Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

A distant plain(GMT)を対戦する(1)

2020年ゲーム始めはGMT社COINシリーズの「A distant plain」になりました。
千葉会新年オフ会にて4人プレイ。次回のCOINシリーズに向けて備忘録的なゲーム紹介になっていますので、AARについては(2)のほうを見てください。

 

yuishika.hatenablog.com

 

 

COINシリーズについて

2020年最初のゲームはGMT「A distant plain」でした。このゲーム、COINシリーズ第3弾。アフガニスタン紛争を扱う4人ゲームです。

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COINシリーズは対反乱作戦(counter-insurgency, COIN)の略称。体制側と反体制側との非対称戦争を描いたシリーズとして、基本システムを同じくした3人制または4人制ゲームになっています。シリーズは現在11作目まで出版されており、本作は3作目にあたります。

シリーズを並べてみると現代戦ばかりではなく歴史もののテーマも交じっています。
なお当方は4作目「Fire in the Lake」をプレイしたことがあります。

  1. Andean Abyss 1990年代コロンビア
  2. Cuba Libre Castro's Insurgency 1957-1958 キューバ独立
  3. A Distant Plain insurgency in Afghanistan  2000年代 アフガニスタン紛争
  4. Fire in the Lake insurgency in Vietnam 1960~70年代ベトナム戦争
  5. Liberty or Death: The American Insurrection  アメリカ独立戦争(イギリス、アメリカ、フランス、インディアン)
  6. Falling Sky: The Gallic Revolt Against Caesar 紀元前1世紀のガリア戦記の時代
  7. Colonial Twilight: The French-Algerian War, 1954-62
  8. Pendragon: The Fall of Roman Britain The fall of Roman Britain  4世紀から5世紀にかけてのブリタニア王国の成立
  9. Gandhi: The Decolonization of British India, 1917–1947
  10. All Bridges Burning: Red Revolt and White Guard in Finland, 1917-18
  11. People Power: Insurgency in the Philippines, 1983-1986
  12. China's War: 1937-1941  日中戦争 ※おそらく本作は未発売

 

A distant plainについて

プレイヤーは、有志連合、アフガン政府、タリバン北部同盟の4勢力を担当します*1
有志連合はアメリカはじめ諸外国からなる対テロ戦争参加諸国を指します。タリバンはあの悪名高いイスラム主義組織です。パキスタンに拠点を持ち、アフガニスタンの混乱に乗じて浸透しつつあります。北部同盟は原文ではWarload、日本語訳でも軍閥とされていますが、ニュースなどで耳にすることが多い北部同盟がこれにあたるようです。地方に割拠して麻薬等の密売などで権益を握る組織になっています。

COINシリーズの作品の特徴として各勢力は対等ではありません。
現実世界と同様に、単に規模や戦力が違うというだけではなく、手段として実施できることや勝利条件が異なります。大きくは体制側(政府軍・有志連合)、反体制側(タリバン北部同盟)と分かれますが、同じ側にあっても利害が一致しているわけではありません。
まさに非対称戦争の名の通り、軍事行動ひとつをとってもできることできないこと、また実力は異なるのです。通常のウォーゲームのように戦力を集めて両軍で戦闘を行うといったことはこのゲームの中では起こりません。

マップ

マップはアフガニスタンとその周辺国がエリア方式で描かれます。
各エリアには人口が定められ、「支配」状況と「支持」状況が示されます。また各エリアには各勢力の「部隊」や「基地」が置かれます。

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ショートシナリオ初期配置。色とりどりの立方体や円筒のユニットは各勢力の「部隊」や「基地」を表します。詳しくは(2)のほうで

