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「ギリシャ内戦 THE GREEK CIVIL WAR 1947-49」(国際通信社/Decision Games)を対戦する(1/2)

コマンドマガジン165号に収録の「ギリシャ内戦」を対戦プレイしました。

ルールブックはページ数も多くはなく一見平易なのですが、実際にプレイしてみるとルールの適用にあたってはデザイン意図を汲み取る必要があり、一筋縄ではいかないタイプの作品でした。

ゲームシステムへの理解の助けのため、コマンドマガジン本誌でリプレイ記事などが提供されていればよかったなと思ったものです。

 



 

 

ゲームの紹介

日本から見ると世界史の教科書にも登場しないようなマイナーな内戦

題材は第二次世界大戦直後、1946年から49年にギリシャにて発生した内戦。イギリスやアメリカの支援を受けた政府側と、ドイツ占領下においてギリシャ最大のレジスタンス組織をつくっていた共産主義ゲリラとの争いを扱っています。

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非対称な両勢力

政府軍対ゲリラ組織という非対称の争いを扱っているため、政府軍側の部隊ユニットは武装を整え訓練された正規軍(「陸軍師団・旅団」)から、対ゲリラ戦向けに組成された特殊部隊(「LOK部隊」)、治安維持の「警察部隊」と分かれています。ゲリラ側も軍隊組織の反政府軍(「パルチザン旅団」)から、「ゲリラ部隊」、社会に潜伏しゲリラを助ける組織(「闘争戦線」)、さらにはアジテーションや教化を図る組織(「カドレ部隊」)に分かれ、それぞれ特徴があり、戦闘時の特殊能力から制約、また動員方法が異なっています。

 

戦闘結果表が3種類もある上、内容もかなりイレギュラー

戦闘結果表は3種類に分かれています。デモや工作・威圧といった「市民行動表」、限定的な武力行使を扱う「ゲリラ活動表」、武装した組織同士による大規模な戦闘を扱う「武力衝突表」です。

戦闘結果の処理も特徴的です。

普通のウォーゲームでは戦闘の結果、ユニットがステップロスをするのですが、本ゲームでは、戦闘結果によってはステップが1ランクあがるという結果もありえます。戦闘を経験することで部隊の練度があがったり装備がよくなるということをあらわしているのでしょう。

戦闘結果として政治ポイントという世論や民衆の支持を表した数値も上下するのですが、政治ポイントに与える影響もユニークで、戦闘に勝っても政治ポイントを失ったり、逆に戦闘に負けた側が政治ポイントを得るという結果もありえるようになっています。戦闘の勝敗と関係なく、世論や民衆の支持が上限するということなのでしょう。

例えば政府軍が圧倒的な戦力でゲリラ部隊を攻撃すると「オーバーキル」という結果になる確率が増えるのですが、この「オーバーキル」は政府軍にとって必ずしも喜ばしい状況にはならないです。防御側のゲリラ側のユニットは全滅するのですが、政府軍側は通常の戦闘時の2倍の政治ポイントを失います。戦闘には勝利したものの、ゲリラや民衆への虐殺などにより、世論の支持を失うといったところでしょうか。

政府軍だけが使うことができる空爆(概念としては砲撃も含む)を行使した場合も、結果によっては相手へ損害をあたえることができたとしても、政治ポイントを失うことがありえます。その場合、さらに通常攻撃の倍のポイントを失います。強硬な手段は決して得にならないということを表しているのでしょう。

終始優勢な政府軍は、ゲリラ側に対して、圧倒的に勝つのではなく、”ほどよく勝つ””適度に勝つ”というところをもとめられているとも考えられます。このため戦闘解決において攻撃側はわざと低いオッズの列を使って戦闘を解決することが認められています。

 

相手のユニット種類によって3種類の戦闘結果表を使い分けます。ルールブックの中でも3種類の戦闘結果表の内容は良く見ておくように、と記述されています。例えば一番レシオが低い戦闘比として「1対1未満」という列が表の最左列にあるのですが、戦闘力比率が1対1に満たない場合は全てこの「1対1未満」の列をもって解決することになります。

ゲリラ側が多用することになる「市民行動表」の、最左列にあたる「1対1未満」の列をみると(本ゲームの戦闘結果表はすべて1D6で解決されます)、1/3の確率で防御側は1ステップロスの結果になっています。

