るのです。これはこれですごいです。
■ 後段その1 ~国連軍はもっと粘れたのではないか…?
どうも千葉会でも本ゲームのプレイは珍しかった模様で、終盤にはギャラリーが集まるる状態、歴戦のプレイヤー達に見守られながらのプレイとなりました。
国連軍(当方)の投了後、yagi会長の「国連軍はもう少し粘れるんじゃない?」ということで、いくつか示唆が提示されました。
(1) 高雲付近で包囲されていたアメリカ軍2個連隊は「補給切れユニットの脱出」ルールを用いることで、北朝鮮軍のZOCを無視できるようになり、包囲を突破(装備を捨てて人員のみ脱出しているイメージでしょうか)し、そのまま南部の港湾に移動し、海上移動で釜山に戻れる
(2) 大邸のスタックについては山地ヘックス伝いに南方へ脱出できる(山地ヘックスにZOCが及ばないルールですね)
これは追加
(3) 蔚珍で孤立している韓国軍歩兵連隊は港湾ヘックスにはいり補給切れ状態を解消し、海上移動で脱出できる
などなど。
諦めずに最後までジタバタしろっていうことですね。
こうした手を施したとしても、北朝鮮軍にマンセー突撃と戦車連隊のタッチダウンがある以上、国連軍の不利な状況をひっくり返すのは難しいかな、という感想もありましたが。
■ 後段その2
決して難しいとは思わないのですが、ルールの構成なのかルールの見落としが発生しやすい印象があります。(「補給切れユニットの脱出」ルールは盲点でした。確かに言われてみてなるほど‥となりましたね)。
また若干、ルールがあいまいな点があり、その度に”現実に照らすと”という判断基準を用いることで解決できた点は良かったですね。冒頭の北朝鮮軍特殊部隊の海上移動ルールは完全に読み間違えていました。
またD状態のユニットと補充兵ユニットはどちらが強力なのか、という点などは議論になりました。
■ 後段その3
序盤は比較的イメージがあったのでよかったのですが、中盤以降は全く用意ができていませんでした。特にソウルが陥落し漢江を渡河された以降の遅滞作戦時の戦線の張り方、山地ヘックスを越えられてからの釜山防衛戦などもっとやりようがあったかな。韓国軍ユニットが犠牲になるのは避けられてないのでしょうが、包囲され全滅するパターンが多く、出血が多すぎた印象です。そのため補充兵もうまく活用できないままでした。
いろいろ反省しきりのプレイになったので機会があればぜひ再戦したいものです。
蛇足ですが、結構このゲームも”良識がないゲーム”に分類されそうな感じがしますが、みなさんどう思われますか
- そもそも題材そのもの
- 北朝鮮軍が韓国内都市を占領した際に実施できる”徴兵”ルール
(了)
*1:国連軍はこのターンより航空部隊の出撃が可能となります。この時点で可能な航空部隊の役割としては、北朝鮮軍の移動を妨害し損害を与える”交通妨害”と、攻撃または防御時の戦闘結果表のオッズをシフトできる”地上支援”があります。
*2:北朝鮮軍の戦車連隊は攻撃に関しては特に韓国軍相手では無敵ともいうべき条件がついているのですが3ユニットしかなく、途中の補充や回復はないため、すりつぶされると復活はしないのです
*3:悪天候による誤爆といったところでしょうか。誤爆と言えば、これより3ヶ月くらい先、中朝国境近くに迫った国連軍に対抗して中国義勇軍は国境付近の森林を焼いてその煙で航空部隊の地上支援を誤爆や攻撃不能といった状況に誘ったそうです
*4:航空部隊による地上支援は1D6により三分の二の確率で地上での戦闘オッズが1個有利なほうにシフト、逆に六分の一の確率で戦闘オッズが攻撃側不利な方向にシフトします。投入する航空部隊の数だけD6を振ることになります
*5:前の記事にも書きましたが、史実に照らした際にもっとも怖いルールではないかと思っています。北朝鮮軍は占領した韓国側都市で徴兵を行い、北朝鮮軍撤退時もそのまま北に連れて行ったことが現在にもつながる離散家族問題の一因と言われているようです
*6:マップ内で釜山に近いところにある赤点線が釜山最終防衛ラインになります
*7:地図内で都市名の頭に★印を記した都市