「支配」と「支持」

「支配」と「支持」は本ゲームの中では重要な概念です。
「支配」とはそのエリア内の勢力が他方より多い場合を指し、COIN支配(体制側勢力が多い場合)か、タリバン支配(タリバンが他勢力よりも多い場合)があります。どちらでもない場合は中立となります。
「支持」はそのエリアの民衆の支持状況(民心と言っていいのでしょうか)を示すものです。様々な状況によって政府支持から中立、政府対立まで移ろっていきます。
例えばそのエリアの勢力を比較すると政府側が多いため「COIN支配」(政府側支配)ですが、民心による支持は「政府対立」ということで支持が低いといった状況も生まれます。

各勢力の勝利条件となるパラメータ

各勢力の勝利条件は異なります。それぞれ異なるパラメータについて一定数値を達成することが勝利条件となります。各勢力のおかれている状況や特徴を知る上でも、各勢力の勝利条件の中でもとめられるパラメータについて記します。

  • 政府   「COIN支配」(政府側支配)の人口値 + パトロネージの合計値
  • 有志連合 「政府支持」の人口値 + 派遣されていない部隊数(ユニット数)
  • タリバン 「政府対立」の人口値 + マップ上のタリバンの基地の数
  • 北部同盟 非支配状態エリアの人口値 + リソース(資金)量

共通して言えるのは大きな人口を擁するエリアを押さえることが重要であるところでしょうか。人口値は各エリア毎に定められた0~3の数値になっており、展開によっては難民の流入などにより増加する場合もあります。スタート時点での人口値最大3は首都カブールです。

政府の勝利条件は支配状況は問題にしていますが支持状況は問題にしていません。つまり勢力の強さだけで民心が離れた状態でも良しということになります。
パトロネージは独特の概念で援助の横流しや賄賂といった政府自体が行う不正を表します。パトロネージを大きくすることは本来公共事業や民衆のために使われる資金が使われなくなったことを表しその分、民心が悪化します。つまり政府は勝利のためには善政を行っていけないということになります。*2

有志連合の2番目のパラメータも独特です。
有志連合がアメリカ軍等の他国から派遣された治安部隊であることを考えると想像できることで、派遣される部隊の規模が大きくなることは当然、有志連合の母国の負担が増え、場合によれば母国国民の支持が低下する要因になるのです。よって有志連合はより小さい派遣規模で、かつアフガニスタン民衆の支持が厚い政府を支援しているという体になることが求められています。翻って、”派遣されていない”部隊数がパラメータとなっているのです。

タリバンはゲリラですので「支配」していることよりもいかに民心を政府から引きはがすかが求められます。民心を体制側から引きはがす手段としては、テロを起こすこと、またシャリーアと呼ばれる宗教活動(国としての法律や仕組みではなく、イスラムの原典に依拠する活動を行うこと)などがあります。

北部同盟の1番目のパラメータも独特です。地方を割拠する勢力ですので、政府支配でもなくかといってタリバン支配でもない状態、言ってみれば”どこにも属していない”状態のエリアを増やすことを求められているのです。
北部同盟の抱えるジレンマはもうひとつあって、勝利条件がリソース(=資金)を貯めることにあることです。基本的になんらかのオペレーションを行う場合はそれなりの資金が必要なのですが、北部同盟の場合、資金量自体が勝利条件でもあるのでお金を貯めるという方向、いわばお金を節約するように動く必要があります。

各勢力を表すユニット

各勢力は一定のユニットを保持しています。
政府は、警察ユニットと軍隊ユニット、有志連合は派遣軍ユニット、タリバン北部同盟はゲリラユニットです。また各勢力は基地と呼ばれる拠点を持っています。

ユニットをどのように増やすのか、基地をどのように作るのかは各勢力毎に用意されたオペレーションまたは特殊活動を通して行われます。

ゲリラは潜伏状態と活性化状態とがあります。ゲリラは何らかの活動を行う場合には活性化させる必要がありますが、活性化されたゲリラは政府軍・警察、または有志連合の派遣軍によるゲリラ討伐の対象になります。
活性化されていない(=潜伏中)のゲリラは討伐の対象になりません。政府や有志連合はゲリラ討伐のために潜伏中のゲリラを活性化させるため捜索することが認められています。*3

