Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「BATTLEMIST」(Fantasy Fight Games)を対戦する

 

最近ユーロゲームづいているのですが、意図したものではありません。マルチプレイゲームとなるとユーロゲーム要素が多い作品が自ずと増えたといったところでしょうか。

今回プレイした作品は1998年に発売された「BATTLEMIST」(Fantasy Fight Games)というファンタジー世界を舞台にしたマルチプレイヤーズゲームです。

 

 

善悪中立の各エレメントをもった複数の種族が生息するファンタジー世界。プレイヤーは魔法を使うことができる種族の長となります(たぶん)。軍隊を集め、領土を広げ、生産力を高めます。町を興し、都市を発展させ、国力を増進させます。兵士を雇ったり町や都市を興したりするには資源が必要です。兵士や町・都市には維持コストも必要となります。六角形のタイルを組み合わせることにより構成されるマップには、平地・森林・山岳地帯があるのですが、地勢によって算出する資源が異なります。各兵種のバランスがとれた軍隊を整備するにはバランス良く資源を獲得できなければなりません。

国力増進・領土拡張の動きとは独立して、英雄ユニットを使ってクエストをこなしていきながら、モンスター討伐やアーティファクトを探索するというプレイが平行して実施されます。


プレイヤーが争うのは、自分の魔法力を表す「星」を獲得していくこと。
「星」を獲得するには、

  • 英雄キャラが行う「クエスト」の報酬として入手する
  • 資源を貯めて購入する
  • 他勢力を征服することで他勢力が集めた「星」を奪う。

といった方法があり、5個の「星」を集めたプレイヤーが勝者となります。



冒頭のマップ作成が最重要なプロセスだった

マップは六角形の大きなタイルをつなげて作っていきます。最初に各プレイヤーにランダムに複数枚の地形タイルと、自種族の本拠地を表すタイルが配られ、初期配置としてテーブル上に配置された3枚のタイルにつながるようにタイルを置いていきます。

 

このプロセスできちんと考えた配置をしていかないとプレイ内容に大きな影響を与えます。

タイルには、平地・森林・山岳・荒地があるのですが出現頻度が順に小さくなり、またそこから得られる資源の種類が異なります。順に食料・木材・鉄が得られる資源となり、荒地は不毛の地となります。各資源は兵の募集と維持、町や都市の建設と維持に必要となります。出現頻度が低い「山岳」から獲得できる「鉄」が資源としては最も価値があるものになります。一方「鉄」は町や都市の建設と維持、騎兵の雇用と維持に必要となります。

 

タイルの配置にはいくつかのルールがあるのですが、中でも各タイルの辺それぞれにつけられた4色いずれかのマーキングに合う辺にしかタイルを配置することできないというルールが最も影響が大きいものになります。好き勝手に並べることができないです。

 

本拠地が守りやすい場所にあること、それぞれの種類の地形にまんべんなく近い場所にあること、可能であれば他プレイヤーの本拠地から遠い後背地を抱えていると理想的です。
タイルを順番に配置する関係から、どのタイミングで本拠地を決めるのか、仮に良い地形を創出しても他プレイヤーの本拠地が先に配置されてしまうと元も子もありませんから。

 

プレイを開始してはっきりわかるのですが、マップを作り、本拠地を定めるという一連の過程はゲームの勝敗に大きく関係します。

 

写真では紺色に見えるタイルが「山岳」、濃い緑が「森林」、通常の緑は「平地」。
右奥の赤枠タイルがドワーフ族の本拠地でした。

 

白熱する戦闘ルール

兵士には歩兵・弓兵・騎兵があります。兵の雇用と維持にはそれぞれ必要となる資源があるのですが、歩兵<弓兵<騎兵の順に必要コストが増大します。特に騎兵の雇用と維持には産出量が少ない「鉄」が必要となります。

各タイルに配置できる戦力は3つの兵種合計で10戦力。1回の戦闘に参加できる戦力は最大 歩兵3、弓兵2、騎兵2となります。

戦闘ルールはそれなりに凝っていて、まず弓兵の射撃、騎兵による戦闘、歩兵による戦闘をそれぞれ実施し1回の戦闘ラウンドになります。弓兵や騎兵がいない歩兵だけの部隊の場合、弓兵射撃や騎兵戦闘に対しては一方的に損害を受けることになります。逆に、弓兵だけ・騎兵だけという部隊は許されず、かならず歩兵が部隊に含まれる必要があります。と、効率的に戦闘を進めるには3兵科バランスよく配置された諸兵科連合タイプの部隊が有利となっています。

3兵種の威力は6つの種族によってそれぞれ異なります。例えば、エルフ族は弓兵射撃が得意(相手ユニットを敗走させたり除去したりする確率が高い)です。
1回戦闘がはじまると途中の退却はなく、どちらかが全滅するまで続けます。



話が前後しますが、エルフ、ドワーフ、騎士(人間)、オーク、などなどと3つのエレメントに属する6つの種族が登場します。エレメント同士の対立やエレメントが同じであれば友好関係にあるといったルールもないため、エレメント自体の効果はあまりありません。6つの種族はそれぞれ特徴・特殊能力・兵種毎の強さなど細かく設定されています。

