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独ソ電撃戦(国際通信社)を対戦する - 規模の割に手軽にスピーディにプレイできる点が良い

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先ごろ発売され、千葉会でも多数プレイされているエポック/国際通信社「独ソ電撃戦」をプレイしました。
当方はゲームを買ってルールを読んだままで、ユニット未切り離し状態だったのですが、今回はDさんにインスト込でお相手していただきました。

 

■ ルールはシンプル

ルールは非常に簡単です。作戦級の基本といった内容です。さすがにエポック時代に星ひとつの入門用とされていただけはあります。
1ユニットは軍団単位、1ターンは1日で6月22日の独ソ戦開始に始まり8ターン目で終了します。
ソ連軍は初期配置のユニットだけではなく、途中登場のユニット含め全て戦力未確定状態で登場します。もちろん歩兵軍団、戦車軍団それぞれについて想定される戦力の幅はあるのと(最低0戦力の場合もありえます)、また手練のプレイヤーであれば、どの戦力のユニットが何枚ある、というところまでチェックしているようです。ただやはり開けてみないと戦力がわからないというのは非常に怖いのは事実でしょう。
実際にプレイ中も、要地を守らせた2ユニットからなるスタックが、開けてみると、0戦力ユニットと2戦力ユニットでしかなく即効ドイツ軍がやすやすと突破していくという場面がありました。

ユニットの第2次移動は無し。メイアタック、戦闘後前進は2ヘックス。スタックは2ユニット。これくらいチェックしてればすぐにプレイできます。
勝利条件はポイント制。確保している主要都市について都市ごとのポイント、またソ連軍は除去したドイツ軍ユニットのポイント、ドイツ軍はマップの西端より突破したユニットのポイントが加算されます。ソ連軍はいくら損害が出てもポイントには関係ないのです。

 

  

■ 手練のソ連軍に作戦級ゲームの真髄を見た

1戦目はマップ半分、オリジナル「独ソ電撃戦」と同じ、中央軍集団の戦区になるミンスク側のマップ1枚だけでプレイ。当方はドイツ軍を担当しました。

2戦目はマップ2枚。バルト三国が含まれる北方軍集団のエリアも加えてプレイ。
ソ連軍をやってみない?とは言われたのですが、2戦目もドイツ軍を担当させてもらいました。

軍事境界線に沿って配置されたソ連軍に対して、ドイツ軍が一斉に襲いかかるのは壮観です。ドイツ軍の装甲軍団の移動力は10なので、けっこう戦場を右へ左へと移動できます。逆にソ連側からするとどこを攻撃されるのかわからないという状態に陥ります。

ドイツ軍はいくつかの場所で部隊を包囲し、いくつかソ連軍の戦線に穴を開けますが、第2移動はありませんので戦闘後前進の2ヘックスの中で包囲を試みる必要があります。手練のソ連軍はもともと”戦闘後前進も考慮した”配置を徹底していることからそうやすやすとは包囲状態は生まれません。(それでも第1ターンだけは初期配置範囲が限定されるために包囲が発生している箇所が何箇所かは出ていましたが)

続くソ連軍ターン、ソ連軍は単体状態で突出しているドイツ軍に対する攻撃の可能性や、前線で包囲されている自軍の部隊を助けたいといった誘惑に惑わされることなく、戦線の整理を行います。
数ヘックス後退したライン(ソ連軍ユニットの移動力はドイツ軍ほど大きくはないです)に戦線を張り直します。凹凸をなくし可能な限り直線に配置、地形を利用し、防御拠点を設け、攻撃が集中しそうな場所へのメリハリをつけ、かつドイツ軍の戦闘後前進によっても包囲が出ないように・・まさにセオリー通り。ただこのセオリー通りというのが難しい。蜘蛛が自分の巣のほころびを直すように粛々と戦線の整理が行われるのです。
まこと見事な後退戦です。

ドイツ軍は穴を見つけ突進し、戦力を集中し突破拡大を図りますが、次のターンには後退したラインで引直された防御線では穴は塞がれ、ドイツ軍装甲部隊の衝力はいなされ続けるのです。

そうこうするうちに、マップ奥にある都市の占領どころか到達すら難しいことが見えてくると、ゲーム終了時に予想されるポイントが計算され、2度ともドイツ軍の投了と相成りました(2戦目は時間切れにより、ソ連軍の優勢と判定しました)。

結局2戦ともソ連軍はほとんど攻撃をすることなく(=ダイスを振ることなく)勝利しています。まぁ、徹底的な戦線張りは”吐きそうなくらい苦しい”(by Dさん)とのことでしたが

 

■ 簡単なルールと早く派手な展開で、まさにゲーム会向けの優秀ゲーム

午後いっぱいで、いずれも途中までとはいえ2戦実施することができました。
フルマップ2枚の規模(スペースはかなり必要)のゲームで、ソ連軍は展開としてはひたすら苦しいかもしれないが(ただしゲームバランス的にはソ連軍優位と言われているらしい)、テンポの速いゲーム展開のゲームもなかなかないのではないかと思います。
ルールも難しくないため、重めのゲームの幕間に行うのにも良い、まさにゲーム会向けですね。

 

コンポーネントが素晴らしい

今回の再販にあたって、コンポーネントが一新されているようですが、これが素晴らしかった。ユニットサイズが大きくなり、扱いやすく、また部隊名である数値などが読み取りやすくなっています(プレイヤーの高齢化対応という意地悪な声もあるようですが)
ユニットが大きくなった分、おそらくマップサイズも大きくなったのではないかと思いますが、マップについていえば紙質とその表面加工がよかった。単なる紙のペラペラしたものではなく手触りの良いマップは高級感があって素晴らしかった。
今後とも旧作ゲームの再販にあたってはこういう端々に目の行き届いた仕様だとうれしいですね。

 

シミュレーションゲームに何を求めるのか

このゲームをプレイした前日に同じレックカンパニー製の「THE KOREAN WAR」をプレイし、そしてこの「独ソ電撃戦」をプレイして、思ったのは”シミュレーションゲームに何をもとめるのか”という点です。

勝利条件は当然、ゲームのゴールを定めプレイヤーの行動の方向づけのために不可欠な要素なので、勝利条件としてどのように表現するのかはゲームデザインの観点でも最需要な要素のひとつでしょう。

一方で(特にゲーム終盤)、勝利条件至上主義でユニットの動きが不自然になるのは嫌だなって思うのです。

この2作、どちらかというと競技寄りかな、と思いつつ、それでもシミュレーションとしてもそれなりの満足感を得られた点はよかったな。
シミュレーションゲームに何を求めるのかというのは引き続き考えていきたいテーマではあります。

 

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

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(了)