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A distant plain(GMT)を対戦する(2)

2020年劈頭、千葉会新年オフ会にてGMT社COINシリーズ第3作「A distant plain」をプレイしました。当方はタリバン北部同盟をKさん、有志連合をTさん、アフガン政府をDさんが担当しました。

ゲーム内容の紹介は前記事をご覧ください。

yuishika.hatenablog.com

タリバンの勝ち筋

タリバンの勝利条件は政府支持を悪化させ民意を「政府対立」とさせたエリア人口の合計値と、設置されたタリバン基地の数が勝利条件の数値を超えることです。

政府への民衆の支持を減らし「政府対立」とするためにタリバンがとりえる”オペレーション”としては、「テロ」と「シャリーア*1があります。いずれも実行していくためには、エリアに”潜伏中”のゲリラが必要です。
またもうひとつの勝利条件パラメーターである「基地」を設置するためにもゲリラは必要です。*2
こうしたことからタリバンとしては序盤、「集結」「浸透」といった”オペレーション”を通してゲリラを増加拡散しつつ、攻撃やテロを実施するタイミングを待つことになるでしょう。
タリバンは4つの勢力の中で最も資金に乏しいということもあるため資金を集める行動も必要かもしれません。資金がなければ基本何もできないのです。

ゲリラは発生した時点では”潜伏中”の状態にあります。”潜伏中”のゲリラに対しては警察・政府軍・有志連合は攻撃を仕掛けることはできません。攻撃を行う場合は先に「捜索(サーチ)」という"オペレーション"を実施してゲリラを”活性化”状態にさせる必要があります。
”潜伏中”のゲリラは「テロ」や「攻撃」*3といった行動を行えますが、「テロ」や「攻撃」を行った”潜伏中”のゲリラは”活性化”されますので、攻撃を受けやすくなります。
一度”活性化”したゲリラは何にも対策を打たなければ次のプロパガンダラウンドまで”活性化”された状態のままになります。その間、攻撃を受けやすい状態ですので可能な限り早く”潜伏”状態に戻しておく必要があります。プロパガンダラウンドでは”活性化”中のゲリラは強制的に”潜伏”状態に戻ります。

こうした勝ちに向けての筋道が見えるようになったのは、ゲームをはじめてしばらくたってから、結果的には終盤にはいってからです。それまでは正直、何をするべきでしょう?といった状態でした。

シナリオ

2009年から2013年という期間が設定されたショートシナリオ「オバマの戦争」を選びます。メインシナリオの後半期間を描いたシナリオということで長さはメインシナリオの半分になります。
ショートシナリオのためイベントカードの一部は使用しないのですが、使わないカード側にそれぞれの勢力の能力を強化するようなカードがはいっていた場合、シナリオスタート時点から適用された状態で開始することができます。このスタート時点のボーナスによりタリバンは複数種類のカード効力を得ました。

例えば、タリバンによる攻撃による威力が1.5倍になる「道路サイド爆弾(IDE)」、活性化したゲリラを”潜伏”状態に戻しやすくすることができる「IDカード偽造」、テロが単なる示威行為ではなく攻撃力を持つようになる「自爆テロ」、さらに首都カブールでのゲリラが有利になる「都市ゲリラ」など、がタリバンの手札に加わったのです。

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初期配置。各地にちらばるキューブ状の駒は警察(水色)、政府軍(青)、有志連合(黄土色)を表します。ゲリラは背が高い円筒形の駒になっていて、タリバン(黒)、北部同盟(緑)ですね。それ以外には、大きめの皿状の駒が各勢力の基地を表します(色は駒と同じ)。

2009年(シナリオ第1ターン)

1枚目のカード、アフガン政府が第1プレイヤー。アフガン政府は隣国パキスタンからの援助を受け大きく財政状態が向上しますパトロネージも増え、政府高官の懐が温かくなります。
第2プレイヤーはタリバンタリバンは「集結」を利用して3エリアでゲリラを発生(発生時点ではまだ”潜伏”状態)をさせます。タリバンアフガニスタン国内にいくつかの基地をもっていますが、部隊数は十分ではなく、また進出しているエリアもまだまだ少ない状態なのです。

第1プレイヤー、第2プレイヤーの操作が終わったので1枚目のカードは終了し、2枚目のカードの操作になります。第1プレイヤーは有志連合、無人機によるカードイベントを発生させ、あるエリアで”潜伏”中のゲリラが発見され、攻撃を受け壊滅状態(除去)になります・・・。

その後も応酬が続きます。

・・・
タリバンとしてはゲリラ基地を構築するべく、いくつかのエリアではゲリラを2個集めるところまでいっていました。次のラウンドでタリバンの番が回ってきたならゲリラ基地が各所に発生、という状態だったのです。

といった状況で次のラウンドのカードとしてプロパガンダカードがドローされ、清算を行う「プロパガンダラウンド」に移行します。

プロパガンダラウンド」では基地がないエリアに存在するゲリラは基地が存在するエリアに強制的に移動させられます。基地を構築するべく、基地がないエリアに浸透していっていたゲリラがことごとく強制的に基地があるエリアに戻されました。ゲリラ進出計画は失敗したのでした。
ただ強制移動されたため、基地があるエリアに大量のゲリラが集中した状態でターンは終了します。

 

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プロパガンダラウンドの強制再配置により黒いタリバンゲリラ駒が集中しているエリアが見て取れます。地図やや右上にある円形のエリアは首都カブールで、警察と政府軍が集中しているのがわかります。

2010年(シナリオ第2ターン)

新年はいくつかのエリアでのタリバンゲリラによる「攻撃」オペレーションから始まります。
が、タイミングや場所などを考慮せずにやみくもな攻撃だったので、政府・有志連合への影響は限定的に終わりました。*4損害はすぐに吸収・回復されるでしょうから、タリバンの一斉蜂起も散漫な攻撃で終わったのでした。

