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「歴史群像」175号(2022年10月)を読む

第1特集は「【冷戦期】NATO軍VS.ワルシャワ条約機構軍」。

第二次世界大戦終戦直後から1991年のソ連邦崩壊までを扱っており、両勢力の戦略の変遷が非常に面白い記事であった。

大戦直後は英米を中心とした西側連合軍に対して、ソ連軍との戦力差が大きく後のNATOとなる西側の戦略はドイツ全土を占領された後にライン河を起点に反撃を行うという内容であったというが、その「ライン河防衛戦」も兵力不足から張り子の虎状態であったという。
一方で東側も問題を抱えており、東部戦線におけるソ連軍の補給線を支えたのは実質レンドリースで提供されたアメリカ製のトラック群であったが、終戦により部品供給が止まった後は消耗してしまったという。ソ連自動車産業ではとうてい、ワルシャワ条約機構の進撃を支えるだけの力はなかったという・・。

 

 

西ドイツ軍が整備され最初は郷土防衛隊のような性格から、NATO軍の中核になるようになってくると、NATOの戦略方針も変化していく。最終期にはワルシャワ条約機構の侵攻軍を押し返した上でエルベ河を超えての東側領域への進撃まで検討するようになったという。

どうしても正面戦力であった戦車や航空機などの兵器に目がいってしまうが、NATOワルシャワ条約機構という点では、全く違った要素のほうが影響が大きかったのかもしれない。

今回の記事の中で特に印象的だったのは次のようなくだり。

1960年代後半からアメリカ軍の野戦砲兵が射撃データの計算にコンピューターを導入しはじめる一方、ソ連軍は「・・砲兵の中から特に優れた計算の名手を選抜育成して人力による計算で対抗しようと試みた」。初期の段階では人力計算による対抗策による計算速度はコンピュータにほぼ近かったらしい。ところが1970年代にはいるとこれらのコンピュータがデータリンク機能を持つようになり、さらに機器が小型軽量化していくともはやソ連にその格差を埋めることができなくなった・・という。

やがてゴルバチョフの時代、1986年に西欧侵攻計画の放棄を宣言(これは知らなかったなぁ)、その5年後ソ連邦の崩壊に至る。

 

ゲームとしては最近、80年代に起こったかもしれない第三次世界大戦ものの再販や発売が続いているなど、人気テーマだけに参考にできる記事であった。

 

 

https://www.compassgames.com/product/nato-designer-signature-edition/

 

https://www.compassgames.com/product/the-third-world-war-designer-signature-edition/

 

シナリオを見ると40年代・60年代・70年代・80年代と各時代毎のものが用意されているようであり、今回の記事にぴったりに見える。未プレイ。

 

 

第2特集は1944年10月の「台湾沖航空戦」。台風と夜陰にまぎれて、アメリカ軍機動部隊に航空総攻撃を行うが・・という内容。1944年6月のマリアナ沖海戦以降、もはや海と空で日本軍は実質的な力を失ったということだろう。大錯誤を起こすに至る経緯をたどる。

 

さすがに台湾沖航空戦のシナリオがついたゲームは見たこと無いなぁ・・。
太平洋戦域を扱ったキャンペーンゲームのイベントカードや、ワンチャン、エポックの「航空母艦」あたりにあったりして・・(うちの「航空母艦」は奥深くに収納されて現物を見つけられず・・

 

 

中程にあるカラー写真記事は1943年イタリア戦線におけるモンテ・カッシーノの戦い

イタリア戦線のキャンペーンゲームなのですが、非常にオススメ

 

モンテ・カッシーノの戦いを扱ったエリアインパルスシステムのゲーム。ぜひ入手したいと思っているのですが、そもそものところでモノがでまわってこない。

 

 

巻頭のカラー記事からは「鎌倉殿の十三人」の放映とタイミングがばっちりの、畠山重忠が滅亡する「二俣川の戦い」。

 

太平記」システムで描く源平争乱初期の関東を扱った作品。時代としては記事が扱ったものと若干異なるが、畠山重忠は戦闘力3-統率力4として登場。戦闘力では源義経の4に続くレベルにあり、同戦闘力には、他に熊谷直実佐々木盛綱、小山朝光(結城朝光)しかなく、多くの御家人の戦闘力は2か1なので、一頭地抜けた能力を持つ。。

 

 

 

日本陸軍がレシプロ機のエンジンスタートに使った「自動車式始動機」の記事も非常に珍しく面白かった。



 

歴史群像 2022年10月号 [雑誌]

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