Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム -

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大河ドラマ「太平記」14話「秋霧」:かつての想い人との7年ぶりの再会に何を思うか?

前回までのあらすじ

後醍醐天皇が籠もっていた笠置山が落城。
京都に戻った足利高氏北畠顕家後藤久美子)の訪問を受ける。
顕家の依頼に応じて会った北畠親房近藤正臣)は高氏に対して、後醍醐天皇が暗殺などに遭わぬよう守って欲しいと頼んできた。

高氏のかつての腹心、一色右馬介大地康雄)は伊賀に攻め入る足利軍の先駆けとして情報収集や地元豪族の懐柔工作を続ける一方、具足師柳斉として藤夜叉(宮沢りえ)とその子不知哉丸が暮らす里へも通っていた。
その右馬介に対して、田楽一座の花夜叉(樋口可南子)は、伊賀に落ちてくる楠木正成武田鉄矢)を助けるように高氏に伝えて欲しいと頼んでくる。

楠木一党500人が籠城する赤坂城では1ヶ月を超える攻防の後、兵糧・矢などが尽き、これ以上の抵抗は不可能と開城する。楠木正成は自らの戦死を偽装した上で、農民に身をやつし、”石”(柳葉敏郎)の案内で伊賀に落ち延びようとしていた。

 

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伊賀始末

赤坂城が落城した時点では足利軍はまだ伊賀から河内への進軍中であったが、落城によりその役割は城攻め・包囲から、残党狩り、謀反側の武将や公卿達の落人捕縛に役割が変わることとなった。
殿、無念でござりまする。我が軍は矢を一本も射たずして鎌倉に帰らねばなりませぬ。
帝の兵には矢を射たないという高氏の意を汲んでか、高師直柄本明)は言葉とは裏腹にしてやったりという表情で言上する。

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「まだ落人狩りが残っておる。油断いたすな。その書状にある通り、このまま伊賀を突っ切る。」

高氏が休憩のためにはいった寺の講堂には頭巾で顔を隠した右馬介が忍んでおり、伊賀周辺の豪族対策が終わっていることを、高氏に報告する。
「・・後は、楠木一族の始末だけでござりまする」
「やはり、伊賀に落ちて参ると思うか。・・大佛殿は伊賀の道道に関所を作り取り締まれをいたせと申してきておる。捕らえ次第、首をはねよ、と。
此度の我が軍は北条の縁者も多く、見逃すわけにはいくまい。楠木殿が伊賀に逃げてこないことを祈るだけじゃ。ワシは伊賀なんかに来るのではなかった。」
「やはりお気にかかりまするか?藤夜叉殿のご様子が・・。この山をひとつ超えた里に藤夜叉殿が・・」
「申すな。・・この7年、そちを頼りに、心に置かぬよう、思わぬよう、己に強いてきた。ところが、鎌倉を出てから日に日にそれがかなわぬようになってきたのじゃ。・・この伊賀の里に、まだ見ぬ我が子がいると・・こうして伊賀に来るとは・・
「さほどにお気にならさるのであれば、いっそお会いなされますか?」
会うてみたい、会うてみたいが、さすれば母子とも白日の元にさらすことになろう。・・この先、ワシの身に何事か起ころうとも、無縁の者なれば誰も手出しはせず、穏やかに生き延びていけよう。会うて名乗ればそうはいかぬ。・・違うか?右馬介」

落ち武者狩り

赤坂城落城の4日後、伊賀の藤夜叉達の里に”石”(柳葉敏郎)と楠木正成武田鉄矢)が落ち延びてくる。

花夜叉は正成の妹、卯木として助力を申し出るが、正成は一度勝手に出奔した妹に関わることはできないと断る。花夜叉は、一座が世話になっている地場の豪族服部小六より正成の支援を命じられており、その命に従い、正成を支援すると申し入れ、ようやく正成は同意する。

楠木正成と花夜叉が兄妹であったという設定はたしか原作由来のものだが、ここまでのドラマの中では1、2回少しだけ触れられたことがあるだけだったので、若干とってつけた感がある。原作では、卯木の夫も登場しており、日野俊基の活動や逃亡に関わる市井の人々代表としてけっこう筆が割かれているのだが、そうしたパートはなく、妹設定だけが残った印象だ(今回原作の再チェックは未済)。

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その夜、足利軍の陣に、北条軍から使者として土肥佐渡前司(大塚周夫)が遣わされてくる。楠木正成らしきものを追い込み、ちょうど足利軍が駐屯している山間に追い込んだと言い、木戸を設け山への出入りを厳しく詮議し、さらには山間に散在する里の家々をひとつひとつ調べるべしと言う。土肥の部隊も同道すると高氏に伝える。

