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歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「Nagashino 1575 & Shizugatake 1583」(SERIOUS HISTORICAL GAMES)を対戦する(1/2)

フランスのゲームメーカー、SERIOUS HISTORICAL GAMESがリリースした、戦国時代をテーマにした表題ゲームを対戦しました。シリーズ作品の第1巻ということで、ルールブックには、「Sengoku Jidai」と書かれています。今後共通ルールとして扱われるということなのでしょう。*1

 

 

 

 

スケール

作戦戦術級とされているのですが、マップはエリア式です。エリア=300メートル。当時の火縄銃の射程が50メートル程度とすると1エリアも射程がないことになります。1ターンは30分から45分。1ユニットは500人〜1000人規模。全体を指揮する大名や、軍団(Divisionとされ、活性化の単位)毎に大将ユニットが配置されます。今回の賤ヶ岳、長篠では、両軍とも3〜5軍団ずつの編成になります。



シーケンス

シーケンスはオーソドックスです。

  1. イニシアティブの決定
  2. 先攻プレイヤーから配下の軍団毎に交互に活性化し移動・戦闘を行う
  3. 再編成
    • 次のターンの「陣形」を決める

 

陣形と戦術マーカー

両軍は前のターンの再編成フェイズ中に次のターンの「陣形(Formation)」を決めます。戦国もので陣形というと、「魚鱗の陣」とか「鶴翼の陣」といった種類を想像してしまいますが、本ゲームでいう「陣形」は攻勢重視なのか、守勢重視なのかといった態勢を抽象的に段階設定したもので、物理的になんらかの形を表しているものではないです。

陣形には、「Extremely Aggressive」(+3)から、「Flexible」(0)を経て、「Extremely Defensive」(-3)まで7段階(!)が用意されています(( )内の数値はダイス修正値)。

「陣形」によって、イニシアティブ決定時のダイス修正値が変わり、攻撃重視の場合、イニシアティブを取りやすくなります。また、毎ターンドローする「戦術マーカー」の種類が、変わってきます。

「戦術マーカー」とは、戦闘解決の際にダイス修正に使うことができるマーカーで、自軍が攻撃側の際に使うことができるマーカー、攻守どちらの場合も使うことができるマーカー、防御の際に使うことができるマーカーの3種類があります。戦闘解決には6面ダイス2個(以降、2D6と表記)を使うのですが、最大3の修正値は大きいですね。

「戦術マーカー」は毎ターン、軍司令官のQL(Quality Level)分の枚数を引くことができるのですが(軍司令官のQLは4から5なので、4~5枚がドローされることになります)、その際、さきほどの「陣形」により引くことができるカウンターの種類が変わってきます。

「Extremely Aggressive」(+3)という攻撃に極振りした「陣形」の場合、引くことができる戦術マーカーは、攻撃を行う際にのみ使うことができるものばかりになります。代わりに修正値が大きいマーカーの割合が増えます。防御重視であれば、防御時にのみ使うことができるマーカーの枚数が増え、「Flexible」という中立的な姿勢の場合は攻守とりまぜたマーカーの中から、ドローすることになるのです。

 

兵種と諸兵科連合効果

兵士を表すユニットとして、足軽、侍、馬廻衆(ゲーム内では旗本と表記されています)、中間が登場します。

足軽は装備によって、鉄砲・弓・槍に分かれます。侍と馬廻衆は戦闘能力的にはほぼ同じで、騎乗状態と徒士の状態があります。

いずれのユニットも、白兵戦値と射撃値、QL(Quality Level)を持っています(射撃値は0のユニットもある)。

注目は中間なのですが、英文表記はChugen,説明文ではServant(従者)とされています。中間が独立したユニットとして扱われているゲームは初めてみました。

 

諸兵科連合効果ですが、戦闘に「鉄砲+弓+槍」の3種類のユニットが参加する場合、戦闘結果判定時の2D6に+2の修正、3種類のうち2種類が参加する場合は+1の修正を得ることができます。

侍と馬廻衆は諸兵科連合効果の判定時には、不足する兵種に成り変わることができます。組み合わせに「弓」がいない場合、「弓」足軽に成り変わることができるのです。

ところがここで登場するのが「中間」です。侍や馬廻衆が諸兵科連合効果判定時に他の兵種の代替になるためには、同じエリアか隣接エリアに「中間」がいる必要があります。

さらに「中間」ユニットの効果として、侍や馬廻衆のユニットが参加する戦闘で、同じエリアか隣接エリアに「中間」ユニットがいない場合、マイナスの修正がつきます!