つまりどういうことだってばよ。

ゲリラ側は戦闘力が1や2といったユニットにより、政府軍の旅団(戦闘力3)や師団(戦闘力13)を攻撃することにより、戦闘力比が1対3とか1対13とかいうレシオにもかかわらず、1/3の確率で相手を1ステップ失わせる(攻撃を受けた師団や旅団が1ステップ目であった場合は除去)ことができるのです。たしかに2/3の確率で失敗し、逆に攻撃側が1ステップ失う可能性があるのですが、政府軍の動員コストを考慮すればゲリラ側にとって十分お釣りがくるのではないでしょうか。

 

マップはエリア式だし浸透移動なども可能なため戦線などはできません

マップはギリシャ全土を複数のエリアに分割しています。アテネと北部のテッサロニキは都市だけでひとつのエリアとなっています。アテネテッサロニキは占拠していることで獲得できる政治ポイントが高いため、政府軍側は警察ユニットなどを用い、確実に押さえておくべきところだと思われます。

それぞれのエリアにはインフラボックスと呼ばれる四角の枠が1〜3個用意されています。このインフラボックスを全て占拠すると、そのエリアを支配することになり、政治ポイントを獲得できます。

ゲリラ側がインフラボックスを占拠した場合、「潜伏」状態になることができ、「潜伏」状態のユニットに対して、政府側の正規軍はなかなか有効な攻撃を行うことができなくなります。攻撃を行う術が無い訳ではないですが、通常戦力が攻撃を行うには効率は悪い。代わって登場するのが、対ゲリラの特殊部隊「LOK部隊」ということになります。

ギリシャに国境を接しているアルバニアユーゴスラビアブルガリアはゲリラ部隊を動員する供給源となる一方で、ギリシャ政府軍は手をだすことができないエリアになります。定期的なゲリラ部隊の動員のため、ゲリラ側はこれらのゲリラ組織を支援してくれる隣国に進出する必要があります。

 

政治ポイントを争う

ゲームの勝敗は政治ポイントの差により決まります。部隊の動員にも政治ポイントを使います。政治ポイントは国際世論も含めた世論や民衆の支持といったものを表しているのでしょう。

ターンの政治ポイント収入は支配しているエリアからの収入(他には戦闘結果によって得られる政治ポイント)になりますが、エリアの支配という点では浸透移動ができ(「カドレ部隊」)、数が多いため部隊展開が政府軍に比べて容易なゲリラ側が有利に見えます。そのエリアを支配できなくても、政府軍側がエリアを支配することを妨害し収入源とできないようにすることは容易です。

ゲリラ部隊が政治ポイントを伸ばし、あるしきい値を超えると「トルーマンの支援」がはじまり、政府側は毎ターン一定の政治ポイントを得ることができるようになります。政府側の所有する政治ポイントが一定のラインよりも低くなっても同様です。
トルーマンの支援」を開始させることで、政府軍側に恒常的な収入源を与えることはゲリラ側に不利に働くのではないか、一方で支援開始のしきい値を超えないように政治ポイントをコントロールすることは可能か・・という議論がプレイ中も発生しました。



政府軍側の行動はその時々の対ゲリラ政策(ダイスで決まる)で縛られる

政府側はゲームスタート時、その後は一定のターン毎にダイスによって、対ゲリラ政策を決める必要があります。広く全国土を守るのか、一部の地域だけに集中し、後はゲリラを野放しにするのか、はたまた積極的にゲリラ討伐を行うのか、です。

動員に用いるポイント数にも枠がはめられています。そのポイント数以下でしか動員を行うことができないという制限です。政治ポイントのあるかぎり、動員を行うことができるゲリラ側と大きな差になります。

もっとも、政治ポイントは戦闘の結果として増減するため、戦闘に負け、ポイントを失う機会が多いゲリラ側は、途中で政治ポイントがゼロにならないようにバッファを見ておく必要はあります。政治ポイントがゼロになると即サドンデスになります。

 

ゲームのシーケンスは一見オーソドックスに見えて、これもクセモノです

ゲームの手順はオーソドックスです。ターンのはじめに政治ポイントの残量が多いプレイヤーが先攻/後攻を決め、各プレイヤーターンにおいて、動員-移動-戦闘を行い、両プレイヤーターンが終了したところで損耗チェックを行います。

動員は第1ターンを除く奇数ターンのみで実施できます。奇数ターンでは先攻プレイヤーは後攻プレイヤーに先んじて「動員」をかけ、その時点では未動員状態の後攻プレイヤーに対して行動を行うことができます。空白になったインフラボックスを占拠する、弱体化したままの後攻の勢力に攻撃を仕掛けるなどです。

