19世紀なかば暗黒大陸と呼ばれていたアフリカ大陸探検を題材にした「HEART OF DARKNESS」(LEGION WARGAMES)を対戦しました。(第2回/全2回)
ある探検家の記録(承前)
ペストの村
長い探索行の中で我々は度々アクシデントに襲われた。
「道に迷う」「渇き」「嵐」・・、そして「マラリア」。
高熱に侵された我々は所持していた最後の「キニーネ」を投入する。これ以上、体力が落ちると運搬すら支障をきたし始めると判断したのだ。
「道に迷う」と余計な時間を費やすことになり、探索を諦めざるを得なくなる。特に「砂漠」での迷子は影響が大きい。
食糧については当初余計に持ち込んだこともあり、他チームが”米びつの底を覗き込みながら”の探索を続けていたことからすると、我々は余裕があった。
イベントはかなり頻繁に発生する。簡易マップの各探索を行う回において移動前に1回、移動後に1回、計2回、イベントのチットを引くことになるため、簡易マップ上の探索を完了するまでに、あわせると10回以上はイベントチットを引くタイミングがある。
もちろんイベントチットの中には各種発見なども含まれるのだが、一方で多くのアクシデントも発生する。
コバルト鉱山を発見する。
ポーターが一部脱走。この程度の損害はやむをえまい。我々は荷物を分配しなおし、再び出発する。
我々は「噂」の存在を耳にする。「噂」の話を聞くために村に立ち寄る。ここで友好度が高くなければ人々は口を閉ざし、「噂」は探検家の前から消え去ってしまう。
もとより西洋人に対する敵対心が高いエリアだ。
贈り物の効果か幸運にも「噂」の話を聞くことができた。場所が特定される。そこに何かがある。
地図上で発見された「村」や「国」に訪問した際の友好チェックにおいて、贈り物は限定的ながら修正効果がある。この時は結構分が悪い状況であったが、村人たちは口を開いてくれた。
体力が落ちている中なので我々は他の目標をあきらめ「噂」の場所に移動する。
「噂」に伴う対応はこのゲームの中のクライマックスといってもよいかもしれない。
探検家は簡易マップでの探索中に「噂」をひきあてると、近くの「村」や「国」に話を聞きに行くことになる。もちろんそのような海千山千の話には乗らずに確実にDPを稼ぐことができる活動に専念することもありだろう。
「村」や「国」の人々の友好度が高い場合のみ、彼らは口を開き、「噂」の場所を特定する。そこからさらに「噂」の場所に移動することになる。この時点、「噂」の内容は不明のままだ。
苦難の末(この一連の行動は制約がある行動回数の中でこなさなければペナルティになっていく)、「噂」の場所にたどり着いてはじめてチットがひかれ、「噂」の内容が開陳される。
そこは・・ペストに侵された村であった。
黒い発疹に全身を覆われた人々。我々には汚染された井戸の代わりとなる水と、水を運んでいた革袋を置いていくことくらいしかできなかった。
「噂」の中身は様々、古今のアフリカを舞台にした創作に登場するものが登場するなど読んでいるだけでも楽しい。
冒頭で予告したデザイナーのKangerも「噂」の中のひとつに登場する。どのような登場かは、見てのお楽しみ。ちなみにこの回は”我々”が発見した「ペスト」以外に、2プレイヤーはそれぞれ「Lost Eden」と「野人」(もろター○ン)を発生させていた。
プレイ最終盤の状況。左手上側のアンゴラから出発した”我々”(赤ライン)と、右手のモザンビークから出発した新聞社の探検隊(緑ライン)の踏破行路が南アフリカ奥地で近接した状況。ひとつのエリアに2つの水系の河川が登場することはないため、河川沿いに移動している限り両者のルートが交錯することはない。
探索が終わったエリアには多数のマーカーが置かれているが、明らかになった地勢、河川の状況の他、景観・植物相・歴史遺物・王国等の発見されたものを示している。
いわずもがな、支配を競うゲームではないので支配マーカーのようなものはない。
ゲームはここで時間切れもあり終了。
