Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「歴史群像 177号(2023/2)」を読む

 

 

第1特集は「太平洋戦争時の日本巡洋艦

第1次世界大戦後の軍縮時代から第2次世界大戦に至る重巡洋艦軽巡洋艦がどのような構想のもとに整備されていったのかを辿っていく。条約規制下でも他国に遜色ない戦力を揃えるように様々な工夫をこらして建造されていった重巡洋艦に対して、軽巡洋艦は5500トンクラス以降ながらく停滞した(手が回らなかった?)。全体には目新しい内容ではなかった。

第2特集は、「戦国大名徳川氏の勃興」

大河ドラマにあわせた特集。承久の乱まで遡り後に室町幕府を打ち立てる足利一族が多く領地を持った三河は、大河ドラマ太平記」でも足利一族の本拠地として大きくとりあげられていたが、その足利一族の国であった三河で勃興したのが松平氏だと説き起こす。
記事の後半はこの後の大河ドラマでもとりあげられるであろう、家康による三河一向一揆の鎮圧から三河平定までが扱われる。が、いかんせん個人的に興味がそそられる内容ではなかった。

 

今号の記事の中で読み応えがあったのが次の3本

■ 戦後日本戦車発達史

戦後の日本戦車の変遷を、貸与戦車時代から61式、74式、90式、10式といった国産戦車の設計思想やその時々の政治情勢・国際情勢または軍事技術がどのように考慮され取り入れられたのか、一連の経緯をたどる。
旧軍時代の四式中戦車・五式中戦車の設計思想や仕様要件が、61式や中には74式戦車の仕様として生きていたという点は興味深かった。

またこの記事にあわせて、巻頭カラーページの「61式戦車 迷彩試作記」は、迷彩塗装の研究を行った当時の自衛官の手記。色の選択、迷彩パターンひとつをとってもストーリーあり、という内容であった。

陸上自衛隊再軍備にあたってはじめて試作開発を行った装甲戦闘車両である、60式自走106ミリ無反動砲の記事もよかった。

 

■ WWⅡ 歩兵携行式対戦車兵器

本誌中央カラーページは、第2次世界大戦時の各国が用いた歩兵携帯対戦車兵器の写真をカラー化した。個々の兵器の説明は多くはなかったが、百聞は一見にしかずの言葉通り、カラー化された諸写真が雄弁に語る内容であった。特にイギリス軍が用いた、PIATや、ドイツ軍版バズーカ砲のパンツァーシュレックの写真は珍しかった。

 

フランコ

山崎雅弘氏の記事でスペインのフランコ将軍を扱った記事もよかった。スペイン内戦から戦後までの一連のスペイン近代現代史をたどる内容であった。

注目は、スペイン内戦であれだけドイツ軍やイタリア軍の支援を受けたはずのフランコ政権が、第2次世界大戦においてなぜ枢軸側での参戦をおこなわなかったのかという部分。日独伊の三国同盟に参加する寸前までいっていて取りやめになったという。

スペイン人義勇兵で構成されたドイツ第250師団(通称:「青」師団)も少し触れられる。

 

 

戦後日本戦車のうち、74式戦車までを扱うことができるのは、ツクダの「パットン」。60式自走無反動砲も登場する。
90式戦車と10式戦車が登場するゲームはなかなか見当たらなかったりする。

 

試作で終わった旧軍時代の四式中戦車、五式中戦車が登場するのは、同じツクダの「九七式中戦車

 

 歩兵用携行兵器が登場するのは「スコードリーダー」シリーズ。ドイツ軍のパンツァーファウスト、パンツァーシュレックアメリカ軍のバズーカー、イギリス軍のPIATまでユニット化されていた。
アドバンスドスコードリーダー(ASL)になると使い捨てのパンツァーファウストのユニットは廃止されてしまった(使用する前に歩兵分隊が所有しているかどうかのチェックを行った上で、使う)。

写真はASLシリーズに登場するバズーカ砲ユニット。

 

 

「GUADALAHARA」はスペイン内戦のグアダラハラの戦いを扱った作品。
フランコ率いるナショナリスト党を支援したイタリアが全面的に義勇兵を送り込むが、マドリッドの手前で敗北してしまうという戦い。

 

 アバロンヒル第三帝国」では、IFシチュエーションをチットで決めるという選択ルールがあるが、その中で枢軸軍側に用意された10種類のIFシチュエーションのひとつが、スペインが枢軸側に立って参戦するというもの。戦力的にはたいしたことはないが、なによりもイベリア半島が枢軸側になることで地続きであるイギリス領ジブラルタが危機に陥るのは必定。

 

 MMP(GAMERS)「BLACK WEDNESDAY」は、レニングラード近郊でのスペイン「青」師団の戦闘を扱ったTCS作品。残念ながら、積みゲー状態だ。

 

 

 

歴史群像 2023年2月号 [雑誌]

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