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「沖縄の落日」(ゲームジャーナル)を対戦する(3/3)

沖縄戦の陸戦を中心に、日米両軍の主力が激突した南部の戦いを首里防衛線が崩壊するあたりまでを扱ったゲームジャーナル誌の「沖縄の落日」を対戦した。

 

 

 

日本軍を担当した。

12ターンフルターンで戦い抜いたが最終的なVPでアメリカ軍に水をあけられた。
10ターン目あたりで首里防衛線は突破されていたので、その気になればアメリカ軍は那覇に突入したことだろう。ゲーム内では勝利条件の設定からアメリカ軍は那覇に向かうメリットはなく、むしろ勝利ポイントの獲得のため東海岸側に残るVPマーカーが配置されている制高点や陣地エリアに向かった。
事ここに至って、ゲームの中の第32軍は、首里那覇を捨て絶望的な持久戦を継続するために南部撤退を実施するといったところだ。

日本軍は「義烈空挺隊」による飛行場突入は発生したがVPを獲得するだけだ。史実でもそうだったように陸戦の戦局にはなんら影響を与えない。
日本軍による「攻勢命令」は発生しなかった。総攻撃にあたって日本軍に特別なダイス修正などが付加される訳でもなく、日本軍の思うタイミングで攻撃が発生する訳ではないので、タイミングによっては史実と同様に攻勢を行うことでかえって損害を増すことになるだろう。「攻勢命令」チットがドローされ、八原参謀の反対意見が通らなかった場合には総攻撃が発生するのだが、その時に備え「夜襲」チットを手元に残していた。「夜襲」チットを使うと日本軍は射撃戦無しでいきなり白兵戦を仕掛けることができるようになる。ただおそらくアメリカ軍側には「照明弾」チットがあって、阻止されただろう・・。
ついでに言うと「大和特攻」も発生しなかった。発生したとしてもVPの獲得のみで、陸戦には影響を与えないのは、他の海空戦のチットと同様だ。
 
チットのドローについてはここまでも書いてきたとおり、史実要素を考慮すればいたしかたない内容なのだが、補充がほぼ効かない分、日本軍が不利に見えた。ただチットの適用については、ルール解釈の誤りがあったので是正すればもう少し日本軍の不利は解消されるかもしれない。
また支援部隊チットは、一時に使うのではなく出し惜しみをしながら使うのがよいかもしれないが、日本軍のマップ上に展開しているユニットは強くないため、悩ましい。

本ゲームに関する1本目の記事(リンクは上のほうにある)について、アメリカ軍のチットの使い方を誤っていたと思われるため、内容を修正している。

前記事にも書いたとおり特に日本軍のチットについてはひとつひとつその選定や内容について(それぞれシリアスな内容を含んだものだが)、興味深かった。
それだけに、実際に首里防衛線が突破された際には、「もはや、ここまで・・」と実際の日本軍がそうであったように嘆息が漏れた。

本ゲームの場合、ゲームの外見、第一印象ではチットプルによりイベントが多数発生するような演出が施されたゲーム性重視のゲームのように見えていたため、実際のプレイ感としては少々意外な感じも受けた。

沖縄戦はやはり、通常のゲームとは異なる”気持ち”がはいってしまうなと思う。
外国人視点での沖縄戦を体験するため、2022年秋のゲームマーケットで未使用中古品として入手したWAR GAMER誌付録の「OKINAWA」(コマンドマガジンの付録にもなった)を試してみようかと思う。

 

おまけ

初期配置。マップ右端に嘉手納の街がある。日本名、中飛行場のちの嘉手納飛行場だ。
カーキ色の軍がアメリカ軍、茶色が日本軍。最初の3ターンは日本軍は最前線にいる大隊(賀谷支隊)だけが移動できる。

 

第2ターン終了時。アメリカ軍は1ターンに1個ずつVPマーカーを獲得していけばよいのでむやみに戦線をひろげず、2箇所程度に攻撃を集中している。日本軍はまだ善戦していて、一度では陥落しない陣地もあり、第2ターン辺りでは陸戦にてVPを獲得していた。
アメリカ軍部隊が東海岸まで突き抜け(マップ下方向)、日本軍陣地を大きく包囲しようとしている。日本軍のほとんどの部隊は移動制限により、移動することはできない。

 

第3ターン先攻。アメリカ軍の戦闘爆撃機の攻撃により日本軍の守備隊が1箇所吹っ飛んでいるが、これはルール適用誤り(後でわかった)。陣地は航空攻撃にも強い。
各陣地で双方のチットを用いた応酬が続く、「戦闘工兵」と「コマンダー」がペアになっていると日本軍としては「狙撃兵」を無効化された上で陣地の地形効果も無効化されるためどうしようもなくなる。

 

第3ターン後半。1箇所ずつ陣地を落とされ、それに伴いだんだんと戦線が後退していく。日本軍の陣地間の間隙にアメリカ軍部隊により侵入され、包囲される陣地がでてきた。戦闘結果がただの後退であっても除去されることになるため、日本軍の損害が倍増し始める。

 

第4ターン先攻。まだ日本軍の後続部隊は移動制限があり移動できていない。
日本軍も後方の陣地は構築中のところが多く、「建設工兵」チットとスタックしなければ陣地とは扱われない。支援部隊チットの数も少なくなりつつあり、日本軍のジリ貧が垣間見えるようになる。
日本軍の「県民防衛隊」が防衛する拠点を、アメリカ軍の「火炎放射器」装備の部隊が白兵戦で除去するという、考えてみると陰惨な戦闘が発生したのもこのあたり。

 

第10ターンあたり。アメリカ軍の先鋒は西海岸側で日本軍の陣地を抜いた。那覇まで遮る有力な日本軍部隊も陣地もない。

東海岸側の防衛拠点の部隊は後方を遮断される前に南部へ脱出を図るべし、と撤退命令が出る頃(このゲームの中では、勝利条件のため、そのようなムーブは発生しないが)。

後半ターンになると日本軍が陸戦で勝利をする確率はますます減り、日本軍のVPは「菊水作戦」などの海空戦で得ているだけになっていた。

 

最終ターン頃。毎ターン陸続と増援が登場するアメリカ軍に比べると、日本軍の増援は後半ターンに1個中隊ずつ登場するくらいで焼け石に水状態。チットについては本文中にも書いたとおりの状態なので戦力差は毎ターン確実に開いていく状態になる。
振り返ってみてもう少しやりようはあったのかもしれないが、この補充能力の差はいかんともしがたいようにも思う。

 

ゲームとしてはコンパクトな部類ながら、いろいろ考えさせられることが多かったという意味で評価したい。

 

最後に対戦いただいたかみさんの記事のリンクを張っておきます。
アメリカ軍からの視点と洞察が参考になります。AARの内容が相違しているのは、当方がきちんとメモをとっていなかったための誤りですのでご了承ください。


義烈空挺隊の生き残りの兵1名が最後にたどりついたという残波岬に居た猫。野良猫がたくさんいた。

第32軍司令部が最後に位置した摩文仁の丘から南の海を臨む。季節は同じ6月の海と空。

 

 

(了)