若党/中間

ともに個々の武士が召し抱えた家来。武士に仕える武家奉公人である。通常「若党」は武士身分の者となり、中間以下は武士身分とはされない。武士が出陣するとき、騎馬の武士であると、鑓で戦うときに無防備となる鑓脇(やりわき。武士の馬の右方向)を固める家来が必要で、そのほか、鑓持ちや道具持ちなどを含めて数人の構成となる  (imdasより)

通常であれば侍ユニット、騎馬武者ユニットの中に含まれると整理されている存在が独立したユニットとされている訳です。しかもユニットの規模で、足軽や侍は1ユニット=500人規模とされているのが、中間ユニットは1ユニット=1000人規模とされていて、中間ばかり1000人もいるユニットが盤上に登場することになります。ムムム・・。なお中間は戦力的には弱小です。

諸兵科連合効果を発動させるためには兵種ユニットを集める必要があるのですが、その際にスタック制限が問題になります。通常のエリアでは3ユニット集めると制限値に近くなるので、兵種毎1ユニットずつ集めていっぱいなのです。侍や馬廻衆に代替させると中間ユニットはスタックできずに隣接した後方エリアに配置することになります。

 

長篠シナリオに登場する織田・徳川連合軍側の全ユニット。
ユニットの能力値は、左上から「白兵戦値」「射撃値」「移動力」、右下「QL(Quality Level)」となっている。
ユニット種類は右下のQLの上にあるアルファベット2文字。日本語の頭文字から2文字が構成されているので、逆にわかりにくい(例:「KH」騎馬旗本、「Ch」中間、「Da」大名、「Ya」槍足軽、等々)
軍団の分類は、右上の家紋による。家紋まできちんと記載されているのはうれしいが、少々区別がつきづらい・・・。

 

特徴的な戦闘ルール

活性化した軍団(Division)のユニットに隣接したエリアに対して戦闘を宣言することができます。攻撃を行う側に騎馬ユニットがいる場合「騎馬突撃」を宣言できます。

攻撃を受ける側(防御側)は、自軍内に射撃値をもったユニットがいた場合は、「防御射撃」を行うことができます。ユニークなのは、射撃値を使った戦闘は防御射撃が発生した時のみ起きます。攻撃側から射撃を使った戦闘は起こせないのです。

また攻撃側が宣言した「騎馬突撃」に対して、防御側はカウンターチャージ(対騎馬突撃突撃)を宣言することも可能です。

ただしこの攻撃側の攻撃ユニットの活性化から騎馬突撃、防御射撃、対騎馬突撃突撃といたプロセスのルールはやや不明確で、BGGのフォーラムには、防御射撃に関する質問が並んでおり、デザイナーからは「次作の「関ケ原」で手順を明確にする」と回答がでています。

 

戦闘解決方法はエリア内にいる全ユニット同士が戦闘を行うのではなく、攻撃側・防御側それぞれが戦闘に参加させる1ユニット、「Lead Attacker(LA)」、「Lead Defender(LD)」を選び、戦闘解決はこのLAとLDとの間で行われます。LAがLDを除去するなどいくつかの条件が成立した場合は、続けてLAは防御側の次のユニットに対して攻撃ができるのですが、そうでなければLDに対して1回の攻撃だけで終わります。

戦闘解決方法は、LALDの白兵戦値同士または射撃値同士との差をベースにして、様々な修正を施し、2D6にて決めます。

修正要素としては、白兵戦値を用いる通常の攻撃の場合は、地形効果、諸兵科連合効果、侍・馬廻衆の場合は中間ユニットの有無戦術マーカー、大名や大将ユニットの有無などかなり多くの種類の修正が積み上げられます。

ダイスの値は修正値によって大きくブレるので、戦闘にあたっては可能な限りなんらかの修正が適用できるようにユニットを集めたり、有利な地形から攻撃できるようにしたりなどの活動が発生します。

 

その他のルール

戦闘ルールの説明に多くを費やしてしまいましたので、その他の要素は簡単に。

移動には強行軍のようなものはないのですが、移動時にユニットの全移動力を消費するとQC(Quality Check)という士気チェックが強要されるので注意が必要です。

ZOCのルールも若干わかりづらいです。地形効果が高いヘックスから通常の平地などの隣接エリアにはZOCが及ぶのですが、その逆はありません。また平地同士など同じ種類の地形同士もZOCは及びません。もっとも本ゲームにおいてZOCによる束縛はあまりないので気にするほどでもないかもしれません。

再編成のルールも若干説明不足に感じました。

 

大名から大将、大将から配下ユニットへは指揮範囲にないとペナルティが発生します。オプションルールでこの指揮範囲の概念に伝令(母衣武者!)や相互に視認などの概念が登場します。ただ今回の2つのシナリオはいずれもマップが広くないのでそこまで深刻ではないでしょう。

 

ルール全般

全体的には難易度が高いルールではないですが、珍しい概念やルールも散見されます。

「陣形」から「戦術マーカー」の関係、戦闘解決のルールなどは十分に注意が必要でしょう。不明確な部分もありますし、ルールがぶれているようにみえる点もあります。適宜BGGのフォーラムなども参照されたほうがよいでしょう。

 

(つづく)

 

 

 


 

*1:BGGのフォーラム上の情報では、次作は「関ケ原」になる模様です(不確か)