偶数ターンでのみ発生する「損耗」では政府軍側の「警察部隊」、ゲリラ側は「闘争戦線」ユニットが半減されます。「警察部隊」「闘争戦線」ともにエリア支配のための重要なユニットであるため、いきなり除去されるのは痛いです。除去されて空いたインフラボックスに、続く奇数ターンの先攻プレイヤーがすかさず部隊をいれていくこともできてしまいます。
(この強制的な「損耗」というルールは変動要素を設けるために加えられたルールのように見え、いまひとつ腹落ち感がない印象はあります。)

 

部隊種類が多く、動員方法も特徴がある

両勢力には部隊種類が複数あることは冒頭近くで書きましたが、動員できる条件がそれぞれ異なるため、それらの条件を見極めて使い分ける必要があります。
もうひとつつけくわけるとすると、初期配置条件も加えて「動員」できる条件、配置できる条件がパズルのようになっているので注意が必要です。

ゲリラ側には「カドレ部隊」と呼ばれるアジテーション、情宣活動などを行う小部隊があります(ルールブック上は「カドレ部隊」とあるのですが、マップに用意された表では「幹部」となっています)。動員の条件は、「ゲリラ勢力の(いずれかの)部隊が置かれたエリア(国内外)」です。浸透移動が可能なため、政府軍がいるエリアでも自由に移動・通過が可能です。さらには「潜伏」状態(インフラボックスにはいっている状態)では、政府軍側の「LOK部隊」(対ゲリラ戦部隊)に攻撃されない限り、損害を受けません。

ゲリラ側の「闘争戦線」はゲリラ勢力を支援する後方支援部隊のようなものを表しています。「闘争戦線」はカレド部隊が置かれたエリアに動員できます。

ゲリラ側の実行部隊である「ゲリラ部隊」は、「闘争戦線」か他の「ゲリラ部隊」または「パルチザン旅団」がおかれたエリアに配置できます。

ここまでの関係を図式すると、あるエリアで配置されているユニットから呼び出す(「動員」する)ことができるユニットの関係は次のようになります。

  • ゲリラ側の部隊(種類問わず) → カレド部隊 → 闘争戦線 → ゲリラ部隊またはパルチザン旅団
  • ゲリラ部隊 → ゲリラ部隊

 

各ユニットの能力からすると次のような手順になるということでしょう。

  1. 「カレド部隊」が浸透しあるエリアのインフラボックスを占拠
  2. 「カレド部隊」は「闘争戦線」をそのエリアに動員する(可能であれば「闘争戦線」はインフラボックスを占拠(「潜伏」状態になる))
  3. 「闘争戦線」は、「ゲリラ部隊」をそのエリアに動員する(可能であればそのエリアのインフラボックスを「カレド部隊」が占めているとすると、続く移動フェイズで「カレド部隊」は他のエリアに移動し、空いたインフラボックスに動員した「ゲリラ部隊」を移動させ「潜伏」状態にする)

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他にも紹介したいイベントとして、政府軍による「恐怖マーカー」の設置、ゲリラの進出や発生を防ぐために行われた「強制移住」、ゲリラ側の「通常戦」宣言などがあります。「スターリンとチトーとの決別」(ゲリラ側はユーゴスラビアを拠点とできなくなる)はオプションルールにあります。

 

(つづく)

 

 

 

*1:第二次世界大戦直後の世界史といえばどうしても日本やアジア・太平洋を中心に見てしまう印象があって、世界中の各所で何が起こっていたのかというのはなかなか見えてないですね。以前プレイした「STARGARD SOLSTICE」(3CG)の記事に書いた、「旧ドイツ東部領土」や「ドイツ人追放」の事件、また2022年2月のウクライナ戦争でも突然登場したロシアの飛び地領「カリーニングラード」(旧名:ケーニヒスベルク)の由来なども全てこれらのWWⅡの戦後に決まったことですね。

 

 

*2:ゲリラ側の部隊はいずれも「潜伏」状態にない「オープン」状態であれば、政府軍側から通常攻撃を受けることになります。戦力的に劣るゲリラ勢力にとって、命取りになるため、「潜伏」状態になることは必須でしょう。もちろん各エリアではインフラボックスの枠の分までしか「潜伏」状態にはなれないという制約はあります。