土肥役の大塚周夫は俳優業よりも声優として有名な方ですね。*1
土肥佐渡前司は「太平記」の中で、遠征軍の侍のひとりとして名前があがっている模様だが不詳だ。(宿題)

 翌朝、早朝家々ひとつひとつの検分がはじまり、農民達は小屋から外に引き出される。
その騒ぎは山向うの藤夜叉のところにも伝え来る。

”石”は、身をやつした楠木正成を一座に加えた花夜叉一座に同道するべく出立しようとするが、藤夜叉が止める。
”石”は、楠木正成が幕府を倒せば日野俊基が言っていた良き世の中になるのだ。そのためにもここで楠木様をお助けしなければならない!、と藤夜叉に言うが、藤夜叉は納得しない。
・・せっかく行きて帰ってきたのに、そんな先の事、どうでもいいから!
「放せ。・・お主とは夫婦でもなし、ワシが何をしようが、どこで死のうが勝手だろう。ワシラ、赤の他人の兄妹ぞ。・・つつがのう暮らせ」
「石!」一人残される藤夜叉。

 愁嘆場にふらりと現れる柳斉こと右馬介。
「石殿は一座といっしょにお立ちかの?無謀なことを。この辺りは幕府の兵で囲まれているというのに」
「つかまりますか?」
「わかりませぬが、楠木殿と共に捕らえられれば命はない。さりとて、あの勢いでは止めようもない。」
足利高氏様にお願いすれば救うていただけますか?お願いでございます。足利高氏様に会わせていただけませぬか。

再会

部隊を進めながら付近の村々の検分を進めていく高氏の元に、右馬介が馬を飛ばしてくる。
「この辺りの里には楠木の残党は見当たりませぬ。このまま北へお進みください。」
「これから先はそちに道案内を頼む。先駆けせよ。」

途中、右馬介が高氏に言う。
「このさきはしばらく人里がござりまする。ここは湧き水のうまい里でござります。しばし休まれてはいかがか・・」
おそらくこの時には右馬介の計に乗るという示し合わせがあったのだろう。高氏は応じ、部隊には小休止が命じられる。
中軍に位置した高師直柄本明)が
「何故、このようなところで、飯時には早かろう?」
と首を捻っていたところを見ると、彼にも真意は伝えられてなかったものと思われる。

右馬介に案内された民家の前、ちゃんばら遊びの子供らを見る高氏。
「不知哉丸!」
子供追い家から出てきたのは藤夜叉。
「我ら通りすがりのもの、あれにおわすは我が主でござります。なにとぞ水を1杯いただけませぬか。」右馬介が藤夜叉に言う。
「水でよろしければ・・」

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藤夜叉が差し出した柄杓の水を口にした後、高氏が訊く。
「さきほどのお子はおもとのお子か?」
「はい」
「健やかなお子とお見受けしたが、はや7、8歳か?」
「7つになりまする。ああして戦のマネごとばかりして遊んでおります。大きくなったら武士になるのだと。
父親は戦で死んだ侍大将と小さい時から教えて育てました故、己もきっとそうなるのだと。困り果てております。」

「それがしになにかできることはござらぬか。通りすがりとは申せ、大事な水を頂戴いたした。」
「こたびの戦は大きな戦の前触れじゃと申すものがござります。真でござりましょうか?お願いでございます。これ以上、戦を大きくしないで。恐ろしいのです。戦があると皆変わってしまいます。皆離れていくのです。”石”も一座も、世の中を良くするためだと、皆怖い顔でいってしまいます。昔のように、のんびり、歌ったり踊ったり、皆親子や兄弟のように。そういうことがどんどん遠くなって・・。
この先、不知哉丸が大きくなってあの子まで戦に、もしそうなったら、もしそうなったら・・
今日も石は出かけてしまいました。楠木様を助けるのだと申しまして。楠木様がどれほど偉い御方なのか存じませぬ。でも私には兄妹の”石”のほうが大事なのです。幼い頃よりいっしょに育ったのです。乱暴ものですが、心根は優しい者です。
もし楠木様といっしょに捕らえられても、どうかお力をもって命だけは・・
どうか”石”を・・。どうか”石”をわたしのところにお返しください・・。この通りです・・。」
「落ち着いて、しかと申されよ。その”石”とやらは楠木殿といっしょにおられるのか?まだ遠くへは行かぬか?・・おもとが大切に思うておるものか?」
「はい」
「わかった。及ばずながら力になろうぞ」

そこへ楠木正成らしい人物を関で検分中との事を伝える急使が来る。
「ん、すぐ参る。」
最後にもう1杯水を飲み、柄杓は藤夜叉に返される。
「案ずるな。・・馳走になった。お子を戦に出されぬよう。大事になされ。御身も身体をいとわれよ。」
「御殿も・・」

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高氏は去る。

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感想

赤坂城落城後の残党狩りを遠景にして、叙情的なストーリーメインで展開するという、歴史を描いてきた大河ドラマとしても珍しいのではないかと思われるエピソード。エピソード中、半分弱の尺を投じて描かれた後半のシーンが出色!・・となったか?