政府の警察・軍の兵員は質が低いため、プロパガンダラウンド(後述)時に一定割合が逃亡したり、またイベントやタリバンの一部の特殊活動によりゲリラ側に転向したりします。

なお警察と軍はどこが違うのかというと、プロパガンダラウンドが発生すると出動中の軍はすべて基地に戻る必要があるのに対し、警察は戻る必要はありません。
なおゲリラも同様に基地に戻る必要があります。よって予想よりも早くプロパガンダラウンドが到来した場合は、浸透途中のエリアから撤退するということになります。

オペレーションと特殊活動

各勢力は自分の手番の際にオペレーションや特殊活動と呼ばれる行為を行います。このオペレーションや特殊活動も各勢力によってできることが異なります。

例えば体制側はゲリラを見つけるための「パトロール」「スイープ」、ゲリラを討伐するための「急襲」がある一方でゲリラ側は「テロ」ができます。ほかにも各勢力毎に特徴的なオペレーションが用意されており、それらを駆使することによりさきほど紹介した勝利条件のパラメータを変えるように活動します。

特殊活動はさらに特徴的で、有志連合は「増派」「空輸」「航空攻撃」、タリバンには「脅迫」「浸透」「待ち伏せ」といったように実施できることがかなり異なっているのです。 

ゲームの流れ

ゲームは一種のカードドリブンシステムになっています。
山札からカードが開かれると、カード上部にある各勢力を表すアイコンの順番に沿い、操作を行います。

順番にあたった勢力は、”カードに示されたイベントを実施する”、”オペレーションを実施する”または”パスする”ことができます。
このあたりの手順はもう少し複雑なのですが説明は省きます。(この部分のルール自体は複雑ではないです。プレイ時の考慮が複雑なのです。ただこの複雑な部分が、COINシリーズのゲームシステムの真髄ともいわれているようです)。

カードの上部にならんだアイコンは各勢力を表し、順番が決まります。順番にあたった勢力はイベントを実施するか、オペレーションを実施するか、またはパスをすることができます。

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カード上部に並んだアイコンが各勢力を表します。例えば一番左にある「ISR」というカードの上部のアイコンは最初の星型マークは有志連動、次の月マークはタリバン、青色は政府、最後の緑は北部同盟となっています。このカードが開かれると、まず有志連合が最初の手番になる権利が与えられイベントの実行かオペレーションの実行なのかを選べます。2番目のタリバンは有志連合の選んだ選択肢によって実施できる種類が異なってきます。タイミングが悪い、実施できることが自分の想定と異なるといった理由で手番をパスすることも可能です。

プロパガンダラウンド

カードの中にはシナリオで決められた一定枚数のプロパガンダカードと呼ばれるカードが入っています。このカードが場に出されるとそこまでの状況を一度締めて、ユニットの再配置などがなされる、プロパガンダラウンドに入ります。この時点で勝利条件を満たす勢力があるとそこでゲームは終了します。

この中締めのカードはどのタイミングで登場するかわからないのです。かなり短い期間の中で登場する場合もあれば、逆の場合もあるでしょう。中締めによりユニットの再配置等が行われますので、状況によっては途中まで進んでいた動きが強制的に中断させられることがあるかもしれません。

 

(長くなったのでつづく)

 

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*1:4人集まらなかった際のためにノンプレイヤー用のチャートが用意されています。他の勢力すべてをノンプレイヤーチャートに依存させることにより、ソロプレイも可能になっています。

*2:パトロネージの概念はCOINシリーズに共通して登場する概念で政府の不公正や腐敗を表しているパラメータです。
訂正:パトロネージの概念が登場するのは、本作と第3作の「Fire in the Lake」の2作のようです。

*3:「パトロール」「スイープ」がゲリラ捜索のためのオペレーションになります。