リプレイ中、登場しなかったが科学者をパトロンとし、エジプトを起点とした探検家チームが、ナイル源流近くに広大なジャングル地帯を発見し、さらに博物学的発見を連発したことにより独走状態にあった(50DPまで残り数ポイントまできていた)。一方の、”我々”や新聞記者スポンサーの探検家チームはその半分程度のポイントになっていた。
今回のプレイでは適用を漏らしていたのだが、プレイヤーの独走を妨害するルールがあったことをプレイ後、気づいた(「謙虚さ」)。
またそれ以外に、「嫉妬」というやや強烈な、これもまたプレイヤーの独走を妨げるルールがあったりする(狂気系)。
終了時にDP以外の要素による修正を加えて勝敗を決する。
感想戦
探検というある種、淡々と進みがちなプロセスを、幾多のマーカーやチットプルによってゲームとして昇華させている点は感心しました。確かにイベントやアイテムとの組み合わせによってチェックのダイス振りや、その修正など複雑に組み合わされていて、なれるまでけっこうルールブック、またはプレイエイドといったりきたりする面はあります。
限られたリソースをコントロールしながらゴールに向かっていく。決して楽な道はありません。
ところどころ覗かせる暗い闇が魅力的
他の探検ゲームに「正気度」の概念があるのかわかりませんが、この「正気度」の存在」がゲームに暗い色調を与えていてなかなかに魅力的に見えます。今回はそこまでの狂気に至ることはなかったのですが、時折登場する「正気度」が絡むイベントやマリファナの存在、逃亡するポーター、雇用人たちの叛乱などなど暗い淵がところどころに仕掛けられているのです。旅を続けているうちにいかに健康的な行動を行っていても、だんだんと健康とともに正気度が損なわれていく展開に震えました。
最大のイベントであるはずの「噂」の正体についても、プレイヤーに利益をもたらすものよりもむしろ不利益をもたらすようなイベントのほうが多いようにも思うのですが、それでもマップ上に「噂」が登場した際には、追っかけずにはいられなくなります。まさに「闇の奥」の世界といったところでしょうか。
プレイヤー間の競争要素は弱い
より多くのDPを得たプレイヤーが勝利者となるわけですが、プレイ中、プレイヤー間の競争要素はさほど多くはありません。自分のスポンサーにより獲得を目指しているモノ(例えば今回の”我々”あれば、鉱山)を他のプレイヤーが獲得するとペナルティで”我々”はDPが失います。が、他プレイヤーを追い落とすために相手のペナルティを引き起こすような活動を積極的に行うにはゲームはランダム性が高く、こうした活動は効率的でありません。他プレイヤーのDPを積極的に下げるような活動は用意されていないのです(前述、「謙虚さ」「嫉妬」以外)。自分のDPを高めるように活動を行ったほうがよほど効率的に加点できます。
探検家同士の直接的な戦闘や、アイテムの奪い合いや、相手の持ち物を強奪するといったことはルールにはありません。そういう類の冒険ではないということなのでしょう。
チット運に左右される要素が大きく、作戦・戦略要素は弱い
探検家がいくエリアの地勢から河の流れ、探索で出会うイベントから場所、そのほか様々な事柄のほとんどはマーカーやチット引きによって決まります。マーカーやチット引きはたしかに多少、関連性はあるものの、ランダム性が高いため、「これを実現するたに、これをしよう」とか、「なにをするためにはこれをまずやると・・」といった作戦・戦略といったものがあまり成り立たないシステムになっています。
出発前の準備段階でどのアイテムを持っていくのかというのは多少作戦といえば作戦ですが、アレを捨ててこれを持って、というほど究極の選択が発生する訳でもないです。
全体としてはチット運に左右される要素が少なくないように感じます。
今回は3人プレイでしたが、いつかはフル人数である5人プレイまで試してみたいものです。マーカーやチットの数に限りがある以上、人数が増えればその引き方や確率なども変わってくるため、ゲームは違う様相を示すのかもしれません。
(完)