7年振りにかつての想い人に会うという時、人はどう反応するのだろう。
ある種ベタな、一歩間違うと三文ドラマに陥ってしまう、でもそれだけに脚本にしても演出にしても挑み甲斐がありそうなテーマではないか?

男はかつての想い人に会ってみたいという。また会うことが叶わなかった自分の子を見たいという。ただそれによって母子を大事に巻き込むことには慎重でいる。
女のほうが男に会うのは、男が権力を持つ人物だから。自分の大事な人を助けて欲しい、とそれだけを願い、依頼してくる。

脚本はやはり男性脚本家のためか男性寄りの視点。演技演出は宮沢りえが最初の頃の硬さはとれているものの上手くはないわなぁ・・。
せっかくの高氏の思いや、再会にあたっての男女の思いの違いなどはさらりと見ていると残らない印象。

シーンで流れる劇伴はとても良い。
この後のドラマの中で高氏と藤夜叉が顔をあわせる機会はそれほど多くはないはずなので、聞ける機会も残り少ないということか・・。

藤夜叉役の宮沢りえは3話などの登場時点からすると演技はよくなっているのだが、柳葉敏郎と絡んだ二人だけのシーンになると、二人して上手くないのでどうも質が落ちて、陳腐に見えてならない。
柳葉敏郎の演技はどこまでいっても、柳葉敏郎にしかならないのはどうしたものか。というか、”石”の存在自体が不要なのではないかとさえ・・。

 

補足:ここまでのドラマの中での足利高氏佐々木道誉の関わり

佐々木道誉足利高氏にとって因縁の相手。敵であったり味方であったりとなにかと絡んでくる。前エピソードで佐々木道誉が久々に登場したが記述するのを漏らしていたため、前回の補足として、これまでのドラマの中での高氏と道誉との因縁についてまとめた。

  • 日野俊基が高氏に佐々木道誉を紹介する。
    道誉は高氏を酒宴に招きいれ、さんざん酔わせた上で女を紹介する
    高氏は藤夜叉と出会い、藤夜叉は高氏の子を身ごもる。(3話)
  • 道誉は、高氏が日野俊基と密会していたと幕府に密告する。
    高氏は六波羅や鎌倉の侍所の詮議を受けることとなる。(4話~6話)
  • 佐々木道誉は、高氏の詮議の場に証人として登場する
    道誉は言を翻し自分が見たのは別人だったと証言したため、高氏は保釈される。(5話)
  • 道誉は、花夜叉から藤夜叉が高氏の子を身ごもっていることを聞きつけ、そのまま藤夜叉を自分の鎌倉屋敷に軟禁する(6話~7話)
  • 北条高時主催の流鏑馬の席で、道誉は高氏に藤夜叉が高氏の子を身ごもっておりお望みなら引き合わせてやろう、と持ちかける。(6話)
  • 高氏は、道誉に言われた刻限に佐々木屋敷に向かうが、寸前、”石”と、一色右馬介の忍びチームが藤夜叉を佐々木屋敷より開放する。その後、佐々木屋敷では藤夜叉がいなくなったと大騒ぎとなる。(7話)。(翌日、藤夜叉は高氏との約束を違えて、”石”と共に伊賀へ落ちていく。)
  • 北条高時による、高氏・登子の婚儀を祝う田楽踊りの席で、道誉は高時や登子らの出席者のいる前で、高氏が花を手折って路傍に捨てたと暗に藤夜叉のことを言い立てる。(8話)

ここまでが高氏19歳から20歳の頃。以下は7年後で現在進行中だが高氏26~7歳といったところだろう。

  • 佐々木道誉鎌倉市中で長崎派による夜討ちに遭い、足利屋敷に庇護を求めてくる。高氏は道誉の求めに応じ、長崎屋敷までの護衛を引き受ける。(9話)
  • 京都北畠親房邸で道誉と会う。道誉は高氏の北畠邸訪問の真意の探りをいれ、「まだ早い」と言う。(13話)

 

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*1:チャールズ・ブロンソンなど洋画の吹き替え。息子の大塚明夫も声優、こちらはアナベル・ガトーなんかもやっているので父子そろって声が渋い。