その後、この年はあっけなくプロパガンダカードがドローされ、各陣営とも思うように活動ができないうちに幕引きとなりました。
そうした中、着々とポイントを伸ばしている勢力がありました。アフガニスタン政府です。ゲーム冒頭で得たパキスタンからの援助を皮切りに、着実にパトロネージを増やしていたのです。 

2011年(シナリオ第3ターン)

ようやく勝ち筋が見えてきたような気がしていました。タリバンは金を貯めるのが目的の勢力ではないのです。積極的に使っていこう・・と。

その頃、他勢力、北部同盟と有志連合は政府のポイントが想定以上に積みあがっていることに気づき、なんとか妨害することを謀っていました。
ただし有志連合と政府は同じ体制派ということで直接的に足をひっぱるような手段がありません。
どうも、政府のパトロネージに直接影響を与えるオペレーションができるのはタリバンだけだったようですが、タリバンにはその自覚は薄かったのです。

新年は有志連合によるタリバンゲリラ集結エリアでの一斉取り締まりで開けます。対象となったエリアでのタリバンゲリラが基地もろとも一掃されます。

数回のカードドローの後、タリバンは全国でのゲリラ一斉蜂起を画策します。前ターンのような1、2か所での蜂起ではたかがしれているのです。その時点でのタリバンの残資金は20。まず資金の半分を使って未進出エリアを中心に10エリアで新たにゲリラを展開します。
次にドローされたカードは「アルカイーダ」。
カードイベントとして、タリバンは無償で「テロ」を実施できます。*5
タリバンはこのカードイベントを利用して、折りから全国に展開していたゲリラによるアフガニスタン全土での一斉テロを決行します。

IDE攻撃」によるボーナスも含め、ゲリラ集結エリアでは、警察・政府軍・有志連合軍への「攻撃」、またゲリラの数が少ないエリアでも「自爆テロ」を決行。
その威力をもろに被ったのが有志連合でした。
有志連合の駒が存在するエリアには本来は損害吸収部隊として警察・政府軍駒があるべきだったのですが、従来タリバンゲリラが進出していなかったエリアを含め全国規模での蜂起であったため、警察・政府軍で吸収できない損害があちこちで発生したことにより有志連合の死傷者数は積みあがったのでした。*6おそらく有志連合に参加していた各国ではアフガン派遣に対する国内世論が悪化し、政権与党は次の選挙の心配のあまり、撤兵を視野にいれるととかなんとか・・といったことになったのではないかと想像します。

次のカードはプロパガンダカードだったため、テロが吹き荒れたアフガニスタンプロパガンダラウンドに突入します。

結果、その時点で勝利ポイントを超えていた政府が勝者となりました。パトロネージが終始高く、一番に勝利条件を超えていたのでした。
タリバンも勝利条件ちょうどのポイントになっていたのですが、勝利条件と同値ということで、条件オーバーだった政府が勝者となりました。

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最終場面、クライマックスはタリバンの一斉蜂起でした。タリバンゲリラを表す黒色円筒があちこちで”活性化”を表す月と星のマークを表示させています。わかりづらいですが、マップ左上の「CASUALTY」というボックスにこの時除去された有志連合の駒が並べられています。

感想戦

プレイ時間はインスト込みで5時間くらいだったでしょうか。

全体を通して、Kさんの丁寧なインストによりゲームはスムーズに進行しました。当方が担当したタリバンは、有志連合のように部隊を増強したいのに勝利条件の関係でできないとか、北部同盟のように派手に資金を使ってオペレーションを実施していきたいのにできないといったジレンマは抱えていないところからも、プレイしやすい勢力のように感じました。

2戦目にしてようやくCOINシリーズの仕組みがわかったような気がします。
次にプレイする機会があれば(本作でもシリーズの他の作品でも)、もう少しうまくできたりするんじゃないかな、とか思っていたりします。

 

(おしまい)

 

インストはじめプレイではもっとも難易度が高い北部同盟を担当していただいたかみさんのブログです。こちらのほうがより体系的に、また各勢力公平に書いてあります。

bqsfgame.hatenablog.com

 

*1:シャリーアは前記事に書いたように、その国の法律ではなくイスラム法を法律とするという運動です。国には従わないと宣言しているようなものなのだろうと思います。

*2:ゲリラ2ユニットを基地ユニットに変換できるという”オペレーション”があります。よってこの"オペレーション"を行うには、まずゲリラを浸透させて2ユニット集める必要があります。ゲリラの発生もそのエリアの勢力状況や民族状況によって異なります。

*3:「攻撃」オペレーションの際、6面サイコロ1個を振って、そのエリアにいる活性化されたゲリラユニットのユニット数以下の数字を出す必要があります。成功するとそのエリアにいる警察・政府軍、または有志連合のユニット2個を除去できます。

*4:有志連合の駒が除去された場合、アフガン派遣軍に死傷者発生ということで有志連合にはマイナスになります。ところがそのエリアに警察・政府軍駒が存在する場合、有志連合駒から損害を出す前に、警察・政府軍駒から除去するというルールがあります。警察・政府軍駒はいくら除去されてもペナルティはありません。さらにはアフガニスタン政府は、警察・政府軍駒を容易かつ大量に動員できるのです。ゲリラが集中しているエリアであれば、警察・政府軍駒を送り込み、損害吸収部隊として使うことができるのです。

*5:通常は1エリア毎に1資金を消費します。

*6:政府がパトロネージで蓄財に励んでいた結果、十分な警察・政府軍が展開できていなかったという説もあるとかないとか…