Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム

「歴史群像 162号(2020/8)」を読む(本誌分)

歴史群像162号。
このところ夏の号ではボードゲームが付録として付けられる事が恒例化している。
付録ゲームのほうはプレイ後に別途書くとして、今回は雑誌本体を見ていく。

 

カラーページが面白い。

カラーページ冒頭は志布志湾本土決戦準備」
1945年秋に予定されていたアメリカ軍による南九州上陸の一番の候補地であった志布志湾に構築された防御陣地と想定されていた作戦概要を日本軍視点で書かれた。
震洋・回天の特攻兵器による攻撃に始まり、重砲によって密に構築された火線網、水際陣地とその作戦、後置された逆襲用の装甲部隊・・等々。
アメリカ軍の上陸地点をしっかりと読み切っていた(ウィキによれば日付含め読み切っていたと書いてある)という一方、対戦車兵器の不足から対戦車戦闘は基本、爆雷を抱えた肉弾戦が想定されていたという点や、練度の不足から地形を利用した後方での戦闘は無理と、水際での作戦遂行が想定されていたといった実態も含め、つくづくここで留めておけてよかったという思いを強くした。

「94式軽装甲車」の記事では、豆戦車というにはさらに弱体なこの車両が、日本軍が想定していたある作戦に用いるために設計されたと紹介している。欧米の軍にはない日本軍ならではの特殊な事情と想定作戦に少々複雑な思いをいだいてしまう。

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ASLに登場する同車両。
軽機関銃クラスの機銃装備の砲塔。一人砲塔なので砲塔の回転速度は遅く、車長が砲塔上に露出している場合は機関銃の射撃は不可。機関銃の機械的信頼性はやや劣る。車体サイズは”very small”。装甲は無きに等しい。被破壊時の操作班生存可能性は高くない。不整地走行性能にやや問題あり、といった性能。
といった情報がユニットカウンタ上から読み取れるというASLの車輌ユニットの様式美。凄まじい情報量(操作班の生存可能性の情報だけはユニット裏面に記載)。
軽機関銃1丁程度の火力で、装甲も期待できないとなると、前線ではなかなか使いようがない装甲車両。

 

 

付録ゲームにあわせてか「ウォーゲームの歴史」ということで兵棋演習などにはじまったウォーゲームの古代からの歴史の紹介記事も面白い。
GMTの「ネクストウォー」シリーズが海兵隊の学校で使われたという写真が紹介されている。

 

第1特集はキスカ島撤退作戦」

時系列を言うとアリューシャン攻略としてアッツ・キスカ島の占領は1942年6月。
翌1943年5月にアッツ島玉砕。7月までに実施されたのがキスカ島からの撤収作戦。
夏でも天候が変わりやすい北太平洋島嶼においていかにして作戦は遂行されたのか?詳細に語られる。
ただ当初の島の占領自体が作戦目的が見えづらく、悪手だという思いは拭えず、そうなると撤退作戦も、いかに”奇跡”だったと言っても、そもそものマイナス分をややゼロのほうに戻しただけに見える。
ミッドウェイ戦がうまくいった場合は、アリューシャン攻略後に違った展開があったのだろうか? (過去号に掲載されていそうなので後で探してみよう)。

第2特集はネプチューン作戦」

ノルマンディー上陸作戦における海上作戦全般、艦砲射撃、輸送、補給等々の全てを統括した作戦名らしい(対する地上作戦がオーバーロード作戦)。
大規模上陸作戦はすでに北アフリカ、シシリー島と経験してきていたとはいいながらも、物量・兵站などを考慮するとどれほどの計画、また実施にあたっての管理・運営だったのか、と実施陣容や労力なども非常に気になる。

他にも、立見尚文伝」桑名藩藩士として戊辰戦争を戦い、その後日清・日露戦争で活躍する、司馬遼太郎の「坂の上の雲」では賊藩の出身だったため軍司令官にはなれなかったが稀代の戦上手として印象深く描かれていた人物を、一次資料を元に描いた。

また戦国大名の軍隊は兵種別編成だったのか?」という記事は、ゲーマー視点で大変興味深い。

 

 

歴史群像 2020年8月号 [雑誌]

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  • 発売日: 2020/07/06
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