 

魔法とモンスター

魔法は各プレイヤーの「星」を使うことにより発動できます。特定の資源を獲得する、戦闘時に効果など複数のものが用意されています。使った「星」は次のターンに復活するため、毎ターン自分が持っている「星」分の魔法を使うのが効率的と言えるでしょう。

 

町と都市の建設

タイル上に町や都市が建設されるとその土地から得られる資源量は倍になります。町や都市の建設、さらに維持にはコストが生じます。町からさらに建設コストを支払うと都市になるのですが、町と都市とではその土地での防御戦闘が起きたときの防御効果が異なります。また森に都市を建設できるのはエルフ族のみ、同様に山に都市を建設できるのはドワーフ族のみになります。

 

英雄とクエス

ここまで書いたマップ上の支配を巡るシステムの他、英雄とクエストがルールとして組み込まれています。英雄はコストを払うことで配置できるのですが、別途用意されたクエストカードの指示に従い、マップ上を自由に(その土地がどの勢力の支配下におかれているか気にすることなく)移動していく、一種の”おつかい”ゲームになっています。クエストカードによっては行き先でモンスター討伐を行うことになり、また運が良ければ「星」を獲得することができます。

あとにも書いていますが、この英雄とクエストのシステムが、タイルを巡る土地の争奪のシステムと遊離していているように感じました。



プレイしてみた

担当はランダムにカードを引き、ドワーフ族に決定。ドワーフ族の特殊能力としては、「山岳」の地形に都市を建設できること。他の種族は「山岳」のタイルにはいると即移動終了なのですが、ドワーフは踏破できます。いずれも「山岳」タイルの出現頻度が低いだけに機会が少ないかもしれません。

兵の強さも種族によって異なるのですが、ドワーフは普通でしょうか(例えば、エルフ族は弓兵が他種族に比べて強いなど特色がある)。

「星」の獲得手段としては資源を貯めて購入することができる(ただし購入価額は保有する「星」の数によりコストが増加する)ことを考えると、一定の土地を確保できれば、あまり他勢力と争わずにいたほうがよいと判断しました。

隣接したエルフ族と緩く友好関係を結びつつ、後背地を含めエリアをしっかり確保します。平地が多いため「食料」の調達は良いのですが、「木材」と「鉄」はそれぞれ1エリアしかないため多くはないです。

兵士ユニットとは別に「英雄」ユニットも雇用します。「英雄」は兵士たちとは全く別に、クエストカードとして与えられる情報に沿って、全土を探索するのです。「英雄」は敵プレイヤーがいるエリアでも問題なく入ったり通過したりできます。

エルフ族がオーク族、人間族が悪魔族と全面的な戦争にはいる中、国力の増強(蓄財)に励みます。オーク族は種族の特殊能力により荒地より兵士を生み出すことができるのですが、本拠地近くに「山岳」がなかったことから、「鉄」の確保量が最低限(本拠地からの確保と、魔法を使った資源採取)になったこと、隣国エルフ族との戦闘発生エリアがエルフ族が得意とする「森」地形だったことなどから、エルフ族に

 

終了時の状況。
青色ユニットは人類(騎士)、赤色がドワーフ族、黄色がエルフ族。


感想戦

コンポーネントは古いです。マーカーやユニットはもっとわかりやすく、使い勝手よくすることができそうです。各種族の兵士マーカーは兵種毎にあるのですが、この区別がつきづらい。

自勢力の生産力・維持コストなども毎回計算するのは面倒なので(特に後半、兵士がかなりの数になり、マップ上のあちこちに分散されて配置されるようになった時)、それらを表すプレイヤーカードのようなものがあったほうがよいでしょう。

 

一度形勢が傾き始めると大逆転は難しい?

地形・地勢により自分の本拠地の近くに他プレイヤーから干渉を受けにくい後背地を大きく確保できていて(+バランス良く資源が確保できていて)、序盤にそれらの土地を領土とすることにより、経済は安定し、多くの軍勢を雇うことができます。いずれかのプレイヤーがそこまでいくと、なかなか他勢力が大勢を挽回することは難しいシステムに感じました。

戦闘システムも一度の戦闘に参加させることができるユニット数に上限があるため、一見バランスが取れているように見えても、どちらかが全滅するまで戦闘が続くというルールにより、結局予備部隊を多く抱えたほうが有理です(ひとつのエリアのスタック制限が最大10戦力という上限はありますが)。

兵士の雇用にそれなりにコストを要するため、一度戦闘に敗北すると再建するのにそれなりの時間とコストを要するのです。いずれかの勢力が頭抜けた状態にならないようにお互いに牽制して出る杭は打たれる方式でいくことになるでしょう。

 

最初のマップ作成と自勢力の本拠地の場所取りは非常に重要になります。プレイ開始前から息が抜けないゲームといっていいかもしれません。

 

英雄とクエストは、「星」を獲得する手段のひとつではありますが、領土争いとは隔離された状況で行われれうことから、ゲームから遊離しているように感じました。

(了)