Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム

「ミリタリークラシックス 69号」(イカロス出版)を読む

 

 

第1特集は、ヤークトパンターとⅣ号駆逐戦車。

ヤークトパンターのような人気兵器だと毎度のように特集にとりあげられているイメージがあったのですが、調べてみると、Vol.27での「ドイツ駆逐戦車特集」以来の模様。実に10年ぶりの特集です。最近だと特集のテーマは例えばヤークトティーガー、ヘッツアーといった種類別になっているようで直近で、ドイツの自走砲がとりあげられているのは、Vol.60の「エレファント/ヤークトティーガー」ということのようです。それでも2年と少しぶりということになります。

今回はⅣ号駆逐戦車もあわせてフィーチャーされている点も良かったですね。
Ⅳ号駆逐戦車は、生産台数が多いⅢ号突撃砲と最強車両のひとつであるヤークトパンターの間に挟まれて微妙に目立たないイメージもあるのですが、車体サイズの割に車高が低くぺっちゃりとしたスタイルは好きです。

ミリタリー・クラシックスの記事はその車両のスペック厨的なアプローチだったり、開発経緯や戦歴といったストーリーとしてのアプローチだけではなく、編成・運用・戦術といった実務的な部分も含めて定型的にきっちりと抑えてくるので、後から参照する資料的な点でも価値が高いと常々感じています。記事がストーリー的なアプローチになっていることが多い「歴史群像」やその他の歴史・戦史雑誌との差別化ができているように思います。もちろんストーリー的アプローチの「歴史群像」も十二分に楽しませてもらっていますが。

今回の内容でいうと、やはり戦争の最終盤に登場した兵器だけに、制空権がなく数的な劣勢で守勢に回ることが多い状況下で、組織的な運用部分や戦術といった記事は興味深いものがあります。
また冒頭カラーベージにある塗装・マーキングのページに、1945年5月に放棄されていた車体の塗装、工場からの引き渡し直前だった車体の塗装なども紹介されていて、末期戦の雰囲気いっぱいな点もよかったです。
小林源文の「黒騎士物語」でも工場から直接、車両を受領するようなシーンがあったような(現物が失われているので記憶があいまいですが)。

 

第1特集を語りすぎましたが、新味という意味では第2特集のほうが興味深いものがありました。
テーマはイギリスの航空母艦アークロイヤル」。
航空母艦というと日本の各艦がフィーチャーされることが多く、ここ数年、アメリカ艦が注目され、ついにイギリス艦となったわけですが、これもみな「艦これ」のおかげですね。

建艦思想・設計思想が日本ともアメリカとも異なるなか、どのような艦でどのような戦歴だったのかを仔細に扱われているのは非常に興味深いです。
日米の艦上機を見ているとどうしても二線級のように見えてしまうイギリスの艦上機は特徴があってこれまた味がある機体が多いですね。
馴染みが薄い地中海戦域での戦いはイタリア視点での記事はあっても、イギリス視点での記事はまだまだ少ない。読み応えがあります。

 

こがしゅうとのイラストエッセイはアメリカ軍が誇るバズーカがとりあげられます。歩兵携行の対戦車兵器として散々お世話になっているものです。
驚いたのですが、初期のバズーカは発火装置が乾電池で動いていたんですね。またそのため、高温多湿の南方では乾電池の性能劣化が激しく、補給能力が弱い日本軍では運用できなかっただろうという示唆も面白かったです。

紫電改を装備し末期本土防空戦で名を残す第343海軍航空隊の機体塗装、マーキングに関する記事も読み応えがありました。生存する証言者が少なくなる中、写真や過去の証言を突き合わせしながら、搭乗員ごとの違いなどにも踏み込んだ記事には頭が下がります。

他にも、第1次世界大戦時のドイツ巡洋艦エムデン、シチリア島の戦いにおけるイタリア戦車、日本が輸入したメッサーシュミットMe210(頭でっかちの双発機)の話、連載記事「海外から見た日本艦」は5500トン級軽巡洋艦(古めかしい形状ながら戦没位置が太平洋中に散らばっているところからも使い勝手の良さが伺える)、「人物列伝」は南太平洋海戦で勝利しながらも最後はテニアンで戦死する角田覚治中将、第二次世界大戦時のトルコ、終戦時の厚木航空隊での叛乱(未遂?)、また陸軍の航空機輸送艦「特TL型」の記事なども非常に珍しいです。

十分に堪能できる号でした。

 

MILITARY CLASSICS (ミリタリー クラシックス) 2020年6月号
 
MILITARY CLASSICS (ミリタリー クラシックス